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第2章
廃坑
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【北の廃坑・封印の広場】
ユートの放った【ストーンバレット】が空を裂いて突き進む。
しかし、黒騎士はまるでそれに気づいていないかのように――避けるでもなく、受け止めるでもなく、ただ静かに歩みを止めた。
石の弾丸は、鎧に命中する寸前、まるで空気に溶け込むように霧散する。
「なっ……?」
「……無効化? いや、違う。干渉してない」
ユートは眉をひそめた。
黒騎士の両目――いや、目は見えない。兜の奥は闇で、何も映していないようで、どこかを“探って”いるようだった。
「……何か、探してる」
バルトが呟くように言った。
黒騎士は周囲を見渡すように首を回し、地面に手をつく。
その瞬間、魔法陣がうっすらと再び光りはじめる。
「ユートさん、止めないと……!」
ティナが駆け出そうとしたが、ユートが右手で制した。
「待て。……これは敵意じゃない。“探索”だ。記憶を辿るような動き……」
「記憶?」
「ああ、まるで“失った記憶”を辿って、自分が誰かを確かめてるみたいだ……」
黒騎士の鎧の胸元――そこから、かすかに光の粒が溢れていた。
それは霧の中に消え、魔法陣の模様の一部に反応しているように見える。
「これは……この魔法陣、“目覚めさせるための準備”か」
ユートの言葉に、ティナが息を呑む。
「じゃあ……いまのうちに倒した方が――」
「……いや、様子を見る」
ユートの声は静かだった。
そして、その瞬間――
黒騎士の兜の奥から、“かすかな声”が漏れた。
『……光……の……鍵……』
たったそれだけ。
だが、その声は確かに“自我の残滓”のようなものを感じさせる。
「光の鍵……?」
バルトが首を傾げ、ユートは魔法陣を見下ろしながらつぶやいた。
「まだ、完全に目覚めてない。それに、敵か味方かも、わからない。……下手に攻撃すれば、災厄を起こす存在かもしれない」
そのとき、魔法陣の周囲の地面がふるりと震えた。
ユートはすぐさま、周囲の魔力を察知――
「……来たか。別の“何者か”が、この魔法陣を追ってきた」
森の奥から、数体の魔物の気配。
だが、それは単なるゴブリンや狼の類ではない。もっと厄介な存在――“召喚される側”の魔物たちだ。
ユートは魔法の準備に入る。
「黒騎士はひとまず放っておけ。まずは――迎撃だ!」
---
【北の廃坑・封印の広場】
森の奥から、重たい足音と獣のうなり声が近づいてくる。
闇の中から、赤い目がいくつも浮かび上がった。
「……四足、牙あり。体格は……牛並か?」
ユートは魔力感知でその数と種類を読み取る。
「リザルグ・ハウンド」――魔力によって召喚される魔獣で、群れで行動し、瘴気に強い。
しかも知性を持つ個体もおり、周囲の指示で連携してくる厄介な魔物だ。
「数、10体……いや、増えてるな。ティナ、バルト!」
「はい!」
「任せてください!」
バルトは両手剣を背から引き抜き、ティナも腰の片手剣を構えた。
ユートは手を広げ、魔力を凝縮しながら叫ぶ。
「【ウィンドブレード】、【フレアショット】、【アースニードル】! 同時展開、三方向!」
――刹那、地面から鋭い石槍が突き上がり、空中には炎の弾が咲き、横薙ぎの風の刃がうなりを上げて魔物たちを襲った!
