人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉

文字の大きさ
128 / 187
17章 王族としての生活

7

しおりを挟む
私は奥の部屋へとローザ様に拉致されて行った。

あれよあれよと言う間に、お仕着せを脱がされて、メジャーを持ったローザ様にあちこち測られる。
いつの間にか、ローザ様の周りには、助手らしき女性が3人ほどやってきて、ローザ様を手伝っていた。

腕を上げたり背中を向けたり。
あっを向いて、こっちを向いて、くるくるくる。

ありとあらゆるデータを取られ、やっとワンピースを着ても良いと、ローザ様からお許しがでた。
ドレスって、こんなに測らないと作れないものなのかしら…。初めてなのでわからないけれど。

少し疲れた私が紺のワンピースに袖を通すと、ローザ様はちらっと私の服を見た。


ワンピースを着終わって一番広い部屋に行くと、ジュディも来ていて、応接セットにお茶の用意がしてあって、ほっこりする。

マリーがローザ様をソファに促すと、ローザ様はにっこりと微笑んでソファに座った。

マリーが紅茶を入れてくれる。
ローザ様は一口飲んで喉を潤してから、私に向き合った。
「シャーロット殿下は、どんなタイプのドレスがお好きですか?」

ローザ様に言われて、少し考えてみる。

うーん。
今までドレスはお下がりで、選べるものではなかったから、検討もつかないわ。
私が答えられずに悩んでいると、ローザ様はにこりと笑う。「では、今日の午後にでもいくつか届けさせますのでお気に召したものがあれば、おしえていただけると嬉しいですわ」
「わかりました」

私がそう返事をすると、ローザ様は満足げに頷いて帰って行った。


その日の午後。
見事なドレスが3着届いた。

白いフワリとしたレースが素敵なドレスに、青い光沢のある生地で作られたドレス、淡いピンクに腰の横にリボンのついたドレス。

マリーはトルソーにドレスを着せて私に見せた。
ジュディもドレスを見て目をキラキラさせている。
「姫様~、素敵なドレスですよ。このピンクなんか、姫様に似合いそうですね。早く着て見せてくださいよ」
ジュディは私の着るドレスのアレンジをいつもやってくれていたので、新しいドレスは気になるようだった。
「マリー、この中から1着選べばいいのかしら?」
私の問いに、マリーは首を傾げた。
「3着とも、もう代金はお支払い済みですよ? 全部姫様のものです」

え…?
私は1人しかいないのに、3着も買うの?
「また舞踏会でもあるの?」
「いいえ。こちらにあるのは普段着ですよ」
「普段着……」

どう見ても、普段着とは思えない。
飾りはたくさん付いているし、生地も高そうだし。

私が、じーっとドレスを眺めていると、何かを察したジュディが呆れたように言う。
「もしかして、姫様「高そう」とか思っていませんか?思い出してくださいよ。セリーヌ様はもっと豪華なドレスを普段着にしていたじゃないですか」

ジュディの言葉に私は記憶をたどる。
ボナールにいた頃の、セリーヌ様。あと王妃様。
うん。確かにもっと豪華なドレスを普段着ていた。

「そうね、わかったわ。マリー、ちなみになんだけど、このドレスたちっていくらかしら?」
マリーはあきれたように私を見た。
「姫様。値段を聞くのはマナー違反ですよ。ライリー殿下がご用意くださったものを」
「で、でも、気になるんですもの」
私が下を向くと、ジュディが助け船を出してくれる。
「かあさん、仕方ないわよ。姫様は今まであのワンピースで過ごされていたのよ。いきなり普通の王族みたいに振る舞えっていうのは酷だわ」
ジュディがそう言うと、マリーは嫌々ドレスの値段を教えてくれた。

「そっちのピンクは銀貨、」
「あ、待ってマリー。私、やっと自分で買い物するようになって、お金の価値を知ったの。できればランで教えてほしいわ」
銀貨で言われても、単位が大きくて想像ができないもの。

「では、このピンクは13万ランです。あちらはレースがありますので16万ラン。青い方は14万ランです。これらは既製品を手直ししたものなので、そう高くはない方ですよ」

じゅっ、16万ラン!?

