君と地獄におちたい

埴輪

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そして、

6.貪欲

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 終わったとロゼは思った。

 ロゼの長く要領を得ない話の終わりと、エアハルトにもう見限られてしまうという二つの意味を込めて終わったとロゼは思った。
 上手く整理整頓できないまま、ロゼはそれでもどうにか震えて嗚咽を漏らしそうになる自身に耐えて心の内をエアハルトに打ち明けた。
 ロゼの話が終わった後からエアハルトは無言のままだ。
 それはほんの少しの間の沈黙だったが、ロゼには途方もなく長く感じられ、死刑執行を待つ罪人のような心地でいた。
 ロゼは途中から自分が何を言っているのかも分からないまま、ただただ自分がエアハルトの愛を恐怖し、いつか飽きられてしまう未来を想像して不安になり、そしてルナという存在に嫉妬し、エアハルトを殺して自分も死にたいという願望を抱いていることを支離滅裂ながら告げる。
 それは正しく懺悔であり、ロゼはこれからエアハルトに何を言われてもどんな仕打ちをされても受け入れるつもりだ。
 それでもまだ15歳というロゼの幼い心は悲鳴を上げている。
 涙が頬を伝い、どうにかそれを止めたいのに止めることができずに次々と流れていく。
 まるでエアハルトの同情をひこうとするような自身の涙が嫌で、ロゼは何度も目を擦った。
 なんとも子供っぽい仕草に、しばらく呆然と瞬きすら忘れていたエアハルトが気づき、慌てて手を伸ばす。

「……よせ。目が腫れてしまう」

 ごしごしと普段の完璧ともいえる淑女の優雅さの欠片もなく必死なロゼの様子に、エアハルトはその手首を掴んで止める。
 ロゼはエアハルトの予想外の接触にぎょっと目を見開いて、ずっと視線を向けないようにしていたその姿を反射的に見つめた。
 驚き、大きく目を見開くロゼの瞳からまた大粒の涙が零れる。
 宝石のようだとエアハルトは思った。
 涙で赤くなった目や頬に伝わる跡が痛々しい。
 それなのに、青白い頬と違い血のように赤くぽっくりした唇がひどくエアハルトの情欲をそそる。
 ロゼの、泣き顔はいつだってエアハルトを欲情させる。

「……お前は、ずっと俺がお前のことが好きだと、愛していたということに、気づいていたのか?」
「……は、い」

 カラカラに乾いた声を喉から絞り出す。
 これからエアハルトに何を言われるのか。
 何を言われても受け止めると言ったその言葉がもう揺らいでいることにロゼは更に自身に失望する。
 エアハルトの青い目がじっとロゼを見下ろす。
 目を合わせる勇気がなく、ロゼはすぐに目を逸らしてしまった。

「ふん…… 随分、自信があるのだな」

 低く、今まで聞いたことがない冷たくも妙に熱っぽい笑いがエアハルトの喉から漏れる。
 エアハルトが何を言いたいのか、まともに思考が纏まらないロゼには想像もつかない。

「……申しわけ、ございません」
「何を謝っているのだ。俺は、怒ってはいない。怒るとしたら…… 自分のあまりの間抜けさに、だ」

 当時、まだ12歳の少女に自身の無自覚の恋情を見透かされ、更にはそれに気づかないように振る舞われたと思うと情けなさが出る。
 こんなことを軍内部の者に知られれば笑われるよりも戦慄されるだろう。
 だが、ある意味ではロゼの判断は正しい。
 もしも婚約の間にエアハルトがロゼへの恋情を自覚すればどんな手を使ってもすぐさまに婚約関係を表明し、婚姻を待たずにその純潔を奪おうとしたであろう。
 まだ12、13歳頃のロゼもそれはそれは妖精のように愛らしかった。
 幼すぎるその頃からエアハルト自ら手ほどきして、未来の夫好みに仕込むことすらできただろう。
 エアハルトがロゼを壊さずに、理性と忍耐を駆使して上手く調教できたかといえば難しいが。
 少なくとも妄想することぐらいはできる。

 だが、今はそれを悔やむよりももっと大きな甘くて大層美味そうな獲物が目の前にいる。
 我慢などする必要のない、正真正銘エアハルトのロゼが。

「俺を、愛していたのか」

 声に出せば、あまりにも甘美な響きに背中が震える。
 閨のときにロゼを裸にするときのような期待感と飢えがエアハルトを襲う。
 そして、今までに味わったことのない激しい感情の放流をエアハルトはなんとか抑える。
 薄皮一枚でなんとかその衝動を隠しているエアハルトの前で、ロゼは自身がただの囚われの子羊とは知らず、憂いと絶望を込めた顔で頷いた。
 その悩まし気な表情の色っぽさはため息が出てしまうほど艶めかしい。

