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第3章
騎士団
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【アストレア騎士団・設立宣言】
初夏の澄んだ空の下、アストレア中心広場に、ずらりと並んだ志願者たちの列。
剣士、魔法使い、弓兵、斥候――年齢も背景も様々な者たちが、緊張と誇りを胸に集まっていた。
ユートはその前に立ち、穏やかな口調で口を開いた。
「今日この日をもって――《アストレア騎士団》を正式に設立する」
どよめきと歓声が広がる。
「だが、俺はこの団の団長にはならない。名義上の“総指揮官”ってだけで、基本的に口出しはしないつもりだ。団を導くのは、お前ら自身だ」
ユートの目が光る。
「だから、この場で決めよう。――誰が一番、強いのか。誰が皆を引っ張るにふさわしいのか」
集まった志願者たちの表情が、一気に戦士のそれへと変わる。
人々の注目の中、広場脇で腕を組むバルトが言った。
「俺たちは出ねぇからな。騎士団は街の柱だけど、俺たちゃ自由な冒険者だ。なぁ?」
ティナも軽く笑って頷いた。
「でも、見物はするよ。いい意味で、街を守る“新しい力”が生まれる瞬間だからね」
---
【選抜試合・団長決定戦】
広場に仮設の演武台が作られ、1対1の実戦試験が行われた。
“命は取らず、全力で”がルール。
魔法と剣技がぶつかり、火花が散る。
圧倒的な剣速で相手を沈める若き剣士。
俊敏な脚で相手の背後を取り、一撃で倒す斥候型戦士。
火球で相手の防御を崩し、一閃で仕留める魔法剣士――
百戦を超えるトーナメントの末、最後まで勝ち残ったのは二人。
・エルノ・ヴァイル(30代後半/剣士型)
元近衛剣士長。軍務経験豊富で統率力もあり、守りとカウンター型の戦法を得意とする。
・ナシュ・リュドガー(20代後半/魔剣士型)
元王都剣技教練所出身の逸材。二刀の剣に魔法を纏わせ、機動力と破壊力に優れる。
二人の戦いは、昼下がりの陽を遮るほどの熱気と興奮を呼んだ。
魔法を纏った高速の斬撃、空を裂く風圧、地面を割る一撃の応酬――
観衆が息を呑む中、最後は――
エルノの構えた一刀が、ナシュの猛撃を受け止め、わずかにずらし、そのままカウンターを叩き込んだ。
勝敗は決した。
---
【アストレア騎士団 初代団長・副団長】
・団長:エルノ・ヴァイル
・副団長:ナシュ・リュドガー
「俺は……この街と人々を、命懸けで守る。命令も理屈も要らない。それが、団長としての誓いだ」
彼の一言に、団員たちから大きな歓声が上がる。
その背後、ユートは小さく呟いた。
「……こういうの、俺には無理だな。ああいう奴がいるから、俺は好き勝手できるんだ」
【任務概要】
任務名:〈開拓域安全確保任務・第一段〉
対象:建設予定地周辺の魔物群
目的:魔物の掃討および索敵、拠点設営の安全確保
編成:騎士団第1小隊・第2小隊(計30名)
指揮:エルノ団長/副指揮 ナシュ副団長
---
【出発前・騎士団詰所】
朝焼けに染まるアストレア東区。新設された騎士団詰所の広場には、光沢のある統一された軽鎧に身を包んだ団員たちが整列していた。
「――騎士団としての初任務だ」
エルノ団長の声が、引き締まった空気に響く。
「俺たちはもう個人ではない。“アストレア”という名の誇りを背負っている。守るのはただの土地じゃない。人々の暮らしと、未来だ」
そして、
「初陣だ。胸を張れ。だが、油断するな。相手は本物の魔物だ。……命を大事にしろ。いいな!」
「「「はっ!!」」」
---
騎士団が到着した現地は、すでに測量班と資材班が仮設のキャンプを設営していた。
「最近、夜になると魔物がうろついて近づけなくなるんだ。何かに引き寄せられてる感じでさ」
現場の技師たちが不安そうに報告する。
「……この空気、魔力が満ちてやがるな」とナシュ。
エルノは剣に手を添えた。
「全員、三人一組で索敵。半径五百メートル、五刻後に集結。戦闘優先ではなく、発見と報告を最優先とする」
---
陽が傾きかけたころ、第2小隊が小型の魔物と接敵。
「左から、スレートウルフ多数!」
「数、十五以上!後退しつつ、合流ポイントへ!」
狩猟犬サイズながら連携の取れた獣たちが、隊列を乱す。
そこへ――
「崩すなッ!! 〈石壁〉!」
副団長ナシュが割って入り、魔法の盾で後衛を守る。
前衛が斬り込み、後衛が弓と風魔法で狙撃。
短時間で群れを撃退する。
--
調査の結果、開発地の北西斜面に“土魔法で掘られたと思しき魔物の巣穴”が発見される。
「これは……人工的に作られたか、もしくは知能の高い魔物の仕業か」
「一度潰しておかねぇと、また街が襲われるぞ」
---
翌早朝、騎士団主力を動員して突入。
内部には“地属性魔物”が20体以上――ゴブリンアース、アースリザード、土精霊種まで。
斬撃、火魔法、土封じの結界を駆使して、団員たちは損害なく制圧に成功。
地中深くに埋まっていた“地魔核”を発見し、回収する。
---
数日間の警備を経て、セントリア建設再開の許可が下る。
任務報告がユートの元へ届くと、彼は短く言った。
「……上出来だ」
---
街では騎士団初任務の成功を祝う声が広がり始めていた。
「すごい、もうあんなに頼もしいんだな」
「これなら街道も安心だわ」
「アストレアに住んでてよかった!」
---
「――新規入団希望者、今週だけで百二十人超えました!」
記録官が叫ぶように報告しながら、分厚い名簿をエルノ団長の机にドンと置く。
初任務の成功と街の平穏な空気が伝わる中、アストレア騎士団の評判は街の内外で急上昇していた。
名簿には、地元の若者はもちろん、遠方の村から推薦状を持ってきた者、元冒険者、地方騎士団を脱退してきた者まで――多様な顔ぶれが並ぶ。
---
「一回の任務でここまでか……ま、分かってたけどな」
ナシュ副団長は訓練場の端で、スケジュール表を見て苦笑する。
「おかげで訓練メニューは三倍、面接と選別で寝るヒマもねぇ」
「でも、団の柱が太くなるのはいいことだよ」
広場の片隅では、志願者たちが汗を流しながら模擬戦に興じていた。
---
詰所の中庭。騎士団の様子を見ながら、ユートと鳴海が並んで腰を下ろしていた。
「騎士団を一気に拡張するつもりはない。でも、育成枠を整えて層を厚くしたい。――“速攻力”だけじゃ、戦場は持たない」
「なるほどね。なら、初級から上級までの段階制訓練が必要だな。あと、魔法職と遠距離職はもう少し専門的な教官を雇ったほうがいい」
「……王都から、何人か呼んでみるか」
---
アストレア騎士団、訓練拠点再整備!
【初級】一般兵訓練班(斧術・剣術・基本魔法・体術)
【中級】戦術応用班(小隊運用、連携訓練)
【上級】特別任務班(斥候・対魔物・奇襲戦対応)
教官陣:
・剣術教官:王都剣士団OB「ベイル・カドール」
・魔法教官:元王立魔法学院「リーネ・マクラル」
・体術教官:冒険者ギルド推薦「ダゴン・スロー」
さらに、騎士団内部でも「士官候補生制度」がスタート。長期的な人材育成へと舵が切られた。
--
「アストレアの騎士団って、あんなに整ってるのか」
「うちの息子、入れたら誇りだわ」
「治安もいいし、街がもっと良くなる気がする!」
周辺都市や村からも、子供を騎士にしたいという声や、親子で街へ移住する者まで現れ始める。
---
「戦い方だけじゃなく、誇りと信頼を持つ兵を育てたい」
エルノは、訓練場で汗を流す若者たちを見つめながら呟いた。
「――強く、優しく、誠実な団でありたい」
副団長ナシュがにやりと笑う。
「じゃ、次の戦訓教本は“腹を空かせた狼の前で、どう誠実に見せるか”ってとこから始めようか?」
「……それは教えなくていい」
---
その日は朝から、アストレアの街全体が祝いの空気に包まれていた。
各地から届いた色とりどりの布旗が街中に掲げられ、広場には出店と舞台、魔導灯の飾りが施されている。
子供たちは手作りの木剣を振り回し、大人たちは胸を張って祭りの準備を手伝っていた。
広場の中央――整備された大演壇には、騎士団の面々が整列し、誇らしげに胸を張っていた。
---
演壇中央に立ったユートは、いつもの旅装のまま、ざっくばらんに言葉を紡いだ。
「今日、俺は特に難しいことを言う気はない。俺は“偉い奴”でも“国の使い”でもねぇからな」
軽い笑いが広場に広がる。
「だけど、俺が知ってる。この中にいるやつらが――この街を、国を、未来を守ってくれるって」
ユートは振り返り、整列する騎士団を見た。
「こいつらは強い。だけど、それ以上に“守りたいもの”を持ってる。だから――信じてくれ。支えてくれ。拍手してやってくれ!」
その言葉とともに、街全体から割れんばかりの拍手が湧き上がった。
続いて、正装に身を包んだエルノ団長が演壇に立つ。
「我らアストレア騎士団は、街と民を守る盾として――命を賭ける覚悟で立ち上がった。誓う。我らが剣は、決して暴力に染まらぬと」
副団長ナシュが後ろから「堅いぞ」と小声でツッコミを入れ、場が少し和んだ。
「だが本気だ。街を、子供たちを、ここに生きる“未来”を守る。それが我らの誇りだ!」
---
ユートが一人ずつの胸に、アストレア騎士団の紋章をかたどった銀の勲章を手渡していく。
初任務で功績を上げた小隊長たちに特別な“星の刻印”が贈られると、広場から歓声が上がった。
---
式典の裏手で、ティナとバルトが静かに様子を見ていた。
「なんか……すごいね。あれ全部、ユートの始めた街なんだよ?」
「ま、あいつの“なんか面白そうだから”って気まぐれも、ここまで来れば本物ってやつか」
「……あたしたちも、置いてかれないようにしないとね」
「おう。ま、まずは飲み物取りに行こうぜ。祝杯だ」
式典のあとは、そのまま“街のお祭り”へ。
広場では音楽隊の演奏が響き、屋台からは香ばしい匂いが立ち込める。
子供たちは木剣で“騎士団ごっこ”、大人たちは樽酒を開けて笑い合い――
街全体が、“守られている安心感”と“希望”に包まれていた。
---
夜、式典の締めくくりとして、魔導式花火が空を飾った。
鮮やかな光が弧を描き、巨大なアストレアの紋章が夜空に浮かぶ。
「……いい夜だな」
ユートが小さく呟くと、隣で宮野が「たまには騎士団に感謝してください」とぼやいた。
「してるよ。だから、明日からまた忙しくなるけどな」
---
初夏の澄んだ空の下、アストレア中心広場に、ずらりと並んだ志願者たちの列。
剣士、魔法使い、弓兵、斥候――年齢も背景も様々な者たちが、緊張と誇りを胸に集まっていた。
ユートはその前に立ち、穏やかな口調で口を開いた。
「今日この日をもって――《アストレア騎士団》を正式に設立する」
どよめきと歓声が広がる。
「だが、俺はこの団の団長にはならない。名義上の“総指揮官”ってだけで、基本的に口出しはしないつもりだ。団を導くのは、お前ら自身だ」
ユートの目が光る。
「だから、この場で決めよう。――誰が一番、強いのか。誰が皆を引っ張るにふさわしいのか」
集まった志願者たちの表情が、一気に戦士のそれへと変わる。
人々の注目の中、広場脇で腕を組むバルトが言った。
「俺たちは出ねぇからな。騎士団は街の柱だけど、俺たちゃ自由な冒険者だ。なぁ?」
ティナも軽く笑って頷いた。
「でも、見物はするよ。いい意味で、街を守る“新しい力”が生まれる瞬間だからね」
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【選抜試合・団長決定戦】
広場に仮設の演武台が作られ、1対1の実戦試験が行われた。
“命は取らず、全力で”がルール。
魔法と剣技がぶつかり、火花が散る。
圧倒的な剣速で相手を沈める若き剣士。
俊敏な脚で相手の背後を取り、一撃で倒す斥候型戦士。
火球で相手の防御を崩し、一閃で仕留める魔法剣士――
百戦を超えるトーナメントの末、最後まで勝ち残ったのは二人。
・エルノ・ヴァイル(30代後半/剣士型)
元近衛剣士長。軍務経験豊富で統率力もあり、守りとカウンター型の戦法を得意とする。
・ナシュ・リュドガー(20代後半/魔剣士型)
元王都剣技教練所出身の逸材。二刀の剣に魔法を纏わせ、機動力と破壊力に優れる。
二人の戦いは、昼下がりの陽を遮るほどの熱気と興奮を呼んだ。
魔法を纏った高速の斬撃、空を裂く風圧、地面を割る一撃の応酬――
観衆が息を呑む中、最後は――
エルノの構えた一刀が、ナシュの猛撃を受け止め、わずかにずらし、そのままカウンターを叩き込んだ。
勝敗は決した。
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【アストレア騎士団 初代団長・副団長】
・団長:エルノ・ヴァイル
・副団長:ナシュ・リュドガー
「俺は……この街と人々を、命懸けで守る。命令も理屈も要らない。それが、団長としての誓いだ」
彼の一言に、団員たちから大きな歓声が上がる。
その背後、ユートは小さく呟いた。
「……こういうの、俺には無理だな。ああいう奴がいるから、俺は好き勝手できるんだ」
【任務概要】
任務名:〈開拓域安全確保任務・第一段〉
対象:建設予定地周辺の魔物群
目的:魔物の掃討および索敵、拠点設営の安全確保
編成:騎士団第1小隊・第2小隊(計30名)
指揮:エルノ団長/副指揮 ナシュ副団長
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【出発前・騎士団詰所】
朝焼けに染まるアストレア東区。新設された騎士団詰所の広場には、光沢のある統一された軽鎧に身を包んだ団員たちが整列していた。
「――騎士団としての初任務だ」
エルノ団長の声が、引き締まった空気に響く。
「俺たちはもう個人ではない。“アストレア”という名の誇りを背負っている。守るのはただの土地じゃない。人々の暮らしと、未来だ」
そして、
「初陣だ。胸を張れ。だが、油断するな。相手は本物の魔物だ。……命を大事にしろ。いいな!」
「「「はっ!!」」」
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騎士団が到着した現地は、すでに測量班と資材班が仮設のキャンプを設営していた。
「最近、夜になると魔物がうろついて近づけなくなるんだ。何かに引き寄せられてる感じでさ」
現場の技師たちが不安そうに報告する。
「……この空気、魔力が満ちてやがるな」とナシュ。
エルノは剣に手を添えた。
「全員、三人一組で索敵。半径五百メートル、五刻後に集結。戦闘優先ではなく、発見と報告を最優先とする」
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陽が傾きかけたころ、第2小隊が小型の魔物と接敵。
「左から、スレートウルフ多数!」
「数、十五以上!後退しつつ、合流ポイントへ!」
狩猟犬サイズながら連携の取れた獣たちが、隊列を乱す。
そこへ――
「崩すなッ!! 〈石壁〉!」
副団長ナシュが割って入り、魔法の盾で後衛を守る。
前衛が斬り込み、後衛が弓と風魔法で狙撃。
短時間で群れを撃退する。
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調査の結果、開発地の北西斜面に“土魔法で掘られたと思しき魔物の巣穴”が発見される。
「これは……人工的に作られたか、もしくは知能の高い魔物の仕業か」
「一度潰しておかねぇと、また街が襲われるぞ」
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翌早朝、騎士団主力を動員して突入。
内部には“地属性魔物”が20体以上――ゴブリンアース、アースリザード、土精霊種まで。
斬撃、火魔法、土封じの結界を駆使して、団員たちは損害なく制圧に成功。
地中深くに埋まっていた“地魔核”を発見し、回収する。
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数日間の警備を経て、セントリア建設再開の許可が下る。
任務報告がユートの元へ届くと、彼は短く言った。
「……上出来だ」
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街では騎士団初任務の成功を祝う声が広がり始めていた。
「すごい、もうあんなに頼もしいんだな」
「これなら街道も安心だわ」
「アストレアに住んでてよかった!」
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「――新規入団希望者、今週だけで百二十人超えました!」
記録官が叫ぶように報告しながら、分厚い名簿をエルノ団長の机にドンと置く。
初任務の成功と街の平穏な空気が伝わる中、アストレア騎士団の評判は街の内外で急上昇していた。
名簿には、地元の若者はもちろん、遠方の村から推薦状を持ってきた者、元冒険者、地方騎士団を脱退してきた者まで――多様な顔ぶれが並ぶ。
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「一回の任務でここまでか……ま、分かってたけどな」
ナシュ副団長は訓練場の端で、スケジュール表を見て苦笑する。
「おかげで訓練メニューは三倍、面接と選別で寝るヒマもねぇ」
「でも、団の柱が太くなるのはいいことだよ」
広場の片隅では、志願者たちが汗を流しながら模擬戦に興じていた。
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詰所の中庭。騎士団の様子を見ながら、ユートと鳴海が並んで腰を下ろしていた。
「騎士団を一気に拡張するつもりはない。でも、育成枠を整えて層を厚くしたい。――“速攻力”だけじゃ、戦場は持たない」
「なるほどね。なら、初級から上級までの段階制訓練が必要だな。あと、魔法職と遠距離職はもう少し専門的な教官を雇ったほうがいい」
「……王都から、何人か呼んでみるか」
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アストレア騎士団、訓練拠点再整備!
【初級】一般兵訓練班(斧術・剣術・基本魔法・体術)
【中級】戦術応用班(小隊運用、連携訓練)
【上級】特別任務班(斥候・対魔物・奇襲戦対応)
教官陣:
・剣術教官:王都剣士団OB「ベイル・カドール」
・魔法教官:元王立魔法学院「リーネ・マクラル」
・体術教官:冒険者ギルド推薦「ダゴン・スロー」
さらに、騎士団内部でも「士官候補生制度」がスタート。長期的な人材育成へと舵が切られた。
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「アストレアの騎士団って、あんなに整ってるのか」
「うちの息子、入れたら誇りだわ」
「治安もいいし、街がもっと良くなる気がする!」
周辺都市や村からも、子供を騎士にしたいという声や、親子で街へ移住する者まで現れ始める。
---
「戦い方だけじゃなく、誇りと信頼を持つ兵を育てたい」
エルノは、訓練場で汗を流す若者たちを見つめながら呟いた。
「――強く、優しく、誠実な団でありたい」
副団長ナシュがにやりと笑う。
「じゃ、次の戦訓教本は“腹を空かせた狼の前で、どう誠実に見せるか”ってとこから始めようか?」
「……それは教えなくていい」
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その日は朝から、アストレアの街全体が祝いの空気に包まれていた。
各地から届いた色とりどりの布旗が街中に掲げられ、広場には出店と舞台、魔導灯の飾りが施されている。
子供たちは手作りの木剣を振り回し、大人たちは胸を張って祭りの準備を手伝っていた。
広場の中央――整備された大演壇には、騎士団の面々が整列し、誇らしげに胸を張っていた。
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演壇中央に立ったユートは、いつもの旅装のまま、ざっくばらんに言葉を紡いだ。
「今日、俺は特に難しいことを言う気はない。俺は“偉い奴”でも“国の使い”でもねぇからな」
軽い笑いが広場に広がる。
「だけど、俺が知ってる。この中にいるやつらが――この街を、国を、未来を守ってくれるって」
ユートは振り返り、整列する騎士団を見た。
「こいつらは強い。だけど、それ以上に“守りたいもの”を持ってる。だから――信じてくれ。支えてくれ。拍手してやってくれ!」
その言葉とともに、街全体から割れんばかりの拍手が湧き上がった。
続いて、正装に身を包んだエルノ団長が演壇に立つ。
「我らアストレア騎士団は、街と民を守る盾として――命を賭ける覚悟で立ち上がった。誓う。我らが剣は、決して暴力に染まらぬと」
副団長ナシュが後ろから「堅いぞ」と小声でツッコミを入れ、場が少し和んだ。
「だが本気だ。街を、子供たちを、ここに生きる“未来”を守る。それが我らの誇りだ!」
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ユートが一人ずつの胸に、アストレア騎士団の紋章をかたどった銀の勲章を手渡していく。
初任務で功績を上げた小隊長たちに特別な“星の刻印”が贈られると、広場から歓声が上がった。
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式典の裏手で、ティナとバルトが静かに様子を見ていた。
「なんか……すごいね。あれ全部、ユートの始めた街なんだよ?」
「ま、あいつの“なんか面白そうだから”って気まぐれも、ここまで来れば本物ってやつか」
「……あたしたちも、置いてかれないようにしないとね」
「おう。ま、まずは飲み物取りに行こうぜ。祝杯だ」
式典のあとは、そのまま“街のお祭り”へ。
広場では音楽隊の演奏が響き、屋台からは香ばしい匂いが立ち込める。
子供たちは木剣で“騎士団ごっこ”、大人たちは樽酒を開けて笑い合い――
街全体が、“守られている安心感”と“希望”に包まれていた。
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夜、式典の締めくくりとして、魔導式花火が空を飾った。
鮮やかな光が弧を描き、巨大なアストレアの紋章が夜空に浮かぶ。
「……いい夜だな」
ユートが小さく呟くと、隣で宮野が「たまには騎士団に感謝してください」とぼやいた。
「してるよ。だから、明日からまた忙しくなるけどな」
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