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第3章
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鉄の道は、静かに、そして確実に王国の風景を変えていた。
朝早く、アストレアの駅に立つユートは、深く息を吸い込んだ。
遠くから――「ポォォォオオオ……!」と、低く力強い汽笛が響いてくる。
その音は、まるで未来の到来を告げるかのようだった。
---
「来たか。――おお、デカいな……!」
ユートの視線の先には、艶やかな黒と銀の外装に包まれた巨大な機関車。
それは、宮野と鳴海を中心に地球の技術と魔道の融合によって開発された、最新型の魔道機関車だった。
・従来型より2.5倍の積載量
・魔力効率を大幅に改善し、燃費性能が50%向上
・“魔道安定炉”を搭載し、浮上走行による振動軽減
・先端部に魔法探知石を設置し、線路上の障害物を感知・回避
「名前は“アルケイン・ライナー”。王国技術と異界の知恵の結晶体です」
宮野が誇らしげに語ると、ユートは笑った。
「最高にイカしてるな。これで、物も人も、もっと遠くへ行ける」
---
王都の協力を得て、この“アルケイン・ライナー”はまず6編成が量産され、主要都市路線に投入されることになった。
・王都-アストレア(本線)
・王都-南港街デグラント(交易路)
・王都-北方鉱山都市ガーレン(資材輸送)
・王都-聖堂都市エルミーラ(巡礼路線)
それぞれの路線には、魔道ステーションと呼ばれる制御拠点が新設され、列車の整備と管理を一括して担うよう整備が進む。
---
「輸送時間が半分になった!」
「昨日頼んだ荷が、今日の朝には届いたのよ」
「商売の幅が、一気に広がったわ!」
商人たちは目を輝かせ、旅人たちは身軽に街を渡り歩く。
遠くの街の料理や衣服、文化すらも鉄路を通じて流れ込み――
王国全体が“ひとつの街”になり始めていた。
---
その夜、ユートはアストレアの丘に登り、夜の線路を見下ろしていた。
星空の下、銀の機関車が静かに光の帯を引きながら走っていく。
「最初は、ただ街を繋ぎたかっただけなんだよな……」
隣に座るバルトが、静かに頷いた。
「でも気がつきゃ、王国まるごと動かしちまってるぜ」
ティナも微笑む。
「でもさ、いいじゃん。ユートらしいよ。夢の延長線で、ちゃんと現実を変えてる」
ユートは照れたように頭をかきながら、ぼそりと呟いた。
「……じゃあ、次は国境を越えるか?」
「……マジで言ってんのか?」
「行けるとこまで行こうぜ」
---
アストレアの空気が、少しずつ変わり始めていた。
街は賑わっている。
駅前は毎朝行列、路地には屋台と旅人が溢れ、住居区画には新築の家が次々と立ち並ぶ。
子どもたちの笑い声もあちこちで聞こえる。
だが――その活気の裏で、じわじわと“飽和”の兆しが見えていた。
---
「ユート、正直に言う。アストレア、もう限界が近い」
開発責任者である宮野は、街の最新統計を見せながら告げた。
「ここ半年で人口は倍以上。家は足りず、下水の処理量はギリギリ。農業区画も拡張してるけど、追いつかない。……インフラがパンク寸前だ」
鳴海も険しい顔で頷く。
「このまま無理に詰め込めば、いずれ街そのものが不安定になる。住み心地も、安全も、全部崩れるぞ」
ユートは机に肘をつき、静かに目を閉じた。
「……ありがとな。はっきり言ってくれて助かる」
---
その夜、いつもの家の食卓で。
ティナ:「いいことなんだけどね、人が増えるのって」
バルト:「けど、ユートの“みんなが居心地良く暮らせる街”って理想が崩れかけてるのも事実だな」
ユートは苦笑しながら、炊き立てのご飯を見つめた。
「……よし。だったら、もう一つ作るか。街を」
翌朝、会議の場でユートは宣言した。
「新たな街を開発します。アストレアと並ぶ、第二の拠点として」
地図を広げながら候補地を指し示す。
「この森の北、川を挟んだ高原地帯。
風が通り、水も豊富で、魔物の危険も比較的少ない。鉄道を一本引けば、アストレアと繋げられる」
「……本気か?」
「本気も何も、もう動かないと手遅れになる。――俺たちなら、できるだろ?」
--
・アストレアから鉄道で20分
・住居区、商業区、農業区、技術研究区を明確に分離
