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教室に戻った那由は迷うことなく沙知と勝也が作業をしているところへと向かった。勝也は背中を丸めて黙々と作業をしていて那由が近付いてくることに気付かない。沙知はそんな勝也に何かと話し掛けていたが、那由の存在に気付いて話を止める。那由は勝也の真後ろまで来ると、大きく深呼吸をして背中を叩いた。
「どう? 色画用紙足りそう?」
突然那由に話しかけられた勝也は一瞬唖然として大きく目を見開いた。そしてすぐに挙動不審に視線を漂わせると、取り繕うように返事をする。
「あれ? 那由、ゲートの設営は?」
「私は画用紙が足りたかって聞きよんやけど?」
あくまで普段通りの装いで話す那由。しかし、後ろで組んだ手は強く握りしめられていた。不安がバレないようにと頑張る那由の隣では宗祇が大丈夫大丈夫と声をかけ続けている。
「うん。ああ、大丈夫そう」
「そっか。それなら良かった。あとさ、かっちゃん」
話題転換をしようと那由が名前を呼んだ瞬間、勝也は身体を固くする。その姿は普段の勝也からは想像ができないほど弱弱しく見えた。
「その……これからも友達でおってくれるかな……」
那由はそう言って手を差し出した。キョトンとした勝也は那由の仕草に流されるままといった風に握手をする。その瞬間、那由は安心した様子で笑うと沙知と勝也の間に割り込んで座った。そこで宗祇も安心して那由に語り掛ける。
「よく頑張りました」
「うん。私頑張った」
そう不用意に口に出して返事をしてしまった那由に沙知が答える。
「那由。偉い」
沙知の言葉を聞いて那由はハッとなって取り繕うように返事をした。もちろん勝也には聞こえないようにコッソリと。宗祇は慌てる様子の那由に小さく囁くようにごめんとだけ言って少し距離をとる。
「沙知にはあとで聞かんといかんことがあるけんね」
「えー? なんのことかなー?」
沙知はバツが悪そうに言ったが、目だけが笑っていない那由の笑顔を見て観念したのかあとで何でも言うことを聞きますと約束をしていた。
「どう? 色画用紙足りそう?」
突然那由に話しかけられた勝也は一瞬唖然として大きく目を見開いた。そしてすぐに挙動不審に視線を漂わせると、取り繕うように返事をする。
「あれ? 那由、ゲートの設営は?」
「私は画用紙が足りたかって聞きよんやけど?」
あくまで普段通りの装いで話す那由。しかし、後ろで組んだ手は強く握りしめられていた。不安がバレないようにと頑張る那由の隣では宗祇が大丈夫大丈夫と声をかけ続けている。
「うん。ああ、大丈夫そう」
「そっか。それなら良かった。あとさ、かっちゃん」
話題転換をしようと那由が名前を呼んだ瞬間、勝也は身体を固くする。その姿は普段の勝也からは想像ができないほど弱弱しく見えた。
「その……これからも友達でおってくれるかな……」
那由はそう言って手を差し出した。キョトンとした勝也は那由の仕草に流されるままといった風に握手をする。その瞬間、那由は安心した様子で笑うと沙知と勝也の間に割り込んで座った。そこで宗祇も安心して那由に語り掛ける。
「よく頑張りました」
「うん。私頑張った」
そう不用意に口に出して返事をしてしまった那由に沙知が答える。
「那由。偉い」
沙知の言葉を聞いて那由はハッとなって取り繕うように返事をした。もちろん勝也には聞こえないようにコッソリと。宗祇は慌てる様子の那由に小さく囁くようにごめんとだけ言って少し距離をとる。
「沙知にはあとで聞かんといかんことがあるけんね」
「えー? なんのことかなー?」
沙知はバツが悪そうに言ったが、目だけが笑っていない那由の笑顔を見て観念したのかあとで何でも言うことを聞きますと約束をしていた。
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