ごめん、もう食べちゃった

埴輪

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なな

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 苑子には似つかわしくない、優しい笑み。
 涙と興奮で情けなくも秋の視界はぶれていたが、それでも苑子の浮かべる聖女のような微笑みに魅せられた。
 だが、浮かべた笑みに相反するように、苑子の白い手は淫らに動き、秋の盛り上がった股間部分を悪戯に弄る。

 そのギャップに、秋は首を仰け反ってせり上がって来る快感に耐えた。
 濡れて、蒸れたパンツの中が気持ち悪く、苦しく、そして気持ちいい。

「くっ……ッ」

 このままイってしまいたいという強い欲望に秋は健気にも耐えようとしていた。
 そんな秋を苑子は容赦なく攻めていく。 
 天使のように可憐で、聖母のように慈愛に溢れた笑みを浮かべながら、苑子の手は秋の下半身を甚振ることをやめない。
 布越しにでも分かる硬さと質量、熱量に苑子は微笑む。

「わっ、すごく大きくなってる」

 触っただけで破裂しそうだねと、わざとらしく嘆息すると秋の太ももが痙攣するのが分かった。
 そっと顔を近づけるとぴくぴくと震えるのが可笑しくて、可哀相で、苑子は早くそれを解放してやりたいと思った。
 ベルトに手をかけ、ガチャガチャと金属音を慣らしながら外してやる。
 部屋には押し殺したような二人の息遣いと金属が擦れる音しかしない。
 秋は息を殺すようにして自分のそれに苑子の吐息がかかるのを見ている。
 焦りと期待でぎらつく秋の視線を苑子は無視した。
 今更止めてと言われても止めるつもりはない。
 秋自身が早く早くとせがんでいるのだ。
 態度や表情、目の色よりも、男の性器はずっと素直で分かりやすい。






 チャックに引っかかりそうになりながら、なんとか秋のそれは窮屈な布から解放された。
 ボクサーパンツを下してやれば、ぷるんっと音がしそうな勢いで男性器が飛び出て来た。
 苑子の目の前でだらだらと我慢汁を垂れ流しにしている。

「へぇー……すごい」

 思わず苑子は素で感嘆の声を上げた。
 秋のそれはお世辞でもなく、立派なものだった。

 それを見て、今更ながらの疑問が口から飛び出た。

「秋くんって、どーていなの?」

 童貞臭さが滲み出ているが、それでも人並み以上に見目が良く、目立つ男だ。
 もしかしたら過去にどこかで襲われているのかもしれない。
 苑子のような女とかに。
 他の男であれば新品か中古かなど気にはしないが、秋くんは別だ。
 唯一の初めては自分であればいいと苑子は思っている。

「う、あっ、そ、の…… 苑子、せんぱいが…… 初めて、です……」

 秋の性器は血管が浮き出ており、実に健康的で逞しそうだった。
 予想通りまだ一度もまともに使っていないらしく、随分と綺麗な色をしている。
 肌色に近く、それほど黒ずんでもいない。

「……そう、それは良かった」

 だが、いくら色艶がまあまあ綺麗でも、まったく処理などしていない濃い陰毛や恥垢の匂いはどうしても鼻につく。
 爽やかな顔立ちとは違い、どうも下半身の処理は年相応に御座なりで大雑把らしい。
 もしも秋が今日のこの事態を想定していればそれこそ赤く腫れるまで性器を洗っただろう。
 尿と溜まった垢や精液が混ざって発酵したよう嫌な匂いが鼻につき、思わず顔を顰める苑子に秋は途方もなく興奮していたが、それと同時にひどく傷ついた。
 秋の心は思春期の男子そのものであり、今はとても傷つきやすく繊細な年頃なのだ。
 状況が状況なため、年相応の男のプライドもあり、その胸の内は複雑といえる。

