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第2章~守るために強くなると誓いました~
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しおりを挟む「それで?」
「いやー、俺って兄貴思いだからさ、ちゃーんと兄貴を支えてくれる人を義姉上って呼びたいなって。
叶わぬ恋を引きずってたって彼女も幸せになれないじゃん??」
しおらしくしていたのは最初だけで完全に開き直ったジェロージアにリヒトの視線はさらに冷たくなる。
「お前がそんなにお兄さん思いだなんてしらなかったよ」
「そういうこと言っちゃう?
ま、それは建て前で本音としては俺に黙って実家に帰ったお前への嫌がらせなんだけど」
「あーあ、ホント早く腐り落ちないからこの縁」
「切れても俺が結び直すから安心しろよ」
「うわー。嬉しくない」
ギャンギャン吠える自称親友を冷たくあしらいながらリヒトはグルリと会場を見渡す。
視界の端に捕えたノクトとルナは久しぶりの夜会だと言っていたけれど、相変わらず自分たちの世界に入り込み周りの雑音を締め出して夜会独特の雰囲気を楽しんでいるようだ。
これで親孝行ができたとは思わないけれど、それでも少しでもふたりの息抜きができたならこの煩い男の相手をするのもそれほど悪いことではない気がしないでもない。
そんなことを思いながら耳半分でジェロージアの声を聞きながらグラスを傾けた。
「でもさ、俺、お前に女の影が見えない理由が分かっちゃった」
「はぁ?」
シャンパングラスを揺らしながら突然妙なことを言いだしたジェロージアにリヒトは訝しげな視線を向ける。
リヒトの視線が自分へと戻ってきたことに満足してニッと笑う姿にリヒトはぐっと眉を寄せて視線をそらした。
そうだった。こいつはこういうやつだった。
学生時代から常に自分に興味を持ってチヤホヤしてもらっていないと気が済まないという果てしなくメンドクサイやつだった。
周りには常に誰かが侍っていたし、特にリヒトに対しては鬱陶しいくらいに構ってちゃんだった。
あぁ、本当にどうしてこんなやつと顔見知り以上の関係になったんだろう。
「そんなに嫌そうな顔すんなよ」
「……それで俺に恋人ができない理由って?」
「そりゃあんなに若くて可愛い母親が近くにいたら自然と理想も高くなるだろ。
うちのババア見てみろよ。散々金かけてアレだぜ」
「侯爵夫人だって十分美人だろ」
聞くんじゃなかった。というかこいつにマトモな答えを期待した俺が馬鹿だった。
リヒトはげんなりしながら隣でピーチクパーチク囀る煩い親友から逃れるためにもう一度視線を彷徨わせる。
そうしてもうひとつ、できることなら永遠に忘れていたかった事を思い出してしまい表情を歪めた。
本当にコイツといると碌な事がない。
一度感じとってしまうとグサグサと突き刺さるそれは中々薄れない。
家柄と容姿に恵まれ、オマケ頭も悪くないとなれば周りが放っておくわけがない。
女性にとって狩の場でもある夜会においてジェロージアは最高の獲物だ。
男のリヒトにさえ嫉妬の視線が向けられるほどに。
挙げ句の果てにその禍々しい視線から逃れるように視線を滑らせるとその先から妙な悲鳴が上がるのだから顔を歪めるなという方が無理な話だ。
「キャァア!!今、こちらをご覧になったわ!!!」
「私、目があった……!」
「馬鹿おっしゃい。あの方と目があったのは私よ!!」
何とも言えない彼女たちの声を聞きながらリヒトはぐっと眉を寄せる。
楽しんでいる様子のふたりには悪いけど先に帰ろうか。
本気でそう思いかけた時、視界の端に見覚えのある藍色が揺れるのを捕えてリヒトは思考をとめた。
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