完全幸福論

のどか

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第2章~守るために強くなると誓いました~

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ノクトの執務室へと呼び出しを受けたジオは告げられた言葉に目を見開いて驚いた。

「はぁ!?今何つった!?」
「この招待を受けると言ったんだ」

テメェの耳は飾りかと睥睨されてもジオはそれどころではない。
ぞんざいに寄こされた招待状を隅から隅まで何度も確認して大きく嘆息する。

「嗚呼、ついにこの国も滅ぶのか……」
「いい度胸だな。死ね」

ピクリと眉を動かしてごく自然に突きつけられた銃口を素手で抑えつけてジオは叫ぶ。

「ふざけんな!
 俺に仕事を押し付ける前になにがどうしてそんな迷惑極まりないことを言いだしたのか説明しやがれ!!今まで夜会なんてメンドクサイつって全部俺に押し付けてたじゃねぇか!!」
「リヒトが招待を受けた。あとは気分だ」
「自重しろ親バカ――――!つか気分ってなんだ気分って!!」
「テメェにだけは言われたくねぇ。ステラにあっさり情報盗られやがったくせに」
「んだと!!」
「……センパイ、ボス。もう少し抑えられた方がよろしいかと。
 その……全部筒抜けです。」

遠慮がちに声をかけたニナの視線の先には綺麗に並んだ4つの頭。

「パパ!兄様が招待を受けたってどういうこと!?
 事の次第によっては私黙ってないわよ!!」
「まさか、自分だけそれに付いて行く気じゃないわよね?」

鬼の形相で問い詰めてくる娘と瞳を輝かせて私も行きたい!!とのたまう妻にノクトの表情は引き攣る。
ジオはジオで半分アルバに潰されるようにしながらも不思議そうにまたなにかあったんですか?という顔で自分を見つめてくる娘に妙な罪悪感を抱き、ふぅん?自分たちだけ抜け駆けする気なんだ?という冷ややかな視線を向けてくるアルバに心を抉られるような思いを味わっていた。
というか実際にキリリと胃が悲鳴を上げた気がした。
引き攣った上司と旦那の顔をニナは遠い目をして眺める。
嵐の予感、いやもう強風を感じるくらいすぐそこまで嵐が来ている。
もう笑うしかないなと渇いた笑いがその唇から零れそうになった時、廊下の向こうに救世主を見つけた。

「みんな揃ってどうしたの?何かあった?」

暴走する双子の唯一のストッパーであり、救世主であり、嵐の中心であるリヒトが不思議そうに目を瞬く。
パァと輝いたニナの瞳に疑問符を浮かべながらも、リヒトは扉の前を占領している彼らの後ろからそっと執務室の中を覗き込んだ。

「あ、やっぱりボスに呼ばれてたんだ」
「お、おぅ。どうした?なにかあったか?」
「いや、急ぎじゃないから後でいいよ。
 取り込み中なら報告書も後にする方がいいよね?」
「「いや!今でいい。今にしろ」」
「へ?」

ピタっと声を揃えて引きとめようとするふたりにリヒトはまた不思議そうな顔をする。
そしてようやく自分を見つめるルナたちの視線が執務室にいる2人ではなくリヒトに向けられていて、その視線が物言いたげなものであることに気がついた。

「な、なに?また、変な話が持ち込まれたの?」
「ちがうよ。
 兄さん、どこかに招待されてしばらく家空けたりする予定ある?」
「え?あ、うん。
 一応、学生時代の腐れ縁に顔見せろって言われてるから、お受けするつもりだよ。
 無視したら面倒なことになりそうだし」

リヒトは招待状の贈り主である男を思い出してぐっと眉を寄せる。
招待に応じなければここまで押しかけてきそうだから怖い。というかやつは絶対に来る。
どこをどう間違えたのかあの男に気にいられてしまった以上は正確に対処しないと酷い目にあうのはリヒトだ。
助けてもらう事がなかったとは言わないが、振りまわされるのは大抵リヒトだった。

「ねぇ、リヒト。それってオトモダチだけで集まるの?」
「いや、侯爵夫人が暇つぶしに開く夜会に便乗するらしいから関係ないと思うけ、ど……。
 ね、姉ちゃん……??」

まさか、まさかね。
ガンガン主張する嫌な予感から目を背けるようにリヒトは助けを求めて執務室を振りかえった。
そこにはどこか開き直ったような顔のノクトともう好きにしてくれと言わんばかりに渇いた笑みを浮かべて諦めの境地にいるジオの姿がある。
リヒトは耳を塞ぎたい衝動を必死にこらえながらゆっくりと視線を戻す。
甘い笑顔を浮かべるルナと目があった。
瞬時に視線をそらそうとしたが、それよりもルナが口を開く方が早い。

「じゃあ、私も行ってもいい?最近閉じこもってばっかりだし」

年齢を感じさせない可愛らしいお願いにリヒトはヒクリと頬を引き攣らせて周りを見渡すが助けてくれる人はいない。
ニナはサッと目をそらし執務室のふたりは相変わらず、セイラとアルバは下手に刺激をすると自分たちも連れていけと言いだしそうな雰囲気だ。
リヒトは渇いた笑みを浮かべて全ての判断を開き直ったように悠然と椅子に腰かけているボスに任せることにした。
弾きだされる答えなんてわかっている。
それでも自分の口から最終決定を下したくなかった。

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