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第一章
仕事を下さい
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王都・魔法省の執務室にて。
「金貨……50枚?」
「ええ、対象は危険度A。元Aランク冒険者、現在は魔法犯罪者。
風と光属性を操り、夜の飲み屋街で警備兵すら寄せつけません」
アリエルが書類を差し出す。
「施設の壁をこれ以上壊されるよりは、あなたを外に出したほうが安上がりかと判断しました」
「……はい」
---
夜。王都第三区・飲み屋街。
路地裏、静まり返る酒場の裏通り。
石畳には水たまり。屋根の上では猫が何かを警戒していた。
---
「いるね、完全に」
リュウは気配を察知していた。
風の流れ。音のない足音。すでに“奴”は動いている。
---
「よし、さっさと捕まえて、ラーメン食いに行こう」
---
次の瞬間だった。
ドッ!!
風が駆ける。視界を切り裂くように、一陣の影が飛び出す。
「“夜風”──かかった」
---
リュウは踏み込む。
高いステータスで素早く。
「はい、捕まえた」
---
ガシッ。
リュウの腕が、ちょうど相手の首の後ろに回っていた。
夜風の足が止まり、空中でバランスを崩したまま、ずるりと地面に落ちる。
---
「……え?」
「お疲れさん。元Aランクでも、今の俺にゃ敵わねぇよ」
リュウは、手加減したまま気絶させるようにコツンと拳を落とす。
夜風――本名ナイザ・ブリム。気を失ってその場に倒れた。
---
物陰からクロエとガルドが顔を出す。
「……はやっ」
「え、終わり?」
---
リュウはそのまま背負い上げ、ドヤ顔で言った。
「うん。報酬、金貨50枚。わーい」
---
任務時間、開始からおよそ37秒。
夜風、完封。
---
リュウは、夜風を肩に担いで、飲み屋街をのんびり歩いていた。
風属性のエリート冒険者。
何日も警備兵や冒険者が手こずっていたが――**リュウにとっては“カンスト筋力で一瞬締め落とし”**というだけの話だった。
---
「はーい、おしまいっと。任務完了……ってことで、俺は帰ってラーメンを――」
そこで、道の端から現れる男たち。
黒いスーツ、金の装飾、片手には杖、片手には短剣。
露骨にマフィア風の風貌。しかも――ざっと見て20人以上。
---
「そいつ、渡してもらおうか」
前に出たのは、グラサン+髪オールバックの男。
「“夜風”は、俺たちの“商売道具”でね。勝手に持ってかれると困る」
---
リュウはため息をついた。
「あのさ、俺は魔法省から正式な依頼でこいつを捕まえたんだよ。お前らに渡す義理はないし、あるとすれば報告書で“捕獲妨害の犯罪者”って書き足すだけなんだけど?」
---
オールバックが舌打ち。
「ちっ……交渉失敗だ。やれッ!」
---
次の瞬間、周囲の建物から一斉に飛び出す――マフィア風300人!!
「いや多すぎィィィィ!!!」
---
だが、リュウは動じなかった。
「剣は……置いてきた。魔法も……なるべく使わない。
でもまあ、ステータス999あればいけるか。」
---
地を蹴る――瞬間移動のような加速。
目の前にいた3人が一瞬で吹っ飛ぶ。
ゴゴッ!ドガッ!メギャァ!!
