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15章 ボナールの王女
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「そんな話は我がランバラルドでは、一度として出たことはありません」
オレはきっぱりと否定した。
オレは否定したはずなのに、ふふ、とセリーヌ王女が妖艶な笑みを浮かべる。
「みなさま、ごめんなさい。ちょっとした姉妹喧嘩ですの。婚約者もいないはずの王太子様もわたくし達の喧嘩に巻き込まれ、協力をしてくださっただけなのです。シャーロットは、国にユニシア公爵という婚約者がおりますもの」
また、その場が騒つく。
ボナールの第二王女が同国公爵と婚約を結んだと言う話は聞いたことがある。という囁きが聞こえる。
シャーロットの婚約者って、ロッテの婚約者だよな。
婚約者がいたのか?
それが、正妻と第二夫人を持ち、ロッテを第三夫人にしている奴なのか?
一体、何が本当で、何が嘘で、オレはどうしたらいいのかわからない。
引きつらないように顔に笑みを貼りつけていると、ディリオンがオレとロッテの前に立った。
「みなさま、今宵は若者の交流の場としてこの夜会を設けております。余興はこれくらいにして、ダンスを再開してください」
ディリオンが一礼して、広間に控えている楽団に合図を送ると、一際大きな音量で音楽が流れ出す。
納得がいかないながらも、バラバラと踊り出す出席者たち。
その中にひとり、先ほどロッテの髪に触れようとした者から、声を掛けられる。
「シャーロット王女とのことは……、余興ですか? それとも、本当にライリー王太子とご結婚されていらっしゃるのですか?」
こいつ、ロッテのことが諦めきれないのか。
「もちろんです。ボナールとの関係が整い次第、発表をさせていただきますよ」
オレがそう言うと、彼は肩を落としてその場を立ち去った。
オレがその男の背中を見ている隙に、セリーヌ王女はロッテに近付く。
オレはロッテを守るように、セリーヌ王女とロッテの間に身を滑り込ませた。
「シャーロット、その瞳はどうしたの? 瞳にもお化粧ってできるのね。びっくりしたわ。それはそうと、わたくしがあなたの代わりになります。シャーロットはあんなに泣いてランバラルドに行くのを嫌がったじゃないの。可愛い妹の代わりは、わたくしにしかできないことだわ。あなたはまた、塔の上で暮らしていてかまわないのよ」
心配そうな姉を装い、セリーヌ王女が「塔の上」というフレーズを出した時に、オレの背中でロッテが震えるのがわかった。
「失礼」
オレが何かを言う前に、いつから近くにいたのか、ギルバートがセリーヌ王女の横に立つ。
「わたしはギルバート・フォンテールと申します。王弟の息子です。セリーヌ王女、お目にかかれて光栄です」
にこやかにギルバートが挨拶をすると、セリーヌ王女は微笑んだ。
「まあ、ライリー王太子様とはいとこになられますのね。わたくしはセリーヌ・ボナールです。どうぞよろしくお願いいたします」
身分の高いギルバートに声をかけられ、セリーヌ王女の機嫌が少し直ったようだ。
「こんな騒ぎになり、申し訳ありません。セリーヌ王女もお疲れでしょうから、今日のところは一度お部屋に帰られてはいかがですか。侍女に湯あみの用意をさせております。必要な物があれば、侍女になんでもお申し付けください。今日の騒ぎのお詫びに、ご用意させていただきます」
セリーヌ王女はそれを聞いて頬を膨らます。
「でも、わたくしライリー王太子様ともっとお話ししなくてはならないの。シャーロットの代わりに、この身を差し出すつもりでおりますもの」
ギルバートは少し大袈裟にセリーヌ王女を褒める。
「なんてお優しいことでしょう。しかし、今日はライリーも疲れております。セリーヌ王女とゆっくりお話しするのも難しいでしょう。それに、太陽のように光り輝くセリーヌ王女のために、太陽のような黄色の花をちりばめた湯殿をご用意しております。湯が覚めぬうちにどうぞ」
絶対、ギルバートも早く帰れと思っているに違いないのに、それを見せずに優しげにセリーヌ王女に話しかける。
普段、仏頂面しか見たことがなかったが、こいつはこんなこともできるのか。
「まあっ、お花のお風呂?」
「はい。幾重にも花弁を付ける黄色のカーネーションの花を溢れるほど浮かべてあります。華やかなセリーヌ王女には豪華な湯殿をお使いいただきたいと、ささやかではありますが、わたしの気持ちです」
花の風呂と聞いて機嫌が上昇したのか、笑みがこぼれる。
「わかりました。今日は、わたくしは部屋に戻ります。明日はライリー王太子様とお話させてくださいね」
うっすらと頬を染めてギルバートを見つめ、セリーヌ王女は機嫌良くその場を去って行った。
オレはギルバートの方を向かずに、セリーヌ王女を見送る振りをしてギルバートに声をかけた。
「よく、花風呂なんか用意してたな」
ギルバートもオレと同じように、にこやかな表情でセリーヌ王女を見送る振りをしながら答えた。
「お前が無事に婚約者を見つけられたら、婚約祝いに2人で入ってもらおうと思って用意していた」
「祝いだと? ギルがオレを祝うなんて、珍しいじゃないか」
「だから、お前はバカなんだ。黄色のカーネーションの花言葉を調べろ」
もちろん、悪い意味の方をな。
オレはきっぱりと否定した。
オレは否定したはずなのに、ふふ、とセリーヌ王女が妖艶な笑みを浮かべる。
「みなさま、ごめんなさい。ちょっとした姉妹喧嘩ですの。婚約者もいないはずの王太子様もわたくし達の喧嘩に巻き込まれ、協力をしてくださっただけなのです。シャーロットは、国にユニシア公爵という婚約者がおりますもの」
また、その場が騒つく。
ボナールの第二王女が同国公爵と婚約を結んだと言う話は聞いたことがある。という囁きが聞こえる。
シャーロットの婚約者って、ロッテの婚約者だよな。
婚約者がいたのか?
