婚約者の様子がおかしいので尾行したら、隠し妻と子供がいました

Kouei

文字サイズ
特大
5 / 5

最終話 ガーベラの花束に想いをのせて…

「僕の部屋に置かれていた母からの手紙だよ。二人の葬儀が終わった後に気が付いたんだ…」

 そう言いながら、シュレオは手紙を私に差し出した。

「…よ、読んでも…いいの?」

「……」

 シュレオは無言のまま頷いた。
 私は手紙を受け取り、ゆっくりと中を広げて読み始めた。

 …長い…長い…手紙だった。

 そこには…

 シュレオは双子として産まれ、弟がいる事。

 おば様が双子を出産した時、シュレオのお祖父じい様が“双子は忌み子”と言って一人をどこかへ連れて行ってしまった事

 その後すぐにシュレオのお祖父じい様が心臓発作で突然亡くなり、双子の行方が全く分からなくなってしまい、ずっと探していた事

 その子供がやっと見つかり、今日迎えにいく事

 そして弟を連れて戻ってくるまで、心を整理しておいて欲しい事…

 そんな悲しい事情が書かれていた。
 そして、シュレオのご兄弟を迎えに行く途中、おじ様とおば様は馬車の事故に遭われてしまったのね…

「確かに祖父の世代までは、まだ双子が不吉な存在とされていた時代ではあったけれど…それだけではなかった。父上も双子だったんだ。ただ…一人は生まれてすぐに亡くなってしまい、祖母…父上の母君ははぎみも出産して数日後に亡くなった…その事は祖父の日記に書かれていたよ。

 祖父は祖母の事をとても愛していたらしい。あの当時には珍しく、恋愛結婚だったそうだから。
 そのせいで祖父はより双子に対して恐怖と嫌悪感が強くなり、母が双子を産むとすぐにもう一人をどこかへ連れて行ってしまったそうなんだ…

 僕は忌明いみあけを過ぎてから、手紙に書かれていた住所を訪ねた。
 弟は平民として生活し結婚していたらしいけれど…両親が亡くなった数週間後に、流行り病で夫婦共に亡くなっていたよ…もっと早く行っていれば…」

 シュレオは唇をみしめた。

「…そ…んな…」

 やっとご兄弟に会えると思ったのに…

「先程の女性…アンジー嬢は一人きりになってしまったジョイドの面倒を見てくれていた人なんだ。弟夫婦と仲が良かったみたいで…ジョイドはすっかり母親と思い懐いていた。僕には会ってすぐに抱きついてきたよ。…何か感じるものがあったのかな」

 シュレオが少し哀しげな微笑みを見せた。

「一緒にいた栗毛の男性はアンジー嬢の婚約者。来月式を挙げる予定だと言っていた。その事もあって早くジョイドを引き取りたかったんだけど、僕の方の相続の手続きやジョイドを引き取る際の手続きも重なって、思った以上に時間がかかって…そのせいで家に迎え入れる準備が整っていなかったんだ。だから、なるべくジョイドに会いに行くようにしていた。君が見たのはその時だったと思う」

「…そうだったの…え、じゃ、じゃあ、何で甥御さんを自分の子ってお父様たちに言ったの? 今までの話をお父様たちにしてくれていたら…」

「…そう言って…コルディア伯爵ご夫妻のお怒りを買えば…君を諦められると思ったんだ…」

「え…? どういう意味?」

 シュレオは神妙な面持ちで口を開いた。

「………怖くなった……

 最初は双子が不吉な存在なんて、馬鹿げた話だと思っていたよ。
 今の時代、そんな迷信を信じる者はいない。

 けど母からの手紙と祖父の日記を読んで…そして僕の周りで起こった事を顧みていろいろ考えさせられた。

 …祖父が突然心臓発作で亡くなったのも、両親が事故で亡くなったのも、弟夫婦が子供を残して亡くなったのも…もっと言えば、祖母も父の兄弟も…こんなに不幸が続いたのは全て…全て双子が生まれた事が理由なんじゃないかって思うようになったんだ…

 そして、双子として生まれた僕と結婚したら、君まで不幸にしてしまうんじゃないかって…そう考えたら更に怖くなって…このまま君と一緒にいていいのか? 別れた方がいいのではないのかって…ずっと悩んでいた…だから…だから…僕は…!」


 !!パアン!!


