29 / 78
1章
4B-護衛
しおりを挟む
「ーーいや~さっきの君達の音楽凄かったよ~!
僕の名前はクレッチ。パーティのリーダーだ。よろしく!」
奏太達は、先程の冒険者ギルドで自分達の同行権を買ったパーティと共に、馬車に揺られていた。
今回の馬車は剣王軍の時とは違い、随分まともだった。
荷車を曳いているのも、今度は普通の馬だ。
同行している青年の冒険者達も、感じよく爽やかな印象を受ける。
「そういえば今日はどんな討伐クエストなんだ?」
また昨日みたいに危険な目に遭うと困るので、奏太がクエスト内容を確認する。
「うーん、残念だけど、今日のクエストは討伐じゃなくて、護衛任務なんだ。
あ、向こうにいる馬車がその依頼主だよ。」
目を向けると、そこには豪勢な馬車が停まっていた。周りには兵士らしき人物が数十名程構えている。
一体誰を護衛するというのだろうか。
いかにも凡人ではなさそうな雰囲気に、奏太は緊張を覚える。
奏太達の馬車が停車すると、クレッチ達は即座に高級馬車の元へと駆け寄り、膝を付いて控える。
すると、馬車から見覚えのある人物が降りてきた。
あっ! あれはまさかーー
「この度は我々が旅の護衛をお勤め致します、国王陛下。」
「うむ。よろしく頼むぞ。」
クレッチが頭を下げる先には、国王とその娘のアイバニーゼが立っていた。
「ええーっ!? 護衛任務って、まさか国王の!?」
奏太達は、予想だにしない人物が現れた事に驚きの声を上げた。
その声に気付き、国王とアイバニーゼがこちらを見やる。
「おお、何者かと思えば、響子殿、金重殿、そして奏太殿ではないか。
そなたらも此度の護衛に同行するのであるか?」
国王が言葉を掛ける横で、奏太達に気付いたアイバニーゼが、「あっ」と小さく声を出す。
「ええっと、はい……。」
奏太が戸惑いながら返事をすると、アイバニーゼが嬉しそうに目を見開いたーー
ーー奏太達は再び馬車に揺られながら、青年に状況を尋ねた。
「今回は隣国に訪問する国王陛下の護衛任務なんだ。」
そういう事は先に言っておいて欲しかった。国王とは、先日ギターを披露した後逃げ出して以来なので、若干の気まずさがある。
「でも、そんな重要な任務を、どうして冒険者が請け負うんですか?」
横から響子が尋ねる。確かに周りには護衛の兵士も付いてるし、わざわざ冒険者を雇う必要があるのだろうか。
「実は国の兵士達は、基本的に戦争とかで人と戦うために訓練されていて、魔物との戦いに慣れていない人が多いんだ。
でも旅の道中には、魔物に襲われる可能性もあるから、僕達みたいな冒険者に護衛の依頼が来るんだ。
どのような魔物が現れるか分からないから、受注条件はランク8以上の冒険者のみとなっているけどね。」
よく見ると、クレッチは銅色に輝くギルドタグを首に下げている。
こいつら優男に見えて、実は剣王軍よりランクが上なのかよ。
人は見かけによらないんだな。
「そんなクエストに、小生達のような駆け出しが同行しても良いのでござるか……?」
金重の言うとおり、結局ランク0のパーティが同行しているのでは、ランク制限の意味が無いようにも思える。
「その辺は大丈夫だよ。ランク制限とは言っても、ランク0の見習いパーティは自己責任での同行が許されているし、何かあったら僕達が助けるから。
僕がお願いして同行を頼んだ君達を、危険な目に遭わせる訳にはいかないからね。
もし仮に同行者が無法者で、何か悪事を働こうとしても、国の兵士が人間相手に、しかもランク0の冒険者に負ける訳がないからね。」
頼もしい言葉だが、奏太は前回の事を思い出し、二の舞にならないか心配になる。
まあ今回もピンチになったらフ◯ディに変身して歌えば大丈夫だろう。
奏太は楽観視するが、自分が思うように物事は運ばないのが世の常であるーー
一方、国王の馬車の中では、アイバニーゼがウキウキと顔を綻ばせていた。
「どうしたんだいアイバニーゼよ。何か嬉しいことでもあったのかな?」
国王がアイバニーゼ以上に顔を弛めながら尋ねる。
「な、なんでもありません、お父様。」
アイバニーゼは、自分でも気付かないうちに顔がニヤけていたことに「はっ」として、顔を引き締めた。
また奏太達の演奏が聴けるかもしれない。
期待が込み上げ、自然と顔が弛むアイバニーゼだったーー
ーー馬車が出発してから半刻ほど経ったが、まだ目的地に到着する気配はない。
初めは異世界での旅路にワクワクしたが、何もない馬車の中では1時間もすると流石に飽きてしまう。
隣に目をやると、響子はコクリコクリと眠りこけている。
かたやその隣で、金重が黙々と雷魔法で蓄電池を充電していた。
どうやら時間がある時はこまめに充電していたようで、魔力も少し鍛えられたようだ。
金重って結構真面目な奴なんだな。
金重の雷魔法と蓄電池は、奏太達が電気のない異世界でロックバンドをやるための生命線となる。
金重の意外な側面に、奏太は素直に感心する。
そういえば自分も、昨日のクエストと今日の録音で精霊魔法を使いまくり、結構魔力が鍛練された。
あれだけポーションをがぶ飲みして魔法を鍛えれば、そろそろ次の霊魂を呼び出せてもおかしくない筈だ。
そしてもしシ◯・ヴィシャスに変身出来れば、とうとう響子さんと……。
金重が真面目に充電する傍ら、奏太は自らの欲望を満たすべく、魔法を使う計画に妄想を膨らませたーー
僕の名前はクレッチ。パーティのリーダーだ。よろしく!」
奏太達は、先程の冒険者ギルドで自分達の同行権を買ったパーティと共に、馬車に揺られていた。
今回の馬車は剣王軍の時とは違い、随分まともだった。
荷車を曳いているのも、今度は普通の馬だ。
同行している青年の冒険者達も、感じよく爽やかな印象を受ける。
「そういえば今日はどんな討伐クエストなんだ?」
