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ろく
しおりを挟むちゅ、ちゅっ
興奮と焦燥が煮詰まったような湿った呼吸音に反して苑子と秋のキスはどこか幼稚で可愛らしい。
専ら積極的に攻めているのは苑子の方だ。
秋は口を真一文字に結び、ただ苑子からの唇を甘受している。
その目は潤み、肌は火照り汗が滴り落ちていた。
まだキスをしただけなのに、随分と気が早いと思いながらも決して苑子を無理矢理暴こうとしないその順従さには好感が持てた。
鼻息荒い後輩もとい恋人を滑稽だと思いながら、徐々に苑子の行為は大胆になっていく。
満足行くまで潤した秋の唇。
舌でその隙間を突けば、秋は躊躇いながらも素直に口を開けた。
太い血管が浮き出る秋の首を引き寄せ、苑子は圧しかかってくる重さと硬さ、熱にほくそ笑んだ。
何よりも分かりやすい秋の下半身の盛り上がり具合にぞくぞくするような快感が背中を走る。
途方もない優越感は苑子の官能を引き出し、スカートの奥にあるショーツがじんわりと濡れた。
ちゅ、ちゅるちゅる…… ぴちゃ
秋の唇の隙間に舌を入れる。
怯えながらも期待しているその舌に舌を絡ませ、上顎をじっとりと舐めてやる。
犬のような息遣いで、必死に息を整えようとしている秋は鼻で上手く呼吸ができないらしい。
熱すぎる身体と苑子の顔の両脇に置かれた秋の拳が強く握りしめられているのが分かった。
一体何に耐える必要があるのか。
さっさとがっついてしまえばいいのにと苑子は思った。
「んっ…… 秋くん、キス、好きなの?」
「……は、い。先輩の、唇とか舌が…… すっげー、きもち、いい……」
荒々しい息遣いのまましみじみと言われるとさすがの苑子も少し引く。
ぴちゃっと音を立てて一度口を放せば、もっとと言わんばかりに追いかけて来る。
それなのに寸前のところで苑子の意思を尊重するように未練がましくも身を引く秋は苑子からすればとても可笑しな男だった。
がっつかれればそれはそれで鬱陶しいが、ふんふんと人の首筋の匂いを嗅いだりするくせに、必死に「待て」をする様は涎を垂らしながらも尻尾を振る大型犬そのものだ。
「そっか」
苑子が耳元で煩く息を吐き出す秋の髪を撫でる。
短い髪は柔らかく湿っていた。
「……今度は、もっとエッチなことしようか」
苑子の言葉に秋の息が一瞬止まる。
ぴくっと痙攣するその手を掴み、ちゅっと指先にキスをした。
人差し指を舐めれば、食いつくように見て来る秋の視線を強く感じた。
「ん…… 秋くん」
顔にかかる息を感じながら、苑子はそっと腕を秋の首に回し、ごろんっとその身体を巻き込んで横になる。
軋むスプリングにシーツが擦れる音。
二人だと狭いベッドの上でぎゅうぎゅうになりながら、今度は苑子が秋を押し倒す形となる。
「よいしょっと」
ずるずると熱くて立派な身体の上を移動し、苑子の柔らかな尻が辿り着いたのは秋の硬い性器の上だ。
「そのこせんぱい」
今にも爆発しそうな男の性器はチャックとベルトのせいか酷く窮屈そうである。
臀部に感じる硬い物体に苑子はにんまりとする。
(穴空きそう)
秋の視線の熱っぽさはまるでレーザーのようだ。
見られたところから熱が集まり、本当に穴が空いてしまいそうになる。
もちろん、そんなのはただの妄想でしかない。
はぁ、はぁっはっ
今にも唸り出しそうな、苦し気な秋の呼吸音に苑子の胸の奥が切なく締め付けられる。
このきゅんっとする感じは一体何だろう。
秋だけではない。
過去の男達の苦しむ顔はいつだって苑子の官能を、まだ未成熟な性器の奥を刺激するのだ。
「……かーわいー、秋くん」
