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FILE2『嘘で塗られた自分の体』
5・保健室で休んじゃった
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「それより山岡、顔色が悪いな。大丈夫?」
大谷くんが私の腕をつかんだ。私はびくりとして、思わず「いたっ」と声を上げてしまい、大谷くんの手から逃れようと腕を引っ込めた。
「だ、大丈夫。大丈夫だから……」
「あ、いや。それならいいんだけど。ごめん、体触って」
「ううん、いいの」
不自然なほど怖がってしまったのを、大谷くんに気付かれてしまったかもしれない。私目を丸くしてこちらを見ている大谷くんを見て少し反省した。
やがて、中川先生が戻ってきて、大谷くんと打った頭の話を始めた。彼は仕方がないので、今日病院で診てもらうと渋々約束をさせられていた。
午後から授業に出ようと、昼休みに教室に戻ると、亜紀ちゃんが私に気付いて近づいてきてくれた。
「もう体調は大丈夫なの? ずいぶん保健室にいたね」
「う、うん。ごめんね、結局保健室に行っちゃって」
「心配したよ。いつまでも戻ってこないんだもん」
亜紀ちゃんは肩を竦めて、隣の席に座っていた柏木くんをじろりと睨み付けた。
「柏木の付き添いに保健室に行ったのに、柏木の方が先に帰ってくるなんて」
その声に気付いた柏木くんは、亜紀ちゃんを見て笑った。
「本当にそうだな。俺の不調が、山岡に移ったみたいだな。悪いことしたな」
柏木くんは、私に向かって小さく微笑んで頷いてくれた。一歩引いたところにいつもいるから、あまり目立つ人ではないけれど、接してみると本当に優しい。こんなに優しい人は、幸せになって欲しいと強く思う。
「あ、あのね。柏木くん」
大谷くんと、あまり親しくならない方がいいよ、と言おうとして、私は口を閉ざした。そんなことを言って、私はどうしたいのだろう。大谷くんのママが逃亡犯だなんて、誰もきっと信じない。
大谷くんだって、笑いながら冗談じみて言っていたことだから、からかわれやすい私は恰好の餌食になったのかもしれない。それに、親しくするなと柏木くんに注意したところで、柏木くんがそれを聞くとは思えない。彼は自分を持っているから。
「愛美、大丈夫? まだ調子悪いんじゃないの」
柏木くんに言うのは止めよう。亜紀ちゃんに相談してみてからでも、遅くはない。
「ううん、大丈夫。今日金曜日だし、土日ゆっくり休めばきっと良くなるから。心配してくれてありがとう、亜紀ちゃん」
金曜日は学習塾だけだから、きっと大丈夫だ。
5.続く
大谷くんが私の腕をつかんだ。私はびくりとして、思わず「いたっ」と声を上げてしまい、大谷くんの手から逃れようと腕を引っ込めた。
「だ、大丈夫。大丈夫だから……」
「あ、いや。それならいいんだけど。ごめん、体触って」
「ううん、いいの」
不自然なほど怖がってしまったのを、大谷くんに気付かれてしまったかもしれない。私目を丸くしてこちらを見ている大谷くんを見て少し反省した。
やがて、中川先生が戻ってきて、大谷くんと打った頭の話を始めた。彼は仕方がないので、今日病院で診てもらうと渋々約束をさせられていた。
午後から授業に出ようと、昼休みに教室に戻ると、亜紀ちゃんが私に気付いて近づいてきてくれた。
「もう体調は大丈夫なの? ずいぶん保健室にいたね」
「う、うん。ごめんね、結局保健室に行っちゃって」
「心配したよ。いつまでも戻ってこないんだもん」
亜紀ちゃんは肩を竦めて、隣の席に座っていた柏木くんをじろりと睨み付けた。
「柏木の付き添いに保健室に行ったのに、柏木の方が先に帰ってくるなんて」
その声に気付いた柏木くんは、亜紀ちゃんを見て笑った。
「本当にそうだな。俺の不調が、山岡に移ったみたいだな。悪いことしたな」
柏木くんは、私に向かって小さく微笑んで頷いてくれた。一歩引いたところにいつもいるから、あまり目立つ人ではないけれど、接してみると本当に優しい。こんなに優しい人は、幸せになって欲しいと強く思う。
「あ、あのね。柏木くん」
大谷くんと、あまり親しくならない方がいいよ、と言おうとして、私は口を閉ざした。そんなことを言って、私はどうしたいのだろう。大谷くんのママが逃亡犯だなんて、誰もきっと信じない。
大谷くんだって、笑いながら冗談じみて言っていたことだから、からかわれやすい私は恰好の餌食になったのかもしれない。それに、親しくするなと柏木くんに注意したところで、柏木くんがそれを聞くとは思えない。彼は自分を持っているから。
「愛美、大丈夫? まだ調子悪いんじゃないの」
柏木くんに言うのは止めよう。亜紀ちゃんに相談してみてからでも、遅くはない。
「ううん、大丈夫。今日金曜日だし、土日ゆっくり休めばきっと良くなるから。心配してくれてありがとう、亜紀ちゃん」
金曜日は学習塾だけだから、きっと大丈夫だ。
5.続く
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