人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉

文字の大きさ
130 / 187
17章 王族としての生活

9

しおりを挟む
「なんか2人共お疲れのようですね。もし良ければ、ハーブティを入れましょうか?疲れが少し取れますよ」
私がそう言うと、ライリー殿下が顔を上げた。

「そうだ。ハーブティで思い出した。ずっと聞きたかったんだよ。ディリオンにパウンドケーキを食べさせてハーブティを飲ませた白金の髪のメイドって、シャーロット?」
もしかして、一度だけ執務室でディリオン様に甘いものをお渡ししたときのことかしら?

「ええ、確かに一度だけ覚えがありますけれど…」
戸惑いながらライリー殿下に言う。
すると、ライリー殿下はブスッと不貞腐れた。
「なんでだよ……。執務室まで来てたのに、なんでオレだけ一度も城で会わなかったんだろう」
「あの、すみません……」
私は小さくなって謝った。
「シャーロット、ライリーになんか謝る必要はないぞ。こいつが最初にシャーロットには会わないって言ったんだ」
ギルバート様は紅茶を片手にライリー殿下をチラッと見た。

まあ、それはそうだけど。
ランバラルドに来たばかりの私、ライリー殿下に会ってもらえなくて、多少は傷ついたのよ?

「いや、うん。オレも悪かったよ。初めての外交だったし、それが不本意な結果だったしで、意固地になっていたんだ。ごめんね、シャーロット」
「いえ。もういいんですよ。では、ハーブティを入れてきますね」

私は席を立ち、マリーに目配せをした。
マリーは素早くハーブティを入れられるように出してくれる。

ふふ。
目配せをしてマリーとわかり合うなんて、ここで覚えたことだ。
ボナールにいた頃の私は、もっとマリーに甘えてしまっていて、マリーも仕方なしに私を甘えさせてくれていた。
ここでは、主人と侍女の距離をマリーから教わっている。

でも、誰もいない時は今まで通り、甘えさせてくれるから、やっぱりマリーのことは大好き。


ディリオン様に入れたのと同じ、カモミールに蜂蜜を入れたお茶を2人に出す。

「初めて飲むが、今まで飲んだお茶とは趣きが全然違うな」
ギルバート様はそう言いながらも、こくこく飲んでいるので、そんなに悪くはないようだ。
「うん。確かに、癒されるような気がする。そうだ。今度のお茶会では、ハーブティを出してみようか」
「お茶会、ですか?」

私が聞き返すと、ライリー殿下は私とマリーの方を向く。
「そうだ、それもあって今日はここに来た。このところ、滞在していた他国の賓客が帰国して行ったが、まだいくつか残っているところもあってさ。セリーヌ王女も城から出て行ってここには居ないし、一つくらいお茶会のお誘いを受けてもいいなかと思って」

私は慌てて首を振る。
「そんな、まだマナーなどが不安です。もう少ししてからにはならないでしょうか?」
「うーん。そうすると、シャーロットを連れて国外に外交に行かなければならないから、できればここで小規模のお茶会を開いた方が楽だと思うよ?」

私たちの会話を聞いて、ギルバート様が口を開く。
「シャーロット、大丈夫だ。アルバートもお前は優秀だと言っていただろう? 少し覚えれば、国内でやる小規模の茶会くらい、なんとでもなる」

そうだろうか……。
この間の夜会で、ここに来てから初めて人前に出たけれど、ほとんどみなさんとはお話しできなかったし、ボナールに居た頃は話すなと言われていたし。

「シャーロット、不安に思うのも無理はない。そこの王太子は無能だからな。フォローは望めんかもしれないな」
「ギルバート、喧嘩売ってるのか」
ギルバート様はニヤリと笑う。
「いや、バカにしているだけだ」
「なんだと!」

「とにかく、シャーロットは受けたらいい。何事も経験だ」
私はギルバート様の言葉に、素直に頷いた。
「はい。がんばります」


ライリー殿下は、自分の言葉よりも私がギルバート様の言うことを聞いたことが不満だったようだが、私から了承の言葉を受け取ると、この部屋を出て行った。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~

塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます! 2.23完結しました! ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。 相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。 ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。 幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。 好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。 そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。 それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……? 妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話 切なめ恋愛ファンタジー

今宵、薔薇の園で

天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。 しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。 彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。 キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。 そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。 彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

噂の悪女が妻になりました

はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。 国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。 その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。

離婚したいけれど、政略結婚だから子供を残して実家に戻らないといけない。子供を手放さないようにするなら、どんな手段があるのでしょうか?

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 カーゾン侯爵令嬢のアルフィンは、多くのライバル王女公女を押し退けて、大陸一の貴公子コーンウォリス公爵キャスバルの正室となった。だがそれはキャスバルが身分の低い賢女と愛し合うための偽装結婚だった。アルフィンは離婚を決意するが、子供を残して出ていく気にはならなかった。キャスバルと賢女への嫌がらせに、子供を連れって逃げるつもりだった。だが偽装結婚には隠された理由があったのだ。

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。 伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。 真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。 (他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…) (1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

処理中です...