泣き出しそうな顔で自身の下半身と、その上に乗っかる苑子の下半身を、剥き出しの太ももや膝を凝視する秋は本当に可愛い。
年下なんて対象外だと思っていた。
それに、秋はたぶん、童貞だ。
(可愛くて、すごく可哀相)
たが、こんな顔が見れるのならそれも悪くない。
わざとらしくテントを張った秋の性器を擦れば、びくびくと面白いぐらいに全身が痙攣する。
それでもぐっと耐えようとする仕草が健気で胸がきゅんっとなる。
「ね、秋くん」
強く握りしめすぎて腕に血管が浮き出た秋の手を苑子は導くように手に取った。
日に焼けて、汗ばんだ男らしい手は苑子を拒絶せず、どこまでも無抵抗だ。
燃えるほど熱い秋の掌はとても大きい。
「おっぱいは、好き?」
大きなその掌に苑子は自身の胸を押し付けた。
*
「せ、せっんぱ、い……ッ!?」
あわあわと赤い顔を更に赤くさせて、または青くさせてと忙しい秋の様子に苑子は笑う。
意地悪なその笑みに、青くなった秋の顔はまた赤くなった。
「キスよりも、もっとエッチなことしようよ」
そんな秋に構わず、苑子はもう片方の手も引いて同じ様に胸に押し付けた。
初めて女の胸を触った秋は布越しに伝わるブラジャーの未知の感触や、その独特の硬い生地の上からでも分かる柔らかくて張りのある弾力に眩暈がしそうなほど、鼻血が出そうなほど興奮した。
苑子の胸はぱっと見ると少し控えめだが、実際に触ると服越しでも分かるほど揉み心地がよく、生のそれはきっと秋の掌にすっぽりと収まり、さぞ触り心地が良いだろうと思わせる一品だ。
「ぁ、んっ」
気づけば、秋の手は勝手に動き、苑子の手が離れた後もその胸を触っていた。
「んっ、んんっ……」
触るというよりも、それは完全に揉んでいるといえた。
苑子の唇から漏れる、今だかつてない色気が含まれた喘ぎに、秋の胸も下半身も破裂がしそうなほど痛くなる。
(かわいいかわいいかわいいっそのこせんぱい、かわいいっ、めっちゃくちゃっ、えろい)
秋の手で形を変えていく苑子の胸。
そして、悩まし気に眉を顰めて、目を潤ませて頬を染める苑子の顔がとてつもなくエロかった。
「っあ、ぁ…… あ、きくん」
縋る様に秋の手首に手を添えて、苑子は目を細めて囁く。
鮮やかにアーチを形作る唇の健康的な色に秋の目は釘付けだ。
「もっと、直接、触って」
甘く、擦れた声で、苑子が秋を誘惑する。
言葉の合間に乱れたブレザーを秋の上に馬乗りになったまま脱いでいく。
息を呑む秋の前で、苑子はリボンを外す。
その拍子に涼やかに顎の辺りで切り揃えられた苑子の黒髪が扇情的に揺れた。
校則違反である目に鮮やかな赤いリボンは苑子によく似合っていた。
それが外され、次にシャツのボタンに手をかける。
ぷち、ぷちっと秋の目の前で苑子のシャツのボタンが外され、身の置き場が無くなった両手を彷徨わせながらも秋は苑子の手の動きを凝視した。
白い指先が焦らすようにゆっくりとシャツのボタンを全部外す。
留めるものがなくなり、ゆるく開かれたシャツの前。
そこから見える、華やかなレースの影や白い腹に綺麗な窪み。
もっと、その奥を見たいと秋は思った。
もしくは、その身に纏うシャツを早く脱ぎ捨てて欲しいと思った。
許されるのなら、秋自らの手で脱がしてやりたい。
そんな願望のまま、秋の手が誘われるように無意識に苑子のシャツの前を掴む。
今までで一番積極的ともいえる秋の行動に、苑子はどんどん本性を露にしていく。
にんまりと底意地が悪く、そして妙に惹きつけられる笑みを浮かべながら、苑子は秋を見下す。
「脱がしてよ。秋くん。全部」
その許しを合図に、秋の手が性急に動き出す。
