人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉

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17章 王族としての生活

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私がドレスを着る生活に、なんとか馴染んだ頃。
家庭教師のアルバート先生を連れて、ギルバート様がやってきた。

アルバート先生は50代くらいの男の人で、ギルバート様の家庭教師もやっているそうだ。

「シャーロット、アルバートは優秀は家庭教師だぞ。わたしも少し世話になった」
ギルバート様がそう言うと、アルバート様はコツンとギルバート様の頭を叩く。
「ギルバート様、少し世話になったとは何ですか。わたしはギルバート様をお世話しましたよ。10以上のたし算ができなくて泣いていた時に、指を貸してあげたじゃないですか」
「アルバート……! いつの話をしているのだ。シャーロットの前でそんな昔の話をするな」
ギルバート様は赤くなって、ぷいと横を向いてしまった。

アルバート先生はとても気さくな方で、授業は面白かった。
何故か横でギルバート様も見ていて、何やかやと口出しをしてきて、アルバート先生に怒られていた。

休憩を挟んでの3時間の授業が終わり、マリーの入れてくれたお茶を3人で楽しむ。

「シャーロット殿下は本当に家庭教師は付かなかったのですか?」
アルバート先生が私に問いかける。
「いいえ。ついておりましたよ? 1.2週間に一度は1時間ほど教えてくださいました」
「1.2週間に一度…」
今度はギルバート様が驚いた表情でこちらを見る。
「そんな少ない時間で、一体何を教わったんだ」
「そうですねぇ。挨拶の仕方と食事のマナーと、あとダンスを少しですね」
「勉強は?」
「読み書きと算術はマリーが教えてくれましたよ」
私のマリーはなんでもできるんです!と、私は胸を張る。
少し離れた場所で控えているマリーを見ると、赤くなって照れていた。

「いや、驚いたな…。あまり勉強については教えられていないと言われてもいたのでそのつもりで資料を用意すれば、いとも簡単に理解するし、水害が起こるしくみを聞けば完璧に答えられるし、あなたはとても優秀な生徒です」
それは…。
塔の上からよく雲を眺めていたから。
雨が降る時の空の色、鳥の飛ぶ方向、太陽の見え方。
だから、説明されたら何となく繋がっただけで、何もないところからの理解ではない。

「これまでの生活の中で見てきただけですわ」
私にとっては、あまりいい思い出でもない。

「次からは、もっと難しい本を持ってきましょう」
お茶を飲み終わったアルバート先生は、そう言って爽やかに去って行った。


アルバート先生がいなくなったら、ギルバート様は先生が手をつけなかったお菓子にまで手を伸ばす。
「うーん。パウンドケーキはやっぱりシャーロットの作る方がわたしの口には合うな。」
「そう言っていただけると嬉しいです。また作れるようになるといいのですが……」

ギルバート様は二切れ目のパウンドケーキに手を伸ばす。
これでよく糖尿病にならないものだわ。

ギルバート様の食べっぷりを見ていると、コンコンっとドアをノックする音が聞こえた。

マリーがドアを開けると、ライリー殿下がスルッとドアの内側に入ってきた。
「あー疲れたー」
ため息をつきながら、私とギルバート様の座っているテーブルセットにもたれかかり、アルバート様が座っていた椅子に腰掛けた。

「なんですかっ! ライリー殿下。入室許可が出る前に部屋に入るとは何事ですか。しかもここは独身女性の部屋ですよ」
マリーが両腕を腰にあて、ライリー殿下を叱り飛ばす。
「マリーはオレにまでお小言を言うようになったか……」
「わたしは良いことは良い、悪いことは悪いと言える侍女です。王太子殿下であっても、言わせていただきます」
マリーが強い口調で言うと、何故か怒られているライリー殿下はにこにこと笑い出した。
「いいなあ。そういうの。ちゃんと怒ってくれる人がいるっていうのは」

マリーはあきれながらも、ライリー殿下の分の紅茶を入れてくれた。

ギルバート様は今度はクラッカーに手を伸ばしながらライリー殿下に話しかける。
「このところ、シャーロットのところにも来ないと思っていたら、何かあったのか? 疲れていそうではないか」
ガバッとライリー殿下は顔を上げる。
「そうだよ、聞いてくれよ。やっとセリーヌ王女が、城を出て行ったんだよー。まあ、まだ国内にはいるけどな。国境近くの王家の別荘に移ったんだ」
「ああ、やっと行ったのか。既製品のドレスで済まそうと思ったら、ああでもないこうでもないと注文をつけて、セミオーダーのドレスになってしまったから時間がかかったのだな」

なんで、セリーヌ様がお城を出て行った話とドレスが繋がるのかしら……。
「あの、ドレスがどうかしたんですの?」
「夜会の時に、わたしが場を収めるために、必要なものがあれば用意すると言ったら、ドレスを買えと言われたのだ」
「そ。そのドレスができるまで城に滞在してたから、なかなか出て行かなくて……」

はあぁー。

男2人がそろって深くため息をついた。
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