快晴に咲く

雫花

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訪ね歩くは静かなる水

プラチナ魔法使い

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 セイカは、マホを連れ1度宿に戻る。すると、ビオンがおかえり~と穏やかに声を掛けようと走って向かってきたものの、途中で止まり困惑した顔をした。


「え?え?……え?マホちゃん?どしたの連れてきて」

「あのね!ビオン様!マホね、セイカ様の弟子なの!」

「えっ???……あ!!!!妖精…え白!?!?」

『あらどうも。私はマホの妖精リリィ。あなた、プラチナ魔法司書のビオンね?あなたの師匠にそっくりね~、似るのかしら?』

「え?師匠のこと知ってるんですか?」

『もちろんよ!セイカの次に私達が大好きな子よ!1番はセイカだけれどね。だってあなたの師匠ったら、あーんなに知識はあるのにアホでドジで、放っておけないのに使い魔妖精は黄色の中級なんだもの。心配で心配で、妖精女王が加護をつけたのよ?前代未聞よ』

「あ、あは……ご心配をおかけ致しました……」

『あなたの妖精はピンクなのね。お名前は?』

『わたしはララと申します。リリィ様、マホ様がセイカ様のお弟子さんとなるのなら当然この先御一緒になることでしょう。よろしくお願いします』

『あら!礼儀正しい子ね、頼もしいわ!ね、セラ』

『あっ、や、うーーーっ!!!』

「ざまぁセラ」

『ご主人に似ただけだから』

「は?喧嘩か?」

『賑やかね、楽しみだわ』


 リリィはマホの肩の上で微笑む。
 まさか、昨日の今日であの魔法も使えなかったような子が手放しで妖精を、しかも白の妖精を召喚し契約したとなるとかなりの逸材だ。
 ビオンは表では平静を装うが、内心は驚き、困惑、感嘆が入り交じり嵐のようだった。

 セイカがマホを空いた椅子に座らせると、紙とペンを用意する。


「何か教えるのかい?」

「あぁ。プラチナ魔法使いについてな。これから俺たちが旅する上では知っておかないといけないからな。階級は知ってても、誰かは知らないだろ」

「うん!マホ、ビオン様とセイカ様は近い街だから分かるけど……それ以外分からない!」

「よし。じゃあまず、プラチナ魔法使いについては知ってるな?」

「うん!プラチナ魔法使い様は、1番階級が高い魔法使いで、その人に応じた街を治めてる!セイカ様は薬の街、ビオン様は図書の街だよね?」

「そうだ。よし、じゃあ次はメモを取れ。誰がなんのプラチナか教える」

「はーい!!」


 マホはセイカに言われる通りにメモをとる。セイカは、街の名前と共に魔法使いを列挙していく。


「まず、これから向かうのは水の街。水の魔法を得意とするプラチナ魔法使い、リジェネが治めてる。リジェネは真面目で、結構堅い奴だ。だが悪い奴ではないな」

「どんなおかお?」

「え、うーん……なんか長くて四角くて……メガネのおっさんだ」

「ふんふん……めもした!」


 セイカとビオンがメモを覗くと、そこには『しかくくてながい めがねのおじさん』と書かれている。
 思わず2人は吹き出してしまった。


『マホ、ぜーったいに、それは本人には言ってはダメよ』

「?わかった!いわない!」

「じゃあ、次な。次は星の街を治めてるプラチナ魔法使い、サンだ。サンは夜空に関する魔法を得意としている。まぁ~……いつも眠そうで、口調もゆるゆるしてるな。歳は俺やビオンと同じかな」

「セイカ様っていくつなの?」

「俺?俺……なぁビオン、俺いくつ?」

「え?…………えっと………………。あ~~~…………」

『マホ、セイカとビオンは2000歳よ』

「にせん!?にせんって2000!?すごーい!!」

「すごかねぇよ。国王とクラウド卿は1万歳だ。空歴が始まる前から生きてるぜ。というか、空歴はクラウド卿が空を支配するようになってから数えてるもんだ」

「ほえ~~…………」


 そしてまた、マホはメモにサンの事を書く。そこには『ゆるゆる、ねむそう、セイカさまとおないどし』と書かれている。
 間違ってはいない。


「んじゃあ次。アンジュだ。アンジュも同い年だ。おれの幼なじみでな、あいつは花の魔法を使って、花の街を治めてる。……けど、今はこの現状のせいなのか、寝込んでるらしいが」

「アンジュ様、寝込んでるの……?大丈夫……?」

「ああ。大丈夫だろう。寝込んでいるとはいえ3年も経っている。しばらく様子を見ても問題は無いと思うぞ。鳩の便あるだろ?あれもアンジュの邸宅から出してる鳩がやってるんだ」

「えーーー!!そうだったんだ……お花の街かあ、行ってみたいなあ……」

「心配すんな、行くから」

「わーーい!!」


 一通り、ほかの魔法使いのことも教えると既に日は傾いていた。もうマホは、自分の家に取りに行く物も無いようで一緒にいることになった。

 それから1週間、花のことについてこれ以上分かることは無く、どうして突然咲き始めたのかについても調べることが出来なかった。
 その間、セイカは製薬に関する魔法を簡単なものからマホに教えていった。
 案の定、マホはかなりの速度で技術を吸収していき、教えることが早々に無くなりそうだった。



「セイカ様、明日また旅に出るの?」

「あぁ、最初はリジェネの街だ。覚えてるか?」

「うん!水の街でしょ!」

「そうだ。まぁリジェネは子供は嫌いではない。安心しろ」



 夜になり、ビオンが夕食を作る。今夜は肉料理のようだ。運ばれてきた料理から昇る暖かいソースと肉汁の香りが、空腹をさらに加速させる。



「わぁい!お肉だぁ!」

「さっき、精肉担当の人がね、明日発つんだったら力つけないとってお肉くれたんだ。まぁ、そうじゃなくてもお肉もお魚も貰えるんだけどね」

「いただきまぁぁす!」

「はーい」



 マホが勢いよく食べ始める。それにつられて、他2人と妖精3匹も食事を始めた。
 あっという間に平らげると、ビオンがマホにお風呂と歯磨きを促す。本来であればセイカの役目だが、そんなこと気にするほうが不気味な男だ。

 とはいえ、今現状で弟子に魔法を教えているのが不思議なくらいだ。



「ビオンは弟子とらないのか?」

「まぁ僕は…まだいいかな。司書の魔法なんて教えることも少ないし」

「けど難しいから数が少ないんだろ。…お前みたいに、世界図書の情報量に追いつける脳みその子供がいたら教えておいたほうがいいんじゃないか?」

「まぁそれもそうだね。セイカこそ、薬の魔法だって難しいのになんでこのタイミングでマホちゃんを弟子にしたのさ? なんとなく、とか気まぐれは無しね?」

「…。俺の魔力分けただろ。あれの相性が良かったんだ。ということはこの魔法に適性がある。それになんか…そうするべきだと思ったんだ。妖精の課題も、できるとはなんとなく思って出した」

「ふぅん…。まぁ実際そうみたいだね。覚えもすごく早いし、それにすごくやる気のある子だ。師匠の誰かさんより」

「うるさいぞ」


 ビオンは楽しそうにクスクス笑いながら、自分も寝る支度を済ませるのであった。



 翌日、一行は早朝に身支度と食事を済ませる。
 朝の5時はまだ薄暗く、早起きに慣れていないセイカとマホは、あくびをしながら目をしょぼしょぼとさせていた。


「さて、準備もできたことだし、出発しようか!ここから歩いて1日ってところかな」

「1日!?ま、マホそんなに歩けるかなぁ…」

「もちろん休憩はその都度挟むし、安心してね。疲れたらセイカにおんぶしてもらうといいよ!」

「…考えとく」

『えぇ!?ご主人ほんとに!?』

「おう。おいてくわけにもいかねぇし」

「わーい!!それならマホ平気!」


 出発前に窓辺を見ると、2通の手紙を咥えた鳩が留まっていた。
 窓を開け受け取り、差出人を確認する。

 1通はクラウド卿、もう1通は水晶の街を治めるプラチナ宝石魔法使いのスウェネだ。


「歩きながら読むか」


 一行は手紙を開きつつ、魔法使いの村を後にした。
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