神に選ばれたのは、爆弾と俺だった。

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第一章

仕事を下さい

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王都・魔法省の執務室にて。

 「金貨……50枚?」

 「ええ、対象は危険度A。元Aランク冒険者、現在は魔法犯罪者。
  風と光属性を操り、夜の飲み屋街で警備兵すら寄せつけません」

 アリエルが書類を差し出す。

 「施設の壁をこれ以上壊されるよりは、あなたを外に出したほうが安上がりかと判断しました」

 「……はい」


---

 夜。王都第三区・飲み屋街。

 路地裏、静まり返る酒場の裏通り。
 石畳には水たまり。屋根の上では猫が何かを警戒していた。


---

 「いるね、完全に」

 リュウは気配を察知していた。
 風の流れ。音のない足音。すでに“奴”は動いている。


---

 「よし、さっさと捕まえて、ラーメン食いに行こう」


---

 次の瞬間だった。

 ドッ!!
 風が駆ける。視界を切り裂くように、一陣の影が飛び出す。

 「“夜風”──かかった」


---

 リュウは踏み込む。
 
 高いステータスで素早く。

 「はい、捕まえた」


---

 ガシッ。

 リュウの腕が、ちょうど相手の首の後ろに回っていた。
 夜風の足が止まり、空中でバランスを崩したまま、ずるりと地面に落ちる。


---

 「……え?」

 「お疲れさん。元Aランクでも、今の俺にゃ敵わねぇよ」

 リュウは、手加減したまま気絶させるようにコツンと拳を落とす。

 夜風――本名ナイザ・ブリム。気を失ってその場に倒れた。


---

 物陰からクロエとガルドが顔を出す。

 「……はやっ」

 「え、終わり?」


---

 リュウはそのまま背負い上げ、ドヤ顔で言った。

 「うん。報酬、金貨50枚。わーい」


---

 任務時間、開始からおよそ37秒。

 夜風、完封。


---
リュウは、夜風を肩に担いで、飲み屋街をのんびり歩いていた。

 風属性のエリート冒険者。
 何日も警備兵や冒険者が手こずっていたが――**リュウにとっては“カンスト筋力で一瞬締め落とし”**というだけの話だった。


---

 「はーい、おしまいっと。任務完了……ってことで、俺は帰ってラーメンを――」

 そこで、道の端から現れる男たち。

 黒いスーツ、金の装飾、片手には杖、片手には短剣。
 露骨にマフィア風の風貌。しかも――ざっと見て20人以上。


---

 「そいつ、渡してもらおうか」
 前に出たのは、グラサン+髪オールバックの男。

 「“夜風”は、俺たちの“商売道具”でね。勝手に持ってかれると困る」


---

 リュウはため息をついた。

 「あのさ、俺は魔法省から正式な依頼でこいつを捕まえたんだよ。お前らに渡す義理はないし、あるとすれば報告書で“捕獲妨害の犯罪者”って書き足すだけなんだけど?」


---

 オールバックが舌打ち。

 「ちっ……交渉失敗だ。やれッ!」


---

 次の瞬間、周囲の建物から一斉に飛び出す――マフィア風300人!!

 「いや多すぎィィィィ!!!」


---

 だが、リュウは動じなかった。

 「剣は……置いてきた。魔法も……なるべく使わない。
  でもまあ、ステータス999あればいけるか。」


---

 地を蹴る――瞬間移動のような加速。

 目の前にいた3人が一瞬で吹っ飛ぶ。

 ゴゴッ!ドガッ!メギャァ!!