「す、すいません……っ あの、おれ、ちゃんと、洗ってなくってぇ……」

 秋の語尾がどんどん弱くなる。
 今更ながら、なんて間抜けで恥ずかしい告白をしているんだと、羞恥で死にそうになった。
 だが言葉の弱弱しさに反してその性器は今だ元気良くそそり立っている。
 苑子は秋の絶望に染まる泣き顔とは裏腹に元気すぎる主張をし続けている下半身とのギャップに吹き出しそうになったが、今この場面で嗤えばさすがの秋も萎えるだろうと思い、耐えた。
 代わりに慰めるように優しくその健気な亀頭を撫でてやる。

「っん……!?」

 苑子の指の指紋の細部まで分かるほど、秋のそこは敏感になっており、撫でられただけで腰が震えるほど昂っていた。
 あと少しの刺激でもう耐えられなくなるだろうと秋は思ったが、残酷にも苑子はあっさりと手を放してしまう。

(べとべと)

 指についた我慢汁を擦り合わせ、苑子は口角を歪ませてそのままベッドから降りた。

「え……」

 苑子の突然の行動に不安感が芽生えた秋は途方に暮れたような顔で苑子が机の引き出しを漁り出すのを見つめる。
 一方は下半身を露出したままで、もう一方は上半身が裸のままという、なかなかに間抜けな光景に苑子は静かに笑った。
 記憶の通りに引き出しを漁りながら、苑子はちらっと部屋の扉を見つめる。

「……」

 当然のように扉は無反応であり、静かなものだ。
 秋に背中を向けたまま、苑子はいやらしい笑みを浮かべた。
 先ほどの慈悲深い笑みとは相反するような、そんな笑みだ。

「あ」

 あった、と今度は珍しくも邪気のない笑みを苑子は浮かべた。
 それと同時に扉に向けていた意識を戻す。
 漸くお目当てのものが箱に入ったままの状態で引き出しの奥から見つかったのだ。
 自分でも杜撰な管理だと分かっているが、そもそも苑子は基本だらしがないのだから仕方がない。



* * 


 お目当てのものが見つかって良かったと、苑子は満足気に微笑む。
 そして下半身を露出したまま自分を待っていた秋の姿を見て更に満たされた気がした。
 恥ずかしそうに股間を手で隠し、膝立ちの状態で秋は大人しく苑子を待っていたのだ。
 さすがにずっと寝そべっている根性はないらしい。

「んー…… ちょっと、待っててね」

 射精寸前で律儀にこくこくと苑子の言葉に頷く秋の視線は苑子の胸とその手に持っているものを忙しなく移動している。

「そのまま、そう、膝を立てて…… もっと、こっちに来て」

 おずおずと苑子の指示通りにベッドの端まで秋は移動した。
 秋を膝立ちにさせたまま、苑子はカーペットが敷かれた床にぺたっと座る。
 必然的に秋は苑子を見下す形となり、その谷間にどぎまぎすることとなった。
 そして自分のいきり立った性器が苑子のちょうど顔の前にある。
 その事実にどうしようもなく興奮していた。

「そう…… そのままじっとして」

 苑子が秋を上目遣いで見ながら口にビニールの包装を銜える。
 縁を歯で噛み、どこか傲慢な笑みを浮かべながら苑子はそれを歯で千切った。
 血走った目でこちらを凝視する秋に、三日月にした目を向ける。

 悪戯っぽく微笑みながら苑子は中身を取り出した。

「サイズ、足りるかな?」



* * *


 前に付き合っていた彼氏のアレが立派で良かったと苑子は思った。
 もちろん、それを口に出さない程度のデリカシーはある。
 ついこの間まで中学生だったというのが信じられない程度に秋の逸物は立派で、ごく普通に一般的に売られているアレのサイズでは入りきらないと思ったのだ。
 どうやらその予測は当たりのようで、しつこく付きまとっていた元カレに今ほど感謝したことはないと苑子はしみじみと思ったほどだ。

 舌全体を使って、コンドームに包まれた秋のそれを根元から舐めてやる。
 ゴムを被せた秋のそれは舐めると避妊具独特の味がした。
 つうっと舌先で筋を辿ってやったり、根本を手で上下に扱いたりすればどくどくとまるで一本の太い血脈のように秋の性器は脈打つ。
 まるで別の意識を持った生き物のようだ。