シャツを剥ぎ取り、露になった華奢な肩や鎖骨、そして総レースの豪奢なブラジャーを鑑賞する余裕もなく下から突っ込むように手を差し入れる。
温かい掌が直接肌に触れて来る感触に苑子はうっとりした。
「もうっ、脱がしてって…… っぁ、いった、のに……」
「ごっ、ご、めんなさいっ」
わざとらしくくすくすと揶揄う苑子に、生のおっぱいの感触に感動し夢中になっている秋はどこか上の空だ。
反射的に謝りながら、煮えたぎった頭でひたすら目の前にある苑子の胸に夢中なのだ。
生の苑子のおっぱいはとにかく張りがあって、お餅のようだと秋は思った。
冷たい皮膚が秋の手の熱でどんどん熱くなり、特に左胸から伝わる鼓動が愛しくて堪らない。
とくとく、流れる脈の速さに苑子もまた秋と同じように興奮しているのだと分かり、泣きそうになるほど嬉しかった。
「苑子、せんぱい…… すごい、心臓が、どくどくって……!」
「うん、秋くんが…… あんっ いっぱい、さわるからっ」
荒々しい手の動きに合わさって苑子の胸が揉まれ、指の股に挟まれた乳首がどんどん硬くなっていく。
それはもちろん秋が一番よく分かっている。
「乳首、すげぇっ…… 硬くなってる……」
「あぁっ……!」
硬く尖ったその突起を抓ると苑子の腰が揺れ、今までで一番大きな声がその湿った唇から漏れた。
「ん、秋くんの…… ここだって、硬いよ」
ぐりぐりと秋の性器を布越しに尻で刺激する苑子。
それに、秋は歯を噛み締めて耐える。
「……気持ちいい?」
ぴたっと動きを止め、焦らすように秋を見下す。
汗でびっしょりと顔を濡らしながら、秋はふうふうと荒い息を吐き出す。
顔を近づけて秋の余裕のない表情を確認しようとする苑子からはその淫らな姿とは裏腹の清潔なせっけんの香りがする。
苑子が屈んで近づく。
秋の顔の前に、苑子の剥き出しのおっぱいが迫る。
捲り上げられたブラジャーの下から見える白い乳房。
その上にちょこんっと立っている突起は淡く色づき、ぷっくりと腫れている。
秋が散々執拗に弄ったせいだろうか。
ぷるんっと苑子の動きで揺れる果実はまるで齧ってくれと言わんばかりに秋の鼻先にある。
せっけんの匂いに混じって、甘酸っぱいような匂いが秋の鼻腔を刺激し、劇薬のように脳を破壊しようとする。
「お願い、秋くん」
苑子の声が耳に入ると、脳は更に痺れたように震え出す。
今苑子がどんな顔をしているのか秋には分からない。
ただ、きっとあのときのようにどこまでも魅力的で、意地悪な顔をしているのだ。
そう、秋は確信している。
「いっぱい、舐めて」
苑子の言葉を理解するよりも前に、秋はしゃぶりつくようにして目の前の白い果実に齧り付いた。
* *
ちゅるぢゅる……
「あっ、んあ、ひぁっ……ッ」
秋の顔に胸を押しつけるような形で苑子は喘いでいた。
「あ、あきくんっ ね、おいしぃ……?」
じゅるじゅるっっ
返事の代わりに、一際強く秋は苑子の乳首を吸った。
「あんっ……!」
愛撫なんて今までしたこともない秋は本能のままに苑子の言葉通りにその慎ましい大きさの胸を舐めてしゃぶっている。
苑子がもっと強くと言えばその通りにし、噛んで欲しいと言えば躊躇いながらも甘噛みをする。
だが興奮のあまり歯形がつくぐらい苑子の胸を噛んだとき、指で強く乳首を抓ったり、引っ掻いたりするとき、びくびくと面白いぐらいに苑子の身体が震え、その嬌声が一際大きく甘くなることに秋は気づいた。
初めは不意に与えられた痛みに驚いているのかと思ったが、秋はその内気づいてしまったのだ。
苑子は痛くされるとより感じてしまうということを。
(苑子、せんぱい……っ すごっ やらしいッ)
勝気で傲慢で、どこまでも尊大で。
