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第1章~平和な日常が戻ってきました~
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セイラは扉の向こう側から聞こえてきた単語にピタリと動きを止めて固まった。
耳を通り過ぎる声は真剣でとても冗談を言っているようには聞こえない。
溜息混じりに零れた声もセイラが望む否定の言葉は奏でてくれなかった。
足元からガラガラと崩れ落ちていく感覚を味わいながらセイラはその場から逃げ出した。
その現実から逃げたくて、なかったことにしたくて、だけど、できないことも分かっていて。
ただ頭の中でグルグルと回る「嫌だ」という感情を発散するように走る。
無意識に辿りついた部屋の扉を迷うことなく開いて未だに夢の中にいるアルバを問答無用で叩き起こした。
「グハッ、なにす……セイラ?どうしたの?泣いてるの?」
無防備なお腹に突然ダイブされたアルバは最悪の目覚めに文句を言いかけたが、自分のお腹に顔を埋めて肩を震わせるセイラの姿に喉まで出ていた言葉を呑みこんだ。
膨れ上がっていた怒りが一気に萎む。
「ど、しよ。あるば」
嗚咽混じりの弱々しい声にアルバはきゅうっと眉を寄せて続きを促すが、それ以上は言葉にならないようでセイラはアルバに抱きついたまま声を殺して泣く。
必死に嗚咽を噛み殺そうとして震える体が、じんわりとパジャマを濡らす温かい涙がセイラを小さくか弱いものに見せてアルバは未だかつてないくらいに混乱して大事な姉を泣かせた相手に言いようのない怒りを覚えた。
「セイラ」
泣き続ける片割れを抱きしめて、優しく背中を撫でてやりながらアルバはひたすらにセイラが落ち着くのを待つ。
どのくらいそうしていたのかようやく落ち着いたらしいセイラは今にも死にそうな顔であまりにも現実味のない単語を紡いでアルバの思考を止めた。
「ど、しよう。ぐす、に、さま、にいさまが…ヒック…おみあい、する」
「……は?」
今、セイラはなんて言った?
お見合い?誰が?何のために?
「……兄さんが、お見合い?父さんにからかわれた訳じゃなくてホントに?」
「わか、ない。でも、ジオとにいさまもいっしょ、だったわ」
ジオはともかくリヒトも一緒だったということにアルバはすっと目を細める。
ジオだけならまだセイラをからかう為だけのタチの悪すぎる冗談だと思えなくもない。
だけど兄さんまで呼んでその話をしたということは、お見合いは実際に行われる可能性が高い。
いくら鬼畜な父さんでも兄さんまで巻き込んでセイラをからかったりはしない……と思う。たぶん。
だからセイラの話を聞くかぎり兄さんがどこかの令嬢とお見合いするのは間違いない。
そう思うのに可笑しい。
その割には母さんが大人しすぎる。
そんな話が出たらあのお子様な母さんは夜中だろうが大騒ぎしてわんわん泣いて父さんと兄さんを困らせるに決まってる。
もちろんそこに自分とセイラが巻き込まれない訳がない。
下手したらニナまで加わってちょっとした地獄絵図になるだろう。
腑に落ちない情報に眉根を寄せながらアルバは隣の部屋でまだ夢の中にいるステラを布団から引っぺがしに行った。
耳を通り過ぎる声は真剣でとても冗談を言っているようには聞こえない。
溜息混じりに零れた声もセイラが望む否定の言葉は奏でてくれなかった。
足元からガラガラと崩れ落ちていく感覚を味わいながらセイラはその場から逃げ出した。
その現実から逃げたくて、なかったことにしたくて、だけど、できないことも分かっていて。
ただ頭の中でグルグルと回る「嫌だ」という感情を発散するように走る。
無意識に辿りついた部屋の扉を迷うことなく開いて未だに夢の中にいるアルバを問答無用で叩き起こした。
「グハッ、なにす……セイラ?どうしたの?泣いてるの?」
無防備なお腹に突然ダイブされたアルバは最悪の目覚めに文句を言いかけたが、自分のお腹に顔を埋めて肩を震わせるセイラの姿に喉まで出ていた言葉を呑みこんだ。
膨れ上がっていた怒りが一気に萎む。
「ど、しよ。あるば」
嗚咽混じりの弱々しい声にアルバはきゅうっと眉を寄せて続きを促すが、それ以上は言葉にならないようでセイラはアルバに抱きついたまま声を殺して泣く。
必死に嗚咽を噛み殺そうとして震える体が、じんわりとパジャマを濡らす温かい涙がセイラを小さくか弱いものに見せてアルバは未だかつてないくらいに混乱して大事な姉を泣かせた相手に言いようのない怒りを覚えた。
「セイラ」
泣き続ける片割れを抱きしめて、優しく背中を撫でてやりながらアルバはひたすらにセイラが落ち着くのを待つ。
どのくらいそうしていたのかようやく落ち着いたらしいセイラは今にも死にそうな顔であまりにも現実味のない単語を紡いでアルバの思考を止めた。
「ど、しよう。ぐす、に、さま、にいさまが…ヒック…おみあい、する」
「……は?」
今、セイラはなんて言った?
お見合い?誰が?何のために?
「……兄さんが、お見合い?父さんにからかわれた訳じゃなくてホントに?」
「わか、ない。でも、ジオとにいさまもいっしょ、だったわ」
ジオはともかくリヒトも一緒だったということにアルバはすっと目を細める。
ジオだけならまだセイラをからかう為だけのタチの悪すぎる冗談だと思えなくもない。
だけど兄さんまで呼んでその話をしたということは、お見合いは実際に行われる可能性が高い。
いくら鬼畜な父さんでも兄さんまで巻き込んでセイラをからかったりはしない……と思う。たぶん。
だからセイラの話を聞くかぎり兄さんがどこかの令嬢とお見合いするのは間違いない。
そう思うのに可笑しい。
その割には母さんが大人しすぎる。
そんな話が出たらあのお子様な母さんは夜中だろうが大騒ぎしてわんわん泣いて父さんと兄さんを困らせるに決まってる。
もちろんそこに自分とセイラが巻き込まれない訳がない。
下手したらニナまで加わってちょっとした地獄絵図になるだろう。
腑に落ちない情報に眉根を寄せながらアルバは隣の部屋でまだ夢の中にいるステラを布団から引っぺがしに行った。
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