・初期人口目標:5,000人
・駅と周辺には大規模物流拠点を建設
・防衛用の衛兵詰所、魔道結界、防災設備を併設
・設計責任者は宮野、現場監督に鳴海、ユートは総指揮
王都にも報告が上がり、王太子からの支援と許可も即日で下りた。
「アストレアに入りきれなかった商人や職人たちが、新しい街で一旗揚げようとしているらしいぞ」
「引っ越し先に“ノース”が良いって。空気が澄んでて住みやすいんだってさ」
「次の街も、ユート様が作るんだろ? なら間違いないよ!」
地ならしを終えた土地を見渡しながら、ユートは呟く。
「夢みたいだったな、最初は。……でも今は、ちゃんと“国の未来”を作ってる気がする」
風が吹き抜ける草原。
そこに、またひとつ“希望の街”が生まれようとしていた。
---
アストレアの人口は急増していた。
半年で人口は倍近くに達し、住宅不足、生活インフラの圧迫、物流過多が発生。都市機能は限界に近づいていた。
開発責任者・宮野と技術指揮の鳴海は、定例報告の場でそれを明確に指摘。
「これ以上の人口流入には、アストレアは耐えられません。新たな都市の開発が必要です」
資料と数値が並べられ、ユートは即座に了承した。
開発予定地は、アストレアの北方。川を隔てた高原地帯。
魔物の出現頻度も低く、水源があり、風通しも良い。鉄道一本でアストレアと接続可能。
計画名称は仮称として「アストレア・ノース」。
・初期人口:5,000人
・住居、商業、農業、研究の各区画を明確に分離
・大規模な駅と物流拠点を中心に設計
・衛兵詰所、魔導結界、防災施設を初期から配備
・設計:宮野
・現場監督:鳴海
・総指揮:ユート
王都への報告と申請は即日提出。
王太子からは正式な支援許可と開発援助が下りた。
---
「アストレアはもう手狭だし、あっちに移るって人も多いよ」
「新しい街には市場と広い倉庫も作るってさ。商人にはチャンスだ」
「今なら土地も広くて住みやすいって話だ」
早くも入居希望者が殺到し、行政区画では抽選や優先順位の整備が始まる。
---
・新鉄道路線の分岐工事を同時進行
・土魔法による大規模な土地整備
・建設用重機を異世界から転送し、効率的な区画造成を実施
工期は3か月を目安とし、一次入居者用施設の先行整備が開始された。
---
計画開始から約3か月。
主要施設の建設、居住区と商業区の整備、鉄道の分岐接続が予定通りに完了。仮称だった街は正式に「ノルテア」と命名された。
開通初日の特急列車が新駅に到着し、入植者や商人、行政官らが続々と乗り込んでくる。
「ようやく落ち着けそうだわ」
「アストレアよりも空気が澄んでるな」
「ここの農地、すごく良い土だってさ」
特別なセレモニーなどはなく、実務的な引き渡しとともにノルテアの運用は静かに始まった。
---
ノルテアの建設現場から南西に十数キロ離れた丘陵地帯には、小規模な自然洞窟――後に“ダンジョン”と認定される空間が存在していた。
かねてより魔物の目撃情報が僅かにあり、監視のみが行われていたが――
「……最近、魔力濃度が上がっている」
「地脈が動いてる。地表に向かって、魔力が噴き出してるような……」
その異変に最初に気づいたのは、魔法研究員の一人だった。
報告を受けた鳴海とティナが現地を視察。
洞窟の入り口周辺には、既にいくつかの魔物の死骸が転がっていた。
野生ではあり得ない動き方と、複数の足跡が確認された。
「これは……ダンジョン化が進んでるな」
「封印されてたのか、それとも最近“目覚めた”のか……」
そして夜――。
警備隊の見張りが、森の方角から移動する“群れ”を発見する。
「光反応多数! 約70、いや100超! すべて魔物です!」
即座にノルテア市内に非常警報が鳴り響く。
鉄道は一時運行停止、魔導結界が展開され、市民は避難区域へ誘導される。
ユート、バルト、ティナは急行。
同時にアストレアから鉄道を用いて後方支援部隊が派遣される。
「今回は完全に“防衛戦”だ。市民を一人も死なせるな」
「わたしは南区の防衛に回る!」
「俺は正面で暴れるやつら止めてやるよ!」
---
夜。ノルテアの街はすでに消灯時間を迎えていた。
新しい生活に慣れ始めたばかりの住民たちが眠りにつこうとした、そのとき――
突如、空気が揺れた。
ボンッ――ボンッ――ボンッ――!