---

 「ぎゃあああああっ!?な、なにィ!?」「当たってもいないのに……肋骨がァ!?」

 いや、ちゃんと当たってる。見えなかっただけだ。


---

 数人が炎の魔法を撃つ。

 リュウ、全て横歩きでかわす。

 **“ステータスだけで初見殺しの動き”**という暴力。


---

 殴られて吹き飛んだ奴らが、酒場に突っ込み、
 棚が崩れ、グラスが割れ、酒が燃え、火事になる。


---

 「わーー!火はやべえ!クロエにまた怒られるーー!!」


---

 30人蹴散らし
 →建物1軒崩壊

 100人倒す頃には
 →通りが瓦礫に

 200人突破時点で
 →王都警備隊が見に来たが「無理」と判断して逃げる

 300人目を地面に叩きつけた時
 →飲み屋街の半分が壊れていた


---

 「……あー……これは減給じゃ済まねぇ……」


---

 そこに、魔法省の“あの”アリエル執務官が、書類を手に登場。

 「……まったく、また壁を……今度は何軒?」

 「し、七軒くらい……ですかね……?」

 「報酬はその修繕費に充てます。」

 「ですよねぇぇぇぇ!!」


---

 だが、マフィアの主力組織は壊滅。
 魔法省の評価も上昇。王都の治安も安定。

 ただし――リュウの財布は空。

王都の魔法省。
受付カウンターで、アリエルが書類を読みながら淡々と言い放った。

「しばらく依頼はありません。全て片付きましたから」

「え、もう全部……?」

「ええ、あなたが暴れたせいです」


---

リュウは深くうなだれた。

「戦って減給、終わったら仕事なし……」

「お金が欲しいなら、冒険者にでもなってください。
 “壊しても自己責任”という点では、そちらの方が自由です」

「またその理屈かよ……!」


---
「よう、決めたか?」

ギルド前で腕を組んで待っていたガルドが、リュウに声をかけた。
その隣では、いつも通りフードを目深にかぶったライガが壁にもたれている。


---

「仕事、ねぇってさ。魔法省、今ヒマらしい」

「……はっ。そりゃ、あれだけぶっ壊せばな」
ガルドがニヤリと笑う。

「というわけで、俺も今日から冒険者やるわ」

「だったら……」ライガがぼそっと言った。

「三人で組むか。ギルドの方が動きやすい」


---

◆ 王都ギルド・受付

「三人でパーティ登録ですね?かしこまりましたー。代表者は?」

「リュウでいい」
ガルドとライガが即答する。

「え、俺?」


---

 【冒険者パーティ登録申請書】
 代表:リュウ
 メンバー:ガルド、ライガ
 パーティ名:未定(仮登録)
 ランク:F(暫定)


---

「それでは、本日よりお三方は王都ギルド所属の正式パーティとなります。よろしくお願いします!」

「おう!稼ぐぞ!」
「借金返すぞ……」
「飯に困らない生活を……」


---

こうして、爆竜リュウとその仲間たちによる、**“冒険者チーム:未定”**が誕生した。

まだ誰も知らない。
この三人が、いずれ世界を揺るがす存在となることを。


---
ギルドから渡された依頼書には、こう記されていた。

 【依頼内容】
 東の小村ルバル周辺にて、ゴブリンの出現が頻発。
 数は不明だが、村人の避難報告あり。
 速やかな討伐を希望。

 【依頼ランク】F(急募)
 【報酬】金貨5枚+討伐数に応じ追加報酬あり


---

「ま、初仕事にはちょうどいいか」
リュウが肩を回しながら言う。

「簡単すぎると拍子抜けするな」
ガルドが重剣を背負い、笑った。

「……報告、甘い気がする」
ライガが小声で呟いた。


---

◆ 東の村・ルバル近郊

 現地に到着して、三人はまず空気の異常さに気づいた。

 村の門は破壊され、建物は焦げ、地面に獣の血の臭いが漂う。

 だが、死体はない。

 「……ゴブリンが、こんなに綺麗に後片付けするか?」

 「いや、普通は荒らしたままだ。これは……」

 「意図があるな。残さないようにしてる。計画的に、だ」


---

 三人が村の中心に近づいたとき。

 ――“それ”は現れた。


---

 異様に引き締まった筋肉。
 獣の皮をまとい、片手に粗製の鉄剣。
 目に宿る明確な“殺意”。
 ただのゴブリンとは思えない――

 ゴブリン・チーフ(群れの長)


---

「ちっ……Fランクの仕事にしては“格”が違ぇな」

 ガルドがすでに構えていた。

「……後ろからも来る。十体、二十……いや、三十以上」

 ライガの瞳が細くなる。


---

 リュウは剣を背にしたまま、足元を踏みしめた。

 「初仕事だし、俺……まだ剣使わねぇでおくか」

 「はぁ!? いや、もう使っていいだろこれ!」

 「いや、これくらい……」


---

 ズドンッ!!

