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7章 人質姫のもう一つの生活
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洋服屋さんを出て、町の中を歩いていく。
「ギルバート様、あれはなんですの?」
「あれは雑貨屋だな。文房具などが置いてある」
「あっちはなんですの?」
「あっちは最近王都で有名な菓子店だ。あとで寄ってみよう」
お店屋さんのショーケースにはたくさんの商品が並べられ、それを見ているだけでも楽しい。
「気になるものがあるなら買ってやろう」
ギルバート様が珍しく機嫌良く私に言う。
その言葉を聞いて、私は自分がお金を持っていないことに気がついた。
「ギルバート様、申し訳ありません。せっかく連れてきていただいたのに、お金がないことを今思い出しました…」
しょんぼりと言うと、ギルバート様がイラっとした表情で私に言った。
「わたしが、女性に支払いをさせるような男に見えるのか。お前が欲しがるものはわたしが買ってやるに決まっているだろう」
「そんな…町に連れてきてもらっただけでもありがたいのに、買っていただくなんて…」
ランバラルドに来るときに、金銭は持って来なかったから、お借りしても返せるあてがないし…。
人質って、お給料でないわよね?
だって、賠償金と引き換えですものね。
あ、メイドのお仕事でお給料もらえないかしら?
私がぶつぶつと独り言を言って考えていると、ギルバート様は呆れたように言った。
「いい。わたしが買ってやりたいのだ」
「でも、それでは申し訳なくて…」
私が戸惑っていると、ギルバート様は私の後ろにある小間物屋に視線を移した。
「もし、ただ買ってもらうのが気になるなら、ひとつ願い事を叶えてくれるか?」
「願い事、ですか?」
そりゃ、私にできることでしたら、メイドとしてお部屋のお掃除でもなんでもやりますけど。
ギルバート様は目を細めて言う。
「あそこで白いハンカチーフを買うから、わたしのイニシャルを刺繍してもらえないか?」
「刺繍、ですか?いいですけど…私、あまり刺繍は得意ではありませんよ?」
「よい。シャーロットの手で刺繍されたものが欲しい」
「それでしたら…。でも、得意ではありませんので、お時間はたくさんくださいね」
ギルバート様はにっこりと頷いた。
そして、大判のハンカチーフを二枚買う。
もちろん、失敗した時の予備も含めて。
刺繍糸もギルバート様のお好みでいくつか買った。
図案は、明日ギルバート様と打ち合わせすることにした。
その他にも、ギルバート様は髪飾りだとかアクセサリーとかを買おうとしたけれど、基本離宮にいるので必要ないと、きっぱり固辞した。
かなりな数のお店を回って、少し足が痛くなってきた頃に、ギルバート様がさっきの菓子店でお茶にしようと声をかけてくれる。
素晴らしいタイミングだ。
入口は白いドアで、レースのカーテンがかけられ、すごく素敵なお店だった。
お店の中に入ると少し混んでいたけれど予約をしていたらしく、すぐに席に案内してもらえた。
外が見えるテラス席だ。
「ほら、メニューだ。なんでも好きなものを頼んでいいぞ」
ギルバート様に手渡されてメニューを開くと、ケーキや焼き菓子の絵が描かれているのが目についた。
「どうしましょう。こんなにあると迷ってしまいます」
ボナールにいた時はあまりケーキとはご縁がなかったので、自分がどのケーキが好きなのかわからないのだ。
「では、店長のオススメとやらにしてみよう。紅茶もそれに合うのを選んでもらうのでいいか?」
「はい。お任せします」
ギルバート様はお店の人を呼び、慣れたように注文をしてくれた。
「ふふふ。ギルバート様、慣れてますね。ここはご令嬢とのデートでお使いになるのですか?」
私がそう言うと、ギルバート様にしては珍しく、赤くなって慌てていた。
「ばっ、ばかを申すな。わたしがご令嬢をデートに誘うなど、ありえない。最近は離宮に顔を出すから学校が終わればすぐに城へ帰るしな」
そういえばそうか。
ほとんど毎日のように離宮で私の作った焼き菓子を食べているな…。
「シャーロットは…その…こういうところでデートがしたいのか?」
「そうですねぇ。離宮におりますから夢のまた夢ですが…」
ギルバート様は顔を赤くしたまま私に言った。
「…夢は叶えるものだ。きっと、そのうち叶うぞ」
そうですね。いつか、私も人質でなくなる日がくるかもしれませんしね。
「ギルバート様、あれはなんですの?」
「あれは雑貨屋だな。文房具などが置いてある」
「あっちはなんですの?」
「あっちは最近王都で有名な菓子店だ。あとで寄ってみよう」
お店屋さんのショーケースにはたくさんの商品が並べられ、それを見ているだけでも楽しい。
「気になるものがあるなら買ってやろう」
ギルバート様が珍しく機嫌良く私に言う。
その言葉を聞いて、私は自分がお金を持っていないことに気がついた。
「ギルバート様、申し訳ありません。せっかく連れてきていただいたのに、お金がないことを今思い出しました…」
しょんぼりと言うと、ギルバート様がイラっとした表情で私に言った。
「わたしが、女性に支払いをさせるような男に見えるのか。お前が欲しがるものはわたしが買ってやるに決まっているだろう」
「そんな…町に連れてきてもらっただけでもありがたいのに、買っていただくなんて…」
ランバラルドに来るときに、金銭は持って来なかったから、お借りしても返せるあてがないし…。
人質って、お給料でないわよね?