「んっ…… あむっ」

 とても生命力に満ちた、雄々しい生き物。
 本体である秋よりもずっと素直で、生々しい。

「ん、ふぅ…… んっ」

 ちゅっ、ちゅ、れろ、ぢゅるっ

「ぅぁっ、ぁっ、ん……ッ」

 もう、我慢の限界は超えているのに、秋は随分と我慢強いらしい。
 何に耐えているのか知らないが、どうせくだらない見栄か何かのためだろう。

(ああ…… かわいそうなおちんち)

 今にも破裂しそうなのに、まだ射精を許してもらえないなんて。
 人の部屋のシーツをそんなに握りしめてまで我慢する必要が一体どこにあるのか。
 苑子にはまったく持って理解できない。

「きもちいー?」

 舌を添わせながら上目遣いに問えば、秋は唇を噛みしめたまま射殺しそうな目でただ苑子を見下していた。
 応える余裕もないらしい。
 歯ぎしりしながら、苦悶に耐える秋の表情は苑子好みだった。
 ちょっと、どころではなくぞくぞくする。

「……ねえ、もうイっていいよ?」

 我慢の限界だと全身が訴えているのだ。
 そろそろ本当に秋のちんこが破裂しそうだ。

「ほら、こんなにパンパンになってる」
「んぐぅ……ッ」

 頬で擦ると秋はいやいやするように首を振る。

 本当は秋だってもう射精してしまいたいのだ。
 ただ、苑子ばかりにリードされて、このままではあまりにもかっこ悪いと思春期特有の青臭いプライドが妙な状況で露になり、意地を張ったためにすっかりそのタイミングを逃してしまった。
 それと、秋は少し怖かった。
 自慰しかしたことがない秋は人前で勃起したことも射精したこともない。
 苑子の前で、しかもその顔付近で、フェラされて射精するなんて。
 それはなんてひどい冒涜なのだと、恐れおののく気持ちと、一度でも出したらもう後は完全に抑制が無くなり苑子を力任せに色々としてしまうかもしれないという恐怖。
 好きな人の前で射精して、もしもそれが苑子の目に無様に映ったらという不安。

 そもそも無様どころか情けなくも泣き顔を見られているのに、秋は妙に頑固だった。
 それも全て、苑子のせいだ。
 普段の秋はもっと余裕があって、初体験がこんな風になるなんて思いもしていなかったのだから。

 もしも未来を知っていたら、もっとちゃんとした準備をしていたはずだ。
 事前に歯磨きして、ガムを噛んで、制汗スプレーとか使って、パンツも新品にして。
 一晩中かけて身体を洗っていたし、普段は面倒臭がる性器の皮を剥いで皺の一つ一つ、陰毛の一本一本を綺麗に泡で洗うはずだ。

 なのに、

「このままじゃ、おちんち壊れちゃうよ?」

 悪戯っぽく首を傾げて揶揄って来る苑子に秋の心がぐらつく。

 嫌なわけではない。
 むしろ嬉しい。

 でも、もっとカッコよく、余裕ぶって苑子とそういうことを秋はしたかった。
 苑子にカッコ悪いところなんて見せたくなかったのに。

(……また泣いてる)

 そんな秋の葛藤など知らず、苑子は何故か鼻を啜り出した童貞彼氏を内心で小馬鹿にしつつも今度はぱくっと亀頭を銜えて飴のように舌で転がした。



* * * *


 なんだかんだ秋は頑張ったのだろう。


「んんー……」

 じゅぅぅぅぅっ

「ッ…… あ、はぁ……! っ……!?」

 頑張ったが、苑子がちょっとフェラを頑張っただけで最後は結局呆気なく射精した。
 ものの数分もしない内に勢いよく精子を吐き出したのだ。
 少し竿を舐めて扱き、止めに亀頭を銜えて吸っただけだ。
 それだけで秋の睾丸が収縮し、漸く頑張って耐えていた精液が飛び出た。