「ギィエエエエ!」
先頭のハウンドが炎に包まれ、地面に転がる。
「ティナ、右側! バルトは左から回れ!」
「了解っ!」
「任された!」
二人は息を合わせ、魔物の群れを側面から分断しにかかる。
ティナはすばやく跳ねるように接近し、一体のハウンドの足を斬る。
バルトは両手剣の勢いで二体をまとめて吹き飛ばす。
「はぁああっ!」
獣の叫びと金属の音が混じる中――。
黒騎士はただ黙って魔法陣の中央に立っていた。
その姿は、まるで自分の存在に意味を探しているかのようだった。
「……守るべきは、誰なのか……」
かすかに、兜の奥からそんな声がした気がした。
その時、魔物の一体が黒騎士に向かって突進した。
牙を剥いて迫るその魔物に――
黒騎士は微動だにせず、剣を振った。
たった一撃。
だがそれは、空間そのものを裂くような斬撃で、魔物の巨体は真っ二つにされ、霧散した。
「……やっぱり、あいつ……ただの封印された存在じゃないな」
ユートは冷静に魔力をさらに練る。
「全員倒す。手を抜くな!」
---
【北の廃坑・封印の広場】
最後の魔物が、ティナの剣によって地に伏した。
「……終わった、か……」
バルトが息を整えながら剣を下ろす。
魔物の死骸はすぐに魔力の霧となって溶け、草地に静けさが戻った。
ユートは、再び魔法陣の中心に視線を向けた。
――そこに、黒騎士の姿はまだあった。
が、様子がどこかおかしい。
「……あいつ、揺れてる?」
ティナの呟きに、ユートが目を細める。
黒騎士の輪郭が、少しずつ、淡くぼやけていく。
身体の線が霧のように滲み、鎧が淡い光を帯びて輪郭を溶かし始めた。
「まさか、自分から……?」
ユートが歩み寄ろうとしたそのとき、黒騎士はふと顔を――いや、兜の正面をユートに向けた。
『……覚えておけ、名もなき“光の継承者”よ……』
低く響く声は、まるで空間の奥から流れ込んでくるようだった。
その声が消えると同時に、黒騎士の姿は霧となり、風に溶けて消えた。
魔法陣も静かに沈黙し、石畳だけが残された。
「……どういうことだ? なぜ、あいつは……?」
バルトの疑問に、ユートはただ一言つぶやく。
「……まだ、“物語”の途中だったってことさ」
ティナが小さく頷き、三人はしばし黙って立ち尽くした。
その場に残されたのは、焼けた地面と風の音――
そして、記憶の中にだけ残る、黒騎士の微かな声だった。
【王都・ギルド本部 ー 翌日】
報告を終えたユートたちは、ギルドの資料室に足を運んでいた。
ユートの手には、魔法陣の写しと、黒騎士の姿を再現した簡単なスケッチがある。
「“名もなき光の継承者”……どういう意味なんだろう」
ティナが本棚から古い本をめくりながら呟いた。
「“光の継承者”って言葉自体は、英雄譚や神話の中でよく使われるけど……名もなき、ってのが妙だな」
バルトも別の資料に目を通しながら応じる。
「何か、具体的な称号というよりは、象徴的な……“資格”に近いような気がする」
ユートは、ふと一冊の厚い魔導史の書を開いた。
そしてあるページに目を止める。
「……あった。“光と闇の均衡に揺れる時、継承者は導かれる”」
「それ……!」
ティナがページをのぞき込む。
そこには、かつて世界に危機が迫った際、“封印された英雄たち”が目覚めるという伝承が記されていた。
「その中の一人が、黒き鎧の剣士。“かつて王を守り、魔に堕ち、封印された”とある」
「それって、あの黒騎士……!」
「可能性は高い。封印されていたのは、災厄としてじゃなく……“何かを託すため”だったのかもしれない」
ユートは静かにそう言いながら、自分の胸の奥にざわめく感覚を覚えていた。
“自分がなぜ異世界に呼ばれたのか”――その答えに、少しずつ近づいている気がする。
「……黒騎士はまだ完全に目覚めてない。けど、俺を見て、何かを思い出した」
「じゃあ、また現れる?」
ティナの問いに、ユートは小さく頷いた。
「“物語の途中”って言ったのは、俺自身にも言い聞かせてたのかもしれないな。
あいつと、また会う日が来る。――その時までに、もっと強くなっておかないと」
【王都・ユートの家 朝】
朝食を終えた頃、玄関の扉をノックする音が響いた。
対応したミリアが「ユート様、伯爵家からの使いの者です」と告げ、丁寧に一通の封筒を差し出す。
「また伯爵からか……」
ユートは封を切り、内容に目を通した。
---
《親愛なるユート殿へ
先日は我が家の一件にお力添えいただき感謝しております。
さて、今回は少し厄介な話でして――“王都北東の辺境地帯にある鉱山”で不穏な動きが見られるとの報せがありました。
どうやら、以前より争っていた商会同士の抗争が再燃しているらしく、
その裏には、どうも貴族の影がちらついております。
本来、我らが干渉すべきではないのですが、
鉱山の利権が王都経済に直結している以上、無視はできません。
つきましては、ユート殿に現地調査をお願いしたく存じます。
詳細は我が屋敷にてお伝えいたします。
――グレイス伯爵》
---
「鉱山か……また利権絡みか。商会同士の争いってのも怪しいな」
ユートは手紙を折りながら、バルトとティナに目をやった。
「また依頼ですか?」
バルトが嬉しそうに目を輝かせる。
「鉱山だって。鉱石あるといいなぁ……」
ティナはしっぽをぴくぴくさせながら、すでにやる気だ。
「じゃあ、準備して午後には伯爵邸に向かうぞ」
ユートがそう言うと、二人は元気よく頷いた。
---
【同日・グレイス伯爵邸】
豪奢な応接間に通された三人。
そこに現れた伯爵は、以前より少し険しい表情だった。
「来てくれて助かる。――さて、本題だが」
伯爵は地図を広げ、北東の鉱山地帯を指差す。
「この鉱山、近くに“別の貴族の領地”が接していてな。元々は共有地だったが、最近そこの領主――ロゼリア男爵が、なぜか急に『鉱脈はすべて我が家のものだ』と言い張ってきてな」
「……強引な領土拡大、ですね」
「うむ。そして裏で動いているのが、以前のカーラム商会の残党という話もある」
ユートの眉がわずかに動いた。
「……どんな調査を希望されますか?」
「現地で状況を確認し、証拠を掴んでほしい。それがあれば、王都として正式に対処できる。
危険があれば戦闘も辞さぬ覚悟がいるが……引き受けてくれるか?」
ユートは一瞬だけ考え、静かに頷いた。
「引き受けます。詳細な場所と状況、まとめて資料をください」
「助かる。――どうか、気をつけてくれ」
---
ユートの放った【ストーンバレット】が空を裂いて突き進む。
しかし、黒騎士はまるでそれに気づいていないかのように――避けるでもなく、受け止めるでもなく、ただ静かに歩みを止めた。
石の弾丸は、鎧に命中する寸前、まるで空気に溶け込むように霧散する。
「なっ……?」
「……無効化? いや、違う。干渉してない」
ユートは眉をひそめた。
黒騎士の両目――いや、目は見えない。兜の奥は闇で、何も映していないようで、どこかを“探って”いるようだった。
「……何か、探してる」
バルトが呟くように言った。
黒騎士は周囲を見渡すように首を回し、地面に手をつく。
その瞬間、魔法陣がうっすらと再び光りはじめる。
「ユートさん、止めないと……!」
ティナが駆け出そうとしたが、ユートが右手で制した。
「待て。……これは敵意じゃない。“探索”だ。記憶を辿るような動き……」
「記憶?」
「ああ、まるで“失った記憶”を辿って、自分が誰かを確かめてるみたいだ……」
黒騎士の鎧の胸元――そこから、かすかに光の粒が溢れていた。
それは霧の中に消え、魔法陣の模様の一部に反応しているように見える。
「これは……この魔法陣、“目覚めさせるための準備”か」
ユートの言葉に、ティナが息を呑む。
「じゃあ……いまのうちに倒した方が――」
「……いや、様子を見る」
ユートの声は静かだった。
そして、その瞬間――
黒騎士の兜の奥から、“かすかな声”が漏れた。
『……光……の……鍵……』
たったそれだけ。
だが、その声は確かに“自我の残滓”のようなものを感じさせる。
「光の鍵……?」
バルトが首を傾げ、ユートは魔法陣を見下ろしながらつぶやいた。
「まだ、完全に目覚めてない。それに、敵か味方かも、わからない。……下手に攻撃すれば、災厄を起こす存在かもしれない」