また昨日みたいに危険な目に遭うと困るので、奏太がクエスト内容を確認する。
「うーん、残念だけど、今日のクエストは討伐じゃなくて、護衛任務なんだ。
あ、向こうにいる馬車がその依頼主だよ。」
目を向けると、そこには豪勢な馬車が停まっていた。周りには兵士らしき人物が数十名程構えている。
一体誰を護衛するというのだろうか。
いかにも凡人ではなさそうな雰囲気に、奏太は緊張を覚える。
奏太達の馬車が停車すると、クレッチ達は即座に高級馬車の元へと駆け寄り、膝を付いて控える。
すると、馬車から見覚えのある人物が降りてきた。
あっ! あれはまさかーー
「この度は我々が旅の護衛をお勤め致します、国王陛下。」
「うむ。よろしく頼むぞ。」
クレッチが頭を下げる先には、国王とその娘のアイバニーゼが立っていた。
「ええーっ!? 護衛任務って、まさか国王の!?」
奏太達は、予想だにしない人物が現れた事に驚きの声を上げた。
その声に気付き、国王とアイバニーゼがこちらを見やる。
「おお、何者かと思えば、響子殿、金重殿、そして奏太殿ではないか。
そなたらも此度の護衛に同行するのであるか?」
国王が言葉を掛ける横で、奏太達に気付いたアイバニーゼが、「あっ」と小さく声を出す。
「ええっと、はい……。」
奏太が戸惑いながら返事をすると、アイバニーゼが嬉しそうに目を見開いたーー
ーー奏太達は再び馬車に揺られながら、青年に状況を尋ねた。
「今回は隣国に訪問する国王陛下の護衛任務なんだ。」
そういう事は先に言っておいて欲しかった。国王とは、先日ギターを披露した後逃げ出して以来なので、若干の気まずさがある。
「でも、そんな重要な任務を、どうして冒険者が請け負うんですか?」
横から響子が尋ねる。確かに周りには護衛の兵士も付いてるし、わざわざ冒険者を雇う必要があるのだろうか。
「実は国の兵士達は、基本的に戦争とかで人と戦うために訓練されていて、魔物との戦いに慣れていない人が多いんだ。
でも旅の道中には、魔物に襲われる可能性もあるから、僕達みたいな冒険者に護衛の依頼が来るんだ。
どのような魔物が現れるか分からないから、受注条件はランク8以上の冒険者のみとなっているけどね。」
よく見ると、クレッチは銅色に輝くギルドタグを首に下げている。
こいつら優男に見えて、実は剣王軍よりランクが上なのかよ。
人は見かけによらないんだな。
「そんなクエストに、小生達のような駆け出しが同行しても良いのでござるか……?」
金重の言うとおり、結局ランク0のパーティが同行しているのでは、ランク制限の意味が無いようにも思える。
「その辺は大丈夫だよ。ランク制限とは言っても、ランク0の見習いパーティは自己責任での同行が許されているし、何かあったら僕達が助けるから。
僕がお願いして同行を頼んだ君達を、危険な目に遭わせる訳にはいかないからね。
もし仮に同行者が無法者で、何か悪事を働こうとしても、国の兵士が人間相手に、しかもランク0の冒険者に負ける訳がないからね。」
頼もしい言葉だが、奏太は前回の事を思い出し、二の舞にならないか心配になる。
まあ今回もピンチになったらフ◯ディに変身して歌えば大丈夫だろう。
奏太は楽観視するが、自分が思うように物事は運ばないのが世の常であるーー
一方、国王の馬車の中では、アイバニーゼがウキウキと顔を綻ばせていた。
「どうしたんだいアイバニーゼよ。何か嬉しいことでもあったのかな?」
国王がアイバニーゼ以上に顔を弛めながら尋ねる。
「な、なんでもありません、お父様。」
アイバニーゼは、自分でも気付かないうちに顔がニヤけていたことに「はっ」として、顔を引き締めた。
また奏太達の演奏が聴けるかもしれない。
期待が込み上げ、自然と顔が弛むアイバニーゼだったーー
ーー馬車が出発してから半刻ほど経ったが、まだ目的地に到着する気配はない。
初めは異世界での旅路にワクワクしたが、何もない馬車の中では1時間もすると流石に飽きてしまう。
隣に目をやると、響子はコクリコクリと眠りこけている。
かたやその隣で、金重が黙々と雷魔法で蓄電池を充電していた。
どうやら時間がある時はこまめに充電していたようで、魔力も少し鍛えられたようだ。
金重って結構真面目な奴なんだな。
金重の雷魔法と蓄電池は、奏太達が電気のない異世界でロックバンドをやるための生命線となる。
金重の意外な側面に、奏太は素直に感心する。
そういえば自分も、昨日のクエストと今日の録音で精霊魔法を使いまくり、結構魔力が鍛練された。
あれだけポーションをがぶ飲みして魔法を鍛えれば、そろそろ次の霊魂を呼び出せてもおかしくない筈だ。
そしてもしシ◯・ヴィシャスに変身出来れば、とうとう響子さんと……。
金重が真面目に充電する傍ら、奏太は自らの欲望を満たすべく、魔法を使う計画に妄想を膨らませたーー
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら
リヒト
ファンタジー
現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。
そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。
その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。
お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。
ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。
お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる