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番外編"浮気?(2)
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駅を降りて徒歩10分。
少し歩いたところに俺たちが住んでいるマンションがあった。
ひと気の少ない駅のホームに1人。
未だに既読のつかないメールを見ていた。
当たり前なのだけれども。
健康的な彩月はいつも、11時には夢の中。
そのぶん起きるのが早いわけで、ご飯は分担って約束だったけど9割がた、というか、彩月が寝込んだときぐらいしか料理を作ったことがない。そのかわり風呂掃除やらなんやらはしっかりやっているけれど。
駅から出ると、夜空の中に雨が降っていた。
俺はため息をついてカバンの中から折り畳み傘を取り出そうとした。
「弓弦」
ポンっと背中を叩かれて振り返ると、ラフな格好の彩月がいた。
「えっ、彩‥?なんで‥」
驚き過ぎた俺は言葉を失った。
「え、そんなに驚いた?」
「や、驚いたっていうか‥その、嬉しくて」
「‥ふっ、なに?急に素直になって」
「いや別に‥てかなんでいるの?こんな時間に」
「あ、えっとね傘忘れてるだろうなぁって思って。夜も遅いし、一人で帰るのは危ないでしょ?それに今日は弓弦が帰ってくるの待ってよっかなって思ってたからさ。暇だったし、迎えに来ちゃった」
「俺、男だから危なくないと思うけど。むしろ危ないのは彩月じゃん」
「いーの。私襲う人なんていないから。むしろ私が襲い返すわ」
彩月はふにゃっと笑った。
「それはどういう意味ですか。次からは危ないからやめてね。でも‥嬉しかった、ありがとう」
彩月はニコッと笑うと傘をさして、出口の枠を出た。
「帰ろ?傘、ないよね?」
俺はカバンの中で掴んでいた傘をそっと離した。
「うん、助かるわ。危うくずぶ濡れになるところだった」
彩月の傘を受け取って、彩月の肩が濡れないように傘を傾ける。
「随分遅かったね?そんなに浩介と盛り上がってたんだ」
「まぁ、久々だったしね。募る話はあったよ」
「ふーん」
彩月はいじけたように唇を尖らせると、傘を持っている俺の腕に手を回した。
「えっ、彩月‥?」
彩月はプイッとそっぽを向いて、なにも言わなかった。
そのまま家まで黙って歩いた。
家に着くなり俺に抱きついて来た彩月。
「ねぇ、どしたの?なんからしくないよ」
「‥らしくないとかないもん。これも私だし」
ちょっと怒ったように彩月は俺の体を押した。
そして離れてそそくさと部屋へと入った。
寝室の扉を開けると、そのまま彩月はベッドで眠っていた。
「彩月?ねぇ、」
「寝てる」
「寝てないでしょ。なんでいじけてるの?俺がらしくないって言ったから?」
「うるさい」
さらに彩月は布団に潜る。
なんで、喧嘩みたいになっちゃうんだろう。
「彩月さん、」
彩月は答えない。
「ねえって‥彩」
言いかけたところで彩月が口をパクパクと動かして、キスをした。
ーー好き。
自分にはそう見えた。
彩月は絶対に浮気なんてしてない。
そう信じたい。
だってこんなに。
「彩月…!」
俺はそっと彩月の肩を押して、ベットに倒れさせた。
覆いかぶさる体勢で、キスをした。
お互いの息が荒くなって、そっと手を伸ばした時
ーープルルル…プルルル
彩月はハッとしたようにトロンとした顔から真面目な顔になって起き上がった。
「彩月?」
「ごめん…」
俺の肩を押すと、そのまま彩月は携帯を持って寝室を出て行った。
ねぇ、彩月。
いましなきゃいけない事なの?
ねぇ、彩月。
信じていいんだよね…
少し歩いたところに俺たちが住んでいるマンションがあった。
ひと気の少ない駅のホームに1人。
未だに既読のつかないメールを見ていた。
当たり前なのだけれども。
健康的な彩月はいつも、11時には夢の中。
そのぶん起きるのが早いわけで、ご飯は分担って約束だったけど9割がた、というか、彩月が寝込んだときぐらいしか料理を作ったことがない。そのかわり風呂掃除やらなんやらはしっかりやっているけれど。
駅から出ると、夜空の中に雨が降っていた。
俺はため息をついてカバンの中から折り畳み傘を取り出そうとした。
「弓弦」
ポンっと背中を叩かれて振り返ると、ラフな格好の彩月がいた。
「えっ、彩‥?なんで‥」
驚き過ぎた俺は言葉を失った。
「え、そんなに驚いた?」
「や、驚いたっていうか‥その、嬉しくて」
「‥ふっ、なに?急に素直になって」
「いや別に‥てかなんでいるの?こんな時間に」
「あ、えっとね傘忘れてるだろうなぁって思って。夜も遅いし、一人で帰るのは危ないでしょ?それに今日は弓弦が帰ってくるの待ってよっかなって思ってたからさ。暇だったし、迎えに来ちゃった」
「俺、男だから危なくないと思うけど。むしろ危ないのは彩月じゃん」
「いーの。私襲う人なんていないから。むしろ私が襲い返すわ」
彩月はふにゃっと笑った。
「それはどういう意味ですか。次からは危ないからやめてね。でも‥嬉しかった、ありがとう」
彩月はニコッと笑うと傘をさして、出口の枠を出た。
「帰ろ?傘、ないよね?」
俺はカバンの中で掴んでいた傘をそっと離した。
「うん、助かるわ。危うくずぶ濡れになるところだった」
彩月の傘を受け取って、彩月の肩が濡れないように傘を傾ける。
「随分遅かったね?そんなに浩介と盛り上がってたんだ」
「まぁ、久々だったしね。募る話はあったよ」
「ふーん」
彩月はいじけたように唇を尖らせると、傘を持っている俺の腕に手を回した。
「えっ、彩月‥?」
彩月はプイッとそっぽを向いて、なにも言わなかった。
そのまま家まで黙って歩いた。
家に着くなり俺に抱きついて来た彩月。
「ねぇ、どしたの?なんからしくないよ」
「‥らしくないとかないもん。これも私だし」
ちょっと怒ったように彩月は俺の体を押した。
そして離れてそそくさと部屋へと入った。
寝室の扉を開けると、そのまま彩月はベッドで眠っていた。
「彩月?ねぇ、」
「寝てる」
「寝てないでしょ。なんでいじけてるの?俺がらしくないって言ったから?」
「うるさい」
さらに彩月は布団に潜る。
なんで、喧嘩みたいになっちゃうんだろう。
「彩月さん、」
彩月は答えない。
「ねえって‥彩」
言いかけたところで彩月が口をパクパクと動かして、キスをした。
ーー好き。
自分にはそう見えた。
彩月は絶対に浮気なんてしてない。
そう信じたい。
だってこんなに。
「彩月…!」
俺はそっと彩月の肩を押して、ベットに倒れさせた。
覆いかぶさる体勢で、キスをした。
お互いの息が荒くなって、そっと手を伸ばした時
ーープルルル…プルルル
彩月はハッとしたようにトロンとした顔から真面目な顔になって起き上がった。
「彩月?」
「ごめん…」
俺の肩を押すと、そのまま彩月は携帯を持って寝室を出て行った。
ねぇ、彩月。
いましなきゃいけない事なの?
ねぇ、彩月。
信じていいんだよね…
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