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FILE2『嘘で塗られた自分の体』
4・大谷くんのママは犯罪者?
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「元々は、ママがお金を入れておくの忘れたからいけないの。こんなに注目されたのは、ママのせいなの」
「はいはい」
一度泣き出してしまったら、感情が溢れて止まらなくなってしまった。言いたいことを吐き出している私に、大谷くんは静かに椅子に座って聞いていてくれた。
「お腹も痛いし、すぐに保健室行くし、私のこと悪く思っている人、いっぱいいるもん。高田さんとか、佐久間くんとか」
「安心しろ、高田は違う。あれは全員にああなんだよ」
ああ、もう。と言いながら、大谷くんは困ったように頭をかいていた。困ってはいたけれど、きちんと私の話を聞いてくれているのが嬉しくて、私はどんどん大谷くんに向かって言葉を投げかけていた。
「女の子は私の陰口言うし、男の子は私をいじめるし、もう嫌。学校なんか嫌い」
「男子はまあ……あれだ。好きな子にいじわるしちゃうあれじゃないか。何て言うんだ、オトシゴロって言うのかな」
「……えっ?」
「ああ、違う。シシュンキ、だ」
思わず私は顔を上げていた。涙で顔がぐしゃぐしゃだと思ったから、大谷くんに顔を隠していたのに、これでは全て台無しになってしまった。でも、それ以上にそんなこと言ってくれる男の子なんて他にいなかったから、私は驚いてしまったのだ。
「ははは。すげー顔」
「ひ……ひどい!」
「山岡さ、ふわふわの可愛い恰好してるじゃん。女って、そういうの好きだろ? だから、きっと羨ましいんだよ。あまり気にしない方がいいよ」
「ママが……全部用意してるから。本当は、こんな恰好嫌い。動きやすい、ジーンズとかはいてみたい。でも、駄目なんだって。女の子は、女らしい恰好をしないと、駄目なんだって」
大谷くんが話を聞いてくれたおかげで、私は何だか気持ちが落ち着いてきた。
「おれの家は貧乏だから、そういう恰好させてくれる親がいて羨ましいけどな。おれは絶対、兄ちゃんのお下がりなんだ」
大谷くんのご両親は、どういう人なのだろう。
「あの、大谷くんのパパとママは、何をしているの? あまりお金を持っていないの?」
大谷くんは、それを聞いて一瞬きょとんとしたけれど、その後ケタケタと大声で笑い始めてしまった。私はとても驚いて彼の様子を茫然と眺めた。もう涙も止まっていた。
「私、おかしなこと言った?」
「あはは、いやいや。山岡は金持ちなんだなと思って。父ちゃんは自由業やってる。母ちゃんは逃亡犯なんだ」
「……え?」
悪いことをしたのだろうか。何だか、聞いてはいけないことを聞いたのではないだろうか。私は恐ろしくなって、頭の中でどうしようか考えた。突然大谷くんのことが怖くなってしまった。
「だから、逃げるために転々と引っ越さなきゃならないんだよ。風の又三郎みたいだろ。十二日後には、遠いところに引っ越しているかもしれないな」
ははは、と大谷くんは笑っていたけれど、私は彼の言葉が頭の中をくるくると回っていて、それどころではなかった。
4・続く
「はいはい」
一度泣き出してしまったら、感情が溢れて止まらなくなってしまった。言いたいことを吐き出している私に、大谷くんは静かに椅子に座って聞いていてくれた。
「お腹も痛いし、すぐに保健室行くし、私のこと悪く思っている人、いっぱいいるもん。高田さんとか、佐久間くんとか」
「安心しろ、高田は違う。あれは全員にああなんだよ」
ああ、もう。と言いながら、大谷くんは困ったように頭をかいていた。困ってはいたけれど、きちんと私の話を聞いてくれているのが嬉しくて、私はどんどん大谷くんに向かって言葉を投げかけていた。
「女の子は私の陰口言うし、男の子は私をいじめるし、もう嫌。学校なんか嫌い」
「男子はまあ……あれだ。好きな子にいじわるしちゃうあれじゃないか。何て言うんだ、オトシゴロって言うのかな」
「……えっ?」
「ああ、違う。シシュンキ、だ」
思わず私は顔を上げていた。涙で顔がぐしゃぐしゃだと思ったから、大谷くんに顔を隠していたのに、これでは全て台無しになってしまった。でも、それ以上にそんなこと言ってくれる男の子なんて他にいなかったから、私は驚いてしまったのだ。
「ははは。すげー顔」
「ひ……ひどい!」
「山岡さ、ふわふわの可愛い恰好してるじゃん。女って、そういうの好きだろ? だから、きっと羨ましいんだよ。あまり気にしない方がいいよ」
「ママが……全部用意してるから。本当は、こんな恰好嫌い。動きやすい、ジーンズとかはいてみたい。でも、駄目なんだって。女の子は、女らしい恰好をしないと、駄目なんだって」
大谷くんが話を聞いてくれたおかげで、私は何だか気持ちが落ち着いてきた。
「おれの家は貧乏だから、そういう恰好させてくれる親がいて羨ましいけどな。おれは絶対、兄ちゃんのお下がりなんだ」
大谷くんのご両親は、どういう人なのだろう。
「あの、大谷くんのパパとママは、何をしているの? あまりお金を持っていないの?」
大谷くんは、それを聞いて一瞬きょとんとしたけれど、その後ケタケタと大声で笑い始めてしまった。私はとても驚いて彼の様子を茫然と眺めた。もう涙も止まっていた。
「私、おかしなこと言った?」
「あはは、いやいや。山岡は金持ちなんだなと思って。父ちゃんは自由業やってる。母ちゃんは逃亡犯なんだ」
「……え?」
悪いことをしたのだろうか。何だか、聞いてはいけないことを聞いたのではないだろうか。私は恐ろしくなって、頭の中でどうしようか考えた。突然大谷くんのことが怖くなってしまった。
「だから、逃げるために転々と引っ越さなきゃならないんだよ。風の又三郎みたいだろ。十二日後には、遠いところに引っ越しているかもしれないな」
ははは、と大谷くんは笑っていたけれど、私は彼の言葉が頭の中をくるくると回っていて、それどころではなかった。
4・続く
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