霊と恋する四十九日

色部耀

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 資料をしまい職員室で鍵を返し終わった那由は、自習中だった一時間目の終わりごろになってから教室に入った。授業中、宗祇は教室の那由の机のそばでフラフラと歩いており、その自由な行為が気になる様子の那由は何度も視線を送っていた。授業が終わると普段とは違う疲れに背伸びをしていた那由の下へ三人の女生徒がやって来た。その三人の女生徒の接近に対して、那由は少しだけ身構えるように緊張を示す。

「で、写真は一人何枚いつまでに撮ってきたらいいん?」

 威圧的な態度でそう聞いてきたのは、ホームルームの時に意見を言ってきた上岡だった。不満をぶつけられる覚悟はしていた那由。しかし不安は隠し切れず、ゆっくりと答える。

「えっと、今月中に一人十枚……いや五枚だけでも準備してくれたらどうにか形になるかな」

 那由の様子を見て女生徒は口元をニヤリと釣り上げて、大声を出すためにスーッと息を吸う。その瞬間、那由の顔に更なる不安がよぎる。しかし、那由の不安げな表情を見た宗祇がすぐそばから自信を帯びた様子で声をかけた。

「大丈夫。俺には少し先の未来が見えるから。安心していいよ」

 隣で宗祇が言ったすぐ後、その女生徒は教室中に聞こえる声で言い放った。

「全員再来週までに十枚写真撮って来いよ! 遅れた奴罰ゲームな!」

 那由が教えた期限は今月末なのに上岡が通達したのは再来週。今は九月になったところなので半分にまで期限が縮められている。それに那由がどうにか形になると踏んだ五枚ではなく十枚と言った。那由は何故彼女がそんなことを言ったのかが理解できない様子で口をあんぐりと開けていた。

「ウチら、ちゃんと協力させてもらうから。文句言うやつがいたらウチに教えて」

 ビシッと親指を立てて真っ白な歯を光らせて言う彼女。那由は反射的に宗祇を見るが彼もまたにこやかに微笑んでいた。頼りになる台詞を受けた那由は戸惑いながらも椅子から立ち上がると上岡と視線を合わせて礼を言う。

「ありがとう。上岡さん」

「良い良い! それに、愛って呼び捨てで良いよ」

 愛はそう言って照れるように顔を背ける。するとその隣にいた女の子が口を挿んできた。

「そうそう。気軽に『あいうえお』って呼んであげて。見た目はあれやけど、ただのツンデレやけん」

「あいうえおって言うな! あとツンデレって言うな!」

 あいうえおと言われて怒っている彼女を尻目に那由は首を傾げる。

「あいうえお?」

「上岡愛。ほら『あい・うえおか』だからよ」

 もう一人、愛の隣にいた女の子が那由にそう教えると横で宗祇が感心するように声を上げた。

「なかなかセンスのあるニックネームだな」

 そう言ったのは那由の隣で口元に手を当てている宗祇。それを聞いて一気に気が抜けたのか、那由は吹き出して笑った。

「わーらーうーなー!」

 愛の見た目が怖くて今まであまり話していなかった那由だった。しかし地団駄を踏む彼女を見て一気に印象が変わったのか、それからすぐに打ち解けて休み時間が終わる頃には笑顔で手を振り合っていた。
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