繰り返される転生劇〜喜劇こそ、笑いこそ世界を救うたった一つの手立てではないかっ!〜

清水花

文字の大きさ
128 / 135
呪われの旅仕度編

しおりを挟む
 新しい風が轟々と吹き荒れる雰囲気のお店ではしゃぐ若者二人。

 おじさん、と言うには流石に時期尚早だとは思うが、タケル二十歳(お兄さん)は孤立してしまった。

 別段、このお店の雰囲気が嫌いだとか落ち着かないとかって訳ではないんだけれど、さっきアリシアも言ったように装備品って地味で暗いっていうのが、やはり俺の中のイメージであってどうにもこの店に並ぶ明るくて、華やかで、若者風な印象が強い装備品を身に纏うのはどうにも憚られるものがある。

 どうしても人目が気になっちゃってしまいそうである。

 なので、というか。まあ、俺の装備品に関してはこの先で手に入る宝箱の中身などで適当に整えるとして、みんなの装備品は一流の物を揃えてあげなくては。

 だってみんなは俺と違って戦闘経験が乏しい、村人や町人といった一般人なのだから。戦闘能力において不備があるのは当たり前なのだから、それを補う装備品は一流の物を揃えるのが当たり前なのだ。

 それでようやく、イーブンと言ったところか。

 だから見た目重視ではなく、装備品が持つや機能性などを重視して選んでくれるとありがたいのだが……。

 パティがキラキラした目でバスターソードを引きずって来たらどうしよう……。『アニキ! 僕、コレがいい! コレを振り回せるように毎日頑張るから!』とか、

 アリシアが、『コレとコレ、どっちが私に似合ってますか? タケルさん的には……その……どっちの方が、好き……ですか……?』とか言われてしまったのでは、あまりの嬉しさと緊張が相まって気を失ってしまいそうである。

 まあ、後半の方のセリフは俺の願いが強烈に、そして鮮明に反映されている気がするが……まあ、気のせいだろう。

 とにかく、

 そのような事を言われてしまったら、いくら俺だって装備品は憧れやオシャレ感覚でするものじゃなく、戦闘を最重要視して選ぶように。なんて言うのは結構辛いところだぞ。

 何より、その後の場の空気感が心配でならない。そんな状態から二人を笑顔にするのは至難の業だ。きっと。

 さて、どう上手く誘導したものか……。

「アリシア、何時間もお店の中にいちゃあ流石にご迷惑だよ? お買い物はまだまだあるんだし、他のお店の物をじっくりと見てからでもいいんじゃない?」

「そうですね……分かりました。じゃあ、これに決めます!」

 と、アリシアが俺の方へ差し出した品々。数多くの装備品。上から下までフルセット。

 話……聞いてた? この子。

「あ……あの……アリシア? まだお店は他にも……」

「いえ! 私もベネツィの町を隅々まで知ってる訳じゃないですけど、このお店の商品は他よりも群を抜いて可愛いです! それは私が保証します!」

「あ……いや……だから。可愛いとか、そういうのじゃあ……」

 何とか俺の気持ちを分かってもらおうと言葉を探すが、状況に即した言葉が一向に見つからない。

 深い深い言葉の迷宮に迷い込みつつある俺を、やや上目遣いの幼い笑顔でアリシアは見つめる。

 ……可愛いじゃねぇか。

 もういっその事、可愛いならどんな装備品でもいい! なんて。とんでもない事を言い出しそうになる自分を必死に抑え込む。

 バカな考えを理性でぐるぐるに包んで喉の奥へと押し込む。

「ア、ニ、キ!」

 と、突如として背後から元気なパティの声が俺を呼ぶ。

 若干肩をびくつかせ、慎重に背後を振り返る。

 パティが俺の方へ差し出した品々。数多くの装備品。上から下までフルセット。

「…………」

 パティに関してはどんな装備品を買うべきか、何を重視して装備品をチョイスするべきか事前に話してなかったから仕方がない事なのだが、こちらもこちらで安定のフルセットで来やがったか。

 だがまあ、フルセットとは言ったがパティが両手に持つ商品一式を見るに例のバスターソードは含まれていないようなので一安心だ。

 あんな重い大剣をパティが持ってしまったら、あの子の良さが光らなくなってしまう。

 パティの、あの子の最大の武器は、その持ち前のスピードなのだ。

「……ん?」

 と、そこで不意に気付く。

 ちらりアリシアの方へ視線を送り、両手に抱えている商品をもう一度よくよく見てみると、こちらもこちらで武器類が含まれていない。

 まあ、アリシアには鞭があるので武器はこれ以上必要ではないのだが、しかしそれでも杖の一本ぐらいは所持していてもらいたいところではある。

 アリシアは猛獣使いではなく一応、魔法使いのタイプのようなので。
 
 きっとその方が安全に戦闘に取り組めると思う。

「あ……」

 さらに気付く、

 と言うか思い出す。

 魔界一の刀匠に依頼した武器の事を。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

処理中です...