そのとき、魔法陣の周囲の地面がふるりと震えた。
ユートはすぐさま、周囲の魔力を察知――
「……来たか。別の“何者か”が、この魔法陣を追ってきた」
森の奥から、数体の魔物の気配。
だが、それは単なるゴブリンや狼の類ではない。もっと厄介な存在――“召喚される側”の魔物たちだ。
ユートは魔法の準備に入る。
「黒騎士はひとまず放っておけ。まずは――迎撃だ!」
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【北の廃坑・封印の広場】
森の奥から、重たい足音と獣のうなり声が近づいてくる。
闇の中から、赤い目がいくつも浮かび上がった。
「……四足、牙あり。体格は……牛並か?」
ユートは魔力感知でその数と種類を読み取る。
「リザルグ・ハウンド」――魔力によって召喚される魔獣で、群れで行動し、瘴気に強い。
しかも知性を持つ個体もおり、周囲の指示で連携してくる厄介な魔物だ。
「数、10体……いや、増えてるな。ティナ、バルト!」
「はい!」
「任せてください!」
バルトは両手剣を背から引き抜き、ティナも腰の片手剣を構えた。
ユートは手を広げ、魔力を凝縮しながら叫ぶ。
「【ウィンドブレード】、【フレアショット】、【アースニードル】! 同時展開、三方向!」
――刹那、地面から鋭い石槍が突き上がり、空中には炎の弾が咲き、横薙ぎの風の刃がうなりを上げて魔物たちを襲った!
「ギィエエエエ!」
先頭のハウンドが炎に包まれ、地面に転がる。
「ティナ、右側! バルトは左から回れ!」
「了解っ!」
「任された!」
二人は息を合わせ、魔物の群れを側面から分断しにかかる。
ティナはすばやく跳ねるように接近し、一体のハウンドの足を斬る。
バルトは両手剣の勢いで二体をまとめて吹き飛ばす。
「はぁああっ!」
獣の叫びと金属の音が混じる中――。
黒騎士はただ黙って魔法陣の中央に立っていた。
その姿は、まるで自分の存在に意味を探しているかのようだった。
「……守るべきは、誰なのか……」
かすかに、兜の奥からそんな声がした気がした。
その時、魔物の一体が黒騎士に向かって突進した。
牙を剥いて迫るその魔物に――
黒騎士は微動だにせず、剣を振った。
たった一撃。
だがそれは、空間そのものを裂くような斬撃で、魔物の巨体は真っ二つにされ、霧散した。
「……やっぱり、あいつ……ただの封印された存在じゃないな」
ユートは冷静に魔力をさらに練る。
「全員倒す。手を抜くな!」
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【北の廃坑・封印の広場】
最後の魔物が、ティナの剣によって地に伏した。
「……終わった、か……」
バルトが息を整えながら剣を下ろす。
魔物の死骸はすぐに魔力の霧となって溶け、草地に静けさが戻った。
ユートは、再び魔法陣の中心に視線を向けた。
――そこに、黒騎士の姿はまだあった。
が、様子がどこかおかしい。
「……あいつ、揺れてる?」
ティナの呟きに、ユートが目を細める。
黒騎士の輪郭が、少しずつ、淡くぼやけていく。
身体の線が霧のように滲み、鎧が淡い光を帯びて輪郭を溶かし始めた。
「まさか、自分から……?」
ユートが歩み寄ろうとしたそのとき、黒騎士はふと顔を――いや、兜の正面をユートに向けた。
『……覚えておけ、名もなき“光の継承者”よ……』
低く響く声は、まるで空間の奥から流れ込んでくるようだった。
その声が消えると同時に、黒騎士の姿は霧となり、風に溶けて消えた。
魔法陣も静かに沈黙し、石畳だけが残された。
「……どういうことだ? なぜ、あいつは……?」
バルトの疑問に、ユートはただ一言つぶやく。
「……まだ、“物語”の途中だったってことさ」
ティナが小さく頷き、三人はしばし黙って立ち尽くした。
その場に残されたのは、焼けた地面と風の音――
そして、記憶の中にだけ残る、黒騎士の微かな声だった。
【王都・ギルド本部 ー 翌日】
報告を終えたユートたちは、ギルドの資料室に足を運んでいた。
