完全幸福論

のどか

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第1章~平和な日常が戻ってきました~

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リヒトとジオがいなくなった執務室でノクトは静かに彼女の訪れを待った。

「……失礼します」

どことなくバツが悪そうに入ってきたセイラをじっと見つめる。
その視線に促されるように俯きがちだった顔がゆっくりと上がってルナと同じ黒曜石の瞳がノクトの視線とぶつかった。

「………聞いてもいい?」
「お前が先だ。俺を満足させられたら答えてやらなくもない」

セイラの顔が苦々しげに歪む。

この意地悪オヤジ!!
人がこんなにしんみりした空気を醸し出しているのに、それを鼻で笑ってその上に条件付きで“答えてやらなくもない”ですって!?
鬼!悪魔!人でなし!!

喉にせり上がってくる文句を無理矢理ゴクンと呑みこんでセイラは答えを貰う為にノクトが望む答えを叩きつけた。

「変わらない。
 それ以上の答えは出せないし、出す気もないわ」
「……」
「でも、甘えがあったことは―――覚悟と自覚が足りてなかったことは認めるわ。
 だから、これからもご指導よろしくお願いします。ボス」
「いいのか?そこは居心地がいいだろう?」
「確かにここはとても居心地がいいわ。だけど私が欲しいものじゃない。
 前に言ったはずよ。目的のためなら手段を選ばない。私が全部まとめて引き継いであげるって」
「……いいだろう。女だからといって容赦する気はねぇ。覚悟しろ」
「望むところよ」
「それでどこまで理解して何がわからない?」
「決まってるわ!!兄様のお見合いについてよ!
 どういう選考基準でマルティーニ伯爵令嬢を選んだの!?
 しかも彼女、兄様に告白しておいて心おきなくお嫁に行けるってどういうこと!?
 まさか兄様の昔の恋人とかじゃないでしょうね!!」
「……出ていけ」

一気に白けたノクトが冷ややかな視線を向けるもセイラの勢いは止まらない。

「ふざけんじゃないわ!!アルバに預けた伝言の答えなんかよりよっぽど重要な案件よ!」
「近い。喚くな。放り出すぞ」
「教えてくれるまでは意地でもパパから離れないわよ!
 徹夜上等!枕元で延々と喚き続けてやるから!」
「ふざけんな!!
 テメェ一体誰に似やがった!?俺もルナもそんなに粘着質じゃねぇぞ!!」
「粘着質ですって!?可愛い娘になんてことを……!
 恋する乙女にはなりふり構ってられないことだってあるのよ!
 なんなら盛りに盛った報告をママにして味方に引き入れたっていいんだからね!!」
「うぜぇ!!そんなに気になるならリヒトに自分で聞きやがれ!」
「それができたら苦労しないわ!
 パパってホントに乙女心が欠片もわかってないわよね!
 そんなんだから毎度毎度同じ花しかママに贈れないのよ!!」
「んだとクソガキ!そんなこと誰に聞きやがった!?」
「庭師のおじいさんよ!
 それにママの反応見たら聞かなくても分かるわよこの万年バカ夫婦!!
 もっと子どもの目を気にしていちゃつきなさい!!」

はじまった低レベルな親子喧嘩は呆れ顔のジオとリヒトが止めに来るまで続いた。



平和な日常が戻って来ました。
(なんだこの皺くちゃの書類!!書き直して来い!)
(嫌よ!読めるんだからいいでしょ!!さっさと受け取って!兄様とのお茶会に遅れちゃうじゃない!!)
(父様、リヒト兄様)
(あのふたりまたやってるけど止めなくていいの?)
(……だとよ。任せたぞリヒト)
(あらダメよ。リヒトはこれから私たちとお茶するんだもの。ね?ニナ)
(早く止めにいかないとまた仕事が増えますよ?)
(……ジオ、俺も一緒に行くよ)
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