 私の両手に顔を挟まれるように押さえられ、両目を見開いて驚いているシュレオ。

「それで!? もし双子が原因だとして、その責任を貴方が一人でになうの!? 双子だという不安を一人でかかえるの!?」

 怒鳴った拍子に、私の目から涙がボロボロと溢れ出した。
 
 …突然ご両親を亡くし、当主になって、実は自分は双子で兄弟がいたけど、会う前に亡くなっていた…

 次から次へと降りかかる状況に悲しむ間もなく、一人でどれだけ戸惑った事だろう…不安に思った事だろう。

 なのに…そんな状況の中でも私の事を考えてくれた…

 でも…だからこそっ 私にはきちんと話してほしかった…!

「…エル…ナーラ…」

「今の話を聞いてっ あなたが双子だと聞いてっ 私が怖がると思った!? 逃げると思った!? 婚約破棄を望むと思ったの!? 10年も一緒にいて私がそんな薄情な人間にしか見えなかった!?」

「…ち、違うっ! そんな風に思う訳がない! けど……この話を聞いてもしも…万が一…君の僕を見る目が変わってしまったらって…そう考えたら怖くて…それに…ジョイドを引き取る事で周りからある事ない事、噂を立てられるだろうし…君にそんなつらい思いをさせたくなかった…っ」

 そう言いながらシュレオは視線を下に向けた。

「周りの目なんて関係ない!! 私を見て! 変わった!? 私のあなたを見る目、変わってる!?」

「……か…変わって…ない……変わってないよ…っ…僕の大好きな星空のままだ…」

 シュレオの目から一滴ひとしずくの涙が流れた。

 私も涙を流しながら、シュレオに笑いかけた。

「変わらないっ 変わる訳ないじゃない! だから何でもかんでも一人でかかえ込もうとしないでっ 私も一緒に持つから!」

「エルナーラ…」

「………あなたが何も言わないから、私がどんだけ落ち込んだと思っているのよっ 隠し妻と子供がいたんだって…どれだけ驚いたか…!」

 私はシュレオの顔を両手で挟みながら、泣いているのか笑っているのか怒っているのか自分でも分からなくなっていた。

「……ご…めん……ごめん…エルナーラ……僕が好きなのは君だけだよ…昔からずっと…ずっと君だけを…」

「……………知ってる」

 私の言葉に一瞬きょとん顔になったシュレオ。

「…ははは」

「ふふふ」

 そして私たちは、泣きながら笑った。

 これからまた大変だわ。

 両親に婚約破棄の取り消しをお願いしなければならないし、事の顛末を話さなければならないし、ジョイドにも会ってもらわなきゃっ あ、その前に私が会わせてもらわなきゃっ …やらなければならない事がたくさんあるけれど…うん、二人なら大丈夫!

『あ…』

 私は窓際に飾ってあった四本のガーベラに気が付いた。
 自分の部屋にも飾っているのね…

「…ねぇ。シュレオはガーベラの花言葉を知っていたの? 本数でも意味が違うって」

 シュレオの隣で私は尋ねた。

「…うん。君に事情を話す事ができなくて手紙を書く事もできなくなった時、せめて気持ちだけでも届けたいと思って調べたんだ。それにガーベラは一年を通して手に入りやすい花らしい。だから、いつでも君に僕の気持ちを伝える事ができると思ったんだよ…ガーベラを見ると、いつも君の事を思い出していた…」

 そういうとシュレオは私の肩をぎゅっと抱き寄せた。

 私はシュレオの手のあたたかさを感じながら、これからシュレオの誕生日には、4本のガーベラの花束を贈ろうと考えていた。

 この気持ちがこの先も変わる事がないという思いを込めて…


 ――――あなたを一生愛し続けます―――――

感想 9

この作品の感想を投稿する

1000文字以内

ログインすると感想の投稿ができます。

ログイン  新規ユーザ登録

みんなの感想(9件)

Andy
2026.02.16 Andy

簡潔にまとまっていて読みやすかったです!
エルナーラが体当たりで話を聞きに行って
全部どんと受け入れたのは頼もしかったです。
この後の貴族の雑事めんどそうですしね!

----
とか言いながらここで超蛇足にその雑事について考えてみましたw
エルナーラの屋敷で一回自分の子と言ったのも良くなかったし、
流石に両親が亡くなった途端に当主の隠し子の嫡男?(2歳)
が登場して以前からの婚約者と婚姻しても伯爵家の
対面や信頼を損なうでしょう。

実際もう双子を忌避する風潮がないなら双子の子供、
と公表した方が貴族としては良いのでは??と思いました。
両親の遺言書で発覚したとか言って。後継にするかとかにも
関係しますしね!ジョイドの将来のためにも。