私が一生懸命クッキーを焼いても、320袋売れないとこのドレスは買えないんだ。
1袋500ランで売っていたもの。

私が口を開けてドレスを眺めていると、マリーは優しく微笑んだ。
「姫様、ドレスの価値がわかるのはいいことです。ましてや、このドレス1着買うのに、税金がいくら使われているのか考えることも、大変素晴らしいと思います。ですがあんまりみすぼらしいドレスを着て振舞うのは、国の顔としては良いことではありません。他国は、王族を見てその国の雰囲気を掴みます。ですから、ある程度の嗜みとして、ドレスを身につけてください」

そうか。
私があんまりみすぼらしい姿でいると、ランバラルドの国民が他国からバカにされてしまうのね。
「わかりました。私、このドレスを着ます!」


そうして、青いドレスを試着していると、ライリー殿下がちょうどよく訪ねてきて「オレの贈ったドレスを、シャーロットが着ている!」と、やたら感動していた。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜

まほりろ
恋愛
ムーンライトノベルズで日間総合1位、週間総合2位になった作品です。 【完結】「ディアーナ・フォークト! 貴様との婚約を破棄する!!」見目麗しい第二王子にそう言い渡されたとき、ディアーナは騎士団長の子息に取り押さえられ膝をついていた。王子の側近により読み上げられるディアーナの罪状。第二王子の腕の中で幸せそうに微笑むヒロインのユリア。悪役令嬢のディアーナはユリアに斬りかかり、義理の兄で第二王子の近衛隊のフリードに斬り殺される。 三日月杏奈は漫画好きの普通の女の子、バナナの皮で滑って転んで死んだ。享年二十歳。 目を覚ました杏奈は少女漫画「クリンゲル学園の天使」悪役令嬢ディアーナ・フォークト転生していた。破滅フラグを壊す為に義理の兄と仲良くしようとしたら溺愛されました。 私の事を大切にしてくれるお義兄様と仲良く暮らします。王子殿下私のことは放っておいてください。 ムーンライトノベルズにも投稿しています。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

噂の悪女が妻になりました

はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。 国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。 その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

赤貧令嬢の借金返済契約

夏菜しの
恋愛
 大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。  いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。  クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。  王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。  彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。  それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。  赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。

離婚したいけれど、政略結婚だから子供を残して実家に戻らないといけない。子供を手放さないようにするなら、どんな手段があるのでしょうか?

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 カーゾン侯爵令嬢のアルフィンは、多くのライバル王女公女を押し退けて、大陸一の貴公子コーンウォリス公爵キャスバルの正室となった。だがそれはキャスバルが身分の低い賢女と愛し合うための偽装結婚だった。アルフィンは離婚を決意するが、子供を残して出ていく気にはならなかった。キャスバルと賢女への嫌がらせに、子供を連れって逃げるつもりだった。だが偽装結婚には隠された理由があったのだ。

こんなに遠くまできてしまいました

ナツ
恋愛
ツイてない人生を細々と送る主人公が、ある日突然異世界にトリップ。 親切な鳥人に拾われてほのぼのスローライフが始まった!と思いきや、こちらの世界もなかなかハードなようで……。 可愛いがってた少年が実は見た目通りの歳じゃなかったり、頼れる魔法使いが実は食えない嘘つきだったり、恋が成就したと思ったら死にかけたりするお話。 (以前小説家になろうで掲載していたものと同じお話です) ※完結まで毎日更新します

死にかけ令嬢の逆転

ぽんぽこ狸
恋愛
 難しい顔をしたお医者様に今年も余命一年と宣告され、私はその言葉にも慣れてしまい何も思わずに、彼を見送る。  部屋に戻ってきた侍女には、昨年も、一昨年も余命一年と判断されて死にかけているのにどうしてまだ生きているのかと問われて返す言葉も見つからない。  しかしそれでも、私は必死に生きていて将来を誓っている婚約者のアレクシスもいるし、仕事もしている。  だからこそ生きられるだけ生きなければと気持ちを切り替えた。  けれどもそんな矢先、アレクシスから呼び出され、私の体を理由に婚約破棄を言い渡される。すでに新しい相手は決まっているらしく、それは美しく健康な王女リオノーラだった。  彼女に勝てる要素が一つもない私はそのまま追い出され、実家からも見捨てられ、どうしようもない状況に心が折れかけていると、見覚えのある男性が現れ「私を手助けしたい」と言ったのだった。  こちらの作品は第18回恋愛小説大賞にエントリーさせていただいております。よろしければ投票ボタンをぽちっと押していただけますと、大変うれしいです。

処理中です...