Shame,on me

埴輪

文字の大きさ
14 / 32
佐々木さんと工藤くんの予定調和

2

しおりを挟む

 とは言っても工藤はそれほど深刻には考えていなかった。

 今は確かに佐々木さんを意識している。
 特別興味もなかった仕事仲間への関心が一気に飛躍したが、もうそれ以上高くならないはずだ。
 これはあくまで一時的な気の迷い、アクシデントでしかない。

 佐々木さんは一晩で工藤の関心ランキング上位に昇りつめたが、それでも一番になることはなかった。 

 工藤と佐々木さんと、そして水野さん。

 狭い空間に三人で並んだとき、工藤の視線も意識も自然と佐々木さんを飛び越えて水野さんに向かった。

 工藤が密かに想いを寄せる彼女へ。

 そのことに工藤は一人ほっとした。
 良かった。
 自分もいつも通りだと。
 ちゃんとだと、安心したのだ。






 空になったお惣菜のパックとビール缶を分別して、そこそこ満たされたゴミ袋を縛り、いつものように玄関脇に置いておく。
 これで忘れずにゴミ出しできるはずだ。

 さぁ、もう寝よとベッドに寝っ転がる。
 不意に足に脱ぎ散らかしたまま放置された服が引っかかった。

(そろそろ洗濯しないと)

 籠に入れてから寝るかと服を集め、いつの間にかベッドの下に潜り込んだストッキングを引っ張り出す。

(……ん?)

 引っ張り出したストッキングに何かが引っかかっていた。

(……鍵?)

 それはまったく見覚えのない物だった。
 佐々木の目の前で揺れる銀色。
 ピンクのお守りがついた鍵だ。

(……自転車?)

 ウェーブのような溝が彫り込まれたその鍵は以前持っていた自転車の鍵によく似ていた。
 しかし、控えめに小さく鳴る鈴がついたお守りにはまったくちっとも心当たりがない。

(……誰の?)

 いや、嘘だ。
 心当たりはあった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...