2026.02.16 Kouei

Andy 様
感想を下さり、ありがとうございます。
エルナーラは結構器が大きかったのかな?(^^;
そんな彼女を好意的に思っていただき、嬉しい限りです。

エルナーラとは反対にシュレオはちょっとヘタレ気味。
仰る通りこの時代には双子=忌み子の風潮はなくなっていたので、きちんと公表していれば話がややこしくならなかったのかもしれません。
一応シュレオが兄なので、のちの後継者はエルナーラとの子供になるかな〜?
ジョイドを養子に迎えるのかな?
まだ解決しなければならない事は続きますね💦

読んでいただき、本当にありがとうございました。

Kouei
ミュート中です
解除
水城紗羅
2025.05.28 水城紗羅

オススメから来ました。

スッキリまとまっていて、とても読みやすかったです。

続きも読みたい位😆

元サヤ、ハッピーエンドって、やっぱり良いですね(*≧∀≦*)

2025.05.29 Kouei

水城紗羅 様
オススメから来て下さり、ありがとうございます。
まだまだ稚拙な部分が多々あるお話ですが、励みになる言葉を下さり嬉しい限りです💕
その上続きを希望して頂き、感無量です。
そうですね、ハッピーエンドは書いた後、スッキリするのでいいですね🤗
読んで頂き、本当にありがとうございました。

Kouei
ミュート中です
解除
こすや
2025.04.26 こすや

面白かった!
その後を知りたくなりました。
全てを公にして 甥として育てるか、養子にするか。
彼女のご両親は納得してくれたのか。
社交会は うるさいでしょうね(笑)

ふたりなら乗り越えていけそうですね。

2025.04.26 Kouei

こすや 様
感想を下さり、ありがとうございます。
「面白かった!」と言って下さり、とても嬉しいです!
まずはこの後、エルナーラの両親へ二人で説明し、渋々ながら納得してくれたと思います。
ジョイドの事は…どうするのでしょうね(^^;)
暫く世間の目がうるさいでしょうけれど、そう!ふたりなら大丈夫です、きっと!
読んで頂き、本当にありがとうございました。

Kouei
ミュート中です
解除

あなたにおすすめの小説

理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら 表紙

理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら

親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。 問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。 もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?
恋愛 完結 短編
文字数:18,008
嫌いなところが多すぎるなら婚約を破棄しましょう 表紙

嫌いなところが多すぎるなら婚約を破棄しましょう

伯爵令嬢の私ミリスは、婚約者ジノザに蔑まれていた。 侯爵令息のジノザは学園で「嫌いなところが多すぎる」と私を見下してくる。 そして「婚約を破棄したい」と言ったから、私は賛同することにした。 どうやらジノザは公爵令嬢と婚約して、貶めた私を愛人にするつもりでいたらしい。 そのために学園での評判を下げてきたようだけど、私はマルク王子と婚約が決まる。 楽しい日々を過ごしていると、ジノザは「婚約破棄を後悔している」と言い出した。
恋愛 完結 短編
文字数:17,512
どう見ても貴方はもう一人の幼馴染が好きなので別れてください 表紙

どう見ても貴方はもう一人の幼馴染が好きなので別れてください

レレイとアルカは伯爵令嬢であり幼馴染だった。同じく伯爵令息のクローヴィスも幼馴染だ。 やがてレレイとクローヴィスが婚約し幸せを手に入れるはずだったが…… クローヴィスは理想の婚約者に憧れを抱いており、何かともう一人の幼馴染のアルカと、婚約者になったはずのレレイを比べるのだった。 さらにはアルカの方を優先していくなど、明らかにおかしな事態になっていく。 どう見てもクローヴィスはアルカの方が好きになっている……そう感じたレレイは、彼との婚約解消を申し出た。 婚約解消は無事に果たされ悲しみを持ちながらもレレイは前へ進んでいくことを決心した。 その後、国一番の美男子で性格、剣術も最高とされる公爵令息に求婚されることになり……彼女は別の幸せの一歩を刻んでいく。 しかし、クローヴィスが急にレレイを溺愛してくるのだった。アルカとの仲も上手く行かなかったようで、真実の愛とか言っているけれど……怪しさ満点だ。ひたすらに女々しいクローヴィス……レレイは冷たい視線を送るのだった。 「あなたとはもう終わったんですよ? いつまでも、キスが出来ると思っていませんか?」
恋愛 完結 短編
文字数:22,610
「女友達と旅行に行っただけで別れると言われた」僕が何したの?理由がわからない弟が泣きながら相談してきた。 表紙

