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17章 隊服
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お父様は大司教様の部屋の隅にあった宝箱のような装飾のケースを開けて、白い布を手にする。
「では、大司教。この隊服に光の認定章をつけてこの者に渡しておきます。お忙しい中、ありがとうございました」
「いやいや。特に忙しいことはないがな」
「そんなことはないでしょう。大司教様付きのイアンが嘆いていましたよ。大司教様はご自分から仕事を増やすので、本来の仕事が一向に終わらないと。またお忍びで貧民街まで行ったのでしょう?」
お父様が呆れたように言うと、大司教様は軽くウインクをした。
「なに、ちょっとばかし様子見にな。この前わしが光の治療をおこなった妊婦は、無事に赤子を出産しとったぞ。小さな手でわしの指を握る赤子がかわゆうてな。なぜ、神はわしに赤子をもたらしてくれなんだか」
「……そういうことはご結婚をされた方が言う台詞では……?」
「仕方あるまい。モテなかったんだから。ジョーは3人のお子がおるんだったな。大事にするのだぞ」
お父様は大司教様の言葉に、姿勢を正す。
「はい。大事に、大事に育てます」
「うむ」
お父様が白い布と大司教様からいただいた認定章を持って、わたしの方に来る。
「さあ、ニーナ。隊服をきみのサイズに合わせるから、向こうの部屋に行こう」
そう言って、お父様は大司教様のお部屋のドアを開けた。
「では、大司教様。これなる者に隊服を渡すため、御前失礼いたします」
「うむ」
わたしも慌ててお父様の後をついていく。
「大司教様、本当にありがとうございました」
わたしが頭を下げると、すでに机に戻って座っていた大司教様は机から顔を上げた。
「うむ。討伐は危険が伴うと聞く。無理をせぬようにな」
「はいっ!」
わたしはもう一度、お辞儀をする。
お父様がそっと、ドアを閉めようとした時に、大司教様が何か言うのが聞こえた。
「今度は、命を大事にするのだぞ」
小さな声で言われた何かは、わたしの耳には届かなかった。
パタンと締められたドアのこちら側。
わたしは首を傾げてお父様の顔を覗き込んだ。
「今、大司教様、何かおっしゃいました?」
お父様はわたしの問いにくすりと笑う。
「ん、聞こえなかったんだな。命を大事にするようにおっしゃったんだよ」
「お父様は、大司教様にここで働く事情をお伝えしていたんですか?」
「いや、末の娘のために、教会で祈りを捧げたいとだけしか言っていない。……それなのに、大司教様はなんでもお見通しのようだったね」
歩いていたお父様は、立ち止まり、ドアの方を遠い目で眺めた。
まるで、眩しいものを見るように目を細めて。
「本当に、なんでもわかっていらっしゃるのに、何も言わずに」
そして、お父様は誰の姿も見えないのに、大司教様のお部屋のドアに向かって一礼をした。
「……? お父様?」
「ん? あぁ、ごめん。なんでもないさ。さあ、急ごう。きみはルーク様がお屋敷にお戻りになる前に、帰らなければならないだろう?」
お父様にそう言われてポケットから懐中時計を取り出すと、もうお昼も過ぎていた。
「あっ、もうこんな時間。お父様、そちらをいただければ自分で隊服を調節しますので、もう大丈夫です」
白い布に手を伸ばそうとすると、お父様はそれをヒョイと高くもちあげた。
うっ、取れない……。
「ダメだよ。ちゃんとこちらで作るから。さっさと歩いておいで」
そのまま、スタスタと白い廊下を歩き出す。
お茶をいただいた部屋まで戻ると、お父様は白い衣装を身に纏っておくように言い残し、部屋を出て行った。
部屋に一人きりになったわたしは、ワンピースの上から白い衣装を身につけた。
大きく広げたそれは、司祭様が着るキャソックと同じ形をしていた。
丈も袖も長いそれは、細くて小さい方のわたしの体には大きかった。
これを一人で直すのは大変だっただろう。
そんな感想を抱いていると、お父様がシスターの服を着たひとりの女の人を連れて部屋まで戻ってきた。
「ニーナ、こちらシスターアベールだ。教会の服飾関係をしてくださっている。シスターアベール、こちらが光の隊員の方です。すみませんが、隊服の調整をお願いします」
お父様がそういうと、シスターアベールは持っていた籐の籠をテーブルに置いた。
「あ、あの、お忙しいところすみません。ニーナと申します。よろしくお願いします」
わたしが頭を下げると、恰幅の良いシスターアベールは、わたしのことをチロリと見た。
シスターアベール、お母様と同じ歳くらいかしら……。
「ちょっと、ジョー。一体どう言うことなの? 隊服の製作はとっくに終わっているわよね? 今更追加ってあり得ないわよね? 隊服は人数分のみ用意するように王室から通達がきているのに、嫌よ、変なことに巻き込まれるのは」
「まぁまぁ、シスター。ちゃんとした物ですよ。ほら、大司教様の印章もあるでしょう?」
シスターアベールはお父様から引ったくるように認定章を手にすると、それをじっと見つめた。
「確かに、大司教様の魔法が掛かっているわ。それならいいけど……」
