真事の怪談 ~妖魅砂時計~

松岡真事

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#026『イヴの深夜に』

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 私の勤める割烹から徒歩20分ほどの所に外港があるのだが、そこに隣接して ささやかな広さの公園が広がっている。
 冬の間には そこにイルミネーションが灯るのであるが、実はこれが小規模なりに、なかなか大したものなのだ。
 ちょっと遠出したらハウステンボスという大御所があるのでどうにも存在はかすみがちなのだが、どうしてこんな田舎にこれほど綺麗なイルミが?と思うほどの仕上がりで、地元ももっと宣伝すればいいのに・・・と、毎年の如く私などは思っている。
 クリスマスイヴには何と朝までイルミネーションは輝きっぱなし。
 恋人達の穴場スポットになるように、もっと知名度を上げていきたい。

 が、ここで奇妙なものを目撃した人がいた。

  ※   ※   ※   ※

 御手洗みたらいさんは、その日の夜 友人の朝永ともながさんを助手席に乗せて、この公園の側を車で通っていた。
 独身、彼女ナシ、30代の男友達6人ばかしで〝寂しい野郎どもの会〟なるものを結成し、イヴの夜をカラオケで過ごして連帯感を深めた、その帰り道だったという。
 時刻は既に、深夜の1時。
 朝永さんは既に大量のビールで出来上がっていたが、運転手である御手洗さんはもちろん冷静なシラフである。「俺たちは親友だよなぁ」「一生独身だよなぁ~」とわけのわからないクダを巻く朝永さんに「ハイハイ」と返しながら、まず彼を家に送らねば、と使命感に燃える御手洗さんであった。

 公園のイルミネーションが目に入る。
 今年も朝までか。ご苦労さんだなぁと思いながら、ついつい横目に見てしまう。
 そんな中、

「あっ!御手洗、あれ見ろ、信じられねぇ」

 朝永さんが、怪しい呂律で叫んだ。

「こんな時間に、親子連れが遊んでやがるぞ!!」

 公園のブランコの辺りを、大袈裟に指さしながらガナリたてる。
 確かに、イルミネーションで照らし出された公園のブランコを、女の子らしい長い髪の小さな影が大きく漕いでいる様が見えた。
 その傍に立っている二つの影は、背の高さからしてお父さんとお母さんか。

「なぁ朝永!俺らの子供の頃は、『子供は早く寝ろ~』って。10時くらいには布団の中に押し込まれてたモンだよな。最近の子はいいよな。大人同伴で、真夜中の公園で、ブランコ漕いで?夜更かし し放題か。あ~ん?」

「・・・・・・・・・・・・」

「まったく最近の若いのはよ~。保護者がダメだからワガママなんだよ・・・なっちゃいねぇんだよ。だから俺らは彼女もいねぇんだよ。そうだよな御手洗。なぁ?!」

「・・・あ、ああ。そうだな。その通りだよ朝永」

「あー・・・ へっへっへ・・・ 俺らは親友だよなぁ。ずーっと独身だよなぁ・・・」


 酒が回っている上に近視の入ったこの友人に、自分が肉眼で見た光景は一生話すまい、と御手洗さんは強く心に誓った。

 車がブランコの近くに寄り、ライトが親子連れを照らした時。

 ブランコを漕ぐ女の子は半袖、スカート姿で、
 お母さんと見える女性は 涼やかな青い柄の浴衣姿で、
 お父さんは ほとんど半裸に近い異様に露出度の高い格好のうえ、
 頭が無かった。

「・・・ううぅ、さむっ。御手洗ぃ、今、何度だ?」
「・・・・・・2度だよ」
「うわ、引く。こんな寒い中、夜中に子供を外で遊ばせるなんて。だから最近の親はなっちゃいねぇんだよ。だから俺たちは彼女もいねぇんだよ・・・」


 〝寂しい野郎どもの会〟は、それから3年間、構成メンバーの一人が晴れて結婚するまで、飽きもせず侘しく、行われ続けた。
 3年間ずっと、下戸の御手洗くんは べろんべろんの朝永くんを車で家まで送り届けた。

 だが、彼が奇怪な親子連れを目撃したのは、その一回きりだけだったという。
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