神に選ばれたのは、爆弾と俺だった。

モデル.S

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第一章

ようこそ異世界、Lv750ってマジですか

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世界が、止まっていた。

 地鳴りのような爆音。耳がキンキンする。肺に入ってきたのは煙と砂と、焼けた鉄の臭い。
 火来竜一は、岩陰に這いつくばったまま、微動だにできなかった。

 「……死んだかと思った……」

 声が震える。全身がズキズキと痛む。右足はひねったのか、変な角度で痺れていた。頬には乾いた血。
 でも──生きていた。爆心地からギリギリで逃れたらしい。

 「爆弾……ほんとに爆発したんだ……」

 恐る恐る岩陰から顔を出す。遠くに見えるのは、巨大なキノコ雲。
 地面が黒くえぐれ、魔物たちの死骸が山のように積まれていた。
 焦げ、溶け、砕かれた異形の肉と骨。それが、竜一の命を狙っていた“現地住民”たちだった。

 「うわ、夢じゃ……ないよな」

 そして、そのときだった。

 ──ピコン。

 何かが、目の前に現れた。空中に、文字が浮かんでいる。まるでゲームのステータス画面のように。

 【レベル:750】
 【スキルポイント:7500】

 「……」
 「Lv……750ぅ!?」

 驚愕という言葉では足りない。むしろ笑いがこみ上げてくる。いや、引きつった笑いだ。
 普通にレベル1からコツコツやる系だと思ってた。なんか剣とか拾って、「ステータスオープン!」みたいな。
 でも、これは……

 「いやいやいやいや、最初からラスボス級ってどういうことだよ!!」

 しかも、画面の端に「スキル取得・割り振り可能」とか書いてある。
 スマホゲーか!? 人生が!? 爆弾ひとつでここまでブースト!?

 「はあああ……と、とにかく、スキル……見てみるか……」

 ビビりながらも、竜一は画面を操作する。指を近づけると、感覚的に反応してくれた。
 スキルカテゴリは、攻撃・防御・補助・感知・回復・特殊に分かれている。
 ひとつひとつに、習得ポイントが設定されているようだ。

 「……まずは防御だよな……いや、逃げ足も必要……でも攻撃ないと詰む……」

 口をぶつぶつ動かしながら、まるでテスト前のノート整理のように思考を巡らせる。
 7500ポイント──多いようで、迷えば一瞬で尽きる。

 「……人生でこんなに真剣に考えたの、初めてかもしれん」

 火来竜一、18歳。
 ただの学生だった彼が、爆弾を運び、異世界を爆破し、レベル750の最強新人になった。

 だが、彼はまだ知らない。
 この異世界でギルドも王国も魔王軍も、彼の存在に震え出す未来を──。



---
【レベル:750】
 【スキルポイント:7500】
 【全ステータス:999(カンスト表示不能)】

 「……ここの敵、強すぎる。レベルが高いってことは、それだけ“世界の難易度”も跳ね上がってるってことだ」

 リュウはステータス画面を睨みつつ、現実を受け入れた。

 この世界、冗談抜きで命がいくつあっても足りない。

 「だったら……生き残るために、最初から全力で行く」


---

◆スキル最大Lvは【10】

必要ポイント計算(Lv1~Lv10)
→ 5+10+15+20+25+30+35+40+45+50 = 275pt/1スキルあたり


---

【スキル選択】

◆肉体強化系

【筋力強化Lv10】:275pt

【耐久強化Lv10】:275pt

【HP回復速度上昇Lv10】:275pt

【自己再生Lv10】:275pt


→ 合計:1100pt

◆攻撃系

【剣術Lv10】:275pt


→ 合計:275pt

◆補助系

【感知強化Lv10】:275pt

【気配遮断Lv10】:275pt


→ 合計:550pt

◆防御系

【鋼躯Lv10】:275pt


→ 合計:275pt

◆魔法系

【火魔法Lv10】:275pt


→ 合計:275pt




---

【総使用ポイント:2750pt】

残り:4750pt


---

 「ふぅ……使ったな。でも、このくらいやらないと、たぶん即死する世界だ」

 スキルを確定した瞬間、リュウの身体が変化する。
 筋肉が張り詰め、皮膚は鋼鉄のように硬質化し、目はわずかな空気の流れをも捉える。
 自然治癒は常時発動し、火球を生成する力が指先に宿っている。