---
「ぎゃあああああっ!?な、なにィ!?」「当たってもいないのに……肋骨がァ!?」
いや、ちゃんと当たってる。見えなかっただけだ。
---
数人が炎の魔法を撃つ。
リュウ、全て横歩きでかわす。
**“ステータスだけで初見殺しの動き”**という暴力。
---
殴られて吹き飛んだ奴らが、酒場に突っ込み、
棚が崩れ、グラスが割れ、酒が燃え、火事になる。
---
「わーー!火はやべえ!クロエにまた怒られるーー!!」
---
30人蹴散らし
→建物1軒崩壊
100人倒す頃には
→通りが瓦礫に
200人突破時点で
→王都警備隊が見に来たが「無理」と判断して逃げる
300人目を地面に叩きつけた時
→飲み屋街の半分が壊れていた
---
「……あー……これは減給じゃ済まねぇ……」
---
そこに、魔法省の“あの”アリエル執務官が、書類を手に登場。
「……まったく、また壁を……今度は何軒?」
「し、七軒くらい……ですかね……?」
「報酬はその修繕費に充てます。」
「ですよねぇぇぇぇ!!」
---
だが、マフィアの主力組織は壊滅。
魔法省の評価も上昇。王都の治安も安定。
ただし――リュウの財布は空。
王都の魔法省。
受付カウンターで、アリエルが書類を読みながら淡々と言い放った。
「しばらく依頼はありません。全て片付きましたから」
「え、もう全部……?」
「ええ、あなたが暴れたせいです」
---
リュウは深くうなだれた。
「戦って減給、終わったら仕事なし……」
「お金が欲しいなら、冒険者にでもなってください。
“壊しても自己責任”という点では、そちらの方が自由です」
「またその理屈かよ……!」
---
「よう、決めたか?」
ギルド前で腕を組んで待っていたガルドが、リュウに声をかけた。
その隣では、いつも通りフードを目深にかぶったライガが壁にもたれている。
---
「仕事、ねぇってさ。魔法省、今ヒマらしい」
「……はっ。そりゃ、あれだけぶっ壊せばな」
ガルドがニヤリと笑う。
「というわけで、俺も今日から冒険者やるわ」
「だったら……」ライガがぼそっと言った。
「三人で組むか。ギルドの方が動きやすい」
---
◆ 王都ギルド・受付
「三人でパーティ登録ですね?かしこまりましたー。代表者は?」
「リュウでいい」
ガルドとライガが即答する。
「え、俺?」
---
【冒険者パーティ登録申請書】
代表:リュウ
メンバー:ガルド、ライガ
パーティ名:未定(仮登録)
ランク:F(暫定)
---
「それでは、本日よりお三方は王都ギルド所属の正式パーティとなります。よろしくお願いします!」
「おう!稼ぐぞ!」
「借金返すぞ……」
「飯に困らない生活を……」
---
こうして、爆竜リュウとその仲間たちによる、**“冒険者チーム:未定”**が誕生した。
まだ誰も知らない。
この三人が、いずれ世界を揺るがす存在となることを。
---
ギルドから渡された依頼書には、こう記されていた。
【依頼内容】
東の小村ルバル周辺にて、ゴブリンの出現が頻発。
数は不明だが、村人の避難報告あり。
速やかな討伐を希望。
【依頼ランク】F(急募)
【報酬】金貨5枚+討伐数に応じ追加報酬あり
---
「ま、初仕事にはちょうどいいか」
リュウが肩を回しながら言う。
「簡単すぎると拍子抜けするな」
ガルドが重剣を背負い、笑った。
「……報告、甘い気がする」
ライガが小声で呟いた。
---
◆ 東の村・ルバル近郊
現地に到着して、三人はまず空気の異常さに気づいた。
村の門は破壊され、建物は焦げ、地面に獣の血の臭いが漂う。
だが、死体はない。
「……ゴブリンが、こんなに綺麗に後片付けするか?」
「いや、普通は荒らしたままだ。これは……」
「意図があるな。残さないようにしてる。計画的に、だ」
---
三人が村の中心に近づいたとき。
――“それ”は現れた。
---
異様に引き締まった筋肉。
獣の皮をまとい、片手に粗製の鉄剣。
目に宿る明確な“殺意”。
ただのゴブリンとは思えない――
ゴブリン・チーフ(群れの長)
---
「ちっ……Fランクの仕事にしては“格”が違ぇな」
ガルドがすでに構えていた。
「……後ろからも来る。十体、二十……いや、三十以上」
ライガの瞳が細くなる。
---
リュウは剣を背にしたまま、足元を踏みしめた。
「初仕事だし、俺……まだ剣使わねぇでおくか」
「はぁ!? いや、もう使っていいだろこれ!」
「いや、これくらい……」
---
ズドンッ!!