「おー……」

 すごい、いっぱい出てる。

 という苑子の呟きに、秋は先ほどまで懸命に耐えていた欲望があっさりと吐き出された事実に呆然とした。
 秋が射精した後も、苑子は性器の根元を掴んでいた。
 そして秋のそれが完全に萎む前にゴムを抜いてやる。
 賢者タイムに移行したらしい秋は何も言えず、息を整えるのに必死だ。
 その間に苑子は靴紐を結ぶような気楽さで精液が吐き出されたゴムを縛ってやる。
 使用済みのたぷたぷしたそれをティッシュに丸めてゴミ箱に捨てる苑子の一連の流れを見ながら徐々に秋は現実を理解し、そして強い羞恥を抱いた。
 全てを苑子に任せている現状に嫌悪感すら抱いた。

「すいません……」

 ぐすんっと鼻を啜りながら落ち込む秋に構わず、苑子は既に真新しい包装を一個開けていた。

「ねぇ」

 射精直後ということで大人しくなった秋のそれを生で掴む。
 息を吹きかければまた元気になるのが分かった。

「もう一回、勃たせてよ」

 苑子のその言葉に秋は素直に従った。



* * * *


「んっ…… そんなに見ないで」

 咎めるというには随分と甘く、苑子は囁いた。

 若いからか、秋の性器は一度射精したというのに苑子の言葉通りにすぐに元の状態に戻った。
 むしろ一度出したせいで箍が外れたのか、心なしかさっきよりも質量がある気がする。
 もしくは、眼前に曝された苑子の濡れたショーツの中身に反応したからかもしれない。

「んっ、秋くんのせいで…… こんなになっちゃったぁ」

 語尾にハートがつきそうなぐらいに甘い口調。

(……痛い)

 苑子自身少しぶりっ子すぎたかもと後悔したが、秋にはどうやら効果抜群らしい。
 顔を見ずに、苑子は秋の勃起具合を見てそう判断した。

(うわ、勃ったよ)

 よくこんな寒い台詞に萎えなかったなと感心する。
 今時のAVでもこんな台詞は出ないだろうに。

 ひたすら秋の元気すぎる性器に視線を向けていた苑子は秋自身が熱心に苑子の陰部を見つめていることに無関心だった。
 異様に早い秋の呼吸音も、興奮しているからだろうと大して気にしていなかった。

 だが、勃起してくれるのなら何でもいい。
 既に苑子のそこは秋のことを揶揄えない程度には濡れていたし、疼いていた。

 正直、本気で秋のちんこが欲しい。
 早く突っ込んで、揺さぶられたいと思っていた。

「そのこせんぱい」

 お願い!
 もう中にちょーだいっと最高にぶりぶりに言ってやろうと思っていた矢先だった。

 秋がやけに低い声で苑子の名を呼んだのは。

「……おれ、もうがまんできない」

 秋の腹の上を跨ぐ体勢だった苑子はいつの間にか上体を起こした秋に両腕を掴まれていた。
 見事な腹筋を見せつけ、秋は苑子の両手首を軽々と片手で拘束する。
 苑子の手首は細く、筋肉質な秋がちょっと力を加えたら簡単にぼきっと折れそうだ。
 きょとんっと首を傾げる苑子に、秋は涙で潤み、充血した目で見つめる。
 インフルエンザにでもかかったのかと思うほど、その目は熱っぽく、惚けていた。

「……そのこせんぱいが欲しい」

 ぎゅっと、初めて秋の方から抱きしめられた苑子は剥き出しの下半身に擦りつけられる熱い塊にきゅんっとした。
 耳元で煩くはぁはぁ言っている秋の余裕のなさにぞくぞくする。
 めちゃめちゃにされたいと、苑子のあそこがじゅわっと濡れるのが分かった。

「い、いれて…… いいです、か……?」

 こんなときまでお伺いをたてるとは、見上げた根性だと苑子は満足気に微笑んだ。
 返事の代わりに間近にあった頬っぺたにキスしてやる。

 そうして。

 気づいたら、下から思い切り突き上げられていた。



* * * * *


 挿入されたと頭が認識した直後、苑子は思った。

 童貞のくせによく一発で挿れられたな、と。

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