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25話【恥ずかしい理由】

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「怜、ごめん·····電話が来て遅くなった」と、先輩は何処か嬉しそうに戻って来た。

(電話·····多分あの写真の人だな)

俺は喋らずに頷く。
「薬飲もうな」
先輩は目の前に来ると背中を支えていた枕を三つとも取ってしまい、そして俺を支える様にベッドに座る。

(わざわざこんな事しなくても良いのに、)

失恋確定と分かって直ぐのこの行為は、傷口に大量の塩を塗られている気分だ。
「口開けて」と言われて「じ···で、でき   す[自分で、出来ます]」と、先輩の手に持っている薬とコップを受け取ろうとするが何故か拒否されてしまう。

(???、また揶揄ってるのか?)

「け  さ [けーさん]」
俺は先輩のルビーの様な赤い目を見る。

「駄目だ。今日は大人しく俺に看病されてろ」
先程の嬉しそうな表情が今は不愉快なのか機嫌が悪そうに見えた。
(·····そこまで不機嫌にならなくても)
先輩は絶対に折れないな···と思い、俺は諦めて口を開けて薬を待つ。
しかし、直ぐに放り込まれると思っていた錠剤はコップに落とされ、先輩はスプーンを持つとコップの中で何かしている、、、、

(何してんだろ?)

不思議に思いながら待っていると、
「今って凄いよな、薬を包んで飲むゼリーがあるんだぞ」と、先輩が説明しながらスプーンで錠剤が入ったゼリーを掬い上げて俺の口に入れる。
俺は噛まずにそれを飲み込んだ。
(ゼリーが冷たい、)
食道を通ってるのか、中で動くのが分かる。

先輩は不機嫌そうな表情が今は普通に戻り、
「そういえば、後で教えるって言ったよな」と、俺が目を覚ます迄の経緯を話し始めた。

簡単に言ってしまえば·····さっき俺が思っていた通り、授業中に突然電話が掛かってきて、確認すると知らない番号からだった。
その時は電話にでず、授業後に掛け直した所·····保健センターの職員からの電話で俺の事を説明された。
しかし、抜けられない授業が続いていた為、先輩は家の執事さんに迎えに行くように言い、執事さんは俺を回収して病院へ。
その後、医者から処置を受けた俺はあの大きい屋敷では無く、先輩が一人暮らしをしているマンションに運ばれた···············と、、、、



「す、すみ  ···ま··ん  [すみません]」

改めて頭を下げて俺は先輩へ謝る。
病院にも連れて行ってくれたのは予想外だったけど、それにかかった費用は返さなければならない。

(一万超えるようなら、元気になってから銀行かコンビニで卸すまで待ってもらえるようにお願いしないと、、)

まだ声が途切れ途切れで口パクしてる様になってしまうので、俺はベッドの下に置いてあったリュックから自身の携帯を取り出し、メモアプリを起動して入力する。


[迷惑かけてばかりで、本当にすみませんでした。病院代と料理や俺のせいでかかった費用を返します。幾らですか?]

打ち終わった文章を先輩に見せると、
「全然迷惑じゃない。今回の費用も俺が勝手にやった事だから必要無い」と真剣な表情で話す。

[でも、俺が親と間違えて先輩の番号を伝えたか················
打ってる途中で手を掴まれ「とにかく、今回の事は気にするな。·····それに、俺のせいでもあるから」と、先輩は申し訳無さそうな表情で言う。

(え"?!、何で先輩のせいになるんだ?)

俺は急いで[それは違います!!]と、打って先輩に見せる。
「違わないだろ·····俺があんな所で怜を抱いて無理させたからそーなったんだろ」
ち、、違う···これは先輩のせいじゃなくてッ
俺が浴室であんな事をしたからで···············。

[けーさんのせいじゃないです······あの、、今から言う事に呆れたり怒らずに見ててくれますか?]

