甘い夢を見ていたい

春子

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死神VSアウル《5》

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吊るされた彼は、気絶しており、目を向け、同じく、拘束された童顔の彼は、状況整理を必死にやっているように見受けられた。
「少し席を外して。準備するから。」
「は?」
「聞こえなかった?消えろ。」
ギラッと視線を向けると、ちっと舌打ちしながら、行くぞとずらかる。
童顔の彼に近寄る。
「来るな!!」
「シッ。静かにして。手身近に話すから、良く聞いて。」
滑らかな真っ白な指を唇に押し当てる。
「これから行われるのは、非道なものになる。まず、そこに吊るされてる彼が、BD・DRを打たれる。君は、君の大事な彼の前で、犯される。大事な彼は、憔悴する中、彼奴等に引き渡される。」
目を見開く。
「でも、それはあくまでも、予定がうまくいけば。
恐らくだけど、うまくいかない。」
「?」
「彼女がコチラに向かってきてるから。僕の知っている彼女なら、まず、ここを根絶やしに来る。ダリヤがいるし、余計に。彼女が事をうまく、運ぶまで、僕が、何とかする。協力してほしい。」 
「なんで…。」
「こんなバカげたこと、もう終わらせる。君には、今のとおりに恐怖を感じて、怯えてればいい。」
すくっと立ち上がり、ジェイに近寄る。注射針を刺す。
「ジェイ!!」 
「安心して。気づけ薬みたいなものだから。」
慣れたように注射を収める。
「君、武器は扱える?」
「あんまり…。」
「だろうね。銃一発で、反動で手をやられそう。…無いよりはマシかも程度だけど、君のポッケに入れておくね。被榴弾。ここの突起物を押せば、簡単に爆発する。投げれば、相手に攻撃を与えられる。」
ポッケに被榴弾を仕込む。
「…小型電波GPS。彼女が君に仕込んだの?」
「え?」
「大切にされてるね。これは、優秀だから。位置も直ぐにわかるし、音もよく拾う。まあ今はちょっと壊れてるみたいだけど。」
ピクッ。
「アウル!!勝手なことばかりしないで頂戴!!」
カツンカツンとヒールを鳴らしてやって来るダリヤは、柳眉な眉をひそめ、入ってくる。
「なんで、あなたが、そんな穢らわしい奴らといるの。触れないでよ!」
「準備していただけ。彼に薬を与えるためにね。」
「なぜ、あの小汚いガキ連中を追い出した理由はそれだけなの?あちらから援軍も来たのよ?」
「そう…意外と速いお着きで。」
一瞬不快そうな顔をしたが、表情を無くす。
「時間まで、遊びましょう?」
粘りつく声に吐き気がする。





落ち合った場所で、作戦を言う。
「シャオたちは、とにかく、ジェイ奪還だけを頭に入れておけばいい。他の雑念は、こちらで引き受ける。」 
「わかった。」
「援軍がいたとして、マリカ、どれぐらいで、捌ける?」
「全部を壊して構わないなら、30分貰えば。でも人質がいるし、人質奪還がメインだから…。」
「ナオとジェイが一緒にいるかも問題だな。一緒にいれば、まとめて奪還出来るんだが。」
「恐らく、一緒にいると思う。何よりも、残酷なのは、その残酷さを目の前でやることに意味がある。例えば、ジェイに薬を打ち、ナオを陵辱すること。一番、コチラにダメージがデカイからね。」
「おい。薬ってなんだよ?」
シャオが怪訝そうに見る。 
「終わったら話す。今は、奪還することだけを頭に考えて。捕まえれば、大変な目にあうからね。こんな町外れに、建てたのが、まさかの根城とは。」
「ライフル、貸してくれ。あと銃にナイフ。」
トランクから武器を取る。あの樒が用意した武器庫だ。様々な武器が保管されている。
「これ、チャーリーから。」
「ああ。ありがとう。流石。」
黒の箱から、銃と剣とナイフを出す。
「なあ。その箱…武器…なんか、禍々しい。」
「そう…感じた?」
目を丸くする。他に武器は多数並んでるが、シャオの目には、その黒い武器が、心底、不気味に映る。
「…ふっ。」
「なんだよ!」
「そう感じたなら、お前は強くなるよ。大丈夫。死なせない。ジェイの仲間は守る。安心して。」
「は?」
さて、行きますか。

 





ジェイがより拘束画キツイ拘束具に嵌められ、身動きができない。意識を取り戻したジェイは、拘束具から逃れようと、ガチャガチャと派手な音をたて、抗う。
「どういうこと?」
アウルも拘束された。しかも、拘束具と共に、上には、重石のように、乗っている屈強な男。
「あなたが悪いのよ。アウル。」
ニヤッと笑う彼女は、下品な笑みを浮かべる。
「あなたが私を裏切る真似をするから。」
「裏切る?」
「知らないと思ったの?勝手に、あの女にメールを送るなんて!むざむざ、バラしてると一緒の事だわ。」
「何の話?」
「狙ってることをよ!意識させる為に、警戒を強めるために、知らせたわね!」
「…。」
「しかもBD・DRの中身をすり替えたわね!こいつに打たせるために用意したのに!」
ジェイの前にはあのガーターが注射針を持ち、下卑た顔を晒している。
失笑する彼は、酷く、美しい笑みを浮かべる。
「馬鹿だなあ。」
「?」
「頭が悪いと、そこまで捏造が出来るんだね。妄想が激しいと恥ずかしいね。クスクス。」
「アウル!!」
「煩いなあ。僕、甲高い声、嫌いなんだよね。粘りつく媚びたような声もうるさいぐらいのあえぎ声もその馬鹿な頭も厭らしい顔も臭い香水も。」
かあと頬を赤らめるベラトナは勢いあまって、アウルを叩く。
バシンっ。
「わかっているの??ウォルス・ミードを裏切ったら私達は!!」
「馬鹿だね。ウォルス・ミードが何。ニコラス・リッチがなに。たかが、A国のギャングのボスってだけじゃないか。僕らのいた組織は、そんな甘いもんじゃなかった。君は知らないだろうね。なにせ、イーカロスに入れなかった半端者だからね。いくら、ジョージ博士と寝ていようと、バルカス医師に股を開こうと、ニコラス・リッチに命じられるまま、豚に股を開こうが、君は、最も一番、敵に回してはいけない子を敵に回した。だから、君は浅はかって言うんだ。僕に薬を盛ったつもりでいた君は従順な僕が何でもすると思い込んだ。お生憎様。僕は、そういった薬は、効かないんだ。なぜなら、僕はイーカロスだから。」
憤怒で顔を赤くする様は、腹を抱えて、笑ってしまう。 
、憎んでも、イーカロスだった。体が恨めしくとも、運命とやらを憎んでも。ボスに憎悪を募らせても。死にたくても死ねないようにされた体がどれだけ、恨めしいか。お前にわかる?」
悲鳴だった。ボスにお気に入りに数えられたメンバーは、イーカロスだが、そんなもの、ただの人形だ。いつまでも遊べる道具に過ぎない。
「なりたくてなったわけじゃない!!」
慟哭に近い叫び声だ。


あちらで、騒いでる中、ガーターが注射針を打つためにジェイに近寄る。
ジェイは、んーんーと叫んでいる。口も声がでないように、嵌められている。ナオが泣き叫ぶと殴られた。
「じゃあな。ジェイ。」
ギュッと目を瞑る。
駄目だ。打たれる!
「…?」
目を開くと、刺された感触がない。が、あり得ない光景だ。
「ハーイ。久しぶりだね。ガーター。人相悪くなった?」
ガーターの背後にマリカがいて、注射針は降ろされることなく、マリカの手のひらにぶっ刺されている。しとしとと血が滴り落ちる。
 
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