 リュウの拳が、一歩踏み出しただけで地面を陥没させた。

 その瞬間、後方のゴブリンが五体ほど吹き飛ぶ。

 「って、範囲おかしいだろ!?」


---

 戦闘開始。

 ガルドは正面からチーフにぶつかり、
 ライガは素早く背後の群れを撹乱。
 そしてリュウは――

 両手だけで、殴る・蹴る・投げる・叩きつける。

 「くるくる回れぇぇいっ!!」

 ゴブリンが宙を舞った。十体まとめて。


---

 数分後。
 村には、半壊した家と、小山のように積まれたゴブリンの山。


---

 「……これ、Fランクの仕事だったよな?」
 ガルドが眉をひそめる。

 「……内容詐欺だろ……」
 ライガがぼそっと。

 「俺たちの初任務、これかぁ……」

 リュウは、汗ひとつかかずに伸びをした。


---
「お、おかえりなさいませ……」

 王都ギルド本部に戻ってきたリュウたち三人を、受付の女性がドン引きした目で迎えた。

 理由は――

 背後の荷馬車三台分のゴブリンの死体。

 しかも、**全員“頭だけ綺麗に潰れてる”**という謎の一貫性。


---

 「えーと、Fランク依頼の……ゴブリン討伐ですよね……?」

 「うん、たぶん……それ、終わった分」

 リュウがあっさりと言い放つ。


---

 奥のカウンターから、スーツ姿のギルド幹部が現れた。
 記録係らしき中年男が、額に汗をかきながら叫ぶ。

 「ま、待ってください! 記録だと“最大でも10体程度”のはずが……これは……ゴブリン・チーフ含めて78体!?」


---

 「……いや、途中で増えたんだよ。ほら、そういうのあるじゃん。サプライズ」

 「結婚式じゃねぇんだぞ!!」


---

 書類の束がバサバサと積み上げられる。

 ・被害報告
 ・現地調査
 ・村人の証言(→「ゴブリンが空を飛んだ」とか書いてある)

 現場対応班がざわざわしていた。


---

 そして、ついに奥から出てきたのは――

 王都ギルド副マスター、バロック・ザルトマン。

 豪快な体格、白髪の三つ編みにサングラス。
 見た目は海賊、元Sランク冒険者。声もでかい。


---

 「てめぇら、何モンだ。Fランクじゃなきゃ納得できねぇ!!」

 リュウは肩をすくめた。

 「いや、登録されたばっかで……スキルも何も出してないし、ただ殴っただけなんですけど」


---

 バロックはリュウの肩をバンバン叩きながら笑った。

 「よし、わかった! 昇格審査、即日だ!!」


---

 そしてその日のうちに――

 リュウたちは、Fランク→Bランクに異例の飛び級昇格を果たした。

 王都ギルドは騒然。

 「ステータス計測不能の新人」
 「魔法も剣も使ってない」
 「素手でゴブリン砕いた」

 と、噂が噂を呼び、
 冒険者たちは彼をこう呼び始めた。


---

 「爆竜のリュウ」――

 破壊と暴力の象徴。
 そしていずれ“王都の最終兵器”とさえ、囁かれることになる。


---
「え? 本当に……これ、俺の?」

 リュウが手に持つのは、分厚い袋にぎっしり詰まった金貨。
 数えていないが、明らかに“ド貧乏から即脱却できる”レベルの重みだった。


---

 「ゴブリン78体+チーフ、加算評価+特別報奨。
 合計で、金貨112枚となります」
 受付嬢がにこやかに説明する。


---

 「やったぁぁぁああああああ!!!」

 リュウが叫んだ。
 後ろでガルドが耳を押さえ、ライガが眉をひそめる。


---

 「というわけでっ……魔法省から借りてた修繕費っ……!!」

 ギルドの会計窓口に飛び込んだリュウは、
 即座に袋ごと金貨をドンと置いた。


---

 「借金、完済ぃぃぃぃい!!!!!」


---

 その瞬間。

 冒険者ギルド本部――食堂のど真ん中で、爆竜リュウが踊った。


---

 「見よ!!これがっ!金の匂いの舞だぁっ!!」

 床を蹴り、天井に回転ジャンプ。
 火魔法を背景に、くるりと一回転。

 「金金金金金ィィィッ!!」


---

 周囲の冒険者たちは引いていた。

 「……あいつ、マジでステータス999じゃねぇの……」
 「金持ちになると壊れるタイプか……」
 「いや、元から壊れてる」


---

 ガルドが頭を抱える。

 「おい、次の依頼来なくなるだろ……やめとけリュウ……」

 「いいんだよ!借金が消えた今、俺は自由!破壊神にも富豪にもなれるのだ!」


---

 そのとき、静かにクロエがやってきて。

 「……リュウ?借金返したのはえらいけど。あんた、家は?」

 「えっ」

 「家賃も保証金も払ってないわよね?」

 「……ッ」


---

 現実が戻ってきた。


---

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