異世界に奏でる狂騒曲(ロックンロール)~ランク0だけどロックの力で最強パーティに~

伊太利 千重治

文字の大きさ
30 / 78
1章

4B-盗賊

しおりを挟む
「ーーそれにしても隣国は随分遠いんだな。転送魔法みたいなものは使えないのか?」

 奏太が卑猥な妄想にも飽き、まだ到着する気配がない事に痺れを切らし、クレッチに尋ねる。
 初めてこの世界に来たときに、国王は転送魔法があるような事を言っていたし、わざわざこのような護衛を雇って長時間も旅をする必要はないのではないかと、奏太は疑問に思った。

「同盟国同士だと、条約により認められている場合も多いんだけど、中立国や敵国になると、相手領土内へ兵士を転送魔法で送る行為は、侵略行為とみなされるんだ。
 たとえ事前通知を行ったり、正式な会談だったとしてもね。
 今回の目的地は中立国だから、外交の際は徒歩か馬車による移動が基本だね。」

「なるほど……。」

 う~む、政治っていうのは色々難しいんだな。

 単純に利便性や合理性だけでは成り立たない世界の在り方に、自分達がいた世界も、様々な問題を抱えていた事を思い出し、奏太は深く考え込む。

 音楽の力で世界を平和に出来ないものか。

 奏太が音楽の可能性を模索するが、すぐに考えるのを辞めた。かつて同じ夢を抱いて実行しようとしたロックスターが大勢いたのに、未だ世界に平和は訪れていないのだから。

「道のりの半分は過ぎたと思いますので、もうしばらくの辛抱ですよ。
 まあ私としては魔物の一匹くらい現れて、皆さんの音楽の力を試してみたい所ですが。」

 冗談なのか本音なのか分からない事を、クレッチが笑顔で言う。

 おいおい、フラグが立ちそうな事言うなよ……。

 そう思っていると案の定、馬車が急停車した。

「ーーわわわっ!何だ急に!?」

 奏太達の体が前のめりになり、響子が驚いて目を覚ます。
 蓄電池を充電していた金重は、バランスを崩して椅子から転げ落ちた。

「何があったのか、前の方に聞いてくるよ。」

 クレッチが馬車を降りて状況を確認しに行く。
 すると前方の兵士が馬車に向かって何か叫んでいる。
 そして残った兵士達が馬車の前で隊列を組み始めた。

「どうやら何者かの集団が、こちらの方に向かって来ているみたいだ。
 魔物ではないようだけど、皆はここで待機していて欲しい。」

 クレッチが馬車に戻って奏太達に状況を説明すると、再び兵士の所へと踵を返した。
 奏太が馬車から恐る恐る顔を出し、前方を確認すると、何やら馬に乗った集団が、騒々しく粉塵を撒き散らしながらこちらに迫っていたーー


「貴様らー!止まれー!」

 兵士が迫り来る軍勢に向かって停止を求める。
 だが相手は止まるどころか、その勢いはどんどん増していく。
 見ると、軍勢は武器を振りかざしながら馬を走らせている。
 目は欲にギラつき、口元は下品に歪み、野蛮な声を張り上げている。
 その風貌はスラム街のゴロツキとそう大差ない。

 紛れもなく、盗賊の集団であることを兵士達は確信する。
 既に兵士達が制止を呼び掛ける声も、届いている筈の距離だが、彼等が応じる気配はない。

「まずい……!金目の物を狙って襲うつもりか!
 陛下をお守りしろ!」

 兵士達が前線で陣を固める。

「陛下! 蛮賊がこちらに向かってきております! 危険ですので、アイバニーゼ様と共にお下がり下さい! ここは我々が死守します!」

 兵士が急いで国王を避難させる。

「分かった。断じてアイバニーゼを危険な目に遭わせてはならぬぞ。」

 国王は兵士の求めに応じ、娘を必ず守るよう念を押す。

「はっ!命に換えても!」

 兵士が国王に誓うと、武器を構えて迫り来る敵に備えた。

「お父様……。」

 アイバニーゼは不安そうに国王を見つめる。

「アイバニーゼよ。そなたは父が必ず守るゆえ、心配するでない。」

 国王がアイバニーゼに向かって笑いかける。
 兵士達は既に戦闘体制に入っている。
 両者の距離が徐々に狭まっていくにつれ、前線の緊張感が高まる。

 20m…………10m……5m…

 4、3、2、1、

『ワァッ』という衝撃と共に、人と馬、剣と剣のぶつかる音が鳴り響く。
 とうとう両者が交錯した。

「全員ぶち殺せー!!」
「金目の物を奪えー!! 男は殺して女は犯せー!!」


「奴等に怯むなー!!」
「絶対に陛下の所へ近付けるなー!!」

 戦場さながらに、両者の咆哮と剣が入り乱れたーー


「ーーどう見てもヤバイ雰囲気だな……」

 奏太達が馬車の影から様子を見つめる。

「え、映画の撮影ではないですよね……。」

 初めて人と人が戦う光景を目にし、響子はまだ信じられない様子だ。
 剣王軍の戦いを間近に見てはいるが、やはり人同士の戦いとなると、感じる重みが異なる。

「あわわわ……。」

 流石の金重も、今回は危険な雰囲気を察知したのか、闇雲に飛び出そうとしない。
 するとクレッチが状況を伝えに再び戻ってきた。

「大変だ。どうやら相手は盗賊団のようだ。
 今兵士達が応戦しているから、僕達のパーティも今から戦闘に加わるけど、皆はどこかに身を隠していて欲しい。」

「盗賊団だって!? 数はどれくらいいるんだ!?」

「こちらと同じくらいか、それ以上だ。
 恐らく、馬と数の優位で勝てると見込んで、こちらの兵士に挑んできたんだろう。
 とにかくこのままではまずいから、僕も応戦してくる!」

 いくらランク8の冒険者と言っても、それはあくまで対魔物の実力であって、人間相手にクレッチ達は果たして勝てるのだろうか。

「じ、じゃあ俺達も演奏でっ……!」

 奏太が自分達の演奏で力を貸すことを提案する。

「ーーそれは辞めたほうがいい。」

先程まで奏太達の演奏を期待していた筈のクレッチが、何故かそれを制止したーー
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら

リヒト
ファンタジー
 現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。  そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。  その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。  お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。    ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。    お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?

処理中です...