リュウの拳が、一歩踏み出しただけで地面を陥没させた。
その瞬間、後方のゴブリンが五体ほど吹き飛ぶ。
「って、範囲おかしいだろ!?」
---
戦闘開始。
ガルドは正面からチーフにぶつかり、
ライガは素早く背後の群れを撹乱。
そしてリュウは――
両手だけで、殴る・蹴る・投げる・叩きつける。
「くるくる回れぇぇいっ!!」
ゴブリンが宙を舞った。十体まとめて。
---
数分後。
村には、半壊した家と、小山のように積まれたゴブリンの山。
---
「……これ、Fランクの仕事だったよな?」
ガルドが眉をひそめる。
「……内容詐欺だろ……」
ライガがぼそっと。
「俺たちの初任務、これかぁ……」
リュウは、汗ひとつかかずに伸びをした。
---
「お、おかえりなさいませ……」
王都ギルド本部に戻ってきたリュウたち三人を、受付の女性がドン引きした目で迎えた。
理由は――
背後の荷馬車三台分のゴブリンの死体。
しかも、**全員“頭だけ綺麗に潰れてる”**という謎の一貫性。
---
「えーと、Fランク依頼の……ゴブリン討伐ですよね……?」
「うん、たぶん……それ、終わった分」
リュウがあっさりと言い放つ。
---
奥のカウンターから、スーツ姿のギルド幹部が現れた。
記録係らしき中年男が、額に汗をかきながら叫ぶ。
「ま、待ってください! 記録だと“最大でも10体程度”のはずが……これは……ゴブリン・チーフ含めて78体!?」
---
「……いや、途中で増えたんだよ。ほら、そういうのあるじゃん。サプライズ」
「結婚式じゃねぇんだぞ!!」
---
書類の束がバサバサと積み上げられる。
・被害報告
・現地調査
・村人の証言(→「ゴブリンが空を飛んだ」とか書いてある)
現場対応班がざわざわしていた。
---
そして、ついに奥から出てきたのは――
王都ギルド副マスター、バロック・ザルトマン。
豪快な体格、白髪の三つ編みにサングラス。
見た目は海賊、元Sランク冒険者。声もでかい。
---
「てめぇら、何モンだ。Fランクじゃなきゃ納得できねぇ!!」
リュウは肩をすくめた。
「いや、登録されたばっかで……スキルも何も出してないし、ただ殴っただけなんですけど」
---
バロックはリュウの肩をバンバン叩きながら笑った。
「よし、わかった! 昇格審査、即日だ!!」
---
そしてその日のうちに――
リュウたちは、Fランク→Bランクに異例の飛び級昇格を果たした。
王都ギルドは騒然。
「ステータス計測不能の新人」
「魔法も剣も使ってない」
「素手でゴブリン砕いた」
と、噂が噂を呼び、
冒険者たちは彼をこう呼び始めた。
---
「爆竜のリュウ」――
破壊と暴力の象徴。
そしていずれ“王都の最終兵器”とさえ、囁かれることになる。
---
「え? 本当に……これ、俺の?」
リュウが手に持つのは、分厚い袋にぎっしり詰まった金貨。
数えていないが、明らかに“ド貧乏から即脱却できる”レベルの重みだった。
---
「ゴブリン78体+チーフ、加算評価+特別報奨。
合計で、金貨112枚となります」
受付嬢がにこやかに説明する。
---
「やったぁぁぁああああああ!!!」
リュウが叫んだ。
後ろでガルドが耳を押さえ、ライガが眉をひそめる。
---
「というわけでっ……魔法省から借りてた修繕費っ……!!」
ギルドの会計窓口に飛び込んだリュウは、
即座に袋ごと金貨をドンと置いた。
---
「借金、完済ぃぃぃぃい!!!!!」
---
その瞬間。
冒険者ギルド本部――食堂のど真ん中で、爆竜リュウが踊った。
---
「見よ!!これがっ!金の匂いの舞だぁっ!!」
床を蹴り、天井に回転ジャンプ。
火魔法を背景に、くるりと一回転。
「金金金金金ィィィッ!!」
---
周囲の冒険者たちは引いていた。
「……あいつ、マジでステータス999じゃねぇの……」
「金持ちになると壊れるタイプか……」
「いや、元から壊れてる」
---
ガルドが頭を抱える。
「おい、次の依頼来なくなるだろ……やめとけリュウ……」
「いいんだよ!借金が消えた今、俺は自由!破壊神にも富豪にもなれるのだ!」
---
そのとき、静かにクロエがやってきて。
「……リュウ?借金返したのはえらいけど。あんた、家は?」
「えっ」
「家賃も保証金も払ってないわよね?」
「……ッ」
---
現実が戻ってきた。
---
「金貨……50枚?」
「ええ、対象は危険度A。元Aランク冒険者、現在は魔法犯罪者。
風と光属性を操り、夜の飲み屋街で警備兵すら寄せつけません」
アリエルが書類を差し出す。
「施設の壁をこれ以上壊されるよりは、あなたを外に出したほうが安上がりかと判断しました」
「……はい」
---
夜。王都第三区・飲み屋街。
路地裏、静まり返る酒場の裏通り。
石畳には水たまり。屋根の上では猫が何かを警戒していた。
---
「いるね、完全に」
リュウは気配を察知していた。
風の流れ。音のない足音。すでに“奴”は動いている。
---
「よし、さっさと捕まえて、ラーメン食いに行こう」
---
次の瞬間だった。
ドッ!!
