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教室で朝のホームルームが始まる前、那由は他のクラスメイトと違い自分の席でノートを広げて真剣な顔をしていた。ノートには段取りのようなものが書かれており、明らかに授業のノートではない。宗祇は不思議に思ったのか、机の横からノートを覗き込んで質問をした。
「那由、それは?」
宗祇に聞かれた那由はノートを閉じると、表紙が宗祇に見えるようにかざす。文化祭実行委員ノート――。酷く飾り気がないそれは作り立てと言うより那由の性格を表している感じであった。それから那由は携帯電話を取り出して文字を打ち始める。
『人がおるところで話しよったら変に思われるけん』
それだけ見せて宗祇に視線を向ける那由。宗祇もそれだけで理解したのか、なるほどと言って小さく頷いた。それから那由はまた携帯電話に文字を打ちこみはじめる。
『私、文化祭実行委員長やけんホームルームで何話すか考えよんよ』
宗祇が那由の携帯電話画面から視線を戻して答える。
「あー……。そういえば来月あたり文化祭だっけ」
黒板に書かれた日付を確認した宗祇はそう言うと、那由は首を縦に振って肯定した。肯定しながらも那由は不思議に思ったのか、少し首を傾げるとまた携帯電話に文字を打ち始める。
『何で来月文化祭って知っとん?』
「ああ、なんていうか……。俺もここの高校だったんだよね。だから――」
「那由! 何言うか決まった?」
宗祇が話を最後まで言い終わる前に男子生徒が那由の机に手をついて声をかけた。角刈りが伸びたような形の短髪で肌は日焼けで黒くなっている。百八十センチ近い身長と筋肉質な身体からも体育会系の雰囲気がある。声が大きかったために、クラスメイトの何人かが気にするように視線を向けた。そんな元気な男子生徒とは逆に那由はテンション低く溜息を吐きながら答える。
「今考えよるけんちょっと待って」
「那由がテンパっとるところ見れると思うとちょっと楽しみやな。なんなら代わりに俺がサッカー部で鍛えた肺活量使って大声で喋ってもいいんやけど?」
「はー、かっちゃんは何でそういう言い方しかできんの? ちゃんとやるけん大丈夫やって。私がやるって言い始めたことやし」
「そっ。でもなんかあったら直ぐに言えよ? ほら、俺だって副委員長やし。……那由の役に立ちたいけん」
男子生徒は最後に少し照れ臭そうに顔を背けて言うと、那由の顔色を確認するようにちらりと視線を送る。しかし、那由は全く変わらない態度でノートを真剣に読みながら答えた。
「ありがと、かっちゃん。そんときはお願いするわ」
かっちゃんと呼ばれた彼は手を振りながら自分の席に戻っていったが、何度も那由のことを心配そうに見ていた。
「彼は?」
一連のやり取りを静かに見ていた宗祇は首を傾げながら簡単に問いかける。那由は一瞬周りを確認した後で携帯電話を取り出して答えた。
『高橋勝也君。中学からの同級生で実行委員を一緒にやってくれてる』
「優しそうな子だね」
那由に男子生徒のことを教えてもらった宗祇はそう言って遠くに座る勝也を見つめている。宗祇が見つめる先で勝也はまだ那由のことを心配そうに見ていた。
「那由、それは?」
宗祇に聞かれた那由はノートを閉じると、表紙が宗祇に見えるようにかざす。文化祭実行委員ノート――。酷く飾り気がないそれは作り立てと言うより那由の性格を表している感じであった。それから那由は携帯電話を取り出して文字を打ち始める。
『人がおるところで話しよったら変に思われるけん』
それだけ見せて宗祇に視線を向ける那由。宗祇もそれだけで理解したのか、なるほどと言って小さく頷いた。それから那由はまた携帯電話に文字を打ちこみはじめる。
『私、文化祭実行委員長やけんホームルームで何話すか考えよんよ』
宗祇が那由の携帯電話画面から視線を戻して答える。
「あー……。そういえば来月あたり文化祭だっけ」
黒板に書かれた日付を確認した宗祇はそう言うと、那由は首を縦に振って肯定した。肯定しながらも那由は不思議に思ったのか、少し首を傾げるとまた携帯電話に文字を打ち始める。
『何で来月文化祭って知っとん?』
「ああ、なんていうか……。俺もここの高校だったんだよね。だから――」
「那由! 何言うか決まった?」
宗祇が話を最後まで言い終わる前に男子生徒が那由の机に手をついて声をかけた。角刈りが伸びたような形の短髪で肌は日焼けで黒くなっている。百八十センチ近い身長と筋肉質な身体からも体育会系の雰囲気がある。声が大きかったために、クラスメイトの何人かが気にするように視線を向けた。そんな元気な男子生徒とは逆に那由はテンション低く溜息を吐きながら答える。
「今考えよるけんちょっと待って」
「那由がテンパっとるところ見れると思うとちょっと楽しみやな。なんなら代わりに俺がサッカー部で鍛えた肺活量使って大声で喋ってもいいんやけど?」
「はー、かっちゃんは何でそういう言い方しかできんの? ちゃんとやるけん大丈夫やって。私がやるって言い始めたことやし」
「そっ。でもなんかあったら直ぐに言えよ? ほら、俺だって副委員長やし。……那由の役に立ちたいけん」
男子生徒は最後に少し照れ臭そうに顔を背けて言うと、那由の顔色を確認するようにちらりと視線を送る。しかし、那由は全く変わらない態度でノートを真剣に読みながら答えた。
「ありがと、かっちゃん。そんときはお願いするわ」
かっちゃんと呼ばれた彼は手を振りながら自分の席に戻っていったが、何度も那由のことを心配そうに見ていた。
「彼は?」
一連のやり取りを静かに見ていた宗祇は首を傾げながら簡単に問いかける。那由は一瞬周りを確認した後で携帯電話を取り出して答えた。
『高橋勝也君。中学からの同級生で実行委員を一緒にやってくれてる』
「優しそうな子だね」
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