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第3話 突然の別れ
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「これであとは当日を待つばかりだね」
「ええ緊張するけれど、とても楽しみだわ」
「僕も君の美しいウエディングドレス姿を見るのが楽しみだ」
そう言いながら、私の頬に軽く口付けをするシェルダン。
私は彼の腕に手を回し、馬車が待つ場所へと向かっていた。
今日私たちは式の最終打ち合わせに来て、今やっと終わったところ。
当日の入り時間や婚礼衣装の支度の開始時間などの確認。
他にもいろいろあったけれど…大丈夫よね?
シェルダンと何度も確かめたし。
「どうしたの? 難しい顔して?」
馬車に乗り込むシェルダンが、先に座っていた私の顔を見て不思議そうに問いかけながら隣に座る。
「何か確認漏れがないか気になって…」
「大丈夫だよっ 二人で散々見直しただろ? あとは君が来てくれれば完璧。やっぱり式は挙げたくないってすっぽかさなければねっ」
いたずらっ子のようにウインクしながら話すシェルダン。
「もうっ そんな事あるわけないでしょ! それをいうならシェルダンだって、面倒臭いからもうやめたって言わないでよ! ふふふっ」
私たちはそんな冗談を言い合いながら、来月の挙式を心待ちにしていた。
思えばこの時が、一番幸せな時間だったのかもしれない――――――…
◇
我が家に付くと、シェルダンが先に降り、手を差し出して待っている。
私はその手に自分の手を添えながら、ゆっくりと馬車から下りた。
「お茶でも飲んでいって」
「ああ、お邪魔しようかな」
二人並んで屋敷に向かうと、いつも冷静な執事が血相を変えて駆け寄って来た。
「お、お嬢様っ!」
「ど、どうしたの? そんなに慌てて…っ」
「さ、先程早馬が来てっ だ、旦那様がっ 旦那様が領地先でお、お倒れに…!」
「な、なんですってっ? お、お父様が!?」
朝早く視察に出かけたお父様が、領地先で突然倒れたという報せを受け、屋敷中に動揺が広がっていた。
報せを受けたお母様はすでに、お父様が運ばれた医療院へと向かったそうだ。
私もすぐに馬車に引き返そうとしたところ、シェルダンに腕を掴まれた。
「僕も一緒にいくよっ」
「あ、ありがとう…っ」
私たちは急いで馬車へと乗り込み、医療院へと向かった。
『大丈夫よ、きっとお父様は大丈夫…大丈夫よ…』
私は自分に言い聞かせるように、何度も何度も心の中でお父様の無事を祈った。
そんな私の気持ちを察してか、スカートを握り締めていた私の手にそっと自分の手を重ねるシェルダン。
その手の力強さが、今の私にとって唯一の心の支えだった。
医療院に到着するやいなや受付で告げられた病室へ向うと、そこには顔に白い布を掛けられ、寝台に横たわっている父がいた。
「おと……さま……?」
私は入口で足が固まった。
そして先に着いていた母が、父に覆い被さり泣き叫んでいる。
「ああっ ロシェル! こんなの嘘よっ 目を覚まして! お願いよっ! あなたがいなくなったら私はどうすればいいの!? ねぇ!! どうすればいいのよおおおぉぉ!!!」
同行した者の話では、父は突然頭を痛がり、その場に倒れて意識を失ったと言う。
医師の診断は脳出血。
「お、お母様!」
こんなに取り乱している母を見たのは初めてだ。
私はどうしていいのか分からずに、ただ名を呼ぶばかり。
側にいた医師や看護婦たちが、父の身体を激しく揺さぶる母を必死に止める。
落ち着かせるために医師は母に鎮静剤を打ち、意識を失った母を看護婦たちが別室へと病室から運び出した。
父が横たわる病室に、私はシェルダンと残った。
私は父の元へとゆっくり近づいた。
歩くたびに鳴る靴の音が、やけに病室内に響く。
母に揺さぶられた拍子に顏から床に落ちた白い布。
そこにいる父は、穏やかに眠っているように見えた。
私は父の側に立ち、頬にそっとふれる。
「まだあたたかい…っ」
皮肉にも父の顔にふれたのは、これが初めての事だった。
その瞬間、どっと止めどなく涙が溢れ、口から嗚咽が漏れる。
「おと…さ…っ おとう…さ…ま…っ! なぜ…こんな…突然に…っ おと…様……っ お父さ…っ」
どれだけ問いかけても、父が応えてくれる事はなかった。
「アレット…」
お父様の側で、泣きながら立ち尽くす私の肩にそっとふれるシェルダン。
「シェルダン…ッ」
私は彼の胸元に顔を埋め、咽び泣いた。
シェルダンは何も言わずに、ずっと私を抱きしめてくれていた…
「ええ緊張するけれど、とても楽しみだわ」
「僕も君の美しいウエディングドレス姿を見るのが楽しみだ」
そう言いながら、私の頬に軽く口付けをするシェルダン。
私は彼の腕に手を回し、馬車が待つ場所へと向かっていた。
今日私たちは式の最終打ち合わせに来て、今やっと終わったところ。
当日の入り時間や婚礼衣装の支度の開始時間などの確認。
他にもいろいろあったけれど…大丈夫よね?
