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佐々木さんと工藤くんの予定調和
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しおりを挟むとは言っても工藤はそれほど深刻には考えていなかった。
今は確かに佐々木さんを意識している。
特別興味もなかった仕事仲間への関心が一気に飛躍したが、もうそれ以上高くならないはずだ。
これはあくまで一時的な気の迷い、アクシデントでしかない。
佐々木さんは一晩で工藤の関心ランキング上位に昇りつめたが、それでも一番になることはなかった。
工藤と佐々木さんと、そして水野さん。
狭い空間に三人で並んだとき、工藤の視線も意識も自然と佐々木さんを飛び越えて水野さんに向かった。
工藤が密かに想いを寄せる彼女へ。
そのことに工藤は一人ほっとした。
良かった。
自分もいつも通りだと。
ちゃんと正常だと、安心したのだ。
*
空になったお惣菜のパックとビール缶を分別して、そこそこ満たされたゴミ袋を縛り、いつものように玄関脇に置いておく。
これで忘れずにゴミ出しできるはずだ。
さぁ、もう寝よとベッドに寝っ転がる。
不意に足に脱ぎ散らかしたまま放置された服が引っかかった。
(そろそろ洗濯しないと)
籠に入れてから寝るかと服を集め、いつの間にかベッドの下に潜り込んだストッキングを引っ張り出す。
(……ん?)
引っ張り出したストッキングに何かが引っかかっていた。
(……鍵?)
それはまったく見覚えのない物だった。
佐々木の目の前で揺れる銀色。
ピンクのお守りがついた鍵だ。
(……自転車?)
ウェーブのような溝が彫り込まれたその鍵は以前持っていた自転車の鍵によく似ていた。
しかし、控えめに小さく鳴る鈴がついたお守りにはまったくちっとも心当たりがない。
(……誰の?)
いや、嘘だ。
心当たりはあった。
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