街に設置された魔導結晶警報灯が赤く点滅しながら警告音を鳴らし始める。
「緊急事態発生! 街南方にて魔物集団を確認――!」
---
行政区画に詰めていた治安隊、鉄道守備隊、衛兵が一斉に動き出す。
「全市民、北の避難拠点へ! 荷物は不要です、急いで!」
「前線に出る者、魔法装備は結界支援型を優先!」
「負傷者用の結界範囲を第二区画に展開、医療班はそちらに!」
ティナは軽装に剣を携え、風のように動く。
「街の東縁に結界を張り直して! こっちは私が食い止める!」
バルトは既に中央通りに立ち、巨大な黒い大剣を肩に担ぐ。
「来やがれ……まとめて斬ってやる!」
---
ユートは中央の魔導監視塔に入り、空中投影された“マナ視界”を操作する。
「魔物の進路は南西から南東に分散、計120体。
前衛をティナ、中衛を守備隊、正面突破はバルト。
俺は高所から魔法で削る。――展開開始」
即座に各班が動き、迎撃陣形が完成。
---
魔物の群れが闇の中から現れた。
前列は突進型の大型猪獣《ブラッドボア》。
中列には跳躍力の高い《スラッシュウルフ》、後列には地中を移動する《バイター》。
――まるで組織だった戦術。
「ッ! 頭がいるな……!」
ユートは塔の上から魔法を展開。
「ウォーターボール・テンペスト!」
空中に十数個の水球が生まれ、雨あられのように降り注ぐ。
衝撃で前列が崩れ、隊列が乱れる。
東側防衛線ではティナが数体の魔物と交戦していた。
「こっちは通さない――“風刃連舞”!」
旋回する風の刃が、迫る狼型魔物をまとめて切り裂く。
すぐさま次の敵が跳躍するが、ティナは迷いなく後ろへ跳び、着地した瞬間を狙って斬撃を叩き込む。
「何匹でも相手するわよ!」
中央では、バルトが剛腕で大剣を振るう。
「このッ……!」
“ゴォン!”という音とともに一撃で3体の魔物を叩き潰す。
その巨体がまるで城壁のように立ちはだかり、敵を押し戻していく。
「押し込まれてんじゃねぇぞ! 俺が盾だ、前に出ろォ!」
後方の守備隊も鼓舞され、攻撃の手を緩めない。
だが、突如として後方の地下から《バイター》が地面を破って出現。
「しまっ――!」
瞬間、結界を破られる。
「ユート様、後方に!」
「任せろ――“グラウンドロック”!」
地面から土壁が噴き出し、敵の動きを止める。
さらに追撃の“ウォーターボール”を叩き込んで沈黙させる。
---
魔物たちは1時間ほどの戦闘で全て撃退。
死者なし、負傷軽微。
翌朝、各拠点には報告とともに、周囲の警戒強化が通達される。
「……このダンジョン、放置はできないな。調査が必要だ」
---
朝早く、アストレアの駅に立つユートは、深く息を吸い込んだ。
遠くから――「ポォォォオオオ……!」と、低く力強い汽笛が響いてくる。
その音は、まるで未来の到来を告げるかのようだった。
---
「来たか。――おお、デカいな……!」
ユートの視線の先には、艶やかな黒と銀の外装に包まれた巨大な機関車。
それは、宮野と鳴海を中心に地球の技術と魔道の融合によって開発された、最新型の魔道機関車だった。
・従来型より2.5倍の積載量
・魔力効率を大幅に改善し、燃費性能が50%向上
・“魔道安定炉”を搭載し、浮上走行による振動軽減
・先端部に魔法探知石を設置し、線路上の障害物を感知・回避
「名前は“アルケイン・ライナー”。王国技術と異界の知恵の結晶体です」
宮野が誇らしげに語ると、ユートは笑った。
「最高にイカしてるな。これで、物も人も、もっと遠くへ行ける」
---
王都の協力を得て、この“アルケイン・ライナー”はまず6編成が量産され、主要都市路線に投入されることになった。
・王都-アストレア(本線)
・王都-南港街デグラント(交易路)
・王都-北方鉱山都市ガーレン(資材輸送)
・王都-聖堂都市エルミーラ(巡礼路線)
それぞれの路線には、魔道ステーションと呼ばれる制御拠点が新設され、列車の整備と管理を一括して担うよう整備が進む。
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「輸送時間が半分になった!」
「昨日頼んだ荷が、今日の朝には届いたのよ」
「商売の幅が、一気に広がったわ!」
商人たちは目を輝かせ、旅人たちは身軽に街を渡り歩く。
遠くの街の料理や衣服、文化すらも鉄路を通じて流れ込み――
王国全体が“ひとつの街”になり始めていた。
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その夜、ユートはアストレアの丘に登り、夜の線路を見下ろしていた。
星空の下、銀の機関車が静かに光の帯を引きながら走っていく。
「最初は、ただ街を繋ぎたかっただけなんだよな……」
隣に座るバルトが、静かに頷いた。
「でも気がつきゃ、王国まるごと動かしちまってるぜ」
ティナも微笑む。
「でもさ、いいじゃん。ユートらしいよ。夢の延長線で、ちゃんと現実を変えてる」
ユートは照れたように頭をかきながら、ぼそりと呟いた。
「……じゃあ、次は国境を越えるか?」
「……マジで言ってんのか?」
「行けるとこまで行こうぜ」
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アストレアの空気が、少しずつ変わり始めていた。
街は賑わっている。
駅前は毎朝行列、路地には屋台と旅人が溢れ、住居区画には新築の家が次々と立ち並ぶ。
子どもたちの笑い声もあちこちで聞こえる。
だが――その活気の裏で、じわじわと“飽和”の兆しが見えていた。
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「ユート、正直に言う。アストレア、もう限界が近い」
開発責任者である宮野は、街の最新統計を見せながら告げた。
「ここ半年で人口は倍以上。家は足りず、下水の処理量はギリギリ。農業区画も拡張してるけど、追いつかない。……インフラがパンク寸前だ」
鳴海も険しい顔で頷く。
「このまま無理に詰め込めば、いずれ街そのものが不安定になる。住み心地も、安全も、全部崩れるぞ」
ユートは机に肘をつき、静かに目を閉じた。
「……ありがとな。はっきり言ってくれて助かる」
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その夜、いつもの家の食卓で。
ティナ:「いいことなんだけどね、人が増えるのって」
バルト:「けど、ユートの“みんなが居心地良く暮らせる街”って理想が崩れかけてるのも事実だな」
ユートは苦笑しながら、炊き立てのご飯を見つめた。
「……よし。だったら、もう一つ作るか。街を」
翌朝、会議の場でユートは宣言した。
「新たな街を開発します。アストレアと並ぶ、第二の拠点として」
地図を広げながら候補地を指し示す。
「この森の北、川を挟んだ高原地帯。
風が通り、水も豊富で、魔物の危険も比較的少ない。鉄道を一本引けば、アストレアと繋げられる」
「……本気か?」
「本気も何も、もう動かないと手遅れになる。――俺たちなら、できるだろ?」
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・アストレアから鉄道で20分
・住居区、商業区、農業区、技術研究区を明確に分離
・初期人口目標:5,000人
・駅と周辺には大規模物流拠点を建設
・防衛用の衛兵詰所、魔道結界、防災設備を併設
・設計責任者は宮野、現場監督に鳴海、ユートは総指揮
王都にも報告が上がり、王太子からの支援と許可も即日で下りた。
「アストレアに入りきれなかった商人や職人たちが、新しい街で一旗揚げようとしているらしいぞ」
「引っ越し先に“ノース”が良いって。空気が澄んでて住みやすいんだってさ」
「次の街も、ユート様が作るんだろ? なら間違いないよ!」
地ならしを終えた土地を見渡しながら、ユートは呟く。
「夢みたいだったな、最初は。……でも今は、ちゃんと“国の未来”を作ってる気がする」
風が吹き抜ける草原。
そこに、またひとつ“希望の街”が生まれようとしていた。
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アストレアの人口は急増していた。
半年で人口は倍近くに達し、住宅不足、生活インフラの圧迫、物流過多が発生。都市機能は限界に近づいていた。
開発責任者・宮野と技術指揮の鳴海は、定例報告の場でそれを明確に指摘。
「これ以上の人口流入には、アストレアは耐えられません。新たな都市の開発が必要です」
資料と数値が並べられ、ユートは即座に了承した。
開発予定地は、アストレアの北方。川を隔てた高原地帯。
魔物の出現頻度も低く、水源があり、風通しも良い。鉄道一本でアストレアと接続可能。
計画名称は仮称として「アストレア・ノース」。
・初期人口:5,000人
・住居、商業、農業、研究の各区画を明確に分離
・大規模な駅と物流拠点を中心に設計
・衛兵詰所、魔導結界、防災施設を初期から配備
・設計:宮野
・現場監督:鳴海
・総指揮:ユート
王都への報告と申請は即日提出。
王太子からは正式な支援許可と開発援助が下りた。
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「アストレアはもう手狭だし、あっちに移るって人も多いよ」
「新しい街には市場と広い倉庫も作るってさ。商人にはチャンスだ」
「今なら土地も広くて住みやすいって話だ」
早くも入居希望者が殺到し、行政区画では抽選や優先順位の整備が始まる。
---
・新鉄道路線の分岐工事を同時進行
・土魔法による大規模な土地整備
・建設用重機を異世界から転送し、効率的な区画造成を実施
工期は3か月を目安とし、一次入居者用施設の先行整備が開始された。
---
計画開始から約3か月。
主要施設の建設、居住区と商業区の整備、鉄道の分岐接続が予定通りに完了。仮称だった街は正式に「ノルテア」と命名された。
開通初日の特急列車が新駅に到着し、入植者や商人、行政官らが続々と乗り込んでくる。
「ようやく落ち着けそうだわ」
「アストレアよりも空気が澄んでるな」
「ここの農地、すごく良い土だってさ」
特別なセレモニーなどはなく、実務的な引き渡しとともにノルテアの運用は静かに始まった。
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ノルテアの建設現場から南西に十数キロ離れた丘陵地帯には、小規模な自然洞窟――後に“ダンジョン”と認定される空間が存在していた。
かねてより魔物の目撃情報が僅かにあり、監視のみが行われていたが――
「……最近、魔力濃度が上がっている」
「地脈が動いてる。地表に向かって、魔力が噴き出してるような……」
その異変に最初に気づいたのは、魔法研究員の一人だった。
報告を受けた鳴海とティナが現地を視察。
洞窟の入り口周辺には、既にいくつかの魔物の死骸が転がっていた。
野生ではあり得ない動き方と、複数の足跡が確認された。
「これは……ダンジョン化が進んでるな」
「封印されてたのか、それとも最近“目覚めた”のか……」
そして夜――。
警備隊の見張りが、森の方角から移動する“群れ”を発見する。
「光反応多数! 約70、いや100超! すべて魔物です!」
即座にノルテア市内に非常警報が鳴り響く。
鉄道は一時運行停止、魔導結界が展開され、市民は避難区域へ誘導される。
ユート、バルト、ティナは急行。
同時にアストレアから鉄道を用いて後方支援部隊が派遣される。
「今回は完全に“防衛戦”だ。市民を一人も死なせるな」
「わたしは南区の防衛に回る!」
「俺は正面で暴れるやつら止めてやるよ!」
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夜。ノルテアの街はすでに消灯時間を迎えていた。
新しい生活に慣れ始めたばかりの住民たちが眠りにつこうとした、そのとき――
突如、空気が揺れた。
ボンッ――ボンッ――ボンッ――!
