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従兄様の罠でした。
しおりを挟む助けを求めるように従兄様を見ても華麗にスルーされます。
気づいてるよね。ねぇ!絶対気づいてるよね!!私のこの説明を求める視線に!!
「ふふ、そうね。自己紹介がまだだったわね。私は天城有希《ゆき》っていうの」
「てんじょう……」
「そうよ。陸斗の姉。私のことはお姉ちゃんって呼んでね!」
「何言ってやがるクソ姉貴!!沙奈が固まってるだろうが!」
「陸斗くん……」
なにがどうなってるの?というかその格好は一体……?
「こら、陸!暴れんなって!!」
笑いを堪えきれずにくすくす笑いながら陸斗くんとよく似た顔立ちのお兄さんが陸斗くんをなだめます。
けれどちっとも効果はありませんでした。
「笑ってんじゃねぇ!!
いい加減なにがどうなってんのか俺と沙奈に説明しやがれ!!」
「まだ教えてないんですか?」
「ええ、そっちのほうが面白いかと思って」
「そうですね。沙奈、お前も着替えてこい」
「は?」
「大丈夫。とびっきり可愛くしてあげるから」
「え?ちょ、」
とろけるような笑みを浮かべた有希さんの合図でこれまた綺麗なお姉さんが恭しく私の手をとって強引に引きずっていきます。
ぎょっとしたのは私と陸斗くんだけで、その陸斗くんも私を見送るキラキラと輝く有希さんの笑顔を見た瞬間死んだ目になってあきらめました。頑張れよという同情の視線が痛いです。
着替えたのはこの場所では定番の純白のドレスでした。お化粧も完璧です。
そう言えば陸斗くんが着てたのも……。いやいや!いくら従兄様でも流石にない。うん。これはない。ちゃんと説明してもらわないと!!
「へ?」
「ふざけんな!」
説明を聞いてキョトンとする私とは反対に憤慨する陸斗くん。
そしてお姉さんはキレる陸斗くんをガン無視してなぜか私をぎゅうと抱きしめた。
「ねえ、明君。持って帰ってもいい?」
「ダメです」
甘えるようなお姉さんの声にも涼しい顔で一蹴して従弟様はまだ混乱中の私のために改めて説明してくれた。
曰く、お姉さんはプロのカメラマンを目指していて今回天城がオープンさせるこの式場の宣伝用の写真を決めるコンテストに名前を伏せて応募するらしい。そこで私たちにその写真のモデルになってほしいそうだ。私はともかく陸斗くんがモデルで大丈夫なのかと思ったけどお兄さんたちに任せて滅多に表にでないせいで陸斗くんの顔をしっている人は少ないらしい。っじゃなくて!
「む、無理!無理ですっ!!」
「そんなことないわ!沙奈ちゃんなら大丈夫よ!!」
そんな大役私には務まりません!!とプルプルと震える私にお姉さんはにっこりと微笑みました。そのままあれよあれよと丸め込まれます。陸斗くんもお兄さんと従兄様に丸め込まれたようで撮影が始まりました。が、緊張でガチガチなわたしとやる気ゼロな陸斗くんでまともな写真が撮れるわけもなく、早々に休憩に入ります。
どんより落ち込む私の頭に大きな手が乗りました。
「姉貴に無理やり付き合わされてんだ。気にしなくていい」
「でも、」
「それより楽しめよ。こういうの女は好きだろ?」
ニッと笑った陸斗くんが私の手をとって歩き出しました。キラキラ輝く女の子の憧れの世界を綺麗なドレスを着て歩きます。
それはとっても素敵なことで、時々、陸斗くんが優しく笑ってくれるのがもっと素敵でなんだかすごく幸せな気分になりました。
「うふふふ!流石私の弟!やるじゃない!!」
完全に舞い上がっていた私は不気味に笑い声とともにきられるシャッター音に気が付きませんでした。
後日、送られてきた身に覚えのないサンプル写真に真っ赤になって身悶えたのは言うまでもありません。
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