 もう、ロゼは死ぬほど消耗していた。
 今の彼女はエアハルトのどんな質問にも嘘偽りなく答えるだろう。
 エアハルトから視線を逸らしたままのロゼは気づかない。
 邪悪なまでの笑みを顔に浮かべて、恍惚とした熱い視線を向けるエアハルトの姿を。

「……ずっと、婚約していたときから、俺を愛していたのか?」
「……はい」
「……俺の告白を拒んだのは、俺が嫌いだからではないんだな?」
「嫌いなんて……」

 じりじりとエアハルトが近づいて来る。
 それと同時に手首を掴む握力がどんどん強くなり、ロゼはその痛みに顔を顰めると共に、エアハルトの発言を否定した。
 嫌うはずがない。
 嫌っていればこんなに不安になることもなかった。

「私は…… ずっと、旦那様のことを、愛しておりました…… 初めて異性にときめいたのも、初めて、愛されることを恐れたのも……」

 エアハルトに捕まれている手首にどんどん熱と痛みが集中する。
 涙を拭くことを咎められた手前、ロゼはただぽろぽろ零れる涙をそのままにすることしかできなかった。
 鼻を啜る音が子供っぽくて恥ずかしくて、今すぐに消えてしまえたらと思ってしまう。
 だが、ロゼに全て話すことをエアハルトが望むのであれば、ロゼは羞恥と自己嫌悪に耐えて話すしかない。
 ずっと秘めていた想いを曝け出すことに今更ながら顔が熱くなる。

「初めて…… 誰かに嫉妬したのも…… ただ旦那様をとられたくないという思いからでした…… 私は、旦那様に愛されて、いつか飽きられてしまうことを恐れているのに、旦那様と、ルナの関係に嫉妬しました…… 旦那様が、ルナを…… 抱いたことを想像するだけで、死にたくなるぐらい苦しい……っ!」

 ロゼが全てを言い切る前にエアハルトは彼女を腕の中に抱いた。
 きつく、ロゼが窒息してしまうぐらいの力強さと頬に押し当てられたエアハルトのシャツ一枚越しでも感じる体温の高さにロゼは訳も分からずされるがままだ。

 エアハルトは全身の血流が燃えるように熱くなるのを感じていた。
 ロゼの懺悔と称する告白はまさにエアハルトへの愛の告白だ。

「お前が…… そんなことを思っていたとは知らなかった」
「だっ、旦那様……?」

 エアハルトの吐息が首筋にかかる。
 背筋がぞっとするほど、熱く興奮した息遣いが耳元を擽る。
 ロゼにとっては思ってもみなかった展開だ。
 エアハルトと密着した身体は、彼の硬くなったそれを確かに感じていたから。
 部屋に濃密な空気が広がる。
 エアハルトがロゼに欲情しているのだ。

「ロゼ…… お前の言うことは、全てが毒だ。俺を殺す毒だ」
「……ッ」

 エアハルトの熱く、低い声が耳元で囁かれる。
 睦言のように囁かれた言葉に、ロゼはエアハルトがロゼの告白に怒りと軽蔑を抱いたからだと思った。
 もう一度不愉快にさせてしまったことを謝りたいと健気に身を捩るロゼをエアハルトは離さない。
 エアハルトは腕から出ようとするロゼを咎めるように彼女の首筋に噛みついた。

「んっ!?」

 噛みつき、少し血が出たそこを丹念に舌先で舐める。
 エアハルトはロゼの血ですら甘いと思った。

「ロゼ…… お前の全部が、俺を殺す毒だ…… 分かるか? 死ぬと分かりながらも食わずにはいられない…… 俺を殺す唯一の甘く、苦い毒だ」
「やっ……!? だ、旦那様?」

 ロゼの腰にエアハルトの腰が擦りつけられる。
 硬くなったエアハルトの陰部の存在を感じながら、エアハルトはロゼの寝間着の裾から彼女のショーツ越しにその尻の形を撫でて確かめた。
 今宵は休む前提で侍女達はロゼに下着をつけていた。
 コルセットやガーターベルトをつける必要がなく、ロゼは簡単に脱がせられる下着を着せられていたので、エアハルトは珍しいその絹の下着の手触りを堪能しながら彼女を焦らして弄っていく。
 ロゼからすればエアハルトの断罪を待ち、そしてすぐに出ていけと追い出されるものだと思っていた。
 エアハルトは命を狙われ慣れている。
 だからこそ余計彼は用心深く、ロゼの不謹慎な願望を知ればロゼを遠ざけ、隔離ぐらいするのではないかと覚悟していた。
 なのに、

