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本編
さん
しおりを挟むそれから本当に、彼は私と同じ部屋ですごした。
色事情事なんてものは一切なく、呆れるほど誠実。
仕事に熱中して食事を忘れがちな私に、鯖のどこにそんな能力があるんだと思うほど美味な飯を作ってくれたり、片付かない室内をいつのまにか綺麗にしていたり、逆に面倒をみられる始末。
主にご迷惑をおかけしてしまっているので、というのが言い訳だったが、家事全般をすべてやられるとさすがに悪い。
ちなみに何を食べるのかきいてみると、普段はいらないが周囲の人にも見える形で人型をとって顕現すると、人間となんら変わらない、とのことだったので、人と同じものを食べるらしい。
鯖の味噌煮をためしに出してみたが、心を痛める様子もなく食べていた。
窓を突き破って、鯖がとんできた日から、二日がたった。
彼は、あと一日で主に迷惑をかけることがなくなると少し嬉しそうだったが、私はというと寂しさが勝っていた。
いや、怪しいことには変わりないのだが、ここまでされると疑うのが申し訳なくなってくる。
あと普通に飯が旨い。
その日は、ゲームの背景に使うという絵を描いていた。
有名どころではなく、最近できたばかりの小さな会社らしいが、自分の描いた絵をバックにキャラクターが動くと思うと心が踊る。
液タブにペンを走らせていると、スマホに通知が届いた。先日、表紙を頼んできた本の作者からだ。
長ったらしい、誤字脱字の多い文章。要約すると、思っていたのと違う、とのこと。
普段描いているのは風景であり、人物ではない、ということを言わなかった私も悪いかもしれない、が。
どこに誰がいるくらいしか記されていない雑なラフをよこし、詳細を聞いても任せるしか言わなかった作者も悪いのではないだろうか。
しかしまあ、これも経験のひとつだと思って受けとめておこう。
下手くそだとか顔が好みじゃないとか女キャラの胸がちいさいだとか、そういうのも全てアドバイス。逆に、よく見てくれている、ということ。
そういうこと。
……。
はあ、とため息をつき、椅子の背もたれに体を沈める。
疲れている、まさか。
液タブにむきなおり、眠気を払おうとエナジードリンクをぐっとあおる。
ペンをとった、そのときだった。
ぐら、とからだがかしぐ。
体感時間で二秒くらいたってから、視界が斜めになっていることに気づくも、力が入らない。
彼が駆け寄ってくるのが見え、視界が暗転した。
曇天に高く、梟が吠えた。
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