風が駆ける。視界を切り裂くように、一陣の影が飛び出す。
「“夜風”──かかった」
---
リュウは踏み込む。
高いステータスで素早く。
「はい、捕まえた」
---
ガシッ。
リュウの腕が、ちょうど相手の首の後ろに回っていた。
夜風の足が止まり、空中でバランスを崩したまま、ずるりと地面に落ちる。
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「……え?」
「お疲れさん。元Aランクでも、今の俺にゃ敵わねぇよ」
リュウは、手加減したまま気絶させるようにコツンと拳を落とす。
夜風――本名ナイザ・ブリム。気を失ってその場に倒れた。
---
物陰からクロエとガルドが顔を出す。
「……はやっ」
「え、終わり?」
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リュウはそのまま背負い上げ、ドヤ顔で言った。
「うん。報酬、金貨50枚。わーい」
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任務時間、開始からおよそ37秒。
夜風、完封。
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リュウは、夜風を肩に担いで、飲み屋街をのんびり歩いていた。
風属性のエリート冒険者。
何日も警備兵や冒険者が手こずっていたが――**リュウにとっては“カンスト筋力で一瞬締め落とし”**というだけの話だった。
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「はーい、おしまいっと。任務完了……ってことで、俺は帰ってラーメンを――」
そこで、道の端から現れる男たち。
黒いスーツ、金の装飾、片手には杖、片手には短剣。
露骨にマフィア風の風貌。しかも――ざっと見て20人以上。
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「そいつ、渡してもらおうか」
前に出たのは、グラサン+髪オールバックの男。
「“夜風”は、俺たちの“商売道具”でね。勝手に持ってかれると困る」
---
リュウはため息をついた。
「あのさ、俺は魔法省から正式な依頼でこいつを捕まえたんだよ。お前らに渡す義理はないし、あるとすれば報告書で“捕獲妨害の犯罪者”って書き足すだけなんだけど?」
---
オールバックが舌打ち。
「ちっ……交渉失敗だ。やれッ!」
---
次の瞬間、周囲の建物から一斉に飛び出す――マフィア風300人!!
「いや多すぎィィィィ!!!」
---
だが、リュウは動じなかった。
「剣は……置いてきた。魔法も……なるべく使わない。
でもまあ、ステータス999あればいけるか。」
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地を蹴る――瞬間移動のような加速。
目の前にいた3人が一瞬で吹っ飛ぶ。
ゴゴッ!ドガッ!メギャァ!!