「はぁ、ロゼ、ロゼっ」
「あぁっん…… やぁっ…… どうしてっ?」

 エアハルトはそのままロゼを押し倒し、彼女の寝間着を脱がせながら、ショーツの中に手を入れて薄い繁みに指を這わせる。
 そしてレースのブラジャーをつけたロゼを初めて見たエアハルトはその可憐な姿を惜しみながらフックを外していく。
 その間も指はまだ硬いままの蕾へと侵入し、彼女がもっとも感じる小さな突起を撫でる。
 びくびくっと反射的に腰が動いてしまい、ロゼは頬を真っ赤にして、エアハルトに今の状況を問いかける。
 エアハルトが望むのであれば、どんな羞恥も痛みもロゼは受け入れる気でいた。
 しかし、自分がエアハルトに今抱かれる理由が分からずずっと頭が混乱しているのだ。
 気のせいでなければ、いつもよりずっとエアハルトに余裕がなく、興奮し、夢中になっている気がする。
 ロゼのブラジャーを半ばまで脱がし、そのまだ成長途中の胸の突起を指で弄りながら、エアハルトは答えた。

「どうしてだと? そんなの当たり前だろ。お前を愛しているから、こうして欲情して、どろどろにお前を溶かして、お前の、熱い中に入りたい、と…… 今すぐ、お前をぐちゃぐちゃに犯したくて堪らなくなるんだ……」
「あっぁあっ……!」

 エアハルトはそう言うとロゼの秘部に入れた指を乱暴に動かす。
 まだ濡れていなそこは痛みが強く、ロゼは堪らず太ももを擦り合わせた。
 そうするとエアハルトの強靭な腕を挟むことになり、ロゼはよりエアハルトの存在を感じてしまう。
 エアハルトもこのままではロゼが痛いであろうことは分かっていた。
 それでもロゼの思いがけない告白は彼から理性と冷静さを奪い、早く爆発しそうな自身を埋めて、ロゼという存在を今この時完全に自分のものにしたいと思ったのだ。
 愛を自覚し、それを拒絶され、エアハルトは自身の恐ろしいまでの欲望を知った。
 だがその直後にロゼの悲痛な告白を聞いた彼は、もうその時点で人間としての常識的な箍を失っていたともいえる。
 今の彼はもう人の形をした野獣であり、ロゼという愛する妻を貪り自分無しでは生きていけぬほどぐちゃぐちゃに犯したくて堪らないのだ。
 ロゼに身にもって分からせてやりたい。
 エアハルトの愛欲の深さと、ロゼへの狂暴なまでの愛情を。

 エアハルトはロゼに乱暴な口づけをする。
 その口づけはロゼの口内全てを支配するものであり、今まで一番情熱的でしつこいものだった。

「んっ、うぅんんっ……あぁっんっ」
「ん…… はぁ……」

 ロゼに口づけしている間もエアハルトはロゼの中を指で抜き差しして、一番敏感な突起もくりくりと親指の腹で擦る。
 それに堪らないのはロゼだ。
 痛みと強烈な刺激に腰が無意識に逃げようとするのに、押し倒されままでは逃げ場はなく、そのままされるがままでいるしかない。
 悲鳴が上がりそうになるも、エアハルトに全て呑み込まれてしまい、息をすることすらできない。
 それなのにエアハルトは更に片手でロゼの胸をねちっこく愛撫する始末。
 息が満足に出来ない上、エアハルトの荒々しい息遣いとお互いの唾液が溢れる音がロゼの耳を犯す。
 ずっと、結婚してからロゼは絶え間なくエアハルトに抱かれて来た。
 エアハルトは初日の激しすぎた行為を反省し、彼なりに回数を制限したり、ロゼが少しでも慣れるようにと時間をかけて抱くように気を使ってくれた。
 それでも途中から理性が無くなり、結局ロゼは痛みを覚えながらもエアハルトを受け入れる羽目になっていたが。
 だが、こんなに最初から余裕がなく行為を始めるエアハルトは珍しい。
 最初は痛みを感じながらも、毎晩抱かれて慣らされた身体がその強引な愛撫に快楽を感じてしまう。
 エアハルトもまたずっと飽きることなくロゼを抱いて来たのだ。
 ロゼがどこをどうしたら感じるのかも熟知している。

