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第2章~守るために強くなると誓いました~
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しおりを挟むひとつの再会が私たちの運命を狂わせた。
それでも君とまた逢えたことをこんなにも嬉しく思う私はきっと誰よりも罪深い。
どうか許してください。
――――――どうか許さないでください。
罪深きこの身を。穢れたこの心を。叶わぬと知りながら募る想いを。
どうかどうか許してください。
――――――――君のために生きられない私をどうか……。
「リヒト、お前にだ。」
今日の仕事を受け取りに来たリヒトは差し出された封筒にパチリと目を瞬いた。
「また変な手紙じゃないよね?」
思わずじと目になってしまうのはつい先日、一通の手紙からはじまったお見合いのおかげで可愛い妹の暴走っぷりを目の当たりにしてしまったからだ。
どうにも自分のそっち方面の話題は我が家の女性陣の性格を変えてしまうものであるということをリヒトはあの騒動によってようやくおぼろげながらに理解した。
疑うような視線を向けられたノクトは大して気にした様子もなくさっさと受け取れと言わんばかりに手紙を突きだす。
「お前個人宛だから内容は知らねぇ」
「俺個人宛?誰からだろう……」
「レドモンド侯爵家の紋がついてたな。そういえば例の伯爵令嬢の嫁ぎ先だったか?」
「………ダリア嬢はたぶん直接関係ないよ。でも俺その手紙イラナイ。」
「あ?」
「心当たりはものすごくあるんだけど嫌な予感しかしないから配達事故で届かなかったって事で」
「リヒト」
「……わかったよ」
窘めるように名前を呼ばれて手紙を渋々受け取る。
リヒトは口をへの字に曲げてその封筒を睨みつけた。
「なんならここで読んで行くか?」
「ヤダ。って言いたいとこだけどここで読む方が話が早い気がするからそうする」
小さな溜息を零しながらソファーに座ってビリビリ封筒を破き始めたリヒトにノクトは目を瞬く。
てっきり思いっきり顔を歪めて拗ねた顔して出ていくと思っていた。
興味深げにリヒトが手紙に目を通す姿を見つめる。
一文字追う度にどんどん歪められる表情にノクトは珍しそうに眺めている。
「……ボス。俺、休暇申請したらとれちゃったりする?」
ものすごく嫌そうに休みについて尋ねてきたリヒトにノクトは内心首を傾げながらも首肯する。
それにリヒトはガックリと肩を落として再び手紙へと視線を戻した。
『拝啓、親愛なる我が友よ』
からはじまる文面は読む者の精神力を削るのが目的かと疑うくらいにテンションが高くて鬱陶しい。
いっそ不幸の手紙として処分してしまおうか。
そう思いながらも最後まで目を通したリヒトは不思議そうな顔で自分を見ているノクトにゆっくりと向き直った。
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