「女友達と旅行に行っただけで別れると言われた」僕が何したの?理由がわからない弟が泣きながら相談してきた。

「アリス姉さん助けてくれ!女友達と旅行に行っただけなのに婚約しているフローラに別れると言われたんだ!」 弟のハリーが泣きながら訪問して来た。姉のアリス王妃は突然来たハリーに驚きながら、夫の若き国王マイケルと話を聞いた。 結婚して平和な生活を送っていた新婚夫婦にハリーは涙を流して理由を話した。ハリーは侯爵家の長男で伯爵家のフローラ令嬢と婚約をしている。 それなのに婚約破棄して別れるとはどういう事なのか?詳しく話を聞いてみると、ハリーの返答に姉夫婦は呆れてしまった。 非常に頭の悪い弟が常識的な姉夫婦に相談して婚約者の彼女と話し合うが……
恋愛 完結 短編
文字数:17,864
従姉と結婚するとおっしゃるけれど、彼女にも婚約者はいるんですよ? まあ、いいですけど。 表紙

従姉と結婚するとおっしゃるけれど、彼女にも婚約者はいるんですよ? まあ、いいですけど。

ヴィオレッタはとある理由で、侯爵令息のフランツと婚約した。 しかし、そのフランツは従姉である子爵令嬢アメリアの事ばかり優遇し優先する。 アメリアもまたフランツがまるで自分の婚約者のように振る舞っていた。 目的のために婚約だったので、特別ヴィオレッタは気にしていなかったが、アメリアにも婚約者がいるので、そちらに睨まれないために窘めると、それから関係が悪化。 フランツは、アメリアとの関係について口をだすヴィオレッタを疎ましく思い、アメリアは気に食わない婚約者の事を口に出すヴィオレッタを嫌い、ことあるごとにフランツとの関係にマウントをとって来る。 そんな二人に辟易としながら過ごした一年後、そこで二人は盛大にやらかしてくれた。
恋愛 完結 ショートショート
文字数:17,598
【完結】病弱な妹に魔力を分け続け死ぬ寸前の私を、宮廷魔術師になった旧友が攫ってくれました。家族を捨てて幸せになっていいんですか? 表紙

【完結】病弱な妹に魔力を分け続け死ぬ寸前の私を、宮廷魔術師になった旧友が攫ってくれました。家族を捨てて幸せになっていいんですか?

「あなたはもう十分楽しんだでしょう? 今度はミアーラの番よ」 膨大な魔力と知識を持ち、聖女候補とまで言われた、天才魔術師エリアーナ。 彼女は、病弱な妹ミアーラの為、家族に言われるまま自らの膨大な魔力を差し出すことにした。 「そうだ。私は健康で、今まで十分に楽しんできた。だから、あげるのは当然だ」 魔力を与え続けた結果、彼女は魔力を失い、容姿も衰え、社交界から姿を消してしまう事となった。 一方、妹ミアーラは姉から与えられた魔力を使い、聖女候補として称賛されるように。 家族の呪縛に縛られ、「今まで多くを貰いすぎていたのだ」と信じ、利用され続けるエリアーナ。 そんな彼女の前に現れたのは、かつての旧友であり宮廷魔術師となった青年だった。 ハッピーエンドです!
恋愛 完結 短編
文字数:17,799
王太子殿下に婚約者がいるのはご存知ですか? 表紙

王太子殿下に婚約者がいるのはご存知ですか?

フォルトマジア王国の王立学院で卒業を祝う夜会に、マレクは卒業する姉のエスコートのため参加をしていた。そこに来賓であるはずの王太子が平民の卒業生をエスコートして現れた。 王太子には婚約者がいるにも関わらず、彼の在学時から二人の関係は噂されていた。 周囲のざわめきをよそに何事もなく夜会をはじめようとする王太子の前に数名の令嬢たちが進み出て――。 ※以前他のサイトで掲載していた作品です
恋愛 完結 短編
文字数:7,695
婚約者の私より幼馴染の方が好きと言われたので、皆に知らせてから別れます 表紙

婚約者の私より幼馴染の方が好きと言われたので、皆に知らせてから別れます

伯爵令嬢のメリナは、婚約者のガルーザ王子から蔑まれていた。 ガルーザは幼馴染で侯爵令嬢のマインが好きなようで、メリナと別れることを目論んでいる。 評判を落とそうと嫌がらせをしてくるガルーザに対して、メリナは我慢の日々を送っていた。 そして誕生日の前日に「お前よりマインの方が好きだ」と言われたことで、メリナは行動する。 ガルーザがマインを好きだと皆に知ってもらい、婚約破棄が決まった。 その後ガルーザは、メリナがいなくなり後悔することとなる。
恋愛 完結 短編
文字数:18,645