ズボラ飯とお嬢と私

さくま

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第10話 炊飯器で作るトマト煮込みとお嬢と私②

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 ◯材料(2人前)

 三合炊きの炊飯器に

 ◎具材
 ・鶏胸肉(200g)
 ・キャベツ(4分の1くらい)
 ・玉ねぎ(2分の1)
 ・舞茸(2分の1パック)
 ・カットトマト缶(400g)

 ◎調味料
 ・水(200ml)
 ・コンソメキューブ(1つ)
 ・オリーブオイル(大さじ!)
 ・ニンニクチューブ(小さじ1)
 ・塩胡椒(お好み)

 ◯作り方
 炊飯器にカットトマト缶、水、調味調を全て入れる。
 具材を一口サイズに切って炊飯器に入れる。
 普通炊きのスイッチを入れる
 炊飯完了すれば完成!


 具材をざくざく切って炊飯器に入れるだけでごはんができる。なんて便利なんだろう。

 私は幸せ者ですと天井をあおぐ。喉につっかえたものでも吐き出すように大きなため息をつく。改めてこんな自分が嫌になる。

 夢を叶える人は、成功する人はきっと、休みの日だって11時に起きてこない。朝の5時に起床して窓を開けて新しい空気を取り込みながらブラックコーヒーを飲むのだろう。ダラダラと自宅にこもってゲームなどやらずに、外に出て新しいアイデアの種を探すのだろう。SNSを眺めて周りを羨む時間などなく、いつだって夢を叶えるための次の一手のことを考えているのだろう。それに比べて私はどうだ。

 温かい物でも飲んで気分を落ち着けようとケトルに手を伸ばすと、横からピョコリと小さな手が飛び出してきた。

「ん、どーした?」
「いえ、しおりさんに温かい物でもと思いまして…」

 消え入りそうな声に驚き顔を覗き込むと、くりくりした丸い瞳からは今にも涙が溢れそうだった。

「私、しおりさんに不躾なことを…。すみません」

 我に返り、こんな小さな女の子に気を使わせてしまった自分の異常さを責める。この子は何も悪いことを言っていないじゃないか。ただ、私と楽しく話をしたかっただけ。私が弱いせいで彼女を傷つけた。
 おもわずぎゅっと抱きしめると、まい子はごめんなさいごめんなさいと繰り返しながら泣きじゃくった。未熟なのは一体どっちだ。

「まい子、ごめんね。」

 炊飯器がピーっと鳴る。でも、今はそれを一旦聞かなかったことにした。

 しゃくり上げるまい子を胸に抱きながら、私はまた大人のフリをしている。ひとつひとつ、向き合っていかなければ。
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