 エアハルトはそろそろもう本気で我慢ができないと、名残惜しくもロゼの赤い唇から一度口を放し、少し待つように額に軽くキスをする。

 ぐちゅっ

「あんっ!」

 愛液で濡れたロゼの秘部から指を抜く。
 いやらしい粘液の音と、ロゼの堪らず漏れた高い嬌声にエアハルトは何度も自分の唾を飲み込んだ。
 ロゼの愛らしい啼き声をエアハルトは堪らない思いで聞く。
 口をぱくぱくさせて必死に空気を吸おうとするロゼの頬は薔薇色に染まり、大きな瞳が涙を溜めてエアハルトを見上げる。
 その様があまりにも愛しくて、エアハルトはうっとりとその頬を撫でた。
 硬くなった自身のペニスを取り出し、その太ももにこすりつける。

「ロゼ…… もう、いいか?」

 香油も避妊具も用意していなかったが、エアハルトはもう少し動いただけでも破裂寸前だった。
 ロゼが喉が渇いた犬のように荒い息をつくエアハルトを拒むはずがない。
 ロゼがどれだけエアハルトを愛してその身を捧げているのかが分かった今、エアハルトはその全てを利用するつもりだ。
 卑怯だとは思わない。
 一番卑怯なのは無自覚にエアハルトを煽り、その全てを狂わすロゼという存在なのだから。

「はい…… きて、ください」

 そう、今のように頬を真っ赤にして、白い肢を大きく広げて健気にエアハルトを受け入れるロゼの方がずっと卑怯だ。






 エアハルトは時間を忘れてただ無我夢中でロゼを貪った。
 ロゼが気絶する寸前まで何度も彼女の中を蹂躙した。
 ロゼのそこは相変わらずの名器で、火傷しそうな熱さと肉壁の襞がうねり、絡みつき、魂を吸い取られそうほどの快感をエアハルトに与える。
 ロゼもまた、元々の素質があったのか、エアハルトに抱かれるたびに身体が敏感になり、どんな些細な刺激も痛みもすぐに快楽に変わった。
 ロゼはもう既にエアハルトの熱と冒涜的なまでの快楽に全てを支配されていたのだ。
 理性を無くしたロゼはエアハルトに言われるがままにその逞しい背中に腕をまわした。
 どうにかエアハルトの背中に爪を立てないようするロゼを責めるようにエアハルトはあえて彼女のそこを深く突き刺し、背中に強くしがみ付くように要求する。
 そして焦れたエアハルトはロゼを抱え上げ、その白い尻だけを掴んで揺さぶった。
 そうするとより一層深く、そして不安定な姿勢になり、ロゼはいつの間にかシャツを脱いだエアハルトの背中に無意識に爪を立てて縋り付いた。
 ロゼが自身の背中に傷をつけたのを感じて、エアハルトは一度そこでロゼの中に溢れるほどの精を放つ。
 すでにエアハルトはもう何度目かの射精をしていた。
 ロゼの中に、その腹に、胸に、至る所にエアハルトの白濁の欲望が吐き散らかされている。
 エアハルトが中に出したことも、乱暴に揺さぶられたこともロゼは許した。
 むしろ、エアハルトが少しでもロゼの身体に執着を見せているのが嬉しいとすら思っている。

「ロゼ…… すまない、また中に出してしまった」
「ぁんっ…… だ、旦那様がっ、気持ち良ければ…… ロゼは、嬉しいです」

 エアハルトはロゼに謝りながらもまだまだ彼女の身体を放すつもりはなかった。
 だが、あまりにもロゼは健気にエアハルトを受け入れるため、元から無かった理性が更に崩壊していくのだ。
 そしてロゼは何度も何度もエアハルトに揺さぶられながらうっとりとした甘い啼き声でエアハルトに問われるがままに愛を告げた。
 とろとろと痛みと苦しみと多大な快楽に溶かされたロゼはもう自分が何を言っているのか分からなかった。

「ロゼっ、ロゼ…… 愛しているっ」
「あっぁ…… ああっ…… んっ、ああっ…… あっ……」

 緩く、浅く抜き差しされながら、ロゼは激しい律動の合間にエアハルトが穏やかに動いてロゼの首筋や顔全体をキスする行為が好きだ。
 耳を口に含まれながら、エアハルトからの愛の告白にぞくぞくと甘い痺れが走る。
 うっとりと囁くエアハルトは青い瞳にどろどろとした溶岩のような熱を秘めながらロゼを見つめる。
 お互いがお互いを見つめ合いながら、掌を合わせ、指を絡め合う。

「ロゼ…… 俺が、好きか?」
「あんっ…… すき、です」
「……あ、愛しているか?」
「ふぁっ…… んっ あい、してます」

 ロゼはエアハルトの首に自身の頬を摺り寄せ、ふわふわな頭のまま甘えるようにして答えた。
 エアハルトは、今日何度目になるか分からない理性の切れる音を最後に、またロゼを気絶するまで犯し続けた。

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