---
「ぎゃあああああっ!?な、なにィ!?」「当たってもいないのに……肋骨がァ!?」
いや、ちゃんと当たってる。見えなかっただけだ。
---
数人が炎の魔法を撃つ。
リュウ、全て横歩きでかわす。
**“ステータスだけで初見殺しの動き”**という暴力。
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殴られて吹き飛んだ奴らが、酒場に突っ込み、
棚が崩れ、グラスが割れ、酒が燃え、火事になる。
---
「わーー!火はやべえ!クロエにまた怒られるーー!!」
---
30人蹴散らし
→建物1軒崩壊
100人倒す頃には
→通りが瓦礫に
200人突破時点で
→王都警備隊が見に来たが「無理」と判断して逃げる
300人目を地面に叩きつけた時
→飲み屋街の半分が壊れていた
---
「……あー……これは減給じゃ済まねぇ……」
---
そこに、魔法省の“あの”アリエル執務官が、書類を手に登場。
「……まったく、また壁を……今度は何軒?」
「し、七軒くらい……ですかね……?」
「報酬はその修繕費に充てます。」
「ですよねぇぇぇぇ!!」
---
だが、マフィアの主力組織は壊滅。
魔法省の評価も上昇。王都の治安も安定。
ただし――リュウの財布は空。
王都の魔法省。
受付カウンターで、アリエルが書類を読みながら淡々と言い放った。
「しばらく依頼はありません。全て片付きましたから」
「え、もう全部……?」
「ええ、あなたが暴れたせいです」
---
リュウは深くうなだれた。
「戦って減給、終わったら仕事なし……」
「お金が欲しいなら、冒険者にでもなってください。
“壊しても自己責任”という点では、そちらの方が自由です」
「またその理屈かよ……!」
---
「よう、決めたか?」
ギルド前で腕を組んで待っていたガルドが、リュウに声をかけた。
その隣では、いつも通りフードを目深にかぶったライガが壁にもたれている。
---
「仕事、ねぇってさ。魔法省、今ヒマらしい」
「……はっ。そりゃ、あれだけぶっ壊せばな」
ガルドがニヤリと笑う。
「というわけで、俺も今日から冒険者やるわ」
「だったら……」ライガがぼそっと言った。
「三人で組むか。ギルドの方が動きやすい」
---
◆ 王都ギルド・受付
「三人でパーティ登録ですね?かしこまりましたー。代表者は?」
「リュウでいい」
ガルドとライガが即答する。
「え、俺?」
---
【冒険者パーティ登録申請書】
代表:リュウ
メンバー:ガルド、ライガ
パーティ名:未定(仮登録)
ランク:F(暫定)
---
「それでは、本日よりお三方は王都ギルド所属の正式パーティとなります。よろしくお願いします!」
「おう!稼ぐぞ!」
「借金返すぞ……」
「飯に困らない生活を……」
---
こうして、爆竜リュウとその仲間たちによる、**“冒険者チーム:未定”**が誕生した。
まだ誰も知らない。
この三人が、いずれ世界を揺るがす存在となることを。
---
ギルドから渡された依頼書には、こう記されていた。
【依頼内容】
東の小村ルバル周辺にて、ゴブリンの出現が頻発。
数は不明だが、村人の避難報告あり。
速やかな討伐を希望。
【依頼ランク】F(急募)
【報酬】金貨5枚+討伐数に応じ追加報酬あり
---
「ま、初仕事にはちょうどいいか」
リュウが肩を回しながら言う。
「簡単すぎると拍子抜けするな」
ガルドが重剣を背負い、笑った。
「……報告、甘い気がする」
ライガが小声で呟いた。
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◆ 東の村・ルバル近郊
現地に到着して、三人はまず空気の異常さに気づいた。
村の門は破壊され、建物は焦げ、地面に獣の血の臭いが漂う。
だが、死体はない。
「……ゴブリンが、こんなに綺麗に後片付けするか?」
「いや、普通は荒らしたままだ。これは……」
「意図があるな。残さないようにしてる。計画的に、だ」
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三人が村の中心に近づいたとき。
――“それ”は現れた。
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異様に引き締まった筋肉。
獣の皮をまとい、片手に粗製の鉄剣。
目に宿る明確な“殺意”。
ただのゴブリンとは思えない――
ゴブリン・チーフ(群れの長)
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「ちっ……Fランクの仕事にしては“格”が違ぇな」
ガルドがすでに構えていた。
「……後ろからも来る。十体、二十……いや、三十以上」
ライガの瞳が細くなる。
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リュウは剣を背にしたまま、足元を踏みしめた。
「初仕事だし、俺……まだ剣使わねぇでおくか」
「はぁ!? いや、もう使っていいだろこれ!」
「いや、これくらい……」
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ズドンッ!!
リュウの拳が、一歩踏み出しただけで地面を陥没させた。
その瞬間、後方のゴブリンが五体ほど吹き飛ぶ。
「って、範囲おかしいだろ!?」
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戦闘開始。
ガルドは正面からチーフにぶつかり、
ライガは素早く背後の群れを撹乱。
そしてリュウは――
両手だけで、殴る・蹴る・投げる・叩きつける。
「くるくる回れぇぇいっ!!」
ゴブリンが宙を舞った。十体まとめて。
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数分後。
村には、半壊した家と、小山のように積まれたゴブリンの山。
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「……これ、Fランクの仕事だったよな?」
ガルドが眉をひそめる。
「……内容詐欺だろ……」
ライガがぼそっと。
「俺たちの初任務、これかぁ……」
リュウは、汗ひとつかかずに伸びをした。
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「お、おかえりなさいませ……」
王都ギルド本部に戻ってきたリュウたち三人を、受付の女性がドン引きした目で迎えた。
理由は――
背後の荷馬車三台分のゴブリンの死体。
しかも、**全員“頭だけ綺麗に潰れてる”**という謎の一貫性。
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「えーと、Fランク依頼の……ゴブリン討伐ですよね……?」
「うん、たぶん……それ、終わった分」
リュウがあっさりと言い放つ。
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奥のカウンターから、スーツ姿のギルド幹部が現れた。
記録係らしき中年男が、額に汗をかきながら叫ぶ。
「ま、待ってください! 記録だと“最大でも10体程度”のはずが……これは……ゴブリン・チーフ含めて78体!?」
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「……いや、途中で増えたんだよ。ほら、そういうのあるじゃん。サプライズ」
「結婚式じゃねぇんだぞ!!」
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書類の束がバサバサと積み上げられる。
・被害報告
・現地調査
・村人の証言(→「ゴブリンが空を飛んだ」とか書いてある)
現場対応班がざわざわしていた。
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そして、ついに奥から出てきたのは――
王都ギルド副マスター、バロック・ザルトマン。
豪快な体格、白髪の三つ編みにサングラス。
見た目は海賊、元Sランク冒険者。声もでかい。
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「てめぇら、何モンだ。Fランクじゃなきゃ納得できねぇ!!」
リュウは肩をすくめた。
「いや、登録されたばっかで……スキルも何も出してないし、ただ殴っただけなんですけど」
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バロックはリュウの肩をバンバン叩きながら笑った。
「よし、わかった! 昇格審査、即日だ!!」
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そしてその日のうちに――
リュウたちは、Fランク→Bランクに異例の飛び級昇格を果たした。
王都ギルドは騒然。
「ステータス計測不能の新人」
「魔法も剣も使ってない」
「素手でゴブリン砕いた」
と、噂が噂を呼び、
冒険者たちは彼をこう呼び始めた。
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「爆竜のリュウ」――
破壊と暴力の象徴。
そしていずれ“王都の最終兵器”とさえ、囁かれることになる。
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「え? 本当に……これ、俺の?」
リュウが手に持つのは、分厚い袋にぎっしり詰まった金貨。
数えていないが、明らかに“ド貧乏から即脱却できる”レベルの重みだった。
---
「ゴブリン78体+チーフ、加算評価+特別報奨。
合計で、金貨112枚となります」
受付嬢がにこやかに説明する。
---
「やったぁぁぁああああああ!!!」
リュウが叫んだ。
後ろでガルドが耳を押さえ、ライガが眉をひそめる。
---
「というわけでっ……魔法省から借りてた修繕費っ……!!」
ギルドの会計窓口に飛び込んだリュウは、
即座に袋ごと金貨をドンと置いた。
---
「借金、完済ぃぃぃぃい!!!!!」
---
その瞬間。
冒険者ギルド本部――食堂のど真ん中で、爆竜リュウが踊った。
---
「見よ!!これがっ!金の匂いの舞だぁっ!!」
床を蹴り、天井に回転ジャンプ。
火魔法を背景に、くるりと一回転。
「金金金金金ィィィッ!!」
---
周囲の冒険者たちは引いていた。
「……あいつ、マジでステータス999じゃねぇの……」
「金持ちになると壊れるタイプか……」
「いや、元から壊れてる」
---
ガルドが頭を抱える。
「おい、次の依頼来なくなるだろ……やめとけリュウ……」
「いいんだよ!借金が消えた今、俺は自由!破壊神にも富豪にもなれるのだ!」
---
そのとき、静かにクロエがやってきて。
「……リュウ?借金返したのはえらいけど。あんた、家は?」
「えっ」
「家賃も保証金も払ってないわよね?」
「……ッ」
---
現実が戻ってきた。
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16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
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帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
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セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
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