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4章 そして運命の歯車は回り出す
8
「ルーク様!?」
わたしは慌てて窓を開けた。
「ジーナ、無用心だぞ。そんなにすぐ窓を開けるな」
ルーク様がぷりぷり怒りながら、窓を越えて部屋に入ってきた。
いやいやいや、ダメでしょう! 女子寮に入っちゃ!
「ルーク様、用事があったらちゃんと玄関から来て下さい」
「もう門限過ぎてる」
「では、明日にしてください!」
「やだ」
もお……。ワガママなんだから……。
「ジーナ、ランプ点けるぞ」
ルーク様はランプを点けてくれる。
真っ暗だった部屋の中が、明るくなった。
あ、やだ。部屋散らかしっぱなしだ。恥ずかしい。
ルーク様は、部屋にある二人掛け用のテーブルセットに勝手に座り、自分で持ってきた鞄を開けてごそごそと中身を出した。
「どうせ右手が痛くてフォークも持てなかっただろ? 左手で食える物をと、サンドイッチを持ってきた」
お腹が空いていたわたしは、急いで空いている方の椅子に座った。
「すごいです! ルーク様、わたしお腹空いてたんです」
ルーク様が差し出してくれた紙袋を開けようとしたけど、左手だけではうまく開けられず。
「ジーナ、貸してみろよ」
ルーク様がわたしから紙袋を取り上げて、中身をだしてくれた。
ルーク様はサンドイッチを一つ取り出し、わたしの口元に近付けた。
「ほら、あーんは?」
「る、ルーク様。左手は痛くないので自分で食べられます」
「いやいや、こういう機会はもうないから、大人しく世話をさせてくれ」
「意味がわかりません。わたしの世話をする機会なんて、今も今後もありませんよ」
だから、サンドイッチください。と言うと、ルーク様はニヤニヤ顔をやめずにサンドイッチを再度口元に近付ける。
「ワガママ言うなよ。ほら、あーん」
わたしの鼻先でサンドイッチが美味しそうな匂いを出す。
もう我慢できずに。ぱくっとサンドイッチに噛み付く。
「もぐもぐ。ルーク様、美味しいです」
「だろ? オレが食べさせたから」
「いえ、自分で食べたらもっと美味しいと思います」
気兼ねなく、大口で食べられる方が美味しいでしょう?
そう言うとルーク様は少し拗ねた。
わたしがルーク様からサンドイッチを受け取って
食べている間に、右手が痛くて脱ぎ散らかしたままだった制服のブレザーをハンガーに掛けたりと、ルーク様は気を遣ってくれる。
「……食い終わったか?」
コポコポと水差しからグラスに水を汲んでくれて、ルーク様はわたしに差し出す。
「はい。美味しかったです。ごちそうさま」
コクコクとお水を飲む。
「じゃ、そろそろ寝ろ。着替えはどこだ?」
「ああ、寝間着はそのクローゼットの引き出しです」
ルーク様はクローゼットを開けて、引き出しから寝間着を出した。
「ほら、右腕に触らないように吊り紐外すから、ゆっくり腕を上げろ」
わたしは立ち上がり、ルーク様に言われるがままに腕を上げる。
……ん?
「ルーク様、これでは制服が脱げてしまいます」
「当たり前だろ? 着替えるんだから」
「いやいやいや、レディの着替えをルーク様が手伝うのは、なんか違います」
「……いいじゃん。婚約者なんだから」
またもやルーク様は少し拗ねたように言う。
かわいいが、このまま流されてはいけない。
「未婚の男女がこんな狭い密室で二人きりなだけでも問題なのに、服を脱がせるなんてダメダメです」
「結婚するのに?」
「結婚してからならいいですよ」
「ちぇっ。ジーナの世話をしてみたかったのに」
きっと、いつもルーク様はわたしからもらうばかりと言っているから、お返しができる今、ここぞとばかりに色々やりたいんだろう。
「ルーク様。充分ですよ。お腹がいっぱいになって幸せですし、暗い部屋で鬱々としていましたが、ランプを点けてもらってルーク様のお顔を見たら、霧が晴れたようにすっきりしました。だから、もう大丈夫ですよ」
わたしが笑顔でそう言うと、ルーク様も微笑んでくれて、寝間着をたたんでベッドの端に置いてくれた。
「ちよっとは下心があったんだけどな」
振り向いていたずらっ子の顔でルーク様はわたしに言った。
「え?」
「ジーナ。キスしてもいい?」
ルーク様はわたしの返事を聞かずにず、わたしの目の前までやってきた。
向かい合ってお互いの顔を見つめる。
不意に、ルーク様は着けていた仮面を取った。
わたしがじっと、ルーク様の瞳を見ていると、ルーク様は火傷を見ていると思ったのか「怖い?」とわたしに聞く。
「怖いわけがありません。綺麗な瞳だと思って……」
それを聞いたルーク様は、微笑むと右腕を避けてわたしの腰に手を回し、わたしを引き寄せて触れるだけのキスをした。
すぐに離れたそれは、感触がなくなってもわたしの心に熱を残した。
「じゃ、ジーナ。オレはもう帰るよ。おやすみ、いい夢を」
ルーク様はもう一度わたしに近付くと、額に軽くキスをして、来た時と同じように、また窓を越えて部屋を出て行った。
ルーク様のばか。
右腕が熱を持って熱いというのに、顔まで熱くなったじゃないか。
わたしの、ファーストキスだった。
わたしは慌てて窓を開けた。
「ジーナ、無用心だぞ。そんなにすぐ窓を開けるな」
ルーク様がぷりぷり怒りながら、窓を越えて部屋に入ってきた。
いやいやいや、ダメでしょう! 女子寮に入っちゃ!
「ルーク様、用事があったらちゃんと玄関から来て下さい」
「もう門限過ぎてる」
「では、明日にしてください!」
「やだ」
もお……。ワガママなんだから……。
「ジーナ、ランプ点けるぞ」
ルーク様はランプを点けてくれる。
真っ暗だった部屋の中が、明るくなった。
あ、やだ。部屋散らかしっぱなしだ。恥ずかしい。
ルーク様は、部屋にある二人掛け用のテーブルセットに勝手に座り、自分で持ってきた鞄を開けてごそごそと中身を出した。
「どうせ右手が痛くてフォークも持てなかっただろ? 左手で食える物をと、サンドイッチを持ってきた」
お腹が空いていたわたしは、急いで空いている方の椅子に座った。
「すごいです! ルーク様、わたしお腹空いてたんです」
ルーク様が差し出してくれた紙袋を開けようとしたけど、左手だけではうまく開けられず。
「ジーナ、貸してみろよ」
ルーク様がわたしから紙袋を取り上げて、中身をだしてくれた。
ルーク様はサンドイッチを一つ取り出し、わたしの口元に近付けた。
「ほら、あーんは?」
「る、ルーク様。左手は痛くないので自分で食べられます」
「いやいや、こういう機会はもうないから、大人しく世話をさせてくれ」
「意味がわかりません。わたしの世話をする機会なんて、今も今後もありませんよ」
だから、サンドイッチください。と言うと、ルーク様はニヤニヤ顔をやめずにサンドイッチを再度口元に近付ける。
「ワガママ言うなよ。ほら、あーん」
わたしの鼻先でサンドイッチが美味しそうな匂いを出す。
もう我慢できずに。ぱくっとサンドイッチに噛み付く。
「もぐもぐ。ルーク様、美味しいです」
「だろ? オレが食べさせたから」
「いえ、自分で食べたらもっと美味しいと思います」
気兼ねなく、大口で食べられる方が美味しいでしょう?
そう言うとルーク様は少し拗ねた。
わたしがルーク様からサンドイッチを受け取って
食べている間に、右手が痛くて脱ぎ散らかしたままだった制服のブレザーをハンガーに掛けたりと、ルーク様は気を遣ってくれる。
「……食い終わったか?」
コポコポと水差しからグラスに水を汲んでくれて、ルーク様はわたしに差し出す。
「はい。美味しかったです。ごちそうさま」
コクコクとお水を飲む。
「じゃ、そろそろ寝ろ。着替えはどこだ?」
「ああ、寝間着はそのクローゼットの引き出しです」
ルーク様はクローゼットを開けて、引き出しから寝間着を出した。
「ほら、右腕に触らないように吊り紐外すから、ゆっくり腕を上げろ」
わたしは立ち上がり、ルーク様に言われるがままに腕を上げる。
……ん?
「ルーク様、これでは制服が脱げてしまいます」
「当たり前だろ? 着替えるんだから」
「いやいやいや、レディの着替えをルーク様が手伝うのは、なんか違います」
「……いいじゃん。婚約者なんだから」
またもやルーク様は少し拗ねたように言う。
かわいいが、このまま流されてはいけない。
「未婚の男女がこんな狭い密室で二人きりなだけでも問題なのに、服を脱がせるなんてダメダメです」
「結婚するのに?」
「結婚してからならいいですよ」
「ちぇっ。ジーナの世話をしてみたかったのに」
きっと、いつもルーク様はわたしからもらうばかりと言っているから、お返しができる今、ここぞとばかりに色々やりたいんだろう。
「ルーク様。充分ですよ。お腹がいっぱいになって幸せですし、暗い部屋で鬱々としていましたが、ランプを点けてもらってルーク様のお顔を見たら、霧が晴れたようにすっきりしました。だから、もう大丈夫ですよ」
わたしが笑顔でそう言うと、ルーク様も微笑んでくれて、寝間着をたたんでベッドの端に置いてくれた。
「ちよっとは下心があったんだけどな」
振り向いていたずらっ子の顔でルーク様はわたしに言った。
「え?」
「ジーナ。キスしてもいい?」
ルーク様はわたしの返事を聞かずにず、わたしの目の前までやってきた。
向かい合ってお互いの顔を見つめる。
不意に、ルーク様は着けていた仮面を取った。
わたしがじっと、ルーク様の瞳を見ていると、ルーク様は火傷を見ていると思ったのか「怖い?」とわたしに聞く。
「怖いわけがありません。綺麗な瞳だと思って……」
それを聞いたルーク様は、微笑むと右腕を避けてわたしの腰に手を回し、わたしを引き寄せて触れるだけのキスをした。
すぐに離れたそれは、感触がなくなってもわたしの心に熱を残した。
「じゃ、ジーナ。オレはもう帰るよ。おやすみ、いい夢を」
ルーク様はもう一度わたしに近付くと、額に軽くキスをして、来た時と同じように、また窓を越えて部屋を出て行った。
ルーク様のばか。
右腕が熱を持って熱いというのに、顔まで熱くなったじゃないか。
わたしの、ファーストキスだった。
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