12 / 20
第12話 お吸い物パスタとお嬢と私
しおりを挟む
アルバイトを終え、いつも通り自宅玄関の扉を開く。
「おかえりなさい、しおりさん!」
「どうした?…あ、ただいま」
同居人のまい子が出迎えてくれたが、彼女だけはいつもと様子が違っていた。
普段は落ち着いた印象の彼女の顔に、ニカーッとした不自然な笑顔が貼り付けられている。
聞くと、学校で先生から「レディはいつでも笑顔でいること」と教わったという。その言葉が愛想をあちこちに振りまくタイプではない彼女には刺さったのだろう。
レディになるための努力は構わないが、不自然な笑みをこのまま向け続けられるのはこちらとしても居心地が良くない。もとの彼女に戻ってもらわなければ。なんとか彼女を傷つけない方法はないか考えながら笑顔のまい子を背に夕ご飯作りを開始する。
○材料(2人分)
・パスタ(200g)
・お吸い物のもと(2袋)
・バター(お好み。今回は10g)
・麺つゆ(お好み。今回は大さじ2)
○作り方
パスタを表示の時間通りに茹でる。
茹で上がったら軽く湯を切り、ボウルに移す。
麺が温かいうちに、お吸い物のもと、バター、麺つゆを合わせてよく混ぜる。
器に盛って完成!
夕ご飯の支度をしながら小学生の頃を思い出す。自分自身も「いつも笑顔で」みたいなスローガンを真に受け、いつ何時でも笑顔を心がけた時期がある。
しかし、ある日廊下で鉢合わせた若い女教師に「なにニヤニヤしてんの!」と突然怒鳴られたのをキッカケにぱたりと辞めたしまった。この時の光景は未だに覚えている。というか、根に持っている。
まい子も自分と同じようなことをしているとは可愛いじゃないか。笑顔を貼り付けたまま支度の手伝いをする彼女に声をかける。
「お嬢よ、笑顔は大事。とっても大事だと思うよ。でもさ、訳もなく無理やり口角を上げてるだけじゃ折角の可愛い顔がもったいないと思うよ」
先程思い出していた自分の話をしたあと、適当なスローガンに2人で文句を言いあったりした。
「まあ、つまりはさ笑いたくなったら笑えばいいのよ!さ、食べよ!」
「あまりにも乱雑な終わらせ方…。いただきます」
まい子はパスタをくるりと巻いてひとくち食べると、いつもの可愛らしい笑顔を見せてくれた。
笑ってばかりいられない時だってある。だからこそ心から湧き出る笑顔こそ尊いのかな。
そんなことを思いながら昔の自分も慰めるのだった。
「おかえりなさい、しおりさん!」
「どうした?…あ、ただいま」
同居人のまい子が出迎えてくれたが、彼女だけはいつもと様子が違っていた。
普段は落ち着いた印象の彼女の顔に、ニカーッとした不自然な笑顔が貼り付けられている。
聞くと、学校で先生から「レディはいつでも笑顔でいること」と教わったという。その言葉が愛想をあちこちに振りまくタイプではない彼女には刺さったのだろう。
レディになるための努力は構わないが、不自然な笑みをこのまま向け続けられるのはこちらとしても居心地が良くない。もとの彼女に戻ってもらわなければ。なんとか彼女を傷つけない方法はないか考えながら笑顔のまい子を背に夕ご飯作りを開始する。
○材料(2人分)
・パスタ(200g)
・お吸い物のもと(2袋)
・バター(お好み。今回は10g)
・麺つゆ(お好み。今回は大さじ2)
○作り方
パスタを表示の時間通りに茹でる。
茹で上がったら軽く湯を切り、ボウルに移す。
麺が温かいうちに、お吸い物のもと、バター、麺つゆを合わせてよく混ぜる。
器に盛って完成!
夕ご飯の支度をしながら小学生の頃を思い出す。自分自身も「いつも笑顔で」みたいなスローガンを真に受け、いつ何時でも笑顔を心がけた時期がある。
しかし、ある日廊下で鉢合わせた若い女教師に「なにニヤニヤしてんの!」と突然怒鳴られたのをキッカケにぱたりと辞めたしまった。この時の光景は未だに覚えている。というか、根に持っている。
まい子も自分と同じようなことをしているとは可愛いじゃないか。笑顔を貼り付けたまま支度の手伝いをする彼女に声をかける。
「お嬢よ、笑顔は大事。とっても大事だと思うよ。でもさ、訳もなく無理やり口角を上げてるだけじゃ折角の可愛い顔がもったいないと思うよ」
先程思い出していた自分の話をしたあと、適当なスローガンに2人で文句を言いあったりした。
「まあ、つまりはさ笑いたくなったら笑えばいいのよ!さ、食べよ!」
「あまりにも乱雑な終わらせ方…。いただきます」
まい子はパスタをくるりと巻いてひとくち食べると、いつもの可愛らしい笑顔を見せてくれた。
笑ってばかりいられない時だってある。だからこそ心から湧き出る笑顔こそ尊いのかな。
そんなことを思いながら昔の自分も慰めるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
馬小屋の令嬢
satomi
恋愛
産まれた時に髪の色が黒いということで、馬小屋での生活を強いられてきたハナコ。その10年後にも男の子が髪の色が黒かったので、馬小屋へ。その一年後にもまた男の子が一人馬小屋へ。やっとその一年後に待望の金髪の子が生まれる。女の子だけど、それでも公爵閣下は嬉しかった。彼女の名前はステラリンク。馬小屋の子は名前を適当につけた。長女はハナコ。長男はタロウ、次男はジロウ。
髪の色に翻弄される彼女たちとそれとは全く関係ない世間との違い。
ある日、パーティーに招待されます。そこで歯車が狂っていきます。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる