異世界転移して最強のおっさん……の隣に住んでいる。

モデル.S

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第2章

地球で稼ぎ出す

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マンションの一室。夜の街を見下ろす窓際で、ユートはグラスの水を揺らしながら独りごちた。

「……結局、…本当はただ、普通の生活がしたかっただけだよな」

 過去に治療を施した人々の姿が脳裏に浮かぶ。


 それはただの奇跡じゃない。
 ユートにとって、それは“やれることをやった結果”だった。

 上級ポーション。
 魔大陸の素材を加えることで、あらゆる重傷、そして四肢の欠損すら修復する液体。
 異世界では、その価値は絶大。だが、ここ地球でも――それは変わらない。

 「……助けられるのに、黙って見てるだけってのは、やっぱ性に合わねぇな」

 彼は大きく息を吐いた。だがすぐに、眉をしかめる。

「タダじゃ、逆に怪しまれるしな。変な詐欺扱いされても困る。命が関わってるだけに、なおさらだ」

 ユートはスマホを手に取る。

 「値段は……そうだな。ギリギリ“本気で困ってる人”が、手を伸ばせる額にしよう。信頼を損なわず、でもちゃんと重みのある額。」

 彼の中に、ひとつの基準ができた。

 ――現代医療で絶望された人に、再び人生を歩く可能性を。

 それを叶える手段が、自分の手元にあるのなら。
 使わない理由なんて、どこにもない。

 ユートは静かに立ち上がった。
 行動を始める時だ。


---

部屋には馴染みある蛍光灯の光と、机の上に置かれたノートパソコン。
 久しぶりに戻った地球の自室で、ユートはじっと画面を見つめていた。

 カーソルは、匿名掲示板の「医療・福祉・事故後の生活」系スレッドに合わせられている。

 ポーション――異世界では“命を救う薬”。
 けれど、この世界に持ち込んだそれがどんな扱いを受けるかは、全く未知だった。

 だが、考え続けても何も始まらない。

「……やるなら、慎重にな」

 小さくつぶやき、スレッドに匿名で書き込みを始める。


---

> 【情報提供】事故などで四肢の欠損に苦しむ方へ(真面目な話)

当方、正体は伏せますが、ある特殊な治療薬を持っています。
医学的には説明できないかもしれませんが、後天的に失われた手足などの再生が可能です。

※現時点で薬品は1本のみ。副作用なし。医学的な認可はされていません。
※無料提供ではありません。
※詐欺・釣り・ネタと思う方はスルーしてください。

条件:実際に患部を診断できる環境がある方
匿名でやり取りできる連絡手段を提示してください。

必ず“治したいという意志”のある方のみ。


---

 投稿完了。
 画面に流れる文字列は、静かにスレッドの最下部に並んだ。

 ネットの海に、小さく、しかし確かな“希望”を投げ込んだ瞬間だった。


 ユートは静かに背もたれに沈み込み、呟いた。

「さて……どう返ってくるか」


---

投稿から数時間。画面を閉じずに静かに見つめていたユートの前に、次々と反応が書き込まれていく。


---

「はいはい、再生ポーションってRPGのやりすぎw」
「また出た、奇跡の治療薬詐欺」
「本当に治るなら厚労省通せよ」
「そんなもんあるなら俺も欲しいわ(右足義足民)」


---

 やはり、ほとんどは“ネタ”“釣り”と受け取る者たちだった。
 だが、その中に数件だけ――本気の返信が混ざっていた。


---

「……これ、マジなら、弟の腕を治してやりたい。高校の事故で失ってる」
「事故で足を失いました。医療従事者です。どうすれば接触できますか?」
「どんな形でも構いません。希望を捨てたくない」


---

 ユートは、慎重に内容を選びながら、返信の中から信頼できそうなものを選び、連絡手段として指定された匿名メッセージサービスにログインする。


---

【2. DMでのやり取り:医療関係者・当事者の連絡】


 中でも目に留まったのは、**「事故で足を失いました。医療従事者です」**という投稿の主からのDM。


---

【DM内容】

> はじめまして。山岸といいます。
投稿を見て連絡しました。
私はリハビリ病院で理学療法士をしています。
自身、バイク事故で左足を失っています。
詐欺かとも思いましたが、どうしても気になって。
一度、お会いすることは可能でしょうか?
実際の薬を確認し、説明を聞いた上で判断したいです。




---

 丁寧で冷静な文体。信用度は高そうだった。

 ユートは、慎重に返信を送る。


---

【ユートの返信】

> あなたの立場と状況、確認しました。
会うことは可能です。ただし、顔を晒すのは避けたい。
都内で人目の少ない貸しスペースを借りる予定です。
条件:録音・撮影禁止。人数はあなた1人のみ。
日時は明日の20時、詳細は当日送ります。





 即座に「承知しました」と返ってきた。
 嘘ではない。信じているわけでもない。
 だが――**“希望に賭ける覚悟”**がにじむ返信だった。



 翌日。
 ユートは王都の自宅で、慎重に上級ポーション1本を小瓶に移し、魔力を抑える封を施して持ち帰った。

 地球側で知っている、都内の貸し会議室を匿名予約し、当日夜に現地へ向かう。


---

 部屋はシンプルな応接室仕様。
 ユートは帽子とマスクで顔を隠し、部屋の奥で待った。

 そして――時間ぴったりに、ドアがノックされた。

「失礼します。……山岸です」

 中に入ってきたのは、スーツ姿の30代前半の男性。
 左足の義足をわずかに引きずりながら、静かにユートの前に座る。

「……それが、“薬”ですか?」


 ユートは、小さな木箱をテーブルの上に置いた。
 その中には――黄金色に淡く揺れる、上級ポーション1本。

「この一本で、欠損は治る。ただし、使うかどうかはあなたが決めていい。
 “何かの成分”では説明できない効果だ。信じるかどうかも、あなた次第だ」

 男は、ただ黙ってその光を見つめた。


静まり返る空間の中で、ユートは男のまっすぐな視線を受け止めながら、静かに口を開いた。

「金額は――三百万円。
 ただし、本当に効果があった場合のみ。もし何の変化もなければ、代金は一切いらない。
 そして、服用には俺が立ち会う。理由は、観察と確認のためだ」

 男は一度目を伏せ、ゆっくりと息を吐いた。

「……高い。でも、義足のまま一生過ごすよりマシだと思っています。
 それに……この薬が本物なら、三百どころか、三千万でも価値がある」

 そう言って、スーツの内ポケットから封筒を二重に包んだ札束を取り出した。

「まずは、あなたの目の前でこれを渡しておきます。中身は確認して構いません。
 治らなかったら、持って帰りますが。
 ……ただし、本物だったら、この金は“感謝”として受け取ってください」



 ユートは無言で封筒を受け取り、軽く魔力で札束の量を確認した。
 確かに、ちょうど300万円分の新札が収められていた。

 静かに頷いたユートは、木箱の蓋を開き、黄金色の液体が揺れる小瓶を取り出した。

「じゃあ――始めよう」



 男は震える手で瓶を受け取り、少しだけ躊躇し――一気に飲み干した。

 甘いとも苦いとも言えない、不思議な風味が喉を通る。
 直後――身体の芯から、じわじわと熱が広がっていくのを感じた。

「うっ……! これは……っ!」

 義足のつけ根、ちょうど太腿のあたりに激しい疼きと熱。
 細胞の再構築が、内部で一気に始まっていた。

 ユートがすぐに彼を横たわらせ、軽く魔力で状態を探る。

「大丈夫だ……ちゃんと“再生”が始まってる」

 10分、20分、30分――
 男の顔には汗がにじみ、時折呻きながらも耐え続けた。

 そして40分後、失われていた左足の骨、筋肉、皮膚が完全に再生されていた。



「……俺の……足が……!」

 男は、義足をそっと外し、伸びた左足を震える手でなぞった。
 肌の色も、感覚も、完璧だった。

「――生き返ったようだ……!」


---

 彼の目には、涙があふれていた。

 ユートは何も言わず、そっと封筒を胸ポケットにしまった。

「……ありがとう」

「礼はいい。誰にも言わない。それだけ守ってくれ」

「……絶対に誰にも言わない。……けど、もし、もし次も誰か……必要な人がいたら、また連絡しても?」

 ユートは一瞬だけ迷い――静かに、ひとつ頷いた。


---
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