棘を持つ大輪の華のような苑子が、秋の乱暴な手によって頬を染めて喘ぎ、堪らなく厭らしい表情を浮かべるのだ。
ぞわぞわと背中を駆け登る寒気に似た興奮と劣情に秋は舌なめずりした。
秋の手が、苑子の胸を痕がつくまで強く掴めば、苑子は眉を寄せながらも甲高い嬌声を上げる。
乳首を人差し指と親指で摘まみ、更に甘噛みすれば、子犬のような鳴き声を上げる。
その語尾は甘く、吐息がどんどん熱くなり、苑子の白い肌は秋の眼前で桃色に染まっていく。
乳首に爪を立て、赤く腫れるまで吸い付けば、苑子は腰を揺らしてもじもじと脚を摺り寄せる。
(そのこ、せんぱいは、痛いのがす、き、なんだぁ……)
その事実に奇妙な感情が湧く。
それは秋の下半身に直結し、可笑しくなりそうなぐらいに秋を興奮させた。
苑子に被虐趣味があるのか分からないが、秋が痛くしたり乱暴にしたりするととても嬉しそうに甘えて来る。
それさえ分かれば十分だ。
苑子の望むままに、秋は激しく乱暴にその胸を蹂躙し、自分の欲望のままに味わった。
部屋に二人の生々しい息遣いと、スプリングが軋む音、そしてねちゃねちゃとした粘液の音が充満する。
カーテンの隙間から差し込む夕暮れの灯りが二人の重なった身体を照らし、陰影を形作った。
「っぁ、きもち、いい…… もっと、しゃぶってぇ……」
乳首から伝わるぞくぞくするような刺激に苑子は声を抑えることもなく、嬌声を上げる。
その声がまた更に秋を刺激し、興奮させることを苑子は知っていた。
「っぁ、せ、せんぱ、い…… かわいいっ、かわいくて、エロくて……!」
「あっ、あんっ…… はぁん…… んっ」
「せんぱいっ、すき、すごく、すき、です……!」
「んっ! はぁ、ん…… あぁっ んっ!」
秋の唾液でべとべとになった苑子の胸。
てらてらと光り、蜂蜜を塗りたくられたような厭らしさを醸し出している。
何よりも苑子の色っぽい表情は危険だ。
目に直接流し込まれた毒のようなそれに、秋はもう本当に我慢ができなくなりそうだと思った。
ふうふうっと押し付けられた柔らかな感触と匂いを堪能する秋に苑子もまた興奮していたのだから。
* * *
「っあ……」
名残惜し気な声が自然と秋の口から洩れる。
苑子が上体を起こしたせいだ。
離れていくおっぱいに、秋は無意識に舌を伸ばしていた。
餌を強張る犬のような表情と行動に、苑子はくすくすと笑う。
「赤ちゃんみたい…… 秋くん、かわいい」
その言葉に羞恥心が湧くが、それ以上に秋は苑子が欲しかった。
「んっ…… ここ、苦しいの?」
「っ…… は、い」
若いなと大して年も違わないくせに苑子はそんなことを考えながら、秋の下半身を悪戯に撫でる。
羽がズボンの上を滑ったような擽ったい感触に秋は身もだえした。
「すごい…… ズボンの上からでも熱いって分かる」
「っあ、せ、ん、ぱいっ」
ちょんちょんっと今度は指で突かれた秋はついに我慢していた涙が零れてしまった。
あまりにも今までの刺激が強すぎたのだ。
一度零れると、次から次へと涙が溢れて来る。
泣くところを好きな彼女に見られるなど、おまけにこんな状況で、とショックと焦りで止まらない涙に秋は目の前が真っ暗になったような気がした。
天国から地獄へ一気に突き落とされたような冷や汗が出る。
「ごめんね。もういじめないから」
苑子の言葉がまるっきり幼稚園児を慰めるようなそれに変わり、秋は屈辱と羞恥で死にそうだった。
それがとても嬉しいと、更にあそこが元気になるという事実により死にたくなった。
「ここも、気持ちよくなろうね」
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