ユートの手には、魔法陣の写しと、黒騎士の姿を再現した簡単なスケッチがある。
「“名もなき光の継承者”……どういう意味なんだろう」
ティナが本棚から古い本をめくりながら呟いた。
「“光の継承者”って言葉自体は、英雄譚や神話の中でよく使われるけど……名もなき、ってのが妙だな」
バルトも別の資料に目を通しながら応じる。
「何か、具体的な称号というよりは、象徴的な……“資格”に近いような気がする」
ユートは、ふと一冊の厚い魔導史の書を開いた。
そしてあるページに目を止める。
「……あった。“光と闇の均衡に揺れる時、継承者は導かれる”」
「それ……!」
ティナがページをのぞき込む。
そこには、かつて世界に危機が迫った際、“封印された英雄たち”が目覚めるという伝承が記されていた。
「その中の一人が、黒き鎧の剣士。“かつて王を守り、魔に堕ち、封印された”とある」
「それって、あの黒騎士……!」
「可能性は高い。封印されていたのは、災厄としてじゃなく……“何かを託すため”だったのかもしれない」
ユートは静かにそう言いながら、自分の胸の奥にざわめく感覚を覚えていた。
“自分がなぜ異世界に呼ばれたのか”――その答えに、少しずつ近づいている気がする。
「……黒騎士はまだ完全に目覚めてない。けど、俺を見て、何かを思い出した」
「じゃあ、また現れる?」
ティナの問いに、ユートは小さく頷いた。
「“物語の途中”って言ったのは、俺自身にも言い聞かせてたのかもしれないな。
あいつと、また会う日が来る。――その時までに、もっと強くなっておかないと」
【王都・ユートの家 朝】
朝食を終えた頃、玄関の扉をノックする音が響いた。
対応したミリアが「ユート様、伯爵家からの使いの者です」と告げ、丁寧に一通の封筒を差し出す。
「また伯爵からか……」
ユートは封を切り、内容に目を通した。
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《親愛なるユート殿へ
先日は我が家の一件にお力添えいただき感謝しております。
さて、今回は少し厄介な話でして――“王都北東の辺境地帯にある鉱山”で不穏な動きが見られるとの報せがありました。
どうやら、以前より争っていた商会同士の抗争が再燃しているらしく、
その裏には、どうも貴族の影がちらついております。
本来、我らが干渉すべきではないのですが、
鉱山の利権が王都経済に直結している以上、無視はできません。
つきましては、ユート殿に現地調査をお願いしたく存じます。
詳細は我が屋敷にてお伝えいたします。
――グレイス伯爵》
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「鉱山か……また利権絡みか。商会同士の争いってのも怪しいな」
ユートは手紙を折りながら、バルトとティナに目をやった。
「また依頼ですか?」
バルトが嬉しそうに目を輝かせる。
「鉱山だって。鉱石あるといいなぁ……」
ティナはしっぽをぴくぴくさせながら、すでにやる気だ。
「じゃあ、準備して午後には伯爵邸に向かうぞ」
ユートがそう言うと、二人は元気よく頷いた。
---
【同日・グレイス伯爵邸】
豪奢な応接間に通された三人。
そこに現れた伯爵は、以前より少し険しい表情だった。
「来てくれて助かる。――さて、本題だが」
伯爵は地図を広げ、北東の鉱山地帯を指差す。
「この鉱山、近くに“別の貴族の領地”が接していてな。元々は共有地だったが、最近そこの領主――ロゼリア男爵が、なぜか急に『鉱脈はすべて我が家のものだ』と言い張ってきてな」
「……強引な領土拡大、ですね」
「うむ。そして裏で動いているのが、以前のカーラム商会の残党という話もある」
ユートの眉がわずかに動いた。
「……どんな調査を希望されますか?」
「現地で状況を確認し、証拠を掴んでほしい。それがあれば、王都として正式に対処できる。
危険があれば戦闘も辞さぬ覚悟がいるが……引き受けてくれるか?」
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