街に設置された魔導結晶警報灯が赤く点滅しながら警告音を鳴らし始める。
「緊急事態発生! 街南方にて魔物集団を確認――!」
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行政区画に詰めていた治安隊、鉄道守備隊、衛兵が一斉に動き出す。
「全市民、北の避難拠点へ! 荷物は不要です、急いで!」
「前線に出る者、魔法装備は結界支援型を優先!」
「負傷者用の結界範囲を第二区画に展開、医療班はそちらに!」
ティナは軽装に剣を携え、風のように動く。
「街の東縁に結界を張り直して! こっちは私が食い止める!」
バルトは既に中央通りに立ち、巨大な黒い大剣を肩に担ぐ。
「来やがれ……まとめて斬ってやる!」
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ユートは中央の魔導監視塔に入り、空中投影された“マナ視界”を操作する。
「魔物の進路は南西から南東に分散、計120体。
前衛をティナ、中衛を守備隊、正面突破はバルト。
俺は高所から魔法で削る。――展開開始」
即座に各班が動き、迎撃陣形が完成。
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魔物の群れが闇の中から現れた。
前列は突進型の大型猪獣《ブラッドボア》。
中列には跳躍力の高い《スラッシュウルフ》、後列には地中を移動する《バイター》。
――まるで組織だった戦術。
「ッ! 頭がいるな……!」
ユートは塔の上から魔法を展開。
「ウォーターボール・テンペスト!」
空中に十数個の水球が生まれ、雨あられのように降り注ぐ。
衝撃で前列が崩れ、隊列が乱れる。
東側防衛線ではティナが数体の魔物と交戦していた。
「こっちは通さない――“風刃連舞”!」
旋回する風の刃が、迫る狼型魔物をまとめて切り裂く。
すぐさま次の敵が跳躍するが、ティナは迷いなく後ろへ跳び、着地した瞬間を狙って斬撃を叩き込む。
「何匹でも相手するわよ!」
中央では、バルトが剛腕で大剣を振るう。
「このッ……!」
“ゴォン!”という音とともに一撃で3体の魔物を叩き潰す。
その巨体がまるで城壁のように立ちはだかり、敵を押し戻していく。
「押し込まれてんじゃねぇぞ! 俺が盾だ、前に出ろォ!」
後方の守備隊も鼓舞され、攻撃の手を緩めない。
だが、突如として後方の地下から《バイター》が地面を破って出現。
「しまっ――!」
瞬間、結界を破られる。
「ユート様、後方に!」
「任せろ――“グラウンドロック”!」
地面から土壁が噴き出し、敵の動きを止める。
さらに追撃の“ウォーターボール”を叩き込んで沈黙させる。
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魔物たちは1時間ほどの戦闘で全て撃退。
死者なし、負傷軽微。
翌朝、各拠点には報告とともに、周囲の警戒強化が通達される。
「……このダンジョン、放置はできないな。調査が必要だ」
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しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
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