異世界転移して最強のおっさん……の隣に住んでいる。

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第3章

ダンジョン

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魔物の群れが押し寄せた翌朝、ノルテア行政区にて緊急会議が開かれた。

「昨夜の魔物の数と動きから見て、自然発生ではありえない」
「ダンジョンが本格的に“目覚めた”可能性が高い」
「このまま放置すれば、再び街が危険に晒される」

 防衛責任者の鳴海が明言する。

 そして――
 ユートを中心に、正式な“調査隊”が編成された。


---

【調査隊メンバー】

・ユート:指揮・魔法支援担当
・ティナ:前衛・索敵・機動戦担当
・バルト:前衛・重装突破・盾役
・魔術師2名(ノルテア防衛隊所属)
・記録士1名(王都から派遣)

 目的は:
 ①内部構造の把握
 ②ボス級魔物の有無の確認
 ③魔石や素材など資源の調査
 ④周辺への魔力漏出の有無


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 ダンジョンの入口は、丘の岩肌に空いた自然洞窟だった。
 ただし中は既に“魔力による構造変化”が始まっており、人工的な通路や罠が形成されている。

「内部温度、安定。魔力濃度は市街地の約12倍」
「地脈の流れが下層へ向かって集中してる。中心があるな」

 ティナが足音を殺して前方を索敵。
 バルトが壁際を警戒しながら進行をカバーする。

 やがて一行は、開けた空間へとたどり着く。

広がる最深部の空洞。地面にはところどころ魔力が結晶化し、空気は淀み、どこか粘性を帯びたような重さがあった。

 中央で蹄を鳴らし、立ちはだかるのは――
 漆黒の巨躯を誇る魔物、《チャージミノタウロス》。

 三メートル近い体躯に分厚い筋肉、鋼のような皮膚。
 大地を抉る両脚、振り下ろす棍棒は樫の巨木さながら。
 ただの獣ではない、“魔力に染まり知恵と戦闘本能を得た怪物”だった。

「来るぞ……構えろ!」



 咆哮一閃。突如として地を蹴った巨体が、轟音と共に一直線に突っ込んでくる。

「バルト、止めろ!」

「上等だァッ!!」

 大剣を逆手に構え、真っ向から激突――

 ガアァァン!!

 凄まじい衝撃でバルトの脚元が砕け、土煙が舞う。
 だが彼は一歩も退かず、盾のようにその突進を止めた。


「今のうち!」

 ティナが地を滑るように走り、背後から斬撃を繰り出す。

「風刃――双裂!」

 魔力を纏った剣が二連の風の軌跡を描く――が、

「……クソ、切れ味が鈍る!」

 皮膚が硬すぎる。肉に届く感触が薄い。

 振り返ったミノタウロスが棍棒を振る。
 ティナが紙一重で回避するも、空気を裂く音と衝撃に地面が抉れる。


「下がれ。今のうちに叩く!」

 ユートは両腕を大きく開き、魔力を一点に集中させた。

「――ファイヤーランス!」

 空中に真紅の魔法陣が連続して描かれ、
 そこから灼熱の槍が*シュバッ!*と音を立てて放たれる。

「連射いくぞ――ファイヤーランス、ファイヤーランス、ファイヤーランス!!」

 ドン!ドン!ドン!ドンッッ!!

 四発、五発、六発――炎の槍が次々とミノタウロスの胴体と腕、脚へ突き刺さり、爆ぜる。
 衝撃で巨体が仰け反り、棍棒を落とす。

 咆哮を上げ、炎に包まれた肩を押さえるミノタウロス。

「まだだ……落ちるな!」

 ユートは再び詠唱。

「ファイヤーランス・ツインモード!」

 両腕から同時に二本ずつ――四連射――
 狙いは両膝関節。

 ズバァァァッ! ドゴオッ!

 直撃――膝を砕かれ、ミノタウロスの巨体が膝から崩れた。


---

「決めるぞ!」

 ティナが一閃、首筋に刃を食い込ませ、
 バルトが上から渾身の一撃を叩き込む。

「うおおおおおおぉぉ!!」

 ゴンッッ!!

 大地が震える。

 ――その場に、ミノタウロスは沈黙した。


---

 戦闘終了。
 空洞には焼け焦げた獣の匂いと、魔力の余韻が残されていた。

「……ボスだったな。あの数を率いたのも頷ける」

「派手にやったな、ユート」
「燃費は最悪だけど、数押しでどうにかなったな……」


---
黒き巨躯が地に沈んだ後、静寂が広がった。

 ユートたちは慎重に周囲を警戒しながら、最奥部の中央へと進む。そこには、淡く光る巨大な魔力の塊――浮遊する《核石》が、ゆっくりと空間に漂っていた。

「間違いない。ダンジョンの核だ」

 魔術師のひとりが呟く。
 直径1メートル近い蒼い結晶が、空気をゆらりと揺らしながら脈動している。まるで呼吸するかのように。

「このまま放置すれば、また魔物を生み出すだろうな」
「封じるか、回収するか……どうする?」

 ユートは軽く首を横に振った。

「運ぶ。ここにある限り、不意打ちでまた襲われる可能性がある」


---

 核石の扱いには細心の注意が必要だった。
 魔力の濃度は通常魔導石の数百倍。うかつに触れれば、暴走する可能性もある。

 記録士と魔術師たちが結界と制御装置を展開。
 ユートは補助として魔力を流し込み、安定化を行った。

「魔力の流れ、収束……結晶安定。転送準備、完了」

 浮遊板に載せ、結界を三重に張って固定。
 一行はそのまま核石をノルテアの魔導保管庫へと運び出す。


---

 出口付近に差し掛かる頃、ユートは振り返って確認した。

 ――魔力濃度、減少。
 壁面に浮かんでいた光紋も消えつつある。

 「やっぱり、あれが“心臓”だったんだな」

 ティナが剣を納めながら言った。

「これでしばらくは、街の外からの襲撃も減るはずだよ」
「というか、また増えるなら根っこごと潰しに来るしかねぇな」とバルト。

 ユートは小さくうなずいた。

「魔物の残滓が残ってる以上、監視拠点は必要だ。……あの丘の中腹、前線基地を建てよう」


---

 核石を抱え、夜明け前にノルテアへ帰還。
 保管庫の最深部に収めると同時に、宮野と鳴海、行政官たちが対応に追われる。

「これが……ダンジョンの核か」
「理論上、魔導炉として応用できる可能性も……危険すぎるが」

 魔法学者たちも研究対象として興味を示し始めていた。



・ダンジョン入口には結界と封鎖壁を設置
・監視小隊と結界維持班を常設
・魔物素材と魔導結晶の採取が合法化され、許可制でギルドに開放予定
・新たな観測拠点「ノルテア南前哨基地」の建設が始まる


---

「街が守られたって噂だよ」
「ユート様たちがまた活躍されたそうだ」
「この街、やっぱり他と違うよな……」


---
ダンジョン制圧から三日後。
 アストレア本庁舎にて、ユート、宮野、鳴海、ティナ、バルト、各都市行政官を交えた拡大会議が開かれた。

「ノルテアとアストレア間の鉄道区間が、魔物の脅威に対してやや脆弱です」

 宮野が示した地図上、両都市の間にはいくつかの森林帯、丘陵地帯が存在する。

「トンネルや橋梁区間が多く、もし線路を破壊されれば、両都市が即時孤立する危険があります」

「対策として、中継都市……つまり“防衛拠点兼物流拠点”を中間地点に建設したい」とユートが続けた。


---

【新都市構想案】

仮称:〈セントリア〉計画
場所:アストレアとノルテアのほぼ中間、川沿いの開けた盆地地帯

主目的:

・鉄道・道路の中継拠点
・魔物撃退を担う前哨都市
・農業・畜産・工業による自立化
・補給所・宿泊所・整備基地・兵站倉庫の機能を併設

「一言で言えば、要塞型の物流都市です」と宮野が補足する。

「急造ではなく、計画的に段階を踏んで開発したい。街をつくりながら、防衛ラインの一部として機能させる」


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「建てよう。魔物が出るなら、抑え込める地盤がいる。街と街を“繋ぐ”街……いいな」

「名前は“セントリア”でいいと思う」とティナ。

「どうせ俺たちがまた先遣隊なんだろ?」とバルト。

「当然」とユートが苦笑する。


---

・測量班と地質調査班が派遣され、用地確保と水脈確認を実施
・王都に対し、中継都市開発の許可と報告書を提出
・王太子から正式な認可と支援が届く(※ユートの直轄プロジェクトとして承認)
・既存の鉄道を一時休止し、分岐点整備と物資輸送路の新規構築へ


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「二つの街を結ぶ道に、もう一つの街……これで交易も安心だ」
「ここに住めば、両都市の特産品を一気に扱えるぞ!」
「商人としては、次に来るチャンスだな」

 すでに土地購入を目指す開拓民や商人の動きが始まりつつあった。


---

1. 先遣部隊の派遣(防衛班+建設班)


2. 仮設拠点と資材庫の設置


3. 水道、鉄道中継、宿泊施設の確保


4. 街区画の整備と周辺結界の構築


5. 魔物出現領域の早期警戒網の構築




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