嫌われ者の君へ

コリン

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番外編"浮気?3

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カチャカチャ…

ただ咀嚼音と箸や食器の無機質な音だけがリビングルームに響いていた。

いつもなら、楽しく話していたのに。
久しぶりの休みなのに。

彩月はなにも言わない。

俺もなにも言わない。


昨日の夜、あんなことがあってから俺は追いかけることもせず、一人で眠りについた。

彩月はリビングで誰かと電話で夜遅くまで話していた。
俺が怒っていることもわかっていたはずなのに、楽しそうに笑っていた。なにを話しているかは分からなかったけれど、笑ったり、物音が聞こえた。

笑い声さえも、今の俺にとっては騒音でしかなかった。


「…ごちそうさま」

彩月が小さく呟いて、食器を片付けた。

そして自室に戻るとさっさとコートとカバンを持って出てきた。

「…さ…っ」

俺は言葉を飲み込んだ。
彩月も一瞬俺を見て、目を伏せ

「出かけるね、帰り…遅いと思うから、その、心配しないでね」

と、気まずそうに言って外へ出て行ってしまった。

俺はため息をついて、ダイニングテーブルの椅子にどかっと腰を下ろした。

食べかけの目玉焼きに、思いっきり箸を刺した。
背もたれに身を任せ、万歳するポーズで部屋を見渡す。

もう、潮時なのかなーー

部屋のいたるところには、消したって消せないような思い出ばかり。
写真を飾ってなくたって、モノを片付けたって、きっと俺はこの家にいる限り、いや、生きてる限り彩月のことを忘れる事なんて出来ないんだと思う。

そう思うとなんだか泣けてきて、視界の端がぼやけてきた。

「やばいなー俺。もう歳なのかも…」

視界の端の濁った部分にうっすらと映る壁掛けのカレンダー。

「…えっ」

そこには

『弓弦の誕生日』

と書いてあった。

「なんか最近…考えすぎてて自分の誕生日なんて忘れてた…」

苦笑しながらも、今朝の彩月を思い出して涙が出た。
当日に恋人におめでとうって言ってもらえないなんて、俺ももうダメなんだな。

なんでこんなことになっちゃったんだ。

最悪の誕生日だーー



気がつくと寝ていたらしく、時計を見ると午後7時。
自分で入った記憶はないが、しっかりとベッドで眠っていた。

あれ、俺…いつから寝て…。

起き上がると同時に彩月のことを思い出す。
寝室のドアの隙間から見えるリビングには電気が付いていた。

彩月と話そう。

そう思った。

もちろん恐怖だってあるけど、このままじゃいけない。


ねぇ、彩月。
俺、なんかしたかな。

ドアに手を伸ばし、ゆっくりと力を入れる。

「彩月…ーー」

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