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呪われの旅仕度編
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「わぁ、こんなにたくさん! ありがとうございます」
商品を一つ一つ丁寧にガラスケースの上に並べて、例の値札なのか何なのかを一瞥し、メモ用紙にスラスラと書き綴っていくモニカさん。
「えー……。合計が198765Gになりますね」
俺はGがたんまりと入った袋をバックから取り出して、ガラスケースの上に慎重に置いた。
「うわっ。すっごい!」
モニカさんは右手を口元に当てて驚きの表情を見せる。
袋の中からGを鷲掴みにして、モニカさんへと手渡していく。
紙幣を五十枚と少し、硬貨を十数枚。
袋がかなり軽くなったが、ざっとみただけでもあと、十万Gぐらいはあるので村長の装備品を買ってもお釣りがくる。残ったお金で薬草などのアイテムもしっかりと買い揃えておこう。
しかし、お買い物はやっぱり気持ちがいいな。常日頃の努力が形となって現れるというかなんと言うか。
頑張って働いて、手にしたお金で生活に必要な物や非日常を買う。
俺の場合で言えば、命を掛けたモンスターとの壮絶なバトルの対価として受け取ったものだが。
「ーーーーはい、ちょうどですね。ありがとうございます! 商品はどうされます? このまま着用しますか?」
「あぁ、そうですね。この子の着替えられるところってありますか?」
俺は右手でアリシアを手招きして言う。
「あら、ずいぶん可愛らしいお嬢さんですね。んん? パティ君のお姉さん?」
腰を少し折り、アリシアの顔をまじまじと見つめながらモニカさんは言う。
「いえ、残念ながら私は一人っ子なので。でも確かにパティ君みたいに元気な弟がいたら楽しいだろうなってよく思います」
「確かにね。うちの子もパティ君みたいに元気に育ってくれたらってよく思うよ。っと、着替えだったね。裏においで、部屋使っていいから」
モニカさんに案内され、アリシアは店の裏へと向かった。
「パティ、君も早く装備しちゃいな?」
「う、うん……」
「なに? どうしたの?」
「なんだか緊張しちゃって……」
「緊張? なんでまた……」
「だって……憧れの装備品だよ?」
「憧れの装備品?」
そんなパティの言葉にずっと感じていた違和感を思い出した。
「そうだ、パティ。俺の聞き間違いかもしれないけど、少し前に武器とか防具とかの装備品に関してあまり興味がないような事を言ってなかったっけ?」
「ーーーー言った……と思う」
「やっぱり。でもさ、この店に入ってからの君の言動を見るに興味がないとはとても思えないのだが……。今だって憧れの装備品って言っちゃってるし」
「あっはははは……」
パティは右手で自身の頭を掻きながら、乾いた笑い声を漏らす。
「えっとね……。なんて言うのかな、あははは……」
パティは心底困ったように自身の中で言葉を探している。
が、どうにも事が上手く運ばないようなので、こちらから質問してみる事にした。
「パティ君。君は装備品が好きで好きでたまらない?」
「ーーーーうん」
「好きすぎて、憧れを抱いている?」
「うん」
「ちょくちょくこのお店に足を運んでは、モニカさんと装備品の話で盛り上がっている?」
「うん」
「話が盛り上がりすぎて、帰るのが遅くなりティナさんによく叱られている?」
「違う……かな」
あれ? 結構いい線いったと思ったけれど違ったか。でもさっきの反応からして、叱られた事はあるんだな、きっと。
好きな気持ちを隠したいと思う理由……か。
ふむ。
「好きすぎて友達に笑われた事がある?」
「ーーーーう……うん」
「だから人前では装備品に対して、どことなく素っ気ない態度をとってしまう?」
「う……ん」
「なるほど、そういう事ね」
「あっはははは……。お恥ずかしい」
「そんな事、気にしなくていいんだよ。装備品にあまり興味がない友達は、別の物に興味津々なんだから。それを君が見たらきっとその友達と同じ反応をするよ、これのどこがすごいんだ? 何が楽しいんだ? って」
「そう……かな?」
「当たり前だよ。だからそんな事、気にしなくていいんだ。だいたい、騎士になるのを夢見る子供が装備品に興味を示さない方がどう考えたって不自然だよ。子供も大人も、男はみんな格好いい物が大好きだからね。それに装備品って格好いい物の代表ってところがあるからね、やっぱり。好きな人はたくさんいるはずだよ。たっくさんいる中の一人だよ君も」
「アニキも、好き?」
「おいおい……俺を誰だと思っているのかね……? 現役の勇者様だよ? 好きに決まっているではないか。好きのレベルで言えば君の軽く三倍、四倍はあるよ。好きが高じて自分で作っちゃったりもしてるし」
「えー⁉︎ 自分で作ってるの⁉︎」
「あぁ。と言っても、そんな本格的なものじゃないけどね。ほら、前にもちょっと言ったけど、今は預けている木刀は俺の手作りだよ?」
「そう言えば言ってたね、そんな事。それじゃあそろそろ受け取りに行くの?」
「だね。出来てるか分かんないけれど、ちょっと様子を見てみようかなって思ってる。君達の武器もついでにお願いしてあるから楽しみにしててね」
「ーーーーほ、本当っ⁉︎ そんな……じゃあ、武器から防具からフル装備じゃないか……」
「もっと喜んでいいんだよ? 自分の気持ちを正直に表してごらん!」
「アニキー! 好きー! すっごい好きー!」
「ーーーーっちょ!」
