人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉

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17章 王族としての生活

3

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ギルバート様に申告した通り、3日後には本宮に引っ越す事ができた。

私付きの侍女は、増やすと言う話も出たけれど、今はジュディ一人だけにしてもらった。
後からマリーが来るし、私は大抵の事は自分でできるので、あまりたくさんの侍女は必要がない。

引越しも、荷物はそんなになくて、ギルバート様にびっくりされた。

「シャーロット、いったい何をしていたら、たったこれだけの荷物をまとめるのに3日もかかるのだ」
ギルバート様は、ご自分のお母様のお部屋を貸してくださるので、何かと手伝いに来てくれようとする。
でも、はっきり言って、侍女も要らないくらいなのに、ギルバート様のお手伝いはあまり必要ない。

「ギルバート様、乙女のクローゼットを開けるなんて失礼ですわ」
私が文句を言うと、ギルバート様はニヤリと笑う。
「それはクローゼットに服が入っている場合だろう。なんだ、このスカスカ具合は。母上がここに居た頃は、このクローゼットに何十着のドレスが入っていたぞ」

ギルバート様に笑われるのも頷ける。
クローゼットの中にあるのは、ボナールから持参したセリーヌ様のお下がりドレス数着と、フレッド様からいただいた薄黄色のドレスだけなのだ。
ドレスの他にある、普段着るワンピースも、そんなにたくさんはない。

ギルバート様は、ふとフレッド様からいただいたドレスに目を止めて、私に訊いた。
「そう言えば、この間の夜会に着てきたドレスは、なんでこれだったんだ? フレッドの髪色に合わせてきたのかと思ったぞ。普通なら、ライリーに寄せるべきだろう」
「ライリー殿下に合わせるべきでしたが、それはできませんでしたわ。私の手持ちのドレスが、全てセリーヌ様のお下がりだからです。セリーヌ様がご出席されている夜会に、いくらアレンジしているとはいえ、お下がりとわかるドレスを着て出席するわけには参りませんでしたから」
「あー…、なんか、お前もいろいろと大変だったんだな。よし、わたしがドレスをプレゼントしてやろう」
両腕を腰にあて、胸を張るギルバート様。
「あの、ギルバート様。孫にプレゼントを買うおじいちゃんじゃないんですから、やめてくださいな」
「なにっ、おじいちゃんだと! わたしはシャーロットと同い年だ。なんて失礼なことを言うのだ。とにかく、ドレスは買う。このクローゼットがこんなにスカスカなのは、わたしのプライドが許さん」

何故クローゼットがスカスカだと、ギルバート様のプライドが許さないのかよくわからないけど、話を逸らしてうやむやにしてしまおう。
「ギルバート様、お茶はいかがですか?」
「うむ。もらおう」
ギルバート様は、私がお茶と言うと、何を置いても同意してくれる。

私とギルバート様が、お茶にする為にウォークインクローゼットを出ると、ライリー殿下が部屋に居た。

「あ、ライリー殿下。ご機嫌麗しく」
私が挨拶をしようとすると、ライリー殿下はそれを止めた。
「いや、シャーロット、堅苦しい挨拶はいらない。それより、なんでギルバートと二人っきりでそんな狭いところに隠れているんだ」

私とギルバート様は顔を見合わせた。
「何を言っているんだ、ライリー。脳みそがとうとう腐ったか」
「ジュディはどこに行ったんだ?」
私は慌ててライリー殿下に告げる。
「ジュディはまだ離宮の片付けがあると、そちらの方に行っておりますわ」

ライリー殿下は眉根を寄せる。
「だから、もっと侍女を増やすように言ったんだ」
何やらぶちぶちとつぶやいているけれど、私の耳には届かない。
雲行きが怪しいこんな時は、食べ物で機嫌を取るのが一番近道。

「あの、ライリー殿下。これからギルバート様とお茶を飲むんですが、ご一緒にいかがですか?」
「飲む」
あ、まだこの部屋にいらっしゃるんですね。
「では、ご用意いたしますので、あちらでおくつろぎくださいませ」

私はライリー殿下とギルバート様に、リビングでお待ちいただくように言った。

ギルバート様のお母様のお部屋は、寝室、リビング、浴室、パウダールームの4つの部屋を一人部屋としている。
さすがに王弟の奥方様のお部屋だけあって、一つ一つがとても広い。
これだけ広ければキッチンもついているのでは、と期待したが、さすがにキッチンはついていなかった。残念。
リビングの隣の仕切りに、お湯を沸かすくらいの設備はあるので、自分でお茶を入れるくらいはできる。

今日のオヤツはロールケーキ。
離宮で作った最後のお菓子。
明日からは、お城の料理長が作ったものを食べることになる。
料理長のお菓子は、とってもとっても美味しいけれど、自分で作るのも楽しかったので少し残念。

リビングにケーキと紅茶を乗せたワゴンを押して入り、ギルバート様とライリー殿下にも、ロールケーキと紅茶をお出しする。
自分の分もカップに注ぎ、ライリー殿下、ギルバート様の前に私も腰を下ろした。

私が椅子に座るのを見計らって、ライリー殿下が口を開く。
「今後のことを、少し話してもいいだろうか?」
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