異世界転移して最強のおっさん……の隣に住んでいる。

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第3章

巻き込み事故

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【夜・フィルデンの自室】

 ユートは静かに、転移の準備を整えていた。
 数日間の不在に備えて、ミリアには「魔力修行に出る」とだけ伝えてある。

「服と財布と……とりあえず地球でバレない格好と……」

 呟きながら転移魔法陣を起動し、詠唱を始めようとしたとき――

「……何やってんだ、ユート」

「どこか行くのか?」

 後ろから現れたのは、バルトとティナ。
 扉の隙間から入ってきたらしい。

「っ!? お前ら、なんでここに……」

「魔力の流れ、明らかに普通じゃなかったしな。こそこそ何やってんだって思って」

「修行って言ってたけど、なんか違くない?」

「……これは、その……」
 ユートは言葉を濁しつつ、転移の準備を早める。すぐ戻ってくる予定だ。


---


「ごめん、ちょっと急ぎなんだ。行ってくる!」

 詠唱が完了し、足元の魔法陣が光を放つ。

「おい、待っ――」

「ユート、何それ――!」

 光が広がるその瞬間、ティナとバルトが反射的に手を伸ばしてユートに触れた。

 次の瞬間――3人は同時に転移の光に包まれ、消えた。


---

【地球・夜・最初に異世界へ飛んだ河川敷】

 風の匂い、舗装された地面、見慣れないネオン。

「――っ!? なんだ、ここ!?」
「空気が、変……え、これ……」

 目を丸くする2人。
 ユートは頭を抱えた。

「……最悪だ。ついてきちゃったか……」

「え、ここ……お前の修行場所? ていうか、どこの国だよここ!?」

「……その説明はあとにして、とりあえず服、買おう。さすがに目立ちすぎる」


(ここが“地球”。俺の元いた世界。まさか一緒に来るとは……
 でも、おじさんに会う前に説明だけは……)


---

【地球・夜・駅近くのショッピングビル】

「とりあえず、ここだな……」

 ユートは、2人を連れて入ったのは全国チェーンのカジュアル服屋「ユニ◯ロ」的な店。
 価格もお手頃で、サイズも豊富。目立たず、シンプルな服が揃っている。

「なんだこの店!? 服が……整然と並んでる……」
「え、この布、魔力も加工痕もないのにこんなに伸びる!? 何コレ!? すごっ!」

 2人は完全にカルチャーショック状態。

「いいからこれ着替えて。サイズは……うん、MとLでいけるな」


---


 着替え終わった2人は、見た目だけなら完全に地球人。
 ティナは黒のパーカーにジーンズ、バルトはTシャツにジャケット。

「……動きやすいなこの服。軽いし」
「うわ、靴の底が平らだ。石畳じゃないのにこんな滑らないの?」

「まぁ、そういう技術が進んでる世界なんだよ。ここは」


---

【住宅街・榊春都(ユート)の家】

 電車と徒歩で移動し、静かな住宅街に入る。
 マンションの一室――ユートの元の生活の拠点。

「ここが……お前の家?」

「あぁ。地球での、俺――榊春都の家」

 鍵を開け、扉を開けると、そこには――
 少しだけ散らかった、けれど落ち着いた雰囲気のワンルームが広がっていた。

 2人の異世界人を連れてきてしまった今、ユートはどう説明するべきかを考えていた。

 ティナはソファに座ってクッションを抱えながら辺りをキョロキョロと見回し、バルトは冷蔵庫を開けて中を覗いていた。

「おいユート、これ……全部飲み物か? 魔道具なしで冷たいままって、どうなってんだ?」

「……それ、冷蔵庫っていう“この世界”の技術。魔法じゃなくて、電気で動いてる」

「でんき? って、何だ?」

 ユートは苦笑し、軽く頭をかいた。

「よし、落ち着いて聞いてくれ。――ここは、俺の元いた世界。お前らの住んでた国じゃない。全く別の……場所だ」

 ティナがクッションを抱えたまま眉をひそめる。

「別の……場所?」

「うん。俺が“あの世界”に行く前に暮らしてたところ。ここが、俺の“地元”だ」

「地元って言うけど……まるで別の国どころか、空気まで違うじゃない」

「そうだよ。こっちは“魔力が存在しない世界”。魔法も、モンスターも、ステータスもない。ただの人間が、文明の力で生きてる」

 バルトが、テーブルの上に置かれていたテレビのリモコンを手に取った。

「じゃあ、これも“文明の力”ってやつか?」

「そう。押してみ?」

 カチッとボタンを押すと、テレビが起動し、バラエティ番組の音声が部屋に広がる。

「……うぉっ!? これ、箱の中に人が!?」

「違う、映像だよ。記録された情報を“再生”してるだけ」

「すっげぇ……こっちの世界、魔法なくても十分おかしいぞ」

 ティナも、テレビに映る映像に目を丸くしていた。



 ユートは二人の様子を見ながら、小さな箱を取り出した。

「これ、渡しとく」

 中から取り出したのは、金属でできた小さなリング。見た目はシンプルな装飾のない指輪だった。

「なんだこれ?」

「“翻訳の指輪”。この世界の言葉と、お前らの言葉をつなぐための道具だ。魔力がなくても自動で機能するように、ちょっと工夫してある」

 バルトが指輪をじっと見つめる。

「これ、付けたら言葉が通じるのか?」

「ああ。ただし、話すときも、聞くときも脳の中で変換される。だから使ってるうちに、この世界の言葉も少しずつ覚えてくるはず」

「すげぇな、ユート。そんなもん作れたのか?」

「作ったんじゃない。俺の師匠が前にくれたんだ。非常用ってな」

 ティナが指輪を受け取り、慎重に左手の薬指にはめた。

「……不思議な感じ。なんか……言葉が、頭に直接入ってくるみたい」

「最初は違和感あるけど、すぐ慣れるよ」

 バルトも指輪をはめると、驚いたように周囲を見回した。

「うわっ、ティナの声が妙にハッキリ聞こえる……お前、普段からそんな冷たい口調だったっけ?」

「バルト、うるさい」

「はいはい、いつも通りだな……」



 笑いがこぼれた瞬間、ユートはふっと表情をゆるめた。

「……よかった、2人とも無事で」

 ティナがユートをじっと見つめた。

「本当は、私たちを連れてくるつもり、なかったんだよね?」

「うん。でも、止める時間もなかった。転移って、あんなに一瞬で発動するとは思ってなかった」

 バルトがソファに座り込んで、大きくため息をついた。

「まぁ、でもな。こっちの世界ってやつ、面白そうだし? 少しは観光してもいいだろ」

「観光って……いや、無茶だけはすんなよ。こっちの世界の人間は、お前らみたいなの見たら腰抜かすぞ」

「……ティナ、明日服買いに行こうぜ。これ、動きにくくてしょうがねぇ」

「うん。でも、その前にこの世界の“通貨”ってやつも教えて」

「はいはい……仕方ないな、もう……」



ティナとバルトがソファに落ち着き、部屋の静寂が少しだけ戻ってきたころ。
 ユートは姿勢を正して、2人に向き直った。

「さて……落ち着いたところで、改めてこっちの世界での注意点を話しておく。聞き逃すなよ」

 バルトとティナはピンと背筋を伸ばす。ユートの“本気モード”は何度も経験済みだった。

「まず、ここでは“何かを勝手に触るな”。特に知らない機械や店の商品。こっちの人間は“盗まれた”と感じたら、すぐ警察ってのに通報する」

「盗んでなくても?」

「触っただけでも、店のものならアウトだ。疑われただけで連れていかれることもある」

「……やば」

 バルトが手を引っ込め、テーブルのリモコンから距離を取った。

「次に、“むかついても手を出すな”。特に相手が一般の市民の場合、絶対に怪我させるな。緊急時以外で殴ったり斬ったりしたら、ほぼ間違いなく捕まる」

「……緊急時って?」

「命の危機レベル。明確な自己防衛だけだ」

 ティナがやや険しい表情で口を開く。

「それって……相手が挑発してきても?」

「耐えろ。こっちの世界の人間は、魔法もスキルも持ってない。だから力の差があって当然って感覚はない。
 そのぶん、こっちが“異常”に見える。だから逆に、触れただけでも“暴力”って認識される」

「……触っただけで?」

「うん。見ず知らずの奴にちょっと手をかけただけで通報されることもある。こっちでは、“相手に触れる”ってこと自体がすごく慎重に扱われる」

「なるほどな……この世界の人間、繊細なんだな」

「そういうこと。だから、我慢できない奴がいたら、俺に言え。いいな?」

 2人は、少し神妙に頷いた。

「特にティナ。見た目が可愛いからって、変なのに絡まれてもキックは我慢しろよ?」

「……努力する」



 空気が落ち着いたところで、ユートは立ち上がった。

「よし。次の行動だ」

「どこ行くんだ?」

「――俺の師匠に会いに行く」

「師匠?」

「ああ」

 ユートの目に、一瞬だけ緊張が走った。

「今までは“俺をあの世界に送り出した人”としてしか見てなかったけど……今回の件で、ちゃんと話を聞かないといけないと思った。
 お前らを連れて来たことも、薬の件も、敵対組織のことも全部含めてな」

 ティナがソファから立ち上がり、軽く腕を組んだ。

「怖い人?」

「強い。冗談抜きで、俺より圧倒的に。戦ったら……勝てる気がしない」

「うわぁ……それはすごいな」

 バルトが笑う。

「じゃ、挨拶は丁寧にな」

「それな」


---

 ユートは壁に掛けてあったリュックを背負いながら、息を整えた。

「さぁ、行こう。今夜のうちに決着をつける」

---

【地球・夜・榊春都(ユート)の家の外】

 夜の住宅街――一見静かで、人気のない道。
 だが、ユートがバルトとティナを連れて家を出た瞬間、空気が変わった。

「……気配が多い」

 ティナが小さくつぶやき、バルトは無意識に背中に手をやる。

 しかし、そこに愛剣はない。地球では目立つからと、置いてきたのだ。

「……つけられてたか。2人が来たことで油断してた……」

 ユートの顔が険しくなる。
 その時、路地の陰、角、車の中、電柱の裏……武装した男たちがぞろぞろと姿を現す。

 スーツ姿、ジャンパー、ヘルメットにマスク。
 統一された装備はないが、全員がただならぬ殺気を放っている。

 ――数、およそ200。


---

「――バルト、ティナ。ちょっとだけ聞いてくれ」

 2人は静かにうなずいた。ユートは魔力の感知を研ぎ澄ましながら、低く言う。

「この世界の武器は厄介だ。目に見えないほど速く飛んでくる“金属の弾”とかがある。あたったら即死すると思え」

「弓みたいなもんか?」

「もっと速くて、音がして、見えない。でも、それ以外の奴らは――正直、雑魚だ。油断さえしなきゃ問題ない」

 バルトが肩を回し、ティナは頷いた。

「じゃあ、まずは避ければいいのね」

「うん。それと絶対に背中を見せないこと。逃げると撃たれる。
 ……たぶん、俺を狙ってる。けど、こっちがただの市民だと思ってるうちは“殺し”には来ない」


---


 その時、一人の男が前に出てきた。

 短く刈り込まれた髪、鋭い目つき、左頬に大きな傷――
 男はポケットに手を突っ込んだまま、気だるげに歩いてきた。

「よう。お兄さん。あんた、榊春都って人間だよな?」

「……ああ」

「俺は“大原”。ま、ちょっと困っててな。
 とある筋から聞いたんだ。“お前、すげぇ薬持ってる”って」

 ユートは無表情のまま、大原の瞳を見返す。

「薬?」

「ああ。なんでも“病気も怪我も一発で治る”っていう、夢の薬らしいな。
 俺はそういうの大好きでな? それを、少し“買い取らせて”もらおうと思って」

 大原の声は柔らかかったが、後ろに控える200人の“静かな殺気”が、本気を物語っていた。


「……悪いが、その話には乗れない」

「そうか。……なら、仕方ない」

 パチン、と大原が指を鳴らす。



 その瞬間、周囲の200人が一斉に武器を構えた。
 ナイフ、バット、チェーン、スタンガン、銃――

 全方向から、“異世界では見たことのない兵装”がユートたちを取り囲む。

「来るぞ、2人とも……!」


住宅街の静寂を、金属音が引き裂いた。

「来るぞッ!」

ユートが叫んだ直後、夜の闇から火花が閃く。乾いた破裂音。銃だ。バルトとティナが即座に動く。

「ティナ、右だ! 跳んで回避しろ!」

「了解!」

ティナの身体が浮かぶように跳ね、縁石を蹴って屋根に飛び上がる。その瞬間、地面を穿つ銃弾。コンクリが砕け、破片が宙を舞う。

「速ぇ……!」

バルトは最小限の動きで弾道を読み、左右へ蛇行するように走りながら敵陣へ突っ込んだ。

ユートは手を掲げ、低く詠唱する。

「《土の守り》」

彼の周囲に土壁が立ち上がり、着弾を受け止める。その隙に、ユートは足元に小型の魔法陣を展開した。

「《重力圧縮》」

地面が波打ち、周囲10メートルの敵が一斉に崩れ落ちるように倒れた。立っていられない。骨が折れ、悲鳴が上がる。

「な、なんだこいつら……!」

叫び声が走る。

バルトはすでに一人目の懐に入り、拳でアゴを砕き、銃を蹴り飛ばす。返す刀のように逆手に取った金属バットで2人目の側頭部を叩き伏せた。

「軽すぎるな。こいつら、鍛えてねぇ!」

ティナは屋根から音もなく飛び降り、ナイフを持った男の背後に着地。

「せめて気配を消してから近づきなさい」

冷たい声とともに、男の手首をねじり上げ、意識を奪う。

一方ユートは、地形そのものを変える力で敵の集団を分断していた。足元が突然崩れ、敵が次々と穴に落ちる。

「《土の牙》」

地面から槍状の岩が伸び、銃を構えた者の腕を貫くギリギリで止まり、武器を弾き飛ばす。

「……やばい、これ、やばい奴らだ……!」

戦意を失った者たちが後退を始める。しかし後方にはまだ指示を待つ者が控えていた。

「逃げるな! 撃てッ!」

大原の怒声が飛ぶ。

再び銃声。今度は殺意を込めた真正面からの集中砲火。

ユートは即座に魔法を変える。

「《土壁・全周展開》!」

十字型に立ち上がる土の壁が盾となり、弾丸を全て受け止める。しかし壁の耐久にも限界がある。ユートの額に汗がにじんだ。

「バルト! 撤退する奴は追うな、狙いは大原だ!」

「了解!」

バルトが駆け抜ける。その動きは異世界での訓練の成果――肉眼で追えない速さで大原に迫る。

「っ……!?」

初めて焦った表情を見せた大原が背後にいた部下を盾に取ろうとするが、バルトの拳が風を切るより速く届いた。

「――どけよ」

一撃で部下ごと壁に叩きつけ、大原の胸ぐらをつかむ。

「誰にモノ言ってるのか分かってねぇみたいだな?」

「っ、あんたら一体、何者だ……?」

「聞いて驚くなよ?」

背後からティナの声がした。さっきまで屋根にいたはずの彼女が、すでに大原の背後にいた。

「異世界の冒険者よ」

 大原の顔から血の気が引く。

「……は?」

ユートが歩み寄る。銃を持った敵の足元にあえて軽い火球を放ち、地面を爆ぜさせる。

「薬を奪うために、200人を動かすような組織……どこがバックについてる?」

「……知らねぇよ。言われたとおり動いただけだ。薬を持つ奴がいるって聞いただけで……」

「ふぅん」

ユートは静かに手を下ろす。

「帰れ」

「……は?」

「帰って、報告しろ。ここには“触れちゃいけない奴ら”がいたってな」

「……っ」

 一人、また一人と、男たちは武器を捨てて後退していく。
 その場に残ったのは、バルトに押さえられた大原と、3人の影だけだった。


---

ユートは空を見上げた。
かすかに朝焼けの気配。けれど――不穏な予感が、胸を過った。

(こいつらは“先遣隊”……これで終わりなはずがない)


---

 撃退された200人の影がすべて消えた後も、住宅街の静けさは戻らなかった。
 ユートは表情を曇らせたまま、手の中で魔力の余波を抑え込んでいた。

「……ティナ、バルト。ちょっと寄るところがある。ついてきてくれ」

「敵の追撃?」

「いや、違う。……地球で信頼できる数少ない人間のところだ」

 2人は黙ってうなずいた。


---

【BAR「BROOKLYN」・深夜】

 静まり返る店内。
 アンティークなランプが静かに揺れて、カウンター奥の男――風間は無言でグラスを磨いていた。

 そこに入ってきたユートと、ティナ、バルト。

 風間は視線をちらと動かすだけで、すぐに異変を察した。

「……見ない顔だな。お前の仲間か?」

「ああ。――あいつら、“こっちの人間じゃない”」

「……は?」

 グラスを拭く手が止まる。

 ユートは、カウンター席に腰を下ろし、低く言った。

「信じなくていい。ただ事実として、常識が通用しない。身体能力も、感覚も、戦闘力も、まるで違う」

 バルトはカウンターに手をついて、店内を見渡していた。

「ここ……騒がしいときは面白そうだな。酒、飲めんのか?」

「バルト、やめとけ」

 ティナはソファに座って足を組み、店内のスピーカーから流れる音楽に耳を傾けていた。

「この曲……なんか、懐かしいような……不思議な気分」

「……ふぅん」

 風間はしばらく2人を観察してから、自分のアタマを指さしながら低く言った。

「つまり、連れてきちまったんだな。“ヤバい連中”を」

「……偶然、巻き込んじまった」

「……らしくないな、お前にしては。けど、まぁ分かったよ。
 そっちの事情はとりあえず置いといて、聞きたいのは別件なんだろ?」


---

【風間との密談】

 ユートは頷いた。

「さっき、200人規模の武装集団に囲まれた。
 仕掛けてきたのは“大原”って名乗るやつ。俺が“妙な薬を持ってる”って情報をどこからか掴んだらしい」

 風間はすぐにスマホを操作し始める。

「大原ね……武闘派の半グレ。元は暴走族、今はちょっとした組織の下請けみたいな動きしてるやつ。
 けど、200人も動かすってなると、バックがいるな。たぶん――“興味本位じゃない連中”が」

「それは俺も思った。……けど、大原自身は“何も知らない”ようだった。薬の出どころも、意味も。
 ただ“高く売れる奇跡の治療薬”ってだけで動いてる」

 風間は煙草に火をつけ、しばらく黙った。

「なぁ春都。お前、今どのくらいの“目”をつけられてるか分かってるか?」

「……少しは自覚してる」

「今のままじゃ、次に来るのは200人じゃ済まない。“消される”か“囲われる”か――選ばされるぞ」

 ユートはグラスの氷を見つめたまま、静かに言った。

「だから、お前に頼みがある。
 “俺たちの存在”が表に出る前に、裏で対処できる手段を持ちたい。
 場所、人脈、情報……今の地盤じゃ、足りない」

「分かった」

「それと、この2人に戸籍と身分証明書をくれ。」

---
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