 「まるで……俺が、戦闘兵器になったみたいだ」

 そのとき。

 ──ガサッ。

 茂みの奥。現れたのは、牙を持つ三つ首の狼。
 体高2メートル、背中には骨の刃、眼は毒光を宿す。

 「最初の相手が、これかよ……でも、今の俺なら──」


 先ほど車から取り出したレンチを構える。

 「──勝てる」

 リュウは、真の異世界冒険者としての第一歩を踏み出した。


---
三つの首が同時に咆哮した。
 森が揺れ、空気が震える。だが、リュウは動じない。

 【鋼躯Lv10】で鍛えられた肉体は、音圧も熱気も物ともせず、
 【感知強化Lv10】は敵の視線、呼吸、筋肉の動きすら読み取っていた。

 「よし……来いよ、ケダモノ」

 牙を剥いて突進してきた三つ首の獣。
 右の首が大きく開いたその瞬間、リュウの身体が自然に動いた。

 【剣術Lv10】【筋力強化Lv10】──発動。

 レンチを横薙ぎに振り抜くと、右首が骨ごと吹き飛ぶ。

 「っしゃ……!」

 だがすぐに、中央の首が飛びかかり、左の首が体液を吐きかけてくる。

 リュウは跳躍し、同時に右手を突き出す。

 「【火魔法Lv10】──焼き尽くせ!!」

 灼熱の火球が爆ぜ、左首が火に包まれる。
 背後に着地し、振り返りざまに中央の首に渾身の一撃を叩き込んだ。

 ──ドガン!!

 首が陥没し、獣の巨体がガクリと崩れ落ちる。

 リュウは息をつき、全身の緊張を解いた。


---

 「……よし、生きてる。傷もない。自己再生と回復速度上昇……ありがてぇ」

 目の前に転がる魔物の死体。
 巨大で凶悪だったそれは、今やただの肉塊になった。

 「……さて。問題は、こっからだな」

 リュウの腹が鳴る。

 もう何時間も何も食べていない。
 異世界に来てから、水も食料も一切口にしていない。

 「……まさか、食うしかないか?」

 魔物の肉。
 人間としての理性が警告する。でも、腹は背に変えられない。

 「……待て。その前に、これを取っておかないと」

 リュウはスキル画面を開いた。
 さっきの戦闘で確信した。魔物の体液──毒がある可能性が高い。


---

【追加スキル取得】

【毒耐性Lv10】(275pt)
→ 毒によるダメージ・異常状態を大幅軽減。強毒にも一定の耐性を持つ。


【残りスキルポイント:4475】


---

 「よし。これで多少の毒には耐えられる……」

 リュウはパイプレンチの先端を使って肉を裂いた。
 皮膚の下は思ったより柔らかく、筋肉質でジューシーな赤身があらわれる。

 「匂いは……クジラ肉と野生獣の間ってとこか。悪くはない……」

 【火魔法】で直火を生み、焼く。
 血が滴り、煙が立ち昇り、肉が香ばしく焼けていく。

 焼き加減を見計らって、ひと口。

 ──じゅう。

 「……いける。というか、うまい……!」

 鉄のような風味と濃厚な脂が広がる。
 正直、想像していたより数段美味い。

 「これ、栄養価めちゃくちゃ高くね……?」

 リュウは無言で肉を貪った。
 体が求めるものを、ただ本能で満たしていく。


---

 腹が落ち着いた頃、リュウはふと魔物の胸に手を伸ばした。
 皮膚を裂くと、そこには──

 「……やっぱりな。魔石……体内にあったか」

 血の中に沈む、赤黒い小さな結晶。
 自然と手が伸びたが、リュウはそのまま手を止めた。

 「今は……下手に触らない方がいいな」

 魔石は体内で育つ。持ち出せば金になるだろう。
 けれど今は、そんなことより生き残る術を得ることが先決だ。

 リュウは静かに立ち上がった。

 「さて……次は、人のいる場所を探さなきゃな」

 感知強化を使い、遠くに微弱な人の気配を感じ取る。
 その方角へ──彼は歩き出した。


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