だって、賠償金と引き換えですものね。
あ、メイドのお仕事でお給料もらえないかしら?
私がぶつぶつと独り言を言って考えていると、ギルバート様は呆れたように言った。
「いい。わたしが買ってやりたいのだ」
「でも、それでは申し訳なくて…」
私が戸惑っていると、ギルバート様は私の後ろにある小間物屋に視線を移した。
「もし、ただ買ってもらうのが気になるなら、ひとつ願い事を叶えてくれるか?」
「願い事、ですか?」
そりゃ、私にできることでしたら、メイドとしてお部屋のお掃除でもなんでもやりますけど。
ギルバート様は目を細めて言う。
「あそこで白いハンカチーフを買うから、わたしのイニシャルを刺繍してもらえないか?」
「刺繍、ですか?いいですけど…私、あまり刺繍は得意ではありませんよ?」
「よい。シャーロットの手で刺繍されたものが欲しい」
「それでしたら…。でも、得意ではありませんので、お時間はたくさんくださいね」
ギルバート様はにっこりと頷いた。
そして、大判のハンカチーフを二枚買う。
もちろん、失敗した時の予備も含めて。
刺繍糸もギルバート様のお好みでいくつか買った。
図案は、明日ギルバート様と打ち合わせすることにした。
その他にも、ギルバート様は髪飾りだとかアクセサリーとかを買おうとしたけれど、基本離宮にいるので必要ないと、きっぱり固辞した。
かなりな数のお店を回って、少し足が痛くなってきた頃に、ギルバート様がさっきの菓子店でお茶にしようと声をかけてくれる。
素晴らしいタイミングだ。
入口は白いドアで、レースのカーテンがかけられ、すごく素敵なお店だった。
お店の中に入ると少し混んでいたけれど予約をしていたらしく、すぐに席に案内してもらえた。
外が見えるテラス席だ。
「ほら、メニューだ。なんでも好きなものを頼んでいいぞ」
ギルバート様に手渡されてメニューを開くと、ケーキや焼き菓子の絵が描かれているのが目についた。
「どうしましょう。こんなにあると迷ってしまいます」
ボナールにいた時はあまりケーキとはご縁がなかったので、自分がどのケーキが好きなのかわからないのだ。
「では、店長のオススメとやらにしてみよう。紅茶もそれに合うのを選んでもらうのでいいか?」
「はい。お任せします」
ギルバート様はお店の人を呼び、慣れたように注文をしてくれた。
「ふふふ。ギルバート様、慣れてますね。ここはご令嬢とのデートでお使いになるのですか?」
私がそう言うと、ギルバート様にしては珍しく、赤くなって慌てていた。
「ばっ、ばかを申すな。わたしがご令嬢をデートに誘うなど、ありえない。最近は離宮に顔を出すから学校が終わればすぐに城へ帰るしな」
そういえばそうか。
ほとんど毎日のように離宮で私の作った焼き菓子を食べているな…。
「シャーロットは…その…こういうところでデートがしたいのか?」
「そうですねぇ。離宮におりますから夢のまた夢ですが…」
ギルバート様は顔を赤くしたまま私に言った。
「…夢は叶えるものだ。きっと、そのうち叶うぞ」
そうですね。いつか、私も人質でなくなる日がくるかもしれませんしね。
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