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~後日談・番外編~
白夜夢幻ー4ー
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伸びそうになる手を遮るように冷たい手が肩に置かれる。
表面上はとても穏やかな声が静寂を破った。
「思ったよりずっと早かったらビックリしたよ。
流石はこの帝国で最も高貴で気高い血をひく者、夜の支配者、とでも言っておこうか。」
柔らかなのはうわべだけでその声はゾッとするほどに冷たい。
ちらりと見上げた目は心の底から私の名前を呼んだ男の人を憎んでいるような目だった。
「……した。そいつに、何をした!!」
だけど、それよりももっと恐ろしい激情を秘めた声が空気を震わせる。
獣の咆哮。慟哭。
彼の触れてはいけない部分に触れたのだと思った。
ぐつぐつと煮えたぎるような怒りを隠しもせずに私の肩を抱く男を睨む彼にどうしてか分からないけれど泣きたくなる。
怖いはずなのに、それよりももっと彼があんな表情をすることが哀しかった。
何もできなくても、何にもならなくても、抱きしめて大丈夫だよって言ってあげたかった。
彼の怒りが悲しみが癒えるまで何度でもそう囁かなければならないと思うのに鎖のように絡みつく手が邪魔をする。
頭の上を飛び交う言葉なんて耳に届かない。ただこのぐちゃぐちゃの心が彼のもとまで届くように必死に彼の姿を見つめていた。
「たかが王族の血を引いているってだけだろ?僕と何が違う」
「ぜんぶ」
男の馬鹿にしたような声にすぐさま返事が返ってきて思わずドキッとする。
無意識に言葉が零れてしまったのかと思ったら男の子が頭を押さえながら呆れた顔をする男の人を睨みつけているのが見えた。
プクリと頬を膨らませながら「だってボスのんが強いしカッコイイもん」とぼやく姿は可愛い。
それに自分の心を代弁してくれているようでなんだか嬉しくなる。
ボスと呼ばれる彼のことは何一つ思い出せなくても、あの小さな男の子の事を覚えて居なくても、彼の側に控え男の子を守る男の人が誰か分からなくても、私の側に立つ男より彼らのほうが信頼できる気がした。
じっと男の子を見つめていたせいで目が合う。
パチリと瞬いた大きな瞳を見ながらぎこちなく微笑みかけると男の子は零れてしまいそうなほどに目を見開いて、輝く様な笑顔を私にくれた。
その笑顔に懐かしさと擽ったさにふんわりと優しい温かさまで貰って、とっても怖くて危ない状況なのにすっと怖さや不安が溶けていく。
まだ少しのぎこちなさを残しながらも唇は自然と弧を描く。
それを認めた男の子の瞳が強い意志を灯す。
息を呑むほどに強い光を放つ瞳に男の子を守るように立っていた男の人の顔が苦々しく歪んだ。
まるで我儘を言っている子どもを宥めるように必死に男の子に何かを言っていたけれど、男の子の瞳はちっとも揺るがない。
強い力を秘めた目が真っ直ぐに私を射ぬいてふんわりとわらった。
『すぐ、むかえにいくからね。』
声なんて聞こえないのに、唇だって動いてないのにすぐそばでそう囁かれた気がした。
表面上はとても穏やかな声が静寂を破った。
「思ったよりずっと早かったらビックリしたよ。
流石はこの帝国で最も高貴で気高い血をひく者、夜の支配者、とでも言っておこうか。」
柔らかなのはうわべだけでその声はゾッとするほどに冷たい。
ちらりと見上げた目は心の底から私の名前を呼んだ男の人を憎んでいるような目だった。
「……した。そいつに、何をした!!」
だけど、それよりももっと恐ろしい激情を秘めた声が空気を震わせる。
獣の咆哮。慟哭。
彼の触れてはいけない部分に触れたのだと思った。
ぐつぐつと煮えたぎるような怒りを隠しもせずに私の肩を抱く男を睨む彼にどうしてか分からないけれど泣きたくなる。
怖いはずなのに、それよりももっと彼があんな表情をすることが哀しかった。
何もできなくても、何にもならなくても、抱きしめて大丈夫だよって言ってあげたかった。
彼の怒りが悲しみが癒えるまで何度でもそう囁かなければならないと思うのに鎖のように絡みつく手が邪魔をする。
頭の上を飛び交う言葉なんて耳に届かない。ただこのぐちゃぐちゃの心が彼のもとまで届くように必死に彼の姿を見つめていた。
「たかが王族の血を引いているってだけだろ?僕と何が違う」
「ぜんぶ」
男の馬鹿にしたような声にすぐさま返事が返ってきて思わずドキッとする。
無意識に言葉が零れてしまったのかと思ったら男の子が頭を押さえながら呆れた顔をする男の人を睨みつけているのが見えた。
プクリと頬を膨らませながら「だってボスのんが強いしカッコイイもん」とぼやく姿は可愛い。
それに自分の心を代弁してくれているようでなんだか嬉しくなる。
ボスと呼ばれる彼のことは何一つ思い出せなくても、あの小さな男の子の事を覚えて居なくても、彼の側に控え男の子を守る男の人が誰か分からなくても、私の側に立つ男より彼らのほうが信頼できる気がした。
じっと男の子を見つめていたせいで目が合う。
パチリと瞬いた大きな瞳を見ながらぎこちなく微笑みかけると男の子は零れてしまいそうなほどに目を見開いて、輝く様な笑顔を私にくれた。
その笑顔に懐かしさと擽ったさにふんわりと優しい温かさまで貰って、とっても怖くて危ない状況なのにすっと怖さや不安が溶けていく。
まだ少しのぎこちなさを残しながらも唇は自然と弧を描く。
それを認めた男の子の瞳が強い意志を灯す。
息を呑むほどに強い光を放つ瞳に男の子を守るように立っていた男の人の顔が苦々しく歪んだ。
まるで我儘を言っている子どもを宥めるように必死に男の子に何かを言っていたけれど、男の子の瞳はちっとも揺るがない。
強い力を秘めた目が真っ直ぐに私を射ぬいてふんわりとわらった。
『すぐ、むかえにいくからね。』
声なんて聞こえないのに、唇だって動いてないのにすぐそばでそう囁かれた気がした。
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