店内で声を大にして抱きついてくるパティを受け止め、声のボリュームを落とすように注意を促す俺であった。
商品を一つ一つ丁寧にガラスケースの上に並べて、例の値札なのか何なのかを一瞥し、メモ用紙にスラスラと書き綴っていくモニカさん。
「えー……。合計が198765Gになりますね」
俺はGがたんまりと入った袋をバックから取り出して、ガラスケースの上に慎重に置いた。
「うわっ。すっごい!」
モニカさんは右手を口元に当てて驚きの表情を見せる。
袋の中からGを鷲掴みにして、モニカさんへと手渡していく。
紙幣を五十枚と少し、硬貨を十数枚。
袋がかなり軽くなったが、ざっとみただけでもあと、十万Gぐらいはあるので村長の装備品を買ってもお釣りがくる。残ったお金で薬草などのアイテムもしっかりと買い揃えておこう。
しかし、お買い物はやっぱり気持ちがいいな。常日頃の努力が形となって現れるというかなんと言うか。
頑張って働いて、手にしたお金で生活に必要な物や非日常を買う。
俺の場合で言えば、命を掛けたモンスターとの壮絶なバトルの対価として受け取ったものだが。
「ーーーーはい、ちょうどですね。ありがとうございます! 商品はどうされます? このまま着用しますか?」
「あぁ、そうですね。この子の着替えられるところってありますか?」
俺は右手でアリシアを手招きして言う。
「あら、ずいぶん可愛らしいお嬢さんですね。んん? パティ君のお姉さん?」
腰を少し折り、アリシアの顔をまじまじと見つめながらモニカさんは言う。
「いえ、残念ながら私は一人っ子なので。でも確かにパティ君みたいに元気な弟がいたら楽しいだろうなってよく思います」
「確かにね。うちの子もパティ君みたいに元気に育ってくれたらってよく思うよ。っと、着替えだったね。裏においで、部屋使っていいから」
モニカさんに案内され、アリシアは店の裏へと向かった。
「パティ、君も早く装備しちゃいな?」
「う、うん……」
「なに? どうしたの?」
「なんだか緊張しちゃって……」
「緊張? なんでまた……」
「だって……憧れの装備品だよ?」
「憧れの装備品?」
そんなパティの言葉にずっと感じていた違和感を思い出した。
「そうだ、パティ。俺の聞き間違いかもしれないけど、少し前に武器とか防具とかの装備品に関してあまり興味がないような事を言ってなかったっけ?」
「ーーーー言った……と思う」
「やっぱり。でもさ、この店に入ってからの君の言動を見るに興味がないとはとても思えないのだが……。今だって憧れの装備品って言っちゃってるし」
「あっはははは……」
パティは右手で自身の頭を掻きながら、乾いた笑い声を漏らす。
「えっとね……。なんて言うのかな、あははは……」
パティは心底困ったように自身の中で言葉を探している。
が、どうにも事が上手く運ばないようなので、こちらから質問してみる事にした。
「パティ君。君は装備品が好きで好きでたまらない?」
「ーーーーうん」
「好きすぎて、憧れを抱いている?」
「うん」
「ちょくちょくこのお店に足を運んでは、モニカさんと装備品の話で盛り上がっている?」
「うん」
「話が盛り上がりすぎて、帰るのが遅くなりティナさんによく叱られている?」
「違う……かな」
あれ? 結構いい線いったと思ったけれど違ったか。でもさっきの反応からして、叱られた事はあるんだな、きっと。
好きな気持ちを隠したいと思う理由……か。
ふむ。
「好きすぎて友達に笑われた事がある?」
「ーーーーう……うん」
「だから人前では装備品に対して、どことなく素っ気ない態度をとってしまう?」
「う……ん」
「なるほど、そういう事ね」
「あっはははは……。お恥ずかしい」
「そんな事、気にしなくていいんだよ。装備品にあまり興味がない友達は、別の物に興味津々なんだから。それを君が見たらきっとその友達と同じ反応をするよ、これのどこがすごいんだ? 何が楽しいんだ? って」
「そう……かな?」
「当たり前だよ。だからそんな事、気にしなくていいんだ。だいたい、騎士になるのを夢見る子供が装備品に興味を示さない方がどう考えたって不自然だよ。子供も大人も、男はみんな格好いい物が大好きだからね。それに装備品って格好いい物の代表ってところがあるからね、やっぱり。好きな人はたくさんいるはずだよ。たっくさんいる中の一人だよ君も」
「アニキも、好き?」
「おいおい……俺を誰だと思っているのかね……? 現役の勇者様だよ? 好きに決まっているではないか。好きのレベルで言えば君の軽く三倍、四倍はあるよ。好きが高じて自分で作っちゃったりもしてるし」
「えー⁉︎ 自分で作ってるの⁉︎」
「あぁ。と言っても、そんな本格的なものじゃないけどね。ほら、前にもちょっと言ったけど、今は預けている木刀は俺の手作りだよ?」
「そう言えば言ってたね、そんな事。それじゃあそろそろ受け取りに行くの?」
「だね。出来てるか分かんないけれど、ちょっと様子を見てみようかなって思ってる。君達の武器もついでにお願いしてあるから楽しみにしててね」
「ーーーーほ、本当っ⁉︎ そんな……じゃあ、武器から防具からフル装備じゃないか……」
「もっと喜んでいいんだよ? 自分の気持ちを正直に表してごらん!」
「アニキー! 好きー! すっごい好きー!」
「ーーーーっちょ!」
店内で声を大にして抱きついてくるパティを受け止め、声のボリュームを落とすように注意を促す俺であった。
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