幸福論

のどか

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~後日談・番外編~

きらきら光る

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「姫様、お綺麗ですよ」
 
キラキラと瞳を輝かせて自分を見つめるニナの言葉に嘘はない。
それでも素直に喜べないのはきっとこのドレスに袖を通す意味を考えてしまうからだろう。
ルナは憂いを帯びた表情で鏡に映る自分を見つめた。
ノクトがルナのために選んで仕立ててくれたドレス。
それだけなら素直に喜べるのに。
こぼれ落ちたため息にニナが微苦笑を零すのを感じた。
 
「そんなお顔をしないで。
 せっかくお綺麗なんですから」
「だって……」
「せっかくの社交界デビューじゃないですか。
 しかもエスコートはボス自らしてくださるみたいですし!」
 
ルナの気分を盛り上げようとニナが必死に言葉を紡ぐ。
けれど今のルナにはどれも響かなかった。
社交界デビュー。様々な意味をもつそれはルナにとって婚活の始まりを意味している。
その日を区切りにすべてが変わってしまうような気がして怖いのだ。
 
「大丈夫ですよ。」
「ニナ」
「不安なこともおありでしょうけど、姫様にはボスがついておられるんですから大丈夫です」
「うん……。
 ねぇニナ。私、結婚したくないっていったらノクト、怒るかな?」
「まぁ!姫様、結婚が嫌でそんなお顔をなさってたんですか?」
「だって、」
「ふふ、おバカさんですね。
 いいですか、ボスと先輩のお眼鏡にかなう人じゃないと姫様はお嫁にいけません。
 そんな人、この国中探したってそうそういません。きっと姫様は結婚したくなってもなかなかさせてもらえませんよ」
「本当?」
「私が姫様に嘘を吐いたことがありますか?」
「ないわ。ありがとうニナ。
 ノクトに見せてくる!!」
「姫様、もう来られてます」
「へ?」
 
きょとんとしたルナにニナはクスリと笑って扉のほうへと声をかける。
するとすぐに扉が開いてニヤニヤ笑っているジオが顔を出した。
 
「おっ、馬子にも衣装じゃねぇか。じゃじゃ馬姫」
 
その言葉にルナはむぅうとほっぺたを膨らませる。
けれどジオのすぐ後ろにお目当ての人物を見つけてルナは顔を輝かせた。
 
「ノクト!!!」

けれどルナの輝いた表情はすぐに沈んだものに代わる。
いつもならすぐに褒めてくれるノクトが眉間に皺を寄せてじっとルナを見ていたからだ。
 
「おい、ボス??」
 
さすがに様子がおかしいことに気付いたジオが慌てて声をかけるとノクトはむすっとしたままニナを睨みつける。
 
「な、なんですか、ボス」
「余計な虫に群がれたらどうする気だ」
「「は?」」
 
予想もしていなかった言葉にニナは目を丸くしてノクトを凝視する。
ジオもその場で頭を抱えたくなった。
意味が分からないルナだけが不安そうにニナとジオ、それからノクトを見て泣きそうな顔をする。
 
「似合ってない……?」

か細いルナの声にノクトはハッとしてルナの顔を見る。
今にもこぼれ落ちそうな涙を慌てて拭ってやる。
 
「バカ。似合いすぎてるから悩んでるんだ。
 …………いっそ、バクれるか」
 
困ったような顔でそんなことを言われてしまえばルナの頬に朱が走る。
似合ってるって!ノクトが似合ってるって言ってくれた!!それだけで嬉しくなったルナはボソリと呟かれた言葉まで拾い上げていない。
その本気の呟きを拾い上げてしまったジオはキリキリ痛む胃を抑えながら吠える。
 
「ボス!落ち着け!冷静になれ!」
「俺は冷静だ。
 ……伯爵じゃないが、害虫駆除が大変だな」
「お父様……?」
「あぁ、存命の頃にお前は天使だと耳にタコができるほど聞かされた」
「もうっ、お父様ったら」
「あながち間違えてないみたいだがな」
「?」
「綺麗だ。ルナ。
 成人おめでとう」
「ありがとう」
 
まぶしそうに自分を見つめるノクトを見つめ返しながら、頬を真っ赤にしてルナは幸せそうに微笑んだ。
 
 
 
きらきら光る
(君の未来にどうか幸せが訪れますように)



お題提供『capriccio(http://noir.sub.jp/cpr/)』様   英単よりtwinkle/きらきら光る
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