それが、正妻と第二夫人を持ち、ロッテを第三夫人にしている奴なのか?
一体、何が本当で、何が嘘で、オレはどうしたらいいのかわからない。
引きつらないように顔に笑みを貼りつけていると、ディリオンがオレとロッテの前に立った。
「みなさま、今宵は若者の交流の場としてこの夜会を設けております。余興はこれくらいにして、ダンスを再開してください」
ディリオンが一礼して、広間に控えている楽団に合図を送ると、一際大きな音量で音楽が流れ出す。
納得がいかないながらも、バラバラと踊り出す出席者たち。
その中にひとり、先ほどロッテの髪に触れようとした者から、声を掛けられる。
「シャーロット王女とのことは……、余興ですか? それとも、本当にライリー王太子とご結婚されていらっしゃるのですか?」
こいつ、ロッテのことが諦めきれないのか。
「もちろんです。ボナールとの関係が整い次第、発表をさせていただきますよ」
オレがそう言うと、彼は肩を落としてその場を立ち去った。
オレがその男の背中を見ている隙に、セリーヌ王女はロッテに近付く。
オレはロッテを守るように、セリーヌ王女とロッテの間に身を滑り込ませた。
「シャーロット、その瞳はどうしたの? 瞳にもお化粧ってできるのね。びっくりしたわ。それはそうと、わたくしがあなたの代わりになります。シャーロットはあんなに泣いてランバラルドに行くのを嫌がったじゃないの。可愛い妹の代わりは、わたくしにしかできないことだわ。あなたはまた、塔の上で暮らしていてかまわないのよ」
心配そうな姉を装い、セリーヌ王女が「塔の上」というフレーズを出した時に、オレの背中でロッテが震えるのがわかった。
「失礼」
オレが何かを言う前に、いつから近くにいたのか、ギルバートがセリーヌ王女の横に立つ。
「わたしはギルバート・フォンテールと申します。王弟の息子です。セリーヌ王女、お目にかかれて光栄です」
にこやかにギルバートが挨拶をすると、セリーヌ王女は微笑んだ。
「まあ、ライリー王太子様とはいとこになられますのね。わたくしはセリーヌ・ボナールです。どうぞよろしくお願いいたします」
身分の高いギルバートに声をかけられ、セリーヌ王女の機嫌が少し直ったようだ。
「こんな騒ぎになり、申し訳ありません。セリーヌ王女もお疲れでしょうから、今日のところは一度お部屋に帰られてはいかがですか。侍女に湯あみの用意をさせております。必要な物があれば、侍女になんでもお申し付けください。今日の騒ぎのお詫びに、ご用意させていただきます」
セリーヌ王女はそれを聞いて頬を膨らます。
「でも、わたくしライリー王太子様ともっとお話ししなくてはならないの。シャーロットの代わりに、この身を差し出すつもりでおりますもの」
ギルバートは少し大袈裟にセリーヌ王女を褒める。
「なんてお優しいことでしょう。しかし、今日はライリーも疲れております。セリーヌ王女とゆっくりお話しするのも難しいでしょう。それに、太陽のように光り輝くセリーヌ王女のために、太陽のような黄色の花をちりばめた湯殿をご用意しております。湯が覚めぬうちにどうぞ」
絶対、ギルバートも早く帰れと思っているに違いないのに、それを見せずに優しげにセリーヌ王女に話しかける。
普段、仏頂面しか見たことがなかったが、こいつはこんなこともできるのか。
「まあっ、お花のお風呂?」
「はい。幾重にも花弁を付ける黄色のカーネーションの花を溢れるほど浮かべてあります。華やかなセリーヌ王女には豪華な湯殿をお使いいただきたいと、ささやかではありますが、わたしの気持ちです」
花の風呂と聞いて機嫌が上昇したのか、笑みがこぼれる。
「わかりました。今日は、わたくしは部屋に戻ります。明日はライリー王太子様とお話させてくださいね」
うっすらと頬を染めてギルバートを見つめ、セリーヌ王女は機嫌良くその場を去って行った。
オレはギルバートの方を向かずに、セリーヌ王女を見送る振りをしてギルバートに声をかけた。
「よく、花風呂なんか用意してたな」
ギルバートもオレと同じように、にこやかな表情でセリーヌ王女を見送る振りをしながら答えた。
「お前が無事に婚約者を見つけられたら、婚約祝いに2人で入ってもらおうと思って用意していた」
「祝いだと? ギルがオレを祝うなんて、珍しいじゃないか」
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もちろん、悪い意味の方をな。
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