異世界に奏でる狂騒曲(ロックンロール)~ランク0だけどロックの力で最強パーティに~

伊太利 千重治

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1章

2サビ-宿

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 奏太達は、永吉に貰った地図を頼りに街の宿へとたどり着いた。

「ここが宿か……。なんだか凄く疲れたな~。」

「そうですねぇ~。」

「色々あったでござるからな。小生もヘトヘトでござる……。」

 突然異世界に連れてこられ、見知らぬ場所、見知らぬ人に圧倒され、しかも人前で演奏までやらされた奏太達は、今日の疲れがどっと押し寄せた。

『チリンチリン』

「いらっしゃいませ。」

 宿の扉を開くと、即座にカウンターの男が挨拶をする。

「何泊のご利用でしょうか。」

「ええっと……。」

 何泊利用するかなど、見当もつかない。何て答えれば良いのか分からず奏太が返答に困っていると、


「長期間の滞在予定なのですが、利用可能な部屋はありますでしょうか。」

 響子が代わりに答える。
 格好悪い所を見せてしまった。出来ればホテルの受付をささっと済ませる男のように、スマートにキメたかったのだが。

「長期でのご利用ですね。お部屋はシングルとダブルがございまして、只今どちらも3名様分空いております。
 長期の場合はひと月単位でのご契約が可能です。
 料金は前払いで、最終日に継続のご確認を取らせて頂いております。
 継続の場合は新たに料金をお支払い頂ければ、そのままお部屋を継続してご利用頂けます。」

 部屋は長期の滞在でも大丈夫なようで安心した。
 毎日部屋が変わるのでは不便だからな。
 借家を借りたり、家を買ったり出来れば良いのだが、生活基盤が整っていない段階でそれを考えるのはまだ早計だろう。

「ちなみに料金は幾らなんだ?」

「シングルのお部屋ですと、ひと月で金貨3枚、ダブルで4枚となります。」

 奏太達が国王から貰った金貨を袋から取り出し、枚数を数える。
 すると中には金貨が10枚入っていた。つまりシングルだと全財産の3割が宿代に消える訳か。
 この世界の物価はまだよく分からないが、食費等の事も考えると、残金に若干の不安を覚える。これはなるべく早く稼がないと、野宿する羽目になるかもしれない。

「よろしければお支払いに移りますが、何かご質問はございますか?」

 節約のためには相部屋にした方が良いだろうか?
 響子さんとの相部屋なら俺は大喜びだが、流石に俺からそれは提案しにくい。
 逆に俺と金重の相部屋になると、流石に男2人でダブルはキツイ。
 それに誰と相部屋にするにしろ、2人で宿代を折半すると、残った1人の負担が相対的に増えるし、かといって3人で折半すると割り切れなくなるし……。
 ここは3人ともシングルにしておくのが無難か。

「一つ確認したいのでござるが。」

 なんて事を考えている間に、金重が店員に質問を投げかけた。

「部屋で楽器を弾くのは大丈夫でござるか?」

 ああ、大事なことを忘れていた。楽器が弾けないとなると、日々の練習や、響子へのレッスンに練習場所を探さなきゃいけなくなる。
 金重、ナイスフォローだ。

「お客様には音楽家の方も多くいらっしゃいますので、当宿は地下に防音室を数部屋用意してございます。
 楽器を演奏される際はそちらをご利用下さい。
 ひと月のお部屋のご利用代に、追加でお一人様金貨1枚をお支払い頂ければ、予約制ではありますが、お好きなときに防音室をお使い頂けます。
 なお、蓄音箱につきましては、音量にご配慮頂ければ、ご宿泊のお部屋でご利用頂いて結構です。」

 金貨1枚か……。3人で3枚。1人分の宿代になる。中々痛い出費だが、他で練習場所を探すよりも、ここを借りた方が良いだろう。

「どうしようか?俺は防音室も含めてシングルで支払おうかと思うんだけど……。」

 2人にも意思を確認する。

「私もそれで構いません。宿で練習出来るのはありがたいですし、少しでも長く練習して、早く上手くなりたいです。」

「小生もでござる。街を移動せずにギターが弾けるのは、出不精な小生にとってもありがたいでござる。」

 かたや前向き、かたや後ろ向きという、若干姿勢に差はあったが、3人の意見が一致したことに奏太は安堵する。

「じゃあ、シングル3部屋をひと月分と、防音室も頼む。」

「かしこまりました。では3名様で、合計が金貨12枚になります。」

 1人金貨4枚ずつを支払い、部屋の鍵を受け取る。

「お部屋は2階にございます。ごゆっくりお寛くつろぎ下さい。」

 鍵を受け取り、2階に上がる。そしてそれぞれ部屋の前でおやすみの挨拶を交わし、自分の部屋に入る。

 奏太は部屋に入るなり荷物を投げ捨て、そのままベッドに飛び込んだ。
 長い1日がようやく終わり、奏太は沈むように、深い眠りに落ちたーー
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