シェルダンと何度も確かめたし。
「どうしたの? 難しい顔して?」
馬車に乗り込むシェルダンが、先に座っていた私の顔を見て不思議そうに問いかけながら隣に座る。
「何か確認漏れがないか気になって…」
「大丈夫だよっ 二人で散々見直しただろ? あとは君が来てくれれば完璧。やっぱり式は挙げたくないってすっぽかさなければねっ」
いたずらっ子のようにウインクしながら話すシェルダン。
「もうっ そんな事あるわけないでしょ! それをいうならシェルダンだって、面倒臭いからもうやめたって言わないでよ! ふふふっ」
私たちはそんな冗談を言い合いながら、来月の挙式を心待ちにしていた。
思えばこの時が、一番幸せな時間だったのかもしれない――――――…
◇
我が家に付くと、シェルダンが先に降り、手を差し出して待っている。
私はその手に自分の手を添えながら、ゆっくりと馬車から下りた。
「お茶でも飲んでいって」
「ああ、お邪魔しようかな」
二人並んで屋敷に向かうと、いつも冷静な執事が血相を変えて駆け寄って来た。
「お、お嬢様っ!」
「ど、どうしたの? そんなに慌てて…っ」
「さ、先程早馬が来てっ だ、旦那様がっ 旦那様が領地先でお、お倒れに…!」
「な、なんですってっ? お、お父様が!?」
朝早く視察に出かけたお父様が、領地先で突然倒れたという報せを受け、屋敷中に動揺が広がっていた。
報せを受けたお母様はすでに、お父様が運ばれた医療院へと向かったそうだ。
私もすぐに馬車に引き返そうとしたところ、シェルダンに腕を掴まれた。
「僕も一緒にいくよっ」
「あ、ありがとう…っ」
私たちは急いで馬車へと乗り込み、医療院へと向かった。
『大丈夫よ、きっとお父様は大丈夫…大丈夫よ…』
私は自分に言い聞かせるように、何度も何度も心の中でお父様の無事を祈った。
そんな私の気持ちを察してか、スカートを握り締めていた私の手にそっと自分の手を重ねるシェルダン。
その手の力強さが、今の私にとって唯一の心の支えだった。
医療院に到着するやいなや受付で告げられた病室へ向うと、そこには顔に白い布を掛けられ、寝台に横たわっている父がいた。
「おと……さま……?」
私は入口で足が固まった。
そして先に着いていた母が、父に覆い被さり泣き叫んでいる。
「ああっ ロシェル! こんなの嘘よっ 目を覚まして! お願いよっ! あなたがいなくなったら私はどうすればいいの!? ねぇ!! どうすればいいのよおおおぉぉ!!!」
同行した者の話では、父は突然頭を痛がり、その場に倒れて意識を失ったと言う。
医師の診断は脳出血。
「お、お母様!」
こんなに取り乱している母を見たのは初めてだ。
私はどうしていいのか分からずに、ただ名を呼ぶばかり。
側にいた医師や看護婦たちが、父の身体を激しく揺さぶる母を必死に止める。
落ち着かせるために医師は母に鎮静剤を打ち、意識を失った母を看護婦たちが別室へと病室から運び出した。
父が横たわる病室に、私はシェルダンと残った。
私は父の元へとゆっくり近づいた。
歩くたびに鳴る靴の音が、やけに病室内に響く。
母に揺さぶられた拍子に顏から床に落ちた白い布。
そこにいる父は、穏やかに眠っているように見えた。
私は父の側に立ち、頬にそっとふれる。
「まだあたたかい…っ」
皮肉にも父の顔にふれたのは、これが初めての事だった。
その瞬間、どっと止めどなく涙が溢れ、口から嗚咽が漏れる。
「おと…さ…っ おとう…さ…ま…っ! なぜ…こんな…突然に…っ おと…様……っ お父さ…っ」
どれだけ問いかけても、父が応えてくれる事はなかった。
「アレット…」
お父様の側で、泣きながら立ち尽くす私の肩にそっとふれるシェルダン。
「シェルダン…ッ」
私は彼の胸元に顔を埋め、咽び泣いた。
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