これでは埒が明かないので、昨日の自分の恥を先輩に伝える事に決めた。本当は先輩や誰にも知られずに墓場まで持って行きたかったのに·····。
「·····呆れず、怒らずに?」
先輩は不思議そうに頭を少し傾かた後、分かった····と頷く。

俺は頭が沸騰しそうな位···恥ずかしい思いで、
[昨日、浴室で自慰をしましたが前だけじゃ全然満足出来なくて、後ろも弄りました。自分で初めて後ろを弄りましたが凄く気持ち良くて·····イッても手が止まらず、その内に気を失って朝に目が覚めました]と入力していく、、、、

「···································ブッ、、」

右手で自身の口元を抑えて先輩は吹き出して笑いだす。
「はははははっ、、ヤバい···!!俺、笑い過ぎて今日死ぬかも、はははは···ひぃ··腹痛え···っはははははは」と、ここまで大笑いする先輩を初めて見たが、俺はそれどころじゃ無い。

「~~~~~~~~ッ、」

怒られたり、呆れられたりするよりは何倍もマシだけど、凄く恥ずかしい·····。
俺は恥ずかしさから、俺を支える先輩に拗ねながら何度も軽く頭突きをする。勿論、手に力が入れば肩を軽く叩いたりするが今はまだ力が余り入らない。

「ほんっと最高~はぁ·····」と、頭突きをする俺を先輩は笑いながら頭を撫でてくる。
「 け·····さ  ひど   す[けーさん、ヒドイです、、]」
頭が凄く熱い·····多分頬は真っ赤に染まっているだろう、、、
「ごめん、ごめん。あー·····笑った笑った。取り敢えず理由は分かった。この事で怜をもっとイジメたいけど今日は我慢するよ」と、壁に掛けてある時計を指差す。

(あ、)

どうやら、今の時刻は二十三時五十分でもう少しで日を跨ぎそうだ。



先輩は支えるのを辞めて俺を仰向けに寝かせると布団を掛けて「風呂入ったら隣に入るから空けといて。おやすみ」と、冷たい先輩の手が頬に触れる。

(手·····気持ちいい··········)

その冷たい手が今の自分には堪らなく気持ち良くて俺は頬ずりした。
「··········はぁ、···困る、、」
深い溜め息をついた先輩はそれだけ言うと、頬から手が離しドアの方へ歩いて出て行く。


「······························。」


困るってなんだろ?
いきなりあんな熱のこもった目で見られると·····こっちの方がかなり反応に困る。
·····そういう表情は俺じゃなくて、好きな人にするもんだろ、、、あの綺麗な女性ひとに。


先輩のせいで薬で下がった熱がまた上がりそうだ。





◇┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◇




その後、、、

最初こそ先輩のせいで寝れないと思っていたのに·····いつの間にか寝てしまったが、突然額に冷たい感触がして寝惚けながら右手でそれを確認する。

(······??  ······これ··は···冷却シート?)

「あ、わるい。起こしたな」
「···············け   ····· さ?」
「交換しただけだから、おやすみ」と、優しく話す先輩はお風呂上がりで凄くいい匂いがする。

俺は先輩の言葉で再び寝ようと瞼を閉じるが、熱が上がってきたのか肩から下が寒く、思わず「さ··む··っ···」と、身体を縮こませてしまう。

「怜?大丈夫か?寒いのか?」
心配そうに尋ねる先輩に対して頷くと、先輩は俺を自身の胸の中に抱き寄せてきた。
「!!、  け···さん?!」
(なんで·····何で寒いって頷いただけで、、俺は先輩の腕の中にいるんだ?!)
「この方が暖かいだろ」と、驚く俺に先輩は普通に話してくるが、こっちはかなり心臓に悪すぎる。

でも、先輩の身体にくっ付いてるおかげで、先輩の心臓の音が聴こえて··········それが何か心地よくて、、暖かくて···どんどん眠気が襲ってくる。


「おやすみ、怜」
俺を抱いたまま先輩は言い、俺は先輩の胸にしがみついて「はぃ·····」と言ったが、声が出なくて口パク状態になり、そのまま深い眠りに落ちていく。


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