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第2章~守るために強くなると誓いました~
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しおりを挟むずっと探していた人と再会し、また会う約束を取り付けられたリヒトは上機嫌でグラスを傾ける。
それをじとりと睨みつけながらジェロージアが不満そうに唇を尖らせるがリヒトは気にしない。
どんなに睨んでみても自分の声なき抗議がリヒトに伝わらないと知っているジェロージアは諦めたように息を吐いて不機嫌な声で呟いた。
「少しは俺の気持ちが分かった?」
「は?なんでそこでお前の気持ちが出てくるわけ??」
「だってそうだろう!?お前に置いてかれた俺と!彼女に置いてかれたお前!!」
意味が分からない。お前何言ってるの?という顔を向けられてついにジェロージアが吠えた。
しかしそれもリヒトはパチリと目を瞬いてサックリ切り捨てる。
「いや、全然違うし」
「どこが!?」
「……親愛度とか?信頼関係とか?
というかセンパイは俺が勝手に探してただけだし」
卒業すると同時に連絡が取れなくなった彼女をリヒトが勝手に心配して探していただけだ。
スキップ制度を利用して予定より早く学校を卒業したにも関わらず、寄宿舎にいる風を装ってひとり暮らしをしていたのもリヒトがそうしたかったからしただけで彼女は関係ない。
ひとり暮らしの理由に彼女を探すことが含まれていなかったといえば嘘になるが、それよりも万が一の時に備えてという事の方が大きかった。
まだ消化しきれていなかった不安を家族も友人もいない空間が溶かしてくれたからリヒトは家族の一員としてあの家に帰れた。
そもそも彼女とリヒトはただのセンパイとコウハイで、彼女が卒業後の予定を話さなかったことも、連絡先を知らせなかったことも誰かに責められる謂れなどない。
言い訳するように心の中で呟きながらリヒトはキャンキャン煩いジェロージアに冷たい視線を向けた。
「それに俺はちゃんと管理人のおばちゃんに事づけただろ。実家に戻るって」
「いやいや!なにあの伝言。二度と会わないことを願ってます。って!
俺泣きそうになったんだけど!おばちゃんから本気で慰められたんだけど!
あの一言必要だったのか!?」
「え?俺の心からの願いだったんだけど……ダメだった??」
「はい!折れたー!今ので俺の繊細な心がポキっていっちゃった!!
という訳でお前、今日泊まりな。決定!」
「本当に意味わからないんだけど。
うちの可愛いお姫様たちに早く戻るって約束したから帰るよ。」
「このシスコン!!妹と親友どっちが大事なんだ!」
「妹と弟」
「即答!?」
「でもま、今夜呼んでくれたことには感謝してるよ」
「………それが彼女に会えたせいなら嬉しくない」
「馬鹿。それだけじゃないよ」
柔らかく瞳を和ませたリヒトにジェロージアはドキリと胸を高鳴らせた。
まさか、まさか、やっぱりリヒトも俺に会いたかったとか!?
そうだよな!なんだかんだ言ってリヒトは俺のこと好きだもんな!!このツンデレめ!
口元が緩むのを抑えきれずにジェロージアは期待に瞳を輝かせてリヒトを見つめた。
「お前のおかげで出不精のボスたちも息抜きできたみたいだし」
ジェロージアの笑みが引きつり凍りつく。
自分へと向けられていると思った視線はすべてジェロージアを通り抜けてテラスでいい雰囲気になっている侯爵夫妻へとまっすぐ向けられている。
リヒトの視線に気づいた夫人が輝いた笑みでリヒトに手を振る。
リヒトはその幼い仕草に応えてやりながら、呆れ顔でふたりを見つめる侯爵に微苦笑を返している。
ジェロージアは裏切られた期待に口元を引き攣らせながらなんとも仲むつまじい家族の様子を見守ることしかできなかった。
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