「では、お願いしますね。また、差し入れ致しますから」
「……そぉ? それなら仕方ないわね」
お父様はにこにことシスターアベールに頭を下げると、自分はソファに腰掛けた。
「では、大司教。この隊服に光の認定章をつけてこの者に渡しておきます。お忙しい中、ありがとうございました」
「いやいや。特に忙しいことはないがな」
「そんなことはないでしょう。大司教様付きのイアンが嘆いていましたよ。大司教様はご自分から仕事を増やすので、本来の仕事が一向に終わらないと。またお忍びで貧民街まで行ったのでしょう?」
お父様が呆れたように言うと、大司教様は軽くウインクをした。
「なに、ちょっとばかし様子見にな。この前わしが光の治療をおこなった妊婦は、無事に赤子を出産しとったぞ。小さな手でわしの指を握る赤子がかわゆうてな。なぜ、神はわしに赤子をもたらしてくれなんだか」
「……そういうことはご結婚をされた方が言う台詞では……?」
「仕方あるまい。モテなかったんだから。ジョーは3人のお子がおるんだったな。大事にするのだぞ」
お父様は大司教様の言葉に、姿勢を正す。
「はい。大事に、大事に育てます」
「うむ」
お父様が白い布と大司教様からいただいた認定章を持って、わたしの方に来る。
「さあ、ニーナ。隊服をきみのサイズに合わせるから、向こうの部屋に行こう」
そう言って、お父様は大司教様のお部屋のドアを開けた。
「では、大司教様。これなる者に隊服を渡すため、御前失礼いたします」
「うむ」
わたしも慌ててお父様の後をついていく。
「大司教様、本当にありがとうございました」
わたしが頭を下げると、すでに机に戻って座っていた大司教様は机から顔を上げた。
「うむ。討伐は危険が伴うと聞く。無理をせぬようにな」
「はいっ!」
わたしはもう一度、お辞儀をする。
お父様がそっと、ドアを閉めようとした時に、大司教様が何か言うのが聞こえた。
「今度は、命を大事にするのだぞ」
小さな声で言われた何かは、わたしの耳には届かなかった。
パタンと締められたドアのこちら側。
わたしは首を傾げてお父様の顔を覗き込んだ。
「今、大司教様、何かおっしゃいました?」
お父様はわたしの問いにくすりと笑う。
「ん、聞こえなかったんだな。命を大事にするようにおっしゃったんだよ」
「お父様は、大司教様にここで働く事情をお伝えしていたんですか?」
「いや、末の娘のために、教会で祈りを捧げたいとだけしか言っていない。……それなのに、大司教様はなんでもお見通しのようだったね」
歩いていたお父様は、立ち止まり、ドアの方を遠い目で眺めた。
まるで、眩しいものを見るように目を細めて。
「本当に、なんでもわかっていらっしゃるのに、何も言わずに」
そして、お父様は誰の姿も見えないのに、大司教様のお部屋のドアに向かって一礼をした。
「……? お父様?」
「ん? あぁ、ごめん。なんでもないさ。さあ、急ごう。きみはルーク様がお屋敷にお戻りになる前に、帰らなければならないだろう?」
お父様にそう言われてポケットから懐中時計を取り出すと、もうお昼も過ぎていた。
「あっ、もうこんな時間。お父様、そちらをいただければ自分で隊服を調節しますので、もう大丈夫です」
白い布に手を伸ばそうとすると、お父様はそれをヒョイと高くもちあげた。
うっ、取れない……。
「ダメだよ。ちゃんとこちらで作るから。さっさと歩いておいで」
そのまま、スタスタと白い廊下を歩き出す。
お茶をいただいた部屋まで戻ると、お父様は白い衣装を身に纏っておくように言い残し、部屋を出て行った。
部屋に一人きりになったわたしは、ワンピースの上から白い衣装を身につけた。
大きく広げたそれは、司祭様が着るキャソックと同じ形をしていた。
丈も袖も長いそれは、細くて小さい方のわたしの体には大きかった。
これを一人で直すのは大変だっただろう。
そんな感想を抱いていると、お父様がシスターの服を着たひとりの女の人を連れて部屋まで戻ってきた。
「ニーナ、こちらシスターアベールだ。教会の服飾関係をしてくださっている。シスターアベール、こちらが光の隊員の方です。すみませんが、隊服の調整をお願いします」
お父様がそういうと、シスターアベールは持っていた籐の籠をテーブルに置いた。
「あ、あの、お忙しいところすみません。ニーナと申します。よろしくお願いします」
わたしが頭を下げると、恰幅の良いシスターアベールは、わたしのことをチロリと見た。
シスターアベール、お母様と同じ歳くらいかしら……。
「ちょっと、ジョー。一体どう言うことなの? 隊服の製作はとっくに終わっているわよね? 今更追加ってあり得ないわよね? 隊服は人数分のみ用意するように王室から通達がきているのに、嫌よ、変なことに巻き込まれるのは」
「まぁまぁ、シスター。ちゃんとした物ですよ。ほら、大司教様の印章もあるでしょう?」
シスターアベールはお父様から引ったくるように認定章を手にすると、それをじっと見つめた。
「確かに、大司教様の魔法が掛かっているわ。それならいいけど……」
「